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プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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【製作国 : 日本 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
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81.  デビルマン 《ネタバレ》 酷い酷いとは聞いていましたが、今回体感した酷さは前評判を軽く上回っていました。シベ超がかわいく思えるほどの駄作ぶり。本作は日本映画の黒歴史として永久に語り継がれるはずです。まず、出演者の演技が素人以下。イメージが固定されたプロの役者は敢えて避け、観客に先入観なく受け入れられる若手を抜擢するというキャスティング方法もあるにはあるのですが、本作はロクな指導もなく素人を素人のままカメラ前に立たせているため、物凄いことになっています。誕生日プレゼントをもらう時も、サタンになってしまった時も、恋人の生首を発見した時もすべて同じ表情、同じ語気。おまけに一言一言セリフを思い出しながら喋っているため、句読点がくる度に一呼吸入れるというおかしな話し方になっています。そうして役者がまったく演技をしていないことに加えて、脚本までが支離滅裂なので話がサッパリ理解不能。例えば、序盤において了は明に対して自分がサタンであることを明かすのですが、中盤においてデーモン狩りを行う人類に了が復讐しようとすると、明は了に向かって「お前、サタンだったのか?」と頓珍漢なことを言い出します。さらにラスト、ついにサタンの姿になった了に向かって、明は「お前はサタンだったのか…騙したな!」と怒り出します。この映画は「メメント」でしょうか?演出もいい加減で、昼間かと思えば次のカットは夜になったり、雨かと思えば次のカットは晴れていたりと、10億もの金をかけてエド・ウッド並の仕事を披露。人間ならざる者同士の死闘を描くにはかなりの映像テクニックが必要となるはずなのですが、この監督は役者のアクションをただカメラで追うだけなので、物凄く恥ずかしい見せ場の連続となっています。俳優達はガンカタっぽい動き、スパイダーマンっぽい動きの後に決め顔をするのですが、カメラワークやカット割り、音楽等によるフォローがないため気の毒になるほどダサイです。気の毒といえば、半デーモン状態の明の特殊メイクもえらいことになっています。予算の都合かフルCGデビルマンの登場時間は少なく、代わって役者に簡単なメイクを施しただけの半デーモン状態が多く登場するのですが、このメイクが出来損ないの世紀魔Ⅱ状態。おまけに腕を前に構えるおかしな戦闘ポーズにも脱力で、センスのない監督にマンガ映画を任せると大変なことになることがよくわかりました。[DVD(邦画)] 0点(2012-02-12 19:12:16)(良:3票)

82.  あしたのジョー(2010) 《ネタバレ》 「山P主演で『あしたのジョー』実写化」の一報を聞いた時には「日本映画界による原作レイプは来るところまで来たか」と思ったのですが、完成した作品は意外にも誠実な仕上がりとなっています。時代やキャラクターの再現度は非常に高く、なかなか見応えがあるのです。同時期に製作されたヤマトが「アレンジ」という便利な言葉を振り回してマンガ映画特有の難しい点や面倒な点から逃げ回っていたのに対し、本作はそんな困難に真正面から挑み、ある一定の成果を挙げてみせたという点で、非常に評価できます。懸案事項だった山Pにしても、彼は体も演技もきちっと作り込んできており、「アイドルだから」という甘えが一切ありません。おいしいところはすべて伊勢谷友介に譲っている点でも好感度が高く、彼の起用は失敗ではなかったと思います。ただし「映画として面白かったか?」と聞かれると、答えは「NO」です。ボリュームのある原作を2時間強に納めたため展開が駆け足にならざるをえず、ひとつひとつのエピソードが消化しきれていません。その一方で力石が死んだ後のエピローグが無駄に長く、本作は時間配分の面で完全に失敗しています。また、試合の場面では劇画の再現にこだわりすぎてアクション映画としてのテンポ作りが放棄されており、ひとつひとつの画は素晴らしくても、これを繋げたところで手に汗握るファイト場面にはなりえていません。監督も役者も期待通りの仕事はしたが、それ以上の映画には出来なかったというところでしょうか。[DVD(邦画)] 5点(2012-02-12 01:44:07)

