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【製作国 : 日本 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
81. ダンスウィズミー(2019) 《ネタバレ》 『さよならくちびる』おバカバージョン、みたいな映画だったわ。 矢口監督の映画、『ひみつの花園』から『ウォーターボーイズ』『スウィングガールズ』までは好きなんだけど『ハッピーフライト』『ロボジー』あたりからあまり楽しめなくなって。 矢口監督の映画につきものな「いい加減な人びと」、それが高校生ならば「おバカねぇ」って笑っていられるのだけど、オトナとして仕事をしている立場で「いい加減な人」だと、とても楽しんで見てはいられなくなって。 そのいい加減さが物語を動かしてゆくって、不安感、不穏な雰囲気を漂わせてしまってストレス抱いちゃう。 今回の映画もそうで。だからまごうことなき矢口監督作品ね。 その上、歌って踊る映画なのだけど、普通のミュージカルがキャラクターの心や気持ちをそのまま歌や踊りで表現しているのに対して、この映画の主人公は意思に反して、不本意ながら歌って踊ってしまうわけ。それって見ていてあまり気持ちイイとは思えないのよね。 その姿を見て笑うというのを意図しているのワケなんだけど、主人公にキモチを移して見ていると、苦痛に思えて。苦痛なミュージカルシーンって、そこまで意図してたのかしらねえ? 『レ・ミゼラブル』のファンティーヌや『アナと雪の女王』のエルサ、最近では実写版『アラジン』のジャスミンの熱唱は決して楽しいキモチを歌ってるワケじゃなくて、苦しみの中で心から湧き出る想いを歌ってる、でも、コレはそれとは意味が全然違うワケで。歌うのは昭和な既成曲ばっかりだしね。 不穏な雰囲気で進む苦痛なミュージカル、うーん・・・ ミュージカルに抵抗がある人こそ楽しめる作品ということなんだけど、ミュージカルに慣れている身からすると(ヅカ好きだし)、ミュージカルの良さってところからは遠く離れた作品、ミュージカルへの入門にはなりそうにないカンジ。 そこを体験したければ素直に現在絶賛上映中の『アラジン』を見なさい、みたいな。 主人公の姓が「鈴木」だとか、嘔吐シーンがあるとか、監督の作品の烙印は登場するけど、そういうのはワリとどうでもいいわ。伏線やエピソードの回収をちゃんとせずにほっぽりっぱなし、投げっぱなしの悪いクセも相変わらずよ。 『旅立ちの島唄』や『グッモーエビアン!』の頃は透明感のある少女だった三吉彩花はすっかり美しいオトナになって、存在感もあって、良い女優さんになったわね。でも監督はこの映画のオーディションまで彼女の存在を知らなかったそうで、他の人の作品って意外と見ないモノなの? 舞台では実績も人気も十分なのに、映画では何故か不毛な日本のミュージカル、残念ながらこれもそのジンクスを破れる映画ではなかったわ。っていうか、監督、ティーチインでは昔からミュージカル好きって言ってたけど、ホント? 群舞は俯瞰で、ダンスは全身を捉えてステップを見せてこそ、なのだけど、そこら辺、ちゃんとしてたって言えるかしら?[試写会(邦画)] 5点(2019-06-21 20:34:29)《改行有》 82. 町田くんの世界 《ネタバレ》 前田あっちゃんのキャラが最高ね。彼女が全編に渡って映画を引っ張ってくれたならば、どんなにか楽しい映画になっていたことか・・・ 映画は、前半はとても楽しめたわ。町田くんと接した人びとに訪れる変化の物語は、なんだか心がほわほわして。 だけど、後半になって町田くん自身の物語に移行すると、歯切れの悪い、テンポの悪い状態になってしまって、映画に対する興味も半減してしまった感があって。町田くんってキャラ自体は必ずしもキモチのイイ存在じゃないもの。あくまで彼の行為によって影響を受ける人の姿、っていうのが気持ちいいワケで。 元々、それぞれのキャラの描写が弱い感じだったので、クライマックスのノリは盛り上がるよりもご都合主義的な、それってわざとらしくてちょっと恥ずかしいわ、ってカンジになっちゃって。あの記者というかライター、彼なんかはあそこまで必死になれるほど町田くんとのエピソード重ねてないし。 それに、安易にスマホを悪いモノとして記号的に描くのもどうなのよ?って。今時スマホを悪意の象徴として描くとか、無理あるのよ。今の時代にそこを避けたり排除したりしてそれで通用しないでしょ? そこら辺はちょっともう古い感覚になっちゃってるわよね。古びたシネフィル的思考よ。 モデル青年がプレゼントを棄てる件は最近実際に炎上した動画にピッタリ符合してて、時代を映してる感があったけれど。 オーディションで選ばれたメインの2人はとても良かったわ。脇をベテランな人びとに固めて貰って、初々しい爽やかさを放って。 あと、クライマックスでいきなり「え?」って展開になるんだけど、アタシはその展開そのものよりも、かなり微妙なデジタル合成っぷりにハラハラしちゃって。ぎこちない画が延々と続くので、ミョーな不安感に包まれるハメになっちゃって。観客が合成のクオリティの心配しちゃう、っていうのは邦画独特の残念な特徴よね。洋画だとそういうコトってあんまりないもの。 映画そのものは期待したほどじゃなくて、結論としてはあっちゃん最高!!というところが最大のポイントね。[映画館(邦画)] 6点(2019-06-11 19:57:37)《改行有》 83. 君は月夜に光り輝く 《ネタバレ》 明らかに『キミスイ』の柳の下のドジョウを狙ってるのが見え見えで(監督と主演が一緒だし)、だけどそれでも映画に酔えればいいのだけれど、『キミスイ』には及んでないわ。かなり劣るカンジ。 この映画の最大の欠点は永野芽郁を病院の外に出せないこと。その分、北村匠海が動いてゆくことになるのだけれども、彼の単独行動じゃどうしたって映画のキモチは永野芽郁から離れていっちゃう。