83.  CASSHERN 私が生まれる遥か以前のアニメなのでオリジナルは未見なのですが、どんな作品であったのかの予習はばっちりしました。オリジナルには「平和=戦争をしないこと」という誤った定義付けをした戦後民主主義の矛盾を突く姿勢が根底にあって、「平和を守るためには戦わねばならないことだってあるのではないのか?」という問いを子供たちに突きつける野心的な内容となっていました。例えば、絶対的平和主義を掲げる市民達が、何の抵抗もなしに自分達の街をブライキングボスに引き渡すというエピソードがありました。戦争をしないことこそが最善であり、自分達の善意は敵にも伝わるはずだという勝手な思い込みが彼らの中にはあって、さらには戦いで命を失うリスクを冒すくらいなら隷属の身に陥った方がマシという浅ましい根性があったのですが、そんな卑屈な人間を見たブライキングボスは「このようにして守るほど平和とはありがたいものなのか」と、その姿を鼻で笑うのでした。最終的に、全市民が虐殺されてそのエピソードは幕を閉じます。。。一方、実写版の本作。140分に渡って「戦争はいけないんだ!」と主張する内容はオリジナルの正反対です。軍国日本を悪役にするという世界観からも戦後民主主義的な価値観がベースにあることは明らかなのですが、これでは戦後民主主義への疑念を出発点とするオリジナルとは水と油。キャシャーンの設定にしても、オリジナルの主人公は父の反対を押し切って自らの意思で改造されるのですが、本作では父親のエゴの被害者として扱われています。父殺し・兄弟殺しの物語は石ノ森章太郎の世界だし、本作が「新造人間キャシャーン」のリメイクである必然性は限りなく薄いと思います。映画としても雑な部分が多くて、理念的な主張をしつこいくらいに繰り返す一方で、背景の説明ができていないのでセリフが完全に浮いています。「なぜこの人がここにいるのだろうか?」と、キャラクター達の基本的な動きすら見失うほど状況説明がヘタクソで、さほど難しくないはずの物語が非常に難解に感じられます。ただし、ビジュアルの素晴らしさは本物です。たったの6億円で作られた作品とは思えないほど見応えがあります。「腐ってもオリジナリティで勝負する」という監督のガッツも感じられるため、決して嫌いな映画ではありません(最近見たヤマトの盗作ぶりがあまりに酷かったので、本作がより際立って感じられます)。[DVD(邦画)] 6点(2012-02-01 00:53:49)(良:1票)

84.  アンビリーバブル ドライな世界は「トゥモロー・ワールド」だし、夫婦愛の描写は「ファウンテン 永遠につづく愛」に似ているし、この映画はSF作品としては標準的な内容であるといえます。しかし監督はドグマ出身のヴィンターベア。彼は自分の作品がありふれたSF映画になることが許せなかったようで、シュールなイメージの大量投入を行うことで、本作を難解な芸術作品に見せようとしています。しかし監督のこの姿勢が映画を厄介なものにしていて(決して難解ではない)、正直言って私は付いていけませんでした。問題は、本筋とは無関係な設定やイメージを無秩序に氾濫させてしまったこと。前半部分は真面目に鑑賞していたのですが、「イメージは投げっぱなしで、どうやら伏線を回収する気はないらしい」ということに気付いてからは、観ているのが苦痛になるほど退屈しました。断片からストーリーを語ろうとする姿勢、真面目な顔をしてギャグを挿入してくる独特の語り口(“空飛ぶウガンダ人現象”なんてダウンタウンのコントですよ)はデビッド・リンチを相当に意識したものですが、シュールの質がリンチよりも粗いのです。リンチ作品は論理的に計算されていて、オチから逆算するとほぼすべての伏線の意味を把握できるのですが、本作には無意味な場面が多すぎます。本作は完璧に失敗作だと思います。唯一の救いはクレア・デインズを美しく撮れていたことで、同時期の「ターミネーター3」ではまったく魅力のなかった彼女が、まるで別人かのように輝いています。役者を美しく撮ることは監督の才能のひとつだと思うので、この点に関しては評価したいと思います。[DVD(吹替)] 3点(2012-01-07 14:10:48)

85.  アンノウン(2011) リーアム・ニーソンと言えば、マイケル・コリンズやオスカー・シンドラー、ロブ・ロイといった歴史上の偉人達を演じてきた正真正銘の演技派でした。その素晴らしい存在感は多くの映画人から絶賛されており、ジョージ・ルーカスはジェダイの大師匠としてニーソンの起用を切望し、マイケル・ベイは「トランスフォーマー」におけるロボット軍団のリーダーについてニーソンをイメージしてそのキャラを作り上げたと語っています。そんなニーソン、55歳を過ぎて突如B級アクションに目覚めて迷走をはじめています。スティーブン・セガール、メル・ギブソン、ハリソン・フォード等の個性をたったひとりで表現できてしまう器用さが製作側にとっては便利なようで、ここんとこは娯楽アクションへの出演が相次いでいますが、本作についてはニーソンクラスの俳優が出るべき映画ではないと断言できます。そもそもの着想がありがちだし、ディティールもボロボロ。つっこみ出すとキリがないほどマヌケな殺し屋集団には呆れてしまいました。陰謀の核心も魅力的ではなく、爆弾解除に走り出す後半に至っても緊張感を出しきれていない演出は改善の余地ありです。「96時間」で起こった化学反応がいかに偶然の産物であったかが、本作を見ればよくわかりました。[DVD(吹替)] 4点(2011-12-05 09:24:23)