永野芽郁も一緒に連れ出さないといけなかったハズなのね。それはもちろん病院から連れ出せないっていう基本設定は守った上で、彼女のキモチとか想いとかを連れてゆく、という。だけど、ソレをクライマックスの感動的な見せ場の仕掛けとして設定しちゃったものだから、そのテを使えず、永野芽郁はコマ切れで登場する状態になっちゃった。 その上、エピソードがいちいち単発状態で繋がりがちゃんとしてないので(もう娘に会わないで→間無し→会いに行っても平気、もう来ないで→間無し→会いたい)流れが生まれず、話が盛り上がってゆかないの。エピソードのコラージュ状態で描いてゆこうとするならば、もっともっとエピソードを重ねるべきだったのかもしれないわ。 架空の病気はあんまりな合成状態でヘンだし。っていうか、二度目の発光はアレ、匠海はもう彼女を逝かせてあげたいと思ったワケ? 屋上出るとヤバいってのを承知の上で光らせたみたいなカンジなんだけど。 それでも見られる映画だったのは北村匠海と永野芽郁って二人の実力、それ以外の何物でもないわ。北村クンは『キミスイ』とキャラカブり過ぎだろ!って状態ではあったのだけどさ。[映画館(邦画)] 6点(2019-06-06 21:30:22)《改行有》 84. プロメア 《ネタバレ》 映像は良かったわ。 スクリーンいっぱいに色とカタチが乱舞する世界。炎側を三角、水(氷)側を四角でシンボライズして、三角と四角の戦いの世界にしてみせてるのが楽しくて。ちょっと『スパイダーバース』みもあって。 それに故・金田伊功氏の精神を受け継いだかのような、『幻魔大戦』クライマックスを思わせる炎の龍の乱舞も気持ち良く。 ハイテンションな映像の暴走ワールドを堪能させて貰ったわ。 だけど物語や設定はありがち(『バーニングレンジャー』で『ヴァレリアン』してみました、みたいなハナシよ)で楽しめたとは言い難いのよね。 なんと言っても設定が劇場用アニメのカサじゃないのよ。1クールとか2クールとかあるテレビアニメ用のソレみたいな状態で。キャラは多いし、メカいっぱいだし。それを無理矢理2時間弱の映画に詰め込んでる感じで、いっぱい出てくるクルーの殆どが描写不足。「こういうデザインでこういう喋り方なんで、これまでの既成作品の類型キャラから連想して察してくださいね」って状態になっちゃってるのよね。もう記号でアニメ作っちゃってるの。最近のアニメの悪癖そのまま出てるわけ。 あと声、松ケンは見事ね。もうそのまま洋画の吹替えとかアニメ声優とかで十分通用するわよ。一方、堺雅人は聴き取りづらくてちょっと困っちゃった。セリフの端々で発声せずに息だけで喋るのよ。それで良しとしちゃったのが意味不明だわ。 勢い、テンションだけで突っ切ってゆけると思ってる?ってカンジの映画で、実際、突っ切れてないこともないかなぁ?とは思うのだけれども、どうしてもひっかかるところは色々あるのよね。[映画館(邦画)] 6点(2019-06-06 20:25:47)《改行有》 85. さよならくちびる 《ネタバレ》 門脇麦と小松菜奈の百合映画なんて、それだけで満点じゃなくて? なんていう汚れた心にパンチ食らわせながらじんわり癒してくれるような映画だったわ。 険悪なムードで解散へと至るインディーズデュオのハルレオと付き人シマ。ロードムービーのカタチを取りつつ、過去に戻ったり、ファンの姿、ローカルテレビのインタビュー、書きかけの詞なんかをコラージュして、出会いからそこに至るまでのハルレオの姿を浮かび上がらせてゆくのだけれど、この映画、幾つもの矛盾をぶつけてくるの。 全く違うようでよく似ているハルとレオ。儚げだけど強くて、だけどやっぱり弱い二人。頼りないけど頼れるシマ。それぞれがそれぞれを大好きなのに、だからって上手くはいかない、好きなのにどんどん壊れていっちゃう。キビシいようでいて優しい映画。切なくつらいのに、何故か幸せな気持ちになれる映画。 この映画、色々と物語るワリに物語になろうとしないのよね。ハルとレオが出会って間もない頃にハルの家でカレーを食べるシーンでの長回し、その1カットで色んな事が語られるのね。カレーを食べながら泣き出すレオ、頭をハルの肩にもたげ、そのレオの頭にそっと口付けるハル。そこにはふたりのいろんな背景が描かれているわ。でも、それを物語として結実させようとはしないの。3人の最後の晩餐もカレー、そして出発点に戻る、行きて帰りし展開が、だけどそれがきっちり物語として閉じているとは言えないのよね。 ※ここからラストについてのネタバレ※ その、閉じなかったラストシーンについては結構否定的な評価を見かけるのね。台無しって。でも、アタシ的にはアレ、つまり物語としての区切りを付けてないだけだと思うわけ。見た人それぞれに想像するでしょうけれど、アタシはあの後やっぱり解散すると思うのね。でも、少しだけ先送り、もう少しだけ3人の時間があってもいいかな?みたいなキモチ、って。まだ3人にはそうしてもいいだけの時間があるんだもの。何かをハッキリ決めなくちゃならないようなトシになるには、まだもう少し時間がある、そういうコトよね。それが青春、青春映画。[映画館(邦画)] 9点(2019-06-03 22:17:28)(良:1票) 《改行有》 86. ゴジラ キング・オブ・モンスターズ 《ネタバレ》 ベースが明らかに『三大怪獣 地球最大の決戦』と『怪獣大戦争』でチャンピオンまつり世代歓喜ワールド、だけど初代原理主義もしくはシン・ゴジラ原理主義の人には向いてなさそうよね、コレ。アタシは怪獣映画なんてテーマだのメッセージだのメタファーだのなんてさして重要じゃなくて、怪獣が出てきてドタバタ暴れてナンボだと思ってるんで、まあまあ面白かったわ。 ただ、人間側のドラマは前作に引き続き退屈。怪獣と人間のドラマは水と油、って何度も書いてきてるけれど、今回も混ぜようと無理してて、でも全然なのよね。