86.  座頭市 THE LAST 《ネタバレ》 勝新によるオリジナルは一本も見ておらず、北野武版とハリウッド版(ルトガー・ハウアー主演・フィリップ・ノイス監督による珍作『ブラインド・フューリー』)のみ鑑賞経験ありという何ともお恥ずかしい私ですが、本作は非常に素晴らしい作品だと感じました。鑑賞前には香取慎吾主演という点に不安があったものの、竹やぶにて敵から逃れるファーストショットでその不安は払拭されました。彼は完璧に座頭市に成りきっており、殺しの世界に生きる者の凄みが全身から出ていたのです。また、市の妻タネを演じる石原さとみも、彼に負けず素晴らしい。彼女の出番はわずか5分程度であり、市とタネの関係について劇中ではほとんど説明がないのですが、石原さとみという女優の存在感のみで、タネがいかに市を変えたかが十分に伝わってきます。その他の豪華俳優陣も皆素晴らしく、邦画には演技のできる人材がこんなにも大勢いたのかと驚きました。仲代達也演じるヤクザの親分などはセリフの半分以上が意味不明だったのですが(笑)、それでも訳の分からん凄みがあったのは俳優の力量の為せる技。完璧に圧倒されました。物語も良くできていて、殺しの虚しさを知った座頭市が足を洗おうとするも、染み付いた血の匂いを落とすことができずに再び人を斬るという業にまみれた内容は見応えがありました。忍従を重ねた末に座頭市が再び剣を握る過程には時代劇ならではのカタルシスがあって観ているこちらも熱くなるのですが、そういったカタルシスを全否定するラストも、噛みしめるほどに味が出ます。尻すぼみなラストを批判する声もありますが、殺しの虚しさを訴える本作が燃えるクライマックスを迎えるわけにもいかないでしょう。殺しの世界に生きた座頭市は、呆気なくカッコ悪く野垂れ死ななければならなかったのです。市は死ぬ直前、妻を殺した犯人にして、自身に致命傷を負わせたヤクザのボンボンと対峙しますが、殺しの虚しさを知った市は安易な復讐に走らず、彼に暴力の恐ろしさを教えてその場を去ります。この時、市は一切の言葉を発しないのですが、かわりに暴力に生きた自分の末路を見せ、同時に妻を殺された暴力の被害者としての悲しみも見せることで、そのすべてを語ります。この時の鬼の形相こそ、彼が長い旅の末に得た答えなのですが、これを受け取らなかった観客は本作をつまらないと感じたかもしれません。[DVD(邦画)] 8点(2011-11-02 00:30:45)(良:1票)

87.  実録・連合赤軍 あさま山荘への道程 本作は3つのパートから構成されているのですが(連合赤軍結成までを描く序盤・のちに山岳ベース事件として知られる総括リンチを描く中盤、あさま山荘事件へと雪崩れ込む終盤)、タイトルが示す通り、あさま山荘事件そのものではなくそこに至る過程を重視することで、あの事件が非常に分かりやすくなっています。また、本作のように歴史的経過を追う作品は事実の要約に終始してつまらないものになりがちなのですが、本作は山岳ベース事件という美味しい部分を山場に持ってきたことで、映画としての面白さがグっと増しています。連合赤軍との付き合いもあった監督にとって本作は思い入れの強い企画だったようなのですが、ただ個人的な思いをぶつけるだけの映画に終わらせず、観客にうける形を追求したことで客観的な完成度も維持できています。俳優の演技も良く、森恒夫と永田洋子の恐ろしさは尋常ではありません。どこかで聞きかじってきたそれらしい理屈を大声で主張し、そんな自分の言葉に酔って周りが見えなくなる森、こういう男って確かにいます。他の女性に対する個人的な僻みや嫉妬心をいつまでも覚えていて、まっとうな理由付けができるタイミングでウサを晴らす永田、こういう女性もいます。彼らをレクター博士やジョン・ドゥのようなモンスターとして描くのではなく、ありふれた人格の延長としてその凶暴性を描いたことで、より恐ろしさが増しています。両者とも指導者には向かないタイプの人間なのですが、組織を結成した大物達が逮捕されるか逃亡したかという状況では、彼らが組織を仕切らざるをえなくなっていました。さらに、学生運動に何万人もが参加していた時代は過ぎ去り、運動では社会を変えられないことが明らかになった時代。少しでも我に返れば「俺達は一体何をやってるんだ」と自覚してしまうことが怖くて、彼らは内面世界へと固執するようになっていました。気に入らないことがあれば「革命のためだ!」と叫んで暴力をふるう、それによって自身の指導力不足と一向に成果をあげられない焦燥感を同時に紛らわせることが出来たというわけです。なんとも恐ろしい世界。しかし、組織のメンバー達も革命ごっこを止めたくないからリーダー達の蛮行に黙って従っていたというのですから、こちらもまた恐ろしい限りです。[DVD(邦画)] 8点(2011-09-23 20:05:26)(良:3票)

88.  キャタピラー みなさんおっしゃられている通り、役者の演技には圧倒されるがそれ以上のものが何もない映画。東京大空襲や原爆などと絡めようとするものの監督が意図するメッセージとドラマがまるで噛み合っておらず、映画としては成功していないと思います。[DVD(邦画)] 4点(2011-05-22 02:51:05)

89.  ブラインドネス 「ゾンビ」「トゥモロー・ワールド」「ザ・ロード」等と同じく、重要なのは舞台であって設定に大した意味のないSF作品なので細かい点に文句を付けることは野暮ってやつなのですが、そうは分かっていても本作はディティールがちょっと甘すぎるような気がします。みなさんご指摘の通り、隔離施設内で唯一視力を持つジュリアン・ムーアの行動があまりに不自然。あの施設内で彼女は神に等しい能力を持っているのですから、第3病棟のチンピラごときに好き放題させるなんてことはありえません。また政府による感染者の扱いもあまりに雑で、食糧だけを定期的に与えて「あとは感染者同士で好きにやりなさい」なんて管理はあまりに非現実的です。この辺りをうまく処理できなかったために観客の心は離れてしまい、全体的な仕上がりは悪くないにも関わらず支持を得られない作品に終わってしまっています。[DVD(吹替)] 5点(2011-05-14 21:19:24)(良:1票)

90.  私は貝になりたい(2008) 《ネタバレ》 公開時にはSMAPの起用が批判の対象とされましたが、中居君の演技はかなり良かったと思います。絶望のあまりもぬけの殻になった草彅君の演技も良く、両者ともこの企画に必要な力量は十分に発揮しています。問題なのは監督の演出が平凡だったことで、いくつもの場面で日本映画の悪いクセがドバっと出てしまっています。記号のようなオーバーアクト、「ここで感動してください」と言わんばかりに高鳴る押し付けがましい音楽、外国人俳優の安っぽい演技、監督の力量次第でどうにでもなった部分に多くのほころびが見られます。あと最悪だったのがエンドロールに流れるミスチルによるテーマ曲で、絶望のあまり愛する妻子を思うことすら面倒になってしまったという豊松のモノローグの後に「会いたい、伝えたい」という内容の歌を流すだなんて、一体どんなセンスしてるんだと唖然となりました。お話は良い、役者も良いんですから、監督ももうちょっと頑張りましょうよ。[DVD(邦画)] 4点(2011-05-09 22:30:32)

91.  ホワイトアウト(2000) 日本映画においては珍しい本格的なアクション大作ということで応援したくなる作品だったのですが、残念ながらまったく面白くありませんでした。日本映画特有のモッサリ感が作品全体を席巻し、アクション大作らしからぬ鈍重な空気が見せ場の迫力だとか展開の面白さだとかをすべて殺してしまっています。さらには、目ん玉ひんむいて大声で叫ぶことが「熱演」とされる日本映画特有の過剰演技も作品の足を引っ張っていて、予算とか技術以前の部分において、日本映画にはアクション大作をやる土壌がないということを再認識させられました。数日に渡って雪山を走り回っているにも関わらずキレイな顔の織田裕二、スノーモービルで全力疾走しようが、銃で撃たれて失神しようが化粧も髪型も乱れない松嶋菜々子の顔を見るにつけ、ガッカリ感はさらに増幅するのでした。日本映画界は、作品のために役者の顔を汚すということすら出来ないのかと。[DVD(邦画)] 3点(2011-02-27 21:07:32)(良:1票)

92.  白い刻印 《ネタバレ》 精神崩壊寸前の人物を描かせると、ポール・シュレイダーは相変わらず良い仕事をします。ニック・ノルティ演じる主人公の姿がとにかく痛々しいこと。彼はみんなと、特に娘とは仲良くやりたい、尊敬される存在になりたいと願っています。しかし幼少期に父親から酷い虐待を受けたために人格が正しく形成されず、ちょっとズレた人、身近にいると面倒くさい人になってしまいました。冒頭に描かれる娘とのハロウィンでのエピソード、彼は久しぶりに会った娘を楽しませようと張り切っていたのに、無意識のうちにルーズな部分が出てしまって娘の機嫌を損ねてしまいます(「タクシードライバー」のデート場面とよく似ています)。この時の主人公は憐れなほどにいたたまれないし、一方で「変なことに付き合わされるのは迷惑」という娘の気持ちも理解できます。このふたりの間に漂う気まずい空気、これこそがポール・シュレイダーの真骨頂、他の監督ではなかなか出せない味です。そんな主人公はある事故の真相究明に乗り出すのですが、熱くなると我を忘れるという本来からの気質の上に、親権裁判、母親の死、自分を苦しめてきた父親との同居等々のストレスから正常な判断能力を失い、妄想に取り憑かれてしまいます。「みんな俺をバカだと思っているようだが、この事件さえ解決すれば俺は一躍街のヒーローとなり、すべての問題は片付く」。大統領候補暗殺にのめり込んだトラビスの如く、彼は妄想上の事件に向けて走り出してしまうのです。その出発点が「娘から尊敬されたい」という純粋な思いであり、父親からの虐待という不可抗力から人付き合いを苦手としてしまったという根本原因を踏まえると、本作の主人公が狂気に墜ちていく様はあまりに悲惨なものでした。本作は「タクシードライバー」をより普遍的にした物語であり、もっと評価されても良い作品だと思います。[ビデオ(吹替)] 8点(2011-01-23 21:11:07)