いちいち怪獣に近づき過ぎだっての。潰されても仕方ないわよ?みたいな状態になってんの、っていうか実際にそうなっちゃうあの人はアレで良かったのかしら? それなりに名前のある役者さんのあの退場っぷり、『ディープブルー』のサミュエル思い出しちゃったわよ。 悪役の中二病全開な怪獣復活テロの理由とか、核の扱い雑過ぎで被曝しまくりでしょ!って状態とか、怪獣による被害描かれなさ過ぎとか、まあ、ツッコミどころだらけで、だけど良くも悪くもそういういい加減さもまた怪獣映画らしい、っちゃらしいのよね。 地球の守護神的な描き方は平成ガメラみたいだし、傷付いて海の底で休んでるところに潜水艇で助けに行っちゃうあたりは昭和ガメラの世界だしで、ガメラファンも満足? でもやっぱり今の技術で巨大な怪獣がスクリーンいっぱいに暴れてる姿を見るのは気持ちいいのよね。巨大感を意識し過ぎて見辛くなっちゃってはいるのだけど(っていうか一体何が映ってるのかわかんないカットが結構あったわ)、人の力では到底太刀打ちできない畏怖すべき怪獣って存在を迫力いっぱいで見せてくれるのは単純に嬉しいわ。 モスラの美しさ、その役割なんか、よーく判っていらっしゃる、って描き方で(予告編時点ではバトラみたいになっちゃったよー、って嘆いたケド)、それぞれの怪獣のイメージをきっちり守ってみせたレジェンダリーチャンピオンまつりだったわ。 アタシ的にはもっとくだけちゃっても良かったんじゃない?とは思ったけどね。[映画館(字幕)] 7点(2019-06-03 21:19:39)《改行有》 87. バースデー・ワンダーランド 《ネタバレ》 原恵一監督作品ということで期待しちゃったけれど、フツーのよくあるファンタジーね。『ホッタラケの島~遥と魔法の鏡~』や『ポッピンQ』『ひるね姫~知らないワタシの物語~』なんかと明らかに違った突き抜けた個性みたいなのは無かったかな、って。 こんな世界なんですよ、ってばーって見せるような圧倒感とか高揚感とかって無くて、たとえばハエになっちゃったヒポクラテスが城に向かうシーンなんかはCGで1カットで飛び回って世界を見せてくれたりするといいんだけどって思ったけど、数カットの背景のみ、ってジミさ加減で。でもあくまでCG使わない、ってワケでもないしねぇ。美術設定はちゃんとしてても、それをこれ見よがしに披露する気はないみたい。でも、ファンタジーってそこで魅せてこそ、って気もするのだけどねぇ。 あと、ベテランで実写映画までこなしている原監督なワリにカットの繋がりがおかしかったりぎこちなかったりする箇所があったりして。崖の道で石が落ちてくるカット、クルマはそのカットでは停止する表現がないけれど、次のカットでは既に停止してるわよね? アタシの見間違え? それでもキャラは魅力的だったわ。主人公のアカネが小学生には見えなくて、冒頭すぐのランドセル背負ってるシーンはかなり前の回想?とか思っちゃったけど、でも、全く性格の異なる叔母のチィとのコンビ、そのかけあいが楽しくて(既に声優として数こなしてきてる安定の松岡茉優と、チィの雑な性格に合ってる杏と)、そこだけで最後まで見られるモノになってたカンジ。逆に言うとソコがダメだとシンドくて仕方なかったでしょうね、って状態ではあるのだけど。 世界の危機と言いながら、実は極端にスケールが小さいというか、ごくごくパーソナルな理由で危機が起きてる、悪の組織かなんかが存在してるのかと思ったら、それだけかい、っていうのは肩透かし感ハンパないのだけど、コレって『不思議な国のアリス』から綿々と継がれた系譜、少女の通過儀礼なオハナシ、アカネの辿る成長の道はあったか~く見ていられたわ。ちょっと能動的に動き出すのが遅すぎな気はしたけど。城に着くまではチィの方が主役っぽかったものねぇ。 色々と惜しいカンジの映画、ラストなんかも読めまくっちゃうのだけど、でも、そこをクドクドと説明しない、コッテリと押しつけない美徳、それが原恵一監督なのかもしれないわねぇ。[映画館(邦画)] 6点(2019-04-28 20:21:03)《改行有》 88. 劇場版 響け!ユーフォニアム 誓いのフィナーレ 《ネタバレ》 アニメって基本、映画しか見ないので『ユーフォ』はこれまで総集編な1作目と『リズと青い鳥』だけ(2本目の総集編は見てないの)。でも、あとこの作品だけでも問題ナシってカンジね。 っていうか、どうも『ユーフォ』ってドロドロした人間関係がメインになってて、見ていてシンドいのよね。映画見て、じゃあテレビシリーズも、ってカンジにはならないのよね。そのドロドロを延々と見せ続けられるの?って思うと。 『リズと青い鳥』は山田尚子監督のウデでアートに昇華されてキラキラと素晴らしい作品になったけれど(最悪なドロドロ『聲の形』ですら見事にアートにしてみせたワケだし)、山田監督がワキに回ってるこの映画はワリとストレートというか通俗的というか。 山田監督だったら、って思う瞬間もあったけれど、でも、『リズと青い鳥』との棲み分け、って考えても今回はこれで正解なのかもしれないわ。 こちらは久美子という主人公を置きつつも、群像劇で俯瞰した描き方が必要なわけだし。 個人的にはみぞれと希美の、あの後の世界、コンクールでの姿を見られただけでも十分に感動したし。二人ともコンクール場面以外ではチラチラとしか映らず、セリフすら無いような状態だったけれど。でも『リズと青い鳥』(映画)ではごく断片でしかなかった『リズと青い鳥』(曲)をクライマックスでたっぷりと聴かせてくれて、ひとつの完成形を見せてくれたワケで。 でも、この作品こそが『響け!ユーフォニアム』という作品世界の集大成にして到達点・・・というわけでもなくて、そして未来に続く、って状態に、もうちょっと見せてくれない?って思ったりもするのだけど、それは贅沢なハナシなんでしょうねぇ。フィナーレって謳ってるしねー。 