93.  シンプル・プラン 《ネタバレ》 地味だし見せ場もないものの最初から最後まで緊張感が持続しており、最高クラスのサスペンス映画だと思います。タイトルと同じく映画の内容もシンプルそのもので謎解きや派手なドンデン返しなどなく、描かれるのはジリジリとした駆け引きのみなのですが、この装飾の無さが正解でした。ライミは本作で新境地を開いたと言われていますが、閉鎖空間で登場人物が狂気に追いやられていくという点では「死霊のはらわた」と同様であり、異なるのは舞台の規模とストーリーテリングの切り口のみ。ライミは自身の手腕で扱いきれる企画を的確に選んでいたようです。もしこれが「ユージュアル・サスペクツ」のようなミステリーに比重を置く企画や、「セブン」のような高いビジュアルセンスを要求される企画であれば、ライミは完全な駄作を作っていたことでしょう。また、役者も素晴らしい仕事をしています。オスカーにノミネートされたビリー・ボブはもちろんの熱演なのですが、そんなビリー・ボブと比べると損な役回りである主人公ハンクを演じたビル・パクストンもかなり良いです。なんせ、この映画はハンクにかかっていたのですから。大金を目の前にして普通の人の判断力が狂ってしまい、小さなほころびを修正しようとしてとった行動が次の大きな穴を作ってしまう。そんな物語では、観客はハンクの行動や感覚に納得する必要がありました。決して同情はできないが、同じ立場にいれば自分も同じ行動をとるかもしれないという感覚を抱かせる必要があったのですが、そんな役柄にあっては、「凡人」を演じさせればハリウッド一のビル・パクストンが適任でした。この人が焦り、悩む姿は、まさに大事件をひとりで抱え込まねばならなくなった小市民のそれであり、演技の説得力が違います(誉めてんだか、けなしてんだか…)。。。以上のようにほぼ完璧な映画なのですが、唯一ケチをつけるなら、ニセFBIが現れるクライマックスが作品のテーマから外れていたこと。これだけは気になりました。簡単なはずの計画が人間の欲望や疑心暗鬼によって狂っていくという物語なのですから、ここで真犯人が現れてはいけないでしょう。焦ったハンクは彼を射殺するものの後に本物のFBIであることが判明し、いよいよ誤魔化せないレベルにまで犯罪が行き着いてしまうというオチの方が主題にかなっていたと思います。[地上波(字幕)] 8点(2011-01-23 16:48:05)(良:2票)

94.  LIMIT OF LOVE 海猿 前作には比較的好意的な評価をしたのですが、続編の本作はダメでした。緊張感の欲しい時にダラダラしてしまう演出、感動させようとして上滑りするセリフ、ねちっこい演技、青春映画だった前作においてはこれらの欠点にも目をつむることができたのですが、一転してアクション大作を目指した本作においては、これらの欠点が映画の足を引っ張りまくっています。沈没までのタイムリミットを設定したにも関わらず登場人物が誰も焦っていない、ちょっと進むと休憩して人情話をはじめてしまう、挙句の果てには長い長いプロポーズ、本当にいい加減にして欲しかったです。背後には置き去りにしてきた仲間がいるのに、そんな一刻を争うタイミングで恋人にプロポーズだなんてどういう神経してるんでしょうか。そんなトンチンカンなプロポーズを聞いて感動している司令部の人間達も異常で、前作に登場した鬼教官が聞いたらブチ切れてるところでしょう。その他にも、本作は明確に指摘できる欠点が盛りだくさん。まず、冒頭の航空機事故で主人公の仙崎はトラウマを負うのですが、その苦悩がまったく表現できていません。トラウマがきっかけで仙崎は結婚を延期しようと言い出すのですが、ビヤガーデンで大騒ぎする様子からは苦悩を抱えた人間にはとても見えず、そんな描写の後で「僕は悩んでるんです」と言われても納得できません。その後にもトラウマに絡めた話がいくつか出てくるのですが、セリフで「あいつは悩んでる」と言われるだけで当の仙崎がトラウマに苦しむ表情をしていないため、まったくドラマチックではありません。次に、大塚寧々が妊婦である設定がまったく活かされていません。身重の彼女がレスキューを難航させる原因となるのがこの手の映画における定石だと思うのですが、設定だけ準備しておいしい要素を素通りしてしまった脚本には首をかしげます。バカ丸出しのテレビリポーターや、難しい顔をしてるだけの石黒賢など、余分な登場人物が多いのも本作の特徴。絞れば90分程度で終わる話を120分弱に引き延ばすために、必要のない描写、必要のないキャラクターが付加されたようにしか思えません。そして本作が犯罪的なのは、前作では魅力的だった加藤あいをウザい女にしてしまったこと。どんな場所にもフラっと現れては、「私が私が」と騒いで場の中心に立ってしまう様は呆れるばかりでした。[地上波(邦画)] 3点(2010-10-01 21:11:26)