っていうか、未映像化な原作が存在してる『けいおん!』の三期すら作ってくんないしねー(『けいおん!』と『ガルパン』は映画から入ってブルーレイ買ってまでテレビシリーズ全部見た数少ないアニメね)。[映画館(邦画)] 7点(2019-04-28 19:26:26)《改行有》 89. クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン 失われたひろし 《ネタバレ》 ひたすらみさえがカッコいいの。カッコいいオンナが出てくる映画が大好きなアタシだけど、この映画はみさえのオンナとしての魅力を再認識させてくれたわ。それは『クレしん』っていうより『百円の恋』の安藤サクラのようなカッコよさ。 予告編見た限りじゃ、パターン化された『クレしん』の毎度の一編のように思えたわ。野原一家ファイヤー!パターンとカスカベ防衛隊ファイヤー!パターンでは今回は前者、海外モノで、誘拐モノで、ジャングルで、列車アクションで、アクティブなゲストヒロインが出てきて、はいはい、みたいな。 でも、そんな毎度の要素を散りばめつつ、今回はみさえの映画として振り切ってみせたことで、これまでになかった魅力に溢れた映画になったと思うのね。 これまでみさえはひたすら母親としての強さを求められてるキャラだったと思うの。そういう描写は過去作にもう沢山あったし、今作にも溢れてるわ。でも、今回は母親である以前に、また妻である以前に、オンナであるコトが描かれてるのね。いつもはネタである嫉妬ネタを、今回はキッチリ真面目に描いてたりして。しんのすけとひまわりの耳を塞がせつつ怒りを爆発させるシーンでの、お尻が破れてパンツ見えてる状態の見た目のカッコ悪さと内面のカッコ良さの対比なんか、味わい深いドラマを感じさせて涙が出たわ。 クライマックスなんか、もう、反則ね。作品情報時点でネタバレしちゃってるので書いちゃうけど、緊迫感を煽るBGMじゃなくてみさえが歌うMISIAの『Everything』が静かに流れる中で、ひろしを救いに爆走するみさえが描かれるのよ。大好きな曲の、その歌詞の内容にぴったり合っているみさえの心情に、もう号泣レベルね(あくまで「レベル」ね。実際にトシ喰ったオカマが映画館で号泣してたら犯罪レベルだわね)。もしかしたら、この映画、『Everything』の歌詞を元に映画作られてない?ってくらいにぴったり。その昇華っぷりったら『雪の華』なんかよりよっぽど見事よ? しんのすけもひろしもゲストキャラも、今回はみさえを引き立てる存在で(木南晴夏が魅力的に演じていたインディ・ジュンコは安易にいい人にしなかった点が良かったけど)、だけどその割り切りっぷりが『アッパレ!戦国大合戦』以来の号泣名画(※個人の感想です)にしていたと思うわ。 ギャグも散りばめられて子供たちにもウケてたし、これまでのシリーズに存在してた、もはや時代錯誤の昭和ネタ(もうすぐ平成も終わって令和だわよ)とか、謎のミュージカルタイムとか、設定やテーマばかりを重くしちゃったオタク臭いパターンとかが無かった点も良かったわね。 今回は、みさえがいいオンナ、これに尽きるの。[映画館(邦画)] 9点(2019-04-25 21:00:57)《改行有》 90. あの日のオルガン 《ネタバレ》 保母さんと未就学児童の視点から戦争を描いた映画ね。 戦時下、日本への空襲が熾烈になる中、まだ学校へ行っていない子供たちを東京から埼玉へ疎開させた人びと(シリアスな『翔んで埼玉』とか言っちゃダメ)の物語で、実話が元になってるのね。 メインになっているのは人にも自分にも常に厳しい姿勢の戸田恵梨香と、未熟で子供と同次元で生きてるような大原櫻子。 そして子供たちの面倒を見る保母さんたち、子供を預ける親たち。 それぞれの、子供を大切にしようとする姿勢と、それを妨げるように起こる様々な問題がドラマを生むのね。 映画は前半が大原櫻子、後半は戸田惠梨香が主役のような感じで、背景にある戦況の推移に伴って厳しさを増してゆく中で見応えのある演技で魅せてくれるの。大原櫻子の可愛らしい存在感が辛さの中の輝きって感じで魅力いっぱいね。 田中直樹の独特なテンポの中で生きてるカンジの存在感も良かったわ。彼の生死も含めて、結構多くのエピソードが投げっぱなしになった感もあるけど。 この映画、終戦後からいっぱい作られてきたタイプの、ありがちな感じのやつ。戦争があって、日本では多くの犠牲が出て悲しい悲しい、って。そういう意味ではちっとも進歩してないわ。平成も終わりだっていうのに思いっきり昭和よ。 だけど今またこういう映画が必要になっているような情勢になってしまって。いつのまにか、戦争はダメ!って当たり前のことを声高に叫ばなくちゃいけない世界になっていて。 国と国、民族と民族、宗教と宗教、人と人とを隔てて対立するのが当たり前になってしまった世界で、こういう映画が否定され、封じられていかないように、取り違えられた「表現の自由」が大きな声でがなり立てて、本来の「表現の自由」を封殺してしまわないように、気をつけなければいけないわ。[映画館(邦画)] 7点(2019-03-05 20:36:23)(良:1票) 《改行有》 91. ニセコイ 《ネタバレ》 最近TOHO系を避けて松竹系によく行くようになったんで、特報とか予告編とか見せられまくった気がするのよね、この映画。そのたびに、きっとバカバカしい映画なんだろうなぁ、って。 いやもうこんな映画に感動させられたり泣かされたりするのってなんか負けた感じがしちゃって。チョロい、チョロいよ、アタシ、みたいな。 予告編から受けるイメージ通り、あるいはそれよりヒドいギャグタッチのおバカ映画なんだけど、丁寧に作られてるのよね。カメラとか照明とか、ちゃんとしてるの。おバカだからって、決してバカにしてない、手を抜いてない作り。 ニセモノの恋愛の中に本当の愛を見つける内容に符号するように、ニセモノで飾られた映画の中に本気を見せて貰った感じがして。 あり得ない設定やキャラばかりで組み立てられているけれど、そのあり得なさの中にいっぱいのキモチが織り込まれていて、そのキモチに引っ張られちゃうのよね。 ヒロインの強さっぷりと弱さっぷりがとても魅力的で、なんかキモチがシンクロ状態で、友達ノートと『ロミオとジュリエット』とラストで3回泣けたわ。4回泣けますって言いながら1回も泣けなかった映画と対象的ね。おいおい、こんな映画で泣くか~みたいな。 それにクラスメイトのコ達もいいコなのよね。登場人物が多いので、中途半端な、もう少し描いて欲しいな、ってキャラもいたけど、それだとテンポ悪くなりそうだし。それでなくてもちょっとクライマックスのテンポが悪かった気もしたし。 決して素晴らしい名画とか言うことは出来ない、マンガ原作の日本らしいおバカ映画だけど、こういうのもアリですなぁ、としみじみ。この映画でしみじみっていうのもヘンだけど。 そうそう、余談だけど『ニセコイ』のパンフレット、表紙と裏表紙とでデザインが対になってて、中も半分に分かれていて、表紙側から半分は縦書き、裏表紙側から半分は横書きって凝った作りになってるわ。[映画館(邦画)] 7点(2019-03-05 20:16:26)(良:1票) 《改行有》 92. 雪の華 《ネタバレ》 中島美嘉の『雪の華』は『FIND THE WAY』と共にプレイリスト「超よく聴く曲」の中に入っていて、超よく聴いてたりするのだけど、この映画はあの名曲からよくもまあこんなベタな凡庸な物語しか思いつかなかったモノね、って呆れるレベルね。 昭和の頃の『りぼん』か『なかよし』か、みたいな、小学生同士みたいな恋愛描写はまあまだいいとして(いや、二人とも成人してる設定なのだから相当にアレなんだけど)、限られた命のヒロインがこれまで果たせなかった願いを男にかなえて貰おうとする物語、一体どんだけあんのよ?っていう。過去にも複数あるし、本編前の予告編にも同じような内容の映画があったわ(ってさっき書いたレビューにも同じコト書いたけど)。必ずやりたい事をノートに書くのよね。 ご都合主義だらけの物語は不自然さのカタマリ。キャラを動きやすくするためにヒロインは一人暮らしで仕事を辞めてお金をそれなりに貯めていて。母親は物語上ジャマなので不治の病の娘を基本ほったらかし。主治医は個人情報を家族以外の人間に伝えてしまい(あのメモ手渡しただけでもアウトね)、100万の現金を捻出できないような兄ちゃんはさっくりフィンランド行きの飛行機に乗っちゃう。雪に閉ざされた世界に現地人から止められても無理して徒歩で突入するけれど、全く一切何事も無かったようにヒロインの前に登場。それでも酔えればいいじゃない、みたいな? その上で、寸止めのラストに困惑したわ。そこで終わり?なエンドロールスタート、の後に更にもう1エピソード描かれたと思ったらそこも寸止め。だったらもっとこの先は存在せず生も死も超越して永遠にここで終わりな映像で締めなさいよ、とか思っちゃったわよ。 『雪の華』も葉加瀬太郎のヴァイオリンのインストで二度聴かせるけれど、肝心のオリジナルの歌の使いどころは勿体ないとしか言い様がないし。 でも、中条あやみをたっぷり堪能できる映画、という点では99点!ってところね。 とにかく彼女をキレイに可愛く魅力的に撮るってことに関してはこだわりまくっていて、カメラさん、照明さん、メイクさん、ヘアメイクさん、衣装さんのウデが光りまくり。 そしてもちろん、中条あやみという存在そのものの魅力が輝きまくりで、その輝きを記録したという点では名画だと言えるわ。100点に1点足らないのは映画の中でも最も肝心な大切なシーンが夜の闇の中なので映画のワザが有効にならず、彼女の顔も闇の中に沈んでしまっていたこと。そこは残念。そこはどうせデジタル合成状態だったのだからウソでも輝かせて良かったんじゃない? ということで、これはひたすら中条あやみの魅力を堪能するためにある映画というカンジ、でも映画ってそれだけじゃあ、ねぇ。[映画館(邦画)] 5点(2019-02-15 22:40:08)《改行有》 93. フォルトゥナの瞳 《ネタバレ》 この映画に関してはアタシの評価がマトモじゃない可能性があるわ(いつもマトモじゃないって?うるさいわね)。 クソ右翼でトランスジェンダーの敵な原作者のコトが大嫌いなので、偏向フィルターがかかった状態で見てたかも、ってのは否めないものね。 一方で三木孝浩監督作品はどれも好きだし、有村架純嬢も好きだし、だから見たい映画ではあったのね。なので悩んだんだけど、貯まったポイントで無料で、かつ週末の動員数に絡まない金曜日に見ちゃえ、ってコトで初日での鑑賞。 映画はこれまでの三木孝浩監督作品の中で最低、経歴に泥塗っちゃった感じ? 調べてみると原作とはかなり違っている状態なので、これは映画独自の欠点が酷いって状態なのかしらねぇ。 ラブロマンス版『ファイナル・デスティネーション』みたいな物語とその結末は予告編と最初の20分くらいの展開で予測できちゃうのね。そしてその予測以上のモノは見せて貰えない、トキメキもハラハラドキドキもなく、ただ物語を消化してゆく状態に、もどかしさを感じるばかり。 何が悪いって、メインの2人が物語上の隠しごとを元に性格設定をしてます、みたいな本末転倒な状態で、そこからは血の通ったキャラが見えてこない、存在感希薄で魅力が薄くて映画にちっとも入ってゆけないの。つかみどころのない2人がつかみどころのないままに最後まで進んじゃうんだもの。 あと、コレは原作由来なのだけれど、フォルトゥナの瞳を持っているのが主人公だけではない、って点がもう萎えどころなわけ。既にその能力を持っている人物が出てきて、先輩として都合よく主人公に解説したり訓えを説いたりしちゃうのって安直だわ。まあ、複数人居ます、って設定しとかないと感動ポイントを作るのにあたって都合が悪いんでしょうけどさ。 