95.  海猿 ウミザル テレビ局製作の映画は商売のうまさばかりが目立って肝心の質が伴っていないものが多く、例に漏れず本作も多くの欠点を抱えています。ラブコメの基本みたいな演出は見ていて恥ずかしくなるし、生きるか死ぬかの場面でも空気が妙にモッサリしていて緊張感に欠けます。テレビドラマみたいな安い音楽は時に場面を殺してしまっているし、ラストの安直なハッピーエンドも疑問です(口裏合わせをして事故を揉み消すことがハッピーエンドだなんて)。そもそも本作のプロットは「トップガン」と「愛を青春の旅立ち」からの借り物で、シナリオは著しくオリジナリティに欠如しています。もうちょっと工夫して、この映画ならではのものをいくつか入れるべきでした。なのですが、現場スタッフやキャスト達が精魂込めて作ったということも同時に伝わってくるため、私は本作については好感を持っています。お手軽品質の他のテレビ局制作映画とは、ちょっと毛色が違うかなと。水中撮影なんて役者にとってもスタッフにとっても相当過酷だっただろうし、海上保安庁の全面協力にしても、粘り強い交渉がなければ実現しなかったはず。よく頑張って作られているのだから、アラを探すよりも良いところを見つけてあげたくなります。。。この映画、邦画にしては役者が良いんですね。鬼教官役の藤竜也は抜群の存在感で、オスカーを受賞した「愛と青春の旅立ち」のルイス・ゴセットJrにも引けをとっていません。伊藤英明はきちんと体を作ってきていて、水中撮影における身のこなしには説得力があります。邦画において「体を張った演技」というものはあまり見かけないだけに、彼のようにアクションに向いた性格の俳優は貴重だと思います。そして素晴らしいのが加藤あいです。彼女の役柄はステレオタイプなヒロインで、並みの女優さんがやっていれば言動がハナにつくウザい女になっていたことでしょう。しかし、彼女は美人の割に性格の悪さを感じさせないという希有な個性によってこのキャラクターを観客から好まれる人物に変身させていて、彼女の起用によって本作は救われたと思います。ひとつ欲を言えば、彼女にはちゃんと広島弁をしゃべって欲しかった。広島の訓練所にひと夏しかいない海猿と地元の女の子の恋愛が本作の横軸であり、この夏が終わると彼氏は遠くへ行ってしまうという切ない恋を描くためには、彼女の役柄は方言を喋るべきでした。[地上波(邦画)] 6点(2010-09-22 21:11:56)

96.  ファイナルファンタジー 90年代にはMTV出身のクリエイターが異業種である映画業界に進出し注目を浴びましたが、今度はゲーム業界のクリエイターが映画業界に打って出る番だとして製作されたのが本作です。製作主体が本業の映画プロデューサーであり、クリエイターとしてゲーム業界出身者を起用するのならこの試みも成功したのかもしれません。しかし本作が致命的だったのは、ゲーム会社が主体となってゲームと同じ論理で映画を製作してしまったこと。キャラクター造形が浅いし、世界観も穴だらけ。もしゲームであれば、この程度の設定やドラマでも問題ありませんでした(設定が細かすぎるとゲームなど楽しんでいられないので、むしろ粗っぽくて調度良いくらい)。しかし映画にすると、ここまで雑な話では観客を納得させることはできません。。。物語を振り返ってみましょう。地球はエイリアンからの攻撃を受け、人類は絶滅寸前にまで追い込まれていた。これに対して軍部はゼウス砲と呼ばれる新兵器でエイリアンの本拠地である隕石を叩き、戦争を終結させようと考えている。一方で主人公はエイリアンに関する別の可能性を示唆する。あれは生物ではなく、生命エネルギーの残骸のようなものではないか?生物という前提で戦っていたため我々は勝てなかった。敵に対する認識をあらため、対処法を見直すべきではないのか?…話だけ聞くと面白そうなのですが、本作には根本的な問題があります。エイリアンが冒頭から「ファントム」と呼ばれているし、実体を持たず壁をも通過するその姿は、生物ではなくエネルギー体であることは誰の目にも明らか。主人公に「あれは生物じゃないのよ」と言われても、「そりゃそうだろ」としか思わないのです。そんな明らかなことを長々と説明する主人公と、この話を聞いて納得している仲間達はバカにしか見えません。本作は万事がこの調子。未知のエイリアンであるにも関わらず彼らに対して有効な銃やバリアーはすでに存在しているのですが、その経緯や理由は説明されず当たり前のものとして登場しています。SF映画をやりたければ画面に登場するアイテムと世界観には整合性が必要であることが分かっていないのです。現在の戦況も説明されないため、軍部が新兵器の使用を急ぐ理由もよくわかりません。主人公の体内にファントムが宿った経緯も不明。主人公がしばしば口にする「ガイアがなんとか」という話は理解不能。これでは映画と言えません。[DVD(吹替)] 0点(2010-09-06 17:45:13)

97.  ラスト サムライ 何と言っても合戦が物凄い。役者に徹底した稽古をつけ、500人のエキストラにも訓練を施しただけあってその迫力はケタ違いで、史上空前の合戦シーンを楽しむことが出来ます。それだけでも本作は存在価値ありでしょう。日本映画界も何年かに一度、巨費を投じた時代劇を製作するのですが、ただ大勢が走り回っているだけで迫力とは程遠いものがほとんど。その点、スペクタクルを作ることに慣れているアメリカさんは見せ場の作り方が非常に的確です。また、適度に汚しを加えた鎧のかっこよさも目を引きますが、この点でも、ピカピカのダサイ鎧を登場させる日本映画界とのセンスの違いを実感できます。。。お話については、本作の監督と脚本家は根本的な部分で大きな勘違いをしています。彼らはサムライを滅びゆく部族のようなものだと考えているのです(サムライとインディアンを同一視していることからも明らか)。そして本作が面白いのは、根本的な部分を勘違いしているにも関わらず、全体としてはそれほどおかしな出来になっていないということ。これはエドワード・ズウィックとトム・クルーズの真摯な姿勢の賜物で、日本人俳優からの指摘をきちんと作品に採り入れていったことで、作品は破滅を免れています。「意見を採り入れる」とは言うは易し行うは難しで、本作の脚本を書いたのはアメリカ人であり、いくら中立的に作っているつもりでも、無意識のうちに日本人キャラにもアメリカ的な言動をとらせてしまっていたはず。そんな脚本において日本人からの修正を受け入れていると、「そこを変えられると物語に支障が出るよ」という局面も多分に発生したことでしょう。にも関わらず彼らは日本人の意見を丁寧に拾っていったのです(ニンジャのくだりだけはどうしても譲らなかったらしいですが)。ただし監督達の勘違いが吉と出ている場面もいくつかあって、序盤のサムライ登場シーンなどはサムライを極端に神秘的で崇高なものだと考えていた監督のおかげで、目を見張るほどかっこいい場面となっています。日本人では、サムライをここまでかっこよく演出することはないでしょう。。。なお、本作についてよくある批判として、織田信長の時代から銃を扱ってきたサムライの武装が刀と弓矢だけってことはないだろというものがありますが、伝統的な武装のみで蜂起した神風連の乱が本作の舞台となる1876年に発生しており、あながち間違いとも言えないようです。[映画館(字幕)] 7点(2010-08-14 01:56:42)(良:1票)

98.  スクリーマーズ 《ネタバレ》 フィリップ・K・ディック原作映画といえば「ブレードランナー」と「トータル・リコール」の二作しか存在しなかった時代に製作され、潤沢な予算を与えられた先輩達と比較するとあまりに地味だった為に注目すらされなかった作品ですが、意外にもよくできています。核戦争により荒廃したシリウス6Bの自然風景、破壊され無人となった都市、生き残った少数の兵士達が立て篭もっている要塞など、作品の世界観を形成する舞台はしっかりと作り込まれており、予算の少なさがハンデになっていません。また、細かいところでは軍服や銃火器等もかっこよく、SF好きが注目する部分には適切に労力を割いているようです。監督は低予算専門ながら「B級」と切って捨てられない作品を放つクリスチャン・デュゲイですが、本作では彼のビジュアルセンスや、予算のやりくりなどの技術が総動員されています。世界を支配する絶望的な空気、要塞に長く立て篭もっている兵士達の焦燥感の描写は見事だし、いまいちパッとしないピーター・ウェラーが本作ではこの上なくかっこよく映っており、俳優の魅力を引き出すことにも成功しています。さらに、ホラー映画出身だけあって恐怖演出も手慣れたもので、攻撃型スクリーマーが迫ってくる描写や、潜入型スクリーマーが突如本性を現す描写のインパクトは絶大です。スクリーマーとは言え、子供に向かって銃を乱射し、火炎放射器で子供を焼き払うという衝撃的な見せ場も臆せず作っており(この描写のせいで予算が下りなかったのでしょうか?)、やるべきことはきっちりやれる男ぶりもアピール。デュゲイなくして本作なしと言い切れるほど良い仕事をしています。ただし残念だったのがラスト10分で、最後の最後に本作は極めてディックらしい展開を迎えます。潜入型スクリーマーが進化した結果、最新型のタイプ4は人間の感情に等しい感覚を持つに至ります。そしてタイプ4は破壊のために生まれた自分自身の出自を忌み嫌い、愛する人間のために戦い始めるというロイ・バッティもかくやという展開を迎えるのですが、この部分があまりに唐突で驚いてしまいました。もう少しうまく伏線を張り、丁寧に描写をすれば感動的な展開となりえただけに、この部分のぞんざいな扱いが残念で仕方ありません。[レーザーディスク(字幕)] 7点(2010-07-27 00:46:08)(良:1票)