その上、三木孝浩作品のいいところが今回はことごとくスポイルされちゃってるのね。 神戸を舞台にしたロケーションの魅力は全然出ていないし、いつもの光をコントロールしまくった映像作りも今回は不発。ソフトフォーカスレンズは映画全体をボヤケた印象にしてしまうし、それになんと言っても有村架純が全然!キレイに撮れてないの。『先生!、、、好きになってもいいですか』で広瀬すずを輝かせまくったあのテクニックは一体どこへ行っちゃったワケ? まあ、TOHOシネマズ渋谷の3番スクリーンが相変わらずヘボい映写してたっていうのもあるんだけどもさ。 物語にもキャラにも映像にも魅力が欠けていて、見どころのない映画だったわ。っていうか、彼女、彼氏の命がヤバいんでなんとか助けなきゃ!のSFファンタジーパターンの映画、ありがち過ぎよね。本編上映前の予告編にも1本あったし。邦画界、アイディア枯れ過ぎだわ。[映画館(邦画)] 4点(2019-02-15 21:46:59)《改行有》 94. ファースト・マン 《ネタバレ》 アメリカの宇宙開発史を描いた一編ということで、『ライトスタッフ』『ドリーム』を見た後にこれを見て、さらにその後『アポロ13』を見たら完璧ね。 だけど残念ながらアタシには『ライトスタッフ』『ドリーム』ほどには響いてこなかったな。 この映画は宇宙開発そのものよりもニール・アームストロング船長のパーソナルな世界を描いていて、そこにある葛藤や喪失感、孤独感をいっぱい描いてるんだけど、個人的にはもっと客観的にその時代、その世界を見たかったカンジね。 映画はひたすらアップに頼るのね。顔の大アップが延々と重ねられ、まるでそうしないと人の心を捉えられない、伝えられない、みたいな強迫観念に駆られたような印象。っていうか、クライマックスをIMAXカメラで撮ってるくらいなんだから、当然IMAXでの上映を前提としてる映画でしょ? なのに、IMAXの大画面に頭とアゴが切れた大アップがドーン!って。 その上、臨場感!とばかりにカビの生えた(だから90年代に『ER』でさんざんやってるでしょ)手持ちカメラぶん回しまくりで、でもそれ、IMAXの視界いっぱいのスクリーンで見せるモノなワケ?って甚だ疑問に感じたわ。 だからクライマックス、月面での大切なシーンで、あえて顔を見せなかったとしたら、それは「ああ、そう来ましたか!」ポン!って手を叩いて腑に落ちたかもしれないけど、あらら、なんだ、やっぱり見せちゃうのね・・・って。 カメラはゴズリングにひたすらしがみついて、だけどそれで伝わってくるもの、そこに映像から見えるモノ以上のものはあったのかなぁ? チャゼル監督、『セッション』『ラ ラ ランド』この映画と見てきて、意外と直接的、短絡的な人?とか考えてしまったり。『ラ ラ ランド』は良かったんだけどね。『セッション』はノイズの多い脚本なのでどーなの?って思ったけど。 アポロ計画より後を描いた映画はドキュメンタリーの『宇宙へ。』くらいで(それもBBC、イギリス産ね)、あとはフィクションの世界に突入するわけだけど(『スペースキャンプ』とか『アルマゲドン』とか『ディープ・インパクト』とか『ゼロ・グラビティ』とか)、それはやっぱりスペースシャトル計画の2つの大事故が影を落として、まだそこに向き合えるだけの状態にないのかもしれないわね。[映画館(字幕)] 6点(2019-02-11 19:40:44)《改行有》 95. 翔んで埼玉 《ネタバレ》 ジャパンプレミアにて鑑賞。 埼玉県をdisるネタ映画、バカ映画。そういうイメージが先行してるし、実際そういうカオを持って作られてはいるんだけど、でも、意外にもちゃんとした映画なのね。映画として物語にしろテーマにしろ演技にしろ真面目にしっかりと作ってありますよ、という状態。なのでこちらも妙に真剣に見てしまったわ。 設定はもちろん、今のこの世界を舞台にしてるワケじゃなくて、フィクション、作り物、嘘で固めた世界なのだけれど、埼玉を始め、東京、神奈川、千葉、茨城の現実の地域性を反映しているのね(群馬だけは別)。なのでそこで判る判るって笑える、のは関東の人限定かなぁ。県単位だけではなくて、市町村単位でのネタが仕込まれているので、その違いが関東圏以外の人はあんまり判んないと思うのね。へえ、そういうモノなのね、って笑うコトはできるでしょうけど。 でも、それを大きな欠点、ハンデにしていない作りで。 (本来の意味での)コスチューム・プレイ映画だけれども、その意匠が見事に映画の世界観を表わしていて。二階堂ふみの優雅で華奢なシルエットも、GACKTの耽美っぷりも、伊勢谷友介のクサいまでのクールさも、徹底的に大真面目にやっているので、笑えるけれども同時に魅せられて。それはヅカの世界に似て、実際に冒頭の学園部分なんか、明らかに宝塚歌劇団と宝塚音楽学校をリスペクト(ってゆーかパロディ)してて。アタシはコレ、ヅカで見たいとか思っちゃったわよ。あの役は何組の誰で、みたいに空想したりして。二階堂ふみはまるで月組『All for One』で愛希れいかが演じたルイ14世みたいだったし。 GACKTなんか、ずーっと出てて、ずーっと演技してて、ああ、ここまでできる人なんだ、って感心しちゃったわ。 それぞれの濃いキャラが織り成す一大絵巻って風情で、一部画的にチープだったり、ユルかったりする部分がない事もないけど(ハンパに物語から消えて行方不明なキャラいっぱいだし)、でもよくぞここまでやった、って褒めたい映画ね。公開の折にはツッコミどころ満載っぷりまで含めて存分に楽しんで欲しいわ。[試写会(邦画)] 7点(2019-02-07 20:21:47)(笑:1票) 《改行有》 96. 十二人の死にたい子どもたち 《ネタバレ》 堤幸彦監督の映画、バカバカしいハイテンションっぷりで大体どれも嫌いなんだけど、残念ながら?この映画はかなり堪能してしまったわ。 この映画で重要なのは自殺志願者は12人なハズなのに何故か13人目の死体があって、一体それは誰でどうしてそこにあるの?ってミステリー部分、ではなくて。 大切なのは12人それぞれ、どうして死にたいの?という点。そこに思いっきりキモチを向けて見ていたので1つ1つが沁みたわ。 もちろん、中にはそんな理由で死にたいの?っていうのもあって。後追いとか、当てつけとか、操り人形みたいな立場からの離脱とか。でも、それをバカバカしいって片付けられる? 実際にそういう理由で死んでゆく人達が存在しているのもまた事実なのだから。 それぞれの痛みに向き合って、まるで感情のアトラクションムービーの如く翻弄されて。 死にたい理由を見てゆくと、例外もあるけれど、多くが「大人がダメであるがゆえの若者の絶望」に繋がっているのね。親が原因で死のうとするコ達が何人もいて。そこからは子供に対する親の無責任、大人の無責任が見えてくるのね。若者を死なせてしまう社会、世界。それが正しい訳はなくて。そこに想いを向けてこその映画ね。 『人魚の眠る家』と同様にドローンを嬉々として使ってまーす、って状態を始めとして、堤演出は必ずしも正解とは言えないし、ドラマの浅いキャラ、もっと詳細に描いて欲しかったドラマもいっぱいあって、それは不満ではあるのだけど、でもまとまり方としてはこんなカンジでいいのかな。もっとドロドロ重厚で長尺で、なんてモノが必要だとも思えないし。 杉咲花、新田真剣佑、北村匠海、黒島結奈、高杉真宙の若手ながら経験豊富な5人が映画を支えて、個性的な7人(+1人)が彩るカタチで、若い人達だけで見応えのある作品世界を創造していると思ったわ。 個人的にはゴスロリ少女な古川琴音に魅かれたわ。彼女に対して「あなたは何故死にたいの?」って思ったところから映画にキモチが入っていったようなカンジで。一方、橋本環奈嬢はもう少し撮り様があったんじゃない? 「1000年に一人の美少女」の撮り方としてはあまりに雑ね。 大切にしないといけないコトを茶化すことなく描いたという点で今回は安心したわ。[映画館(邦画)] 7点(2019-02-06 19:55:58)(良:1票) 《改行有》 97. 春待つ僕ら 《ネタバレ》 冒頭から数分のうちにこのテの映画のお約束が大量に登場して(明朝体縦書きのタイトル、地域関係なく新学期に絶対桜咲いてる、登場人物の名前をバーンと文字で説明、ヘンな色とデザインの制服・・・)、ああ、コレはまたまた定型フォーマット映画が誕生しました、ってヤツね、って苦笑。 引っ込み思案なヒロインと、明るい男子たち。幾度となく見てきたパターンね。ヒロインが様々な経験をして一歩を踏み出して成長します、ってアレ。それも要は見せ方なのでしょうけど、この映画は独自の個性を見せようという気概はあまり見られないわね。あくまでフツーでいようとしてる感じ。 バスケが主題になっているのだけれど、その肝心のバスケをちゃんと描くような事はないのね。あくまで雰囲気だけ。試合シーンでいちいち試合経過の字幕入れるのだけれど、アレを入れなければならないほどにはバスケが重要な映画ではないわ。 ヒロインの作文が辛うじてアクセントになってるかなぁ? このテの映画のポイントなロケーションの魅力が殆ど無いのは大きなマイナス。 で、キャストがみ~んな高校生に見えないの。さすがに無理があるの。高校一年とか、もうさすがにないわ~、って。もうひと世代下のコ達に演じさせるべきだと思うのだけれども、そもそもが始めに俳優ありきで企画が立ち上がってるんでしょうから、最初から無理を承知って状態なのよね。 映像とか音楽とか主題歌とか演技とか、何かがハミ出してゆくことは決してない、お約束で組み立てられた映画。安定路線なのでしょうけど、そうしてるうちに、邦画のこのジャンル全体が徐々にチカラを失ってゆく気がしないでもなく。いえ、実際に魅力的にも興行的にも今や以前のようなチカラは無いわ。 このジャンルが好きなので、もうちょっと冒険して欲しいなぁ。[映画館(邦画)] 5点(2018-12-20 19:47:11)《改行有》 98. 映画 HUGっと!プリキュア♡ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ 《ネタバレ》 『プリキュア』の映画。映画をいっぱい見てきてる中でも最も敷居もハードルも高くて、これまで手が出せなかったわ。想像してみてよ、トシ食ったオカマが女児達に囲まれて一体どんな顔して見てられる? テレビの『プリキュア』は(ニチアサ総じて)これまでなんとなく映ってた的な、見てるってほど見てはいない状態ね。『プリアラ』のあきゆかにはヅカみが感じられて、あきゆか回はわりとしっかと見てたけど。 『HUGプリ』も最初はキャラがキラキラ綺麗な、あとは毎度のプリキュア程度の印象だったのだけど、えみるとルールーが出てきて、その二人がアンバランスなコンビを形成してゆくあたりから注目し始めたのね。抑圧されたプリキュアファンの小学生と敵が送り込んだスパイのアンドロイド。その二人がプリキュアになるに至って、もうのめり込むようになって。 『HUGプリ』は徹底的な自己肯定の物語。その攻めの姿勢は大人が見てびっくり。いじめや差別や固定概念を否定し、ジェンダーフリーを高らかに謳うのね。「女の子だってヒーローになれる!」がキーワードの作品の中で、主人公が言った「男の子だってお姫様になれる!」というセリフ、世の中のどれだけの男の子が救われたことか。今日の放送では遂に男の子のプリキュアが誕生して、その姿勢を更に確固たるモノにしたわ。 映画版は『HUGプリ』と初代の『ふたりはプリキュア』をメインにした作り。歴代プリキュア55人が登場!とは言っても全員が物語に絡んで大混乱、みたいなコトにはなってなくて。過去作のファンには物足りないかもしれないけれど。 