99.  踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ! テレビシリーズ及び劇場版第一作を経てきたメンバーだけあって、前半部分の安定感は抜群。シリーズに思い入れのない私でも十分に楽しめるほどの仕上がりでした。しかし、本筋に入ってからが酷い。青島をはじめとした所轄の人間の言うことは青臭すぎるし、若い観客から支持されたくてこうした発言を放り込んだ製作陣の魂胆がバレバレとなっています。すでに権力の側に回っている監督やプロデューサーが心にもない組織批判を上っ面で考えただけなので、どうにも現実味のない空虚な主張となったのでしょう。青島ら所轄の敵となる女性管理官の描写はさらに酷いもので、ひたすらに性格が悪く、やることなすことすべてが最悪。この人物は現場の足を引っ張り、観客の怒りを買うために監督によって置かれたコマのようなものであるためか人格や個性をまったく与えられておらず、物語のキャラクターとしての体をなしていません。テレビシリーズはキャラクターの作り込みが面白かったのに、その「踊る」がここまで杜撰なことをするとは驚きです。もっと杜撰なのが犯人グループで、犯罪については素人のリストラサラリーマンが寄り集まって、各自が自由意思で行動してるだけの集団が強いわけないだろと。官僚機構たる警察組織に対抗する勢力としてリーダーのいない犯罪者集団を持ってきたアイデア自体は悪くないのですが、「なぜ彼らが強いのか」という理屈の部分が弱すぎるのです。現実的にはありえない設定に理屈付けしていかに観客を納得させるかがフィクションの勝負どころですが、この映画はその理詰めの作業を完全に放棄してしまっています。それは管理官や犯人の設定のみならず、作品全体に及ぶ欠点。殺人犯逮捕のために特殊部隊たるSATがわざわざ出動するか?挙句、数十人のSATに取り囲まれながら犯人が逃走に成功するか?たった2名を殺害した犯罪者を逮捕するためにお台場を封鎖するか?犯人を4回もニアミスで取り逃がした管理官が責任を問われないってどうよ?以上のようにちょっと考えればおかしな展開がゴロゴロしています。娯楽作なのでガチガチに理屈っぽく作る必要はありませんが、少なくとも2時間は観客を騙しておけるだけの知恵は必要だったと思います。こうした監督や脚本家の配慮とも言うべき部分が致命的に欠け、ウケる要素を適当に羅列しただけの仕上がりにしてしまったため、本作は「客を舐めた映画」として嫌われているのでしょう。[地上波(邦画)] 4点(2010-07-19 11:27:11)

100.  おくりびと 《ネタバレ》 最近の邦画にありがちなこと、①何でもセリフで説明し、表現の工夫を怠ってしまう、②結末ありきで物語が進行し、現実的にありえない極端な展開へのフォローもない、③とりあえず泣きに走れば何とかなると思っている。。。うれしいことに、本作はこのような邦画病に陥ることなく、映画らしい映画になっていました。「死」という重いテーマを丁寧に扱っているし、かと言って重苦しくなりすぎないよう笑いの要素も適度なバランスで入れてきており、監督や脚本家が映画人としての仕事をきっちりやってるなぁと感心しました。話の落とし所は予想通りでしたが、極端な泣きに走ることなく、説明過多でもなく、客を信用して作っていることが心地よかったです。象徴的なのが大悟と父親のエピソードで、普通の映画であれば、ラストのあのシーンでは父親の手紙か何かを登場させるでしょ。そして私を含め、観客は涙を絞り取られるわけです。しかし本作は、峰岸徹という役者と石ころという小道具のみで、それをやってしまった。安易に言葉には頼らなかったのです。こうした作り手の姿勢は大いに評価できます。さらに、アイドル演技の抜けない広末涼子を除いて役者も全員良かったし、本作は間違いなく「良作」の部類に入る作品だと思います。。。ここで、私の評価はあくまで「良作」止まりであり、「傑作」と呼ぶにはちょっと足りないかなという感じです。私達の死生観にも影響を与えるような鋭い視点がなかったし、結末も予定調和で、観客が思う以上のものがありませんでした。本作は映画として精巧に作られているためマイナス要素をほとんど持っていませんが、かと言って目立った加点要素も少ないかなぁという印象です。世界的な評価の高さはちょっと身の丈に合っていないような気がするのですが、外人さんにとっては、彼らが見たい美しい日本の風景が山ほど出てきたし、宗教色の薄い日本人独特の死生観を垣間見たことが面白かったのではないでしょうか。[地上波(邦画)] 6点(2010-06-05 17:35:53)(良:1票)

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