オリジナルな物語にはちゃんとドラマがあってメッセージがあって、1つの作品として完結してるのね。テレビシリーズにあるような攻めの姿勢は抑え気味だけれど、新旧プリキュアの競演は感動的。 クライマックス、怒涛の55人プリキュア大競演の盛り上がりは『レディ・プレイヤー1』のクライマックスをも凌駕するわね。心で応援して(応援グッズ、大きいお友達は貰えないのよね)リアルで涙ダダ漏れ。 マシェリ(えみる)とアムール(ルールー)の出番は少なかったけど、あの美しい変身シーンを大きなスクリーンで見られて感激。ルールーのネジネタ笑えたし。 ミデンの世界の間、フルCGになるのだけれど、そこはキャラをゆらゆらと動かし過ぎな気がしたわね。リミテッドな手描きシーンに合わせちゃダメなのかな? でも、テレビシリーズと併せて、この眩しく煌びやかな世界が東映動画の魔女っ娘モノから変身ヒロインモノに連なる大きな歴史の到達点だと思うと感動もひとしお。『魔法使いサリー』から『HUGっと!プリキュア』までその歴史に立ち会えてる自分って、もしかして幸せなのかも。『プリキュア』のある世界に生まれて良かったわ。 ちなみに平日の昼間に見たので、女児より大きいお友達の方が多くて身の置きどころ無し!ってコトはなかったけど、映画終わって涙目で「プリキュアのパンフレットください」って言うのは最大のチャレンジだったわね・・・[映画館(邦画)] 9点(2018-12-02 20:27:04)(笑:1票) (良:1票) 《改行有》 99. 日日是好日 《ネタバレ》 茶道の、時間や空間や音を味わう、その贅沢さ、豊かさが伝わってくる映画。 ただお茶をいただくだけなのに、なんであんなに沢山の細かな決まりごとがあって、それをキッチリ守ってゆかなければならないの?っていう疑問に答えるだけじゃなくて、茶道の魅力、そして日本人の精神世界の魅力までをも描いてるのね。 その儀式的な空間、時間、所作は日常から離れた特別な世界。その特別な世界に身を置くことで生まれるココロの広がり。わび、さびの世界。 対比される俗世の描写が、あまりやかましくないのが良かったわ。ハッキリと線引きをしようとやたらガチャガチャさせてしまいそうなものだけど、やり過ぎてしまうと茶道が浮世離れしたモノに映っちゃうものねぇ。『真夏の夜の夢』はやかましかったケド、まあ、良しとしましょう。 黒木華がやっぱりいいのね。 つい最近の『ビブリア古書堂の事件手帖』や一昨年の『リップヴァンウィンクルの花嫁』でも独特な雰囲気を醸してたけれど、今回の役もあの流れ。はんなりした感じが魅力的で。一方で『エミアビのはじまりとはじまり』の時のような、パキパキとハッキリした役も魅力的だけどね。 でも、どうしたってこの人、樹木希林さんなしには語れないわ。 大切なところはきっちり演じつつ、役を少しだけ崩して人間味を醸すような演技、本当に上手いなぁ、って。 あらためて貴重な存在を失ってしまったんだなぁ、ってつくづく残念な気持ち。 今の世の中では、茶道の持つ贅沢な時間を過ごすことはかなりハードルの高いことかと思うけど、でも、映画を見に行くというのも実は似ている面があるのよね。ただ映画を見るだけならば、べつにスマホで配信される映像を眺めてるだけでもいいわけだから。 わざわざ出かけてお金払って決められた時間に決められた席で様々な独自のマナー、ルールに縛られながら映画を楽しむ。それはもう映画って部分だけを切り取って語れる行為じゃないでしょ? まあ、その特殊性が理解できなくて個人主義丸出しになっちゃってる人も(結構な数)いたりするのだけど、そういう人はスマホでどうぞ、ってカンジね。 家から出てスクリーンでこの映画を見る、それもまた贅沢なことなんじゃないかな。[映画館(邦画)] 8点(2018-11-20 20:02:16)(良:1票) 《改行有》 100. 人魚の眠る家 《ネタバレ》 とても考えさせる物語。 命について、脳死と心臓死について、そして自分の大切な人について。 もし自分ならばどう考えて、どう行動するのか、どう選択するのか、それは簡単には答えが見つからない問題。 で、そんなデリケートな問題を、堤幸彦監督はいつものようにガチャガチャと騒がしく、ゴテゴテと飾り立てて。すっかり気が散りまくりで落ち着いて考えさせてくれないシロモノにしてしまっているのね。 カメラワークは不必要なまでに動き、揺らぎ、クドい顔面アップが繰り返され、これ見よがしな画を重ねて。観客に思考の余地を与える気がない、いや、むしろまるでワザとそのジャマをするかのように。 アナモフィックレンズで撮ってるのだけれど、頻出するレンズフレアのためだけに使用してる感じで、左右に空間が存在しつつ頭切れアゴ切れしてる顔面アップの画は酷いモノで。本当は全編ビスタサイズでいいハズな画。 大仰な演技と高いテンションで大騒ぎな状態は、重要なシーンで更なるエスカレートを必要として映画の内側でばかり爆走状態。 雛壇飾り!鯉のぼり!誕生日!入学式!スローモーション!回想シーン! 強調してまーす!って映像の羅列にゲンナリ。 一方で重要視してるようでハンパな水の表現。冒頭の水たまりのカットの、そのハンパなこと。雨にしても効果的に配置してるのではなく、記号のような状態だし。 なるべく余計な映像や台詞を削ぎ落として、抑制してこその題材だと思うのだけど、どうも監督は、そうは考えてないみたい。 ダラダラと続いていつ終わるの?ってエピローグなんか見てもきちんと整理されていない感じで、もう少し映画をちゃんとデザインしようよ、って思ったわ。 あと、最終的に脳死は人の死、臓器移植に協力しましょう、って方向に傾いてた気がしたのだけど、それは原作がそうなのかしらねぇ?[映画館(邦画)] 4点(2018-11-18 17:29:37)《改行有》
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