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プロフィール
コメント数 450
性別 男性
自己紹介 大阪府出身、岡山県在住、阪神・下柳と同年月日生

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【製作国 : 日本 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
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1.  淑女は何を忘れたか 誰も彼もが煙草の煙で画面を燻らし、斉藤達雄と桑野通子がトレンチコートと帽子を身に着ける。ハリウッドの30年代ギャング映画を見るかのように、なんだかやけに楽しい。桑野の斜めにかぶった帽子、決まっている。斉藤達雄が粟島すみ子をピシャリと頬を打つ、決まっている。そこへ小津のギャグセンスが、かしこに顔を出し、男と女を軽妙に描いて見せる。何気ない会話と電灯の消滅がエロスを爆発させるラストには参った。ドアの開け閉めによる斎藤と桑野の演技と本気の繰り返しのギャグ。エロスとドア、これはまさにルビッチだ。[DVD(邦画)] 10点(2006-12-12 17:52:01)

2.  マリヤのお雪 西南戦争を背景に“お雪”=山田五十鈴と“おきん”=原駒子の田舎芸者2人の女の意地と悲哀が、官軍と賊軍の対立軸の周りで細やかに滲む傑作です。官軍の前線と床下に潜む賊軍密偵、杉木立で上から下から挟まれる賊軍密偵などの上下空間の利用、全編に見られる奥行きある被写界、「じれったいね」と山田がアップになりその向こうに小さく写る官軍将官の構図など見事なショットの数々に惚れ惚れします。杉木立のシーンでは美しいピンストライプの杉が写り、この縦の線が後半になると格子戸や窓の木枠、すだれなど縦のラインごしの山田や原に引き継がれます。これは賊軍密偵の潔き最期と芸者の一本気を直線的に表現したものではないでしょうか。また銃声、襖を閉めた向こうから聞こえる会話などの画面外を意識させる音の利用、緊迫したシーンから一転小川のせせらぎや菜の花畑、雲流れる空への転調、また官軍と賊軍の対立を無益に笑い飛ばすかのような馬、豚、犬、小鳥のさえずりもいいですね。そしてなんといっても、マリヤ像のシガレットケースのショットから繋がれた山田が官軍将官の元へ現れた時の、急須やコップに仄かに光る十字、ラスト付近で官軍将官のサーベルに光る十字・・・しびれます。乗船を拒否された山田と原が縦にゆらゆら揺れる船の中からのショット、その山田と原の無言の表情は涙なくしては見られず、ラストシーンの手前と奥の無言の2人・・・「マリヤのお雪」が深深と私の奥に降り積もっていくのでありました。 [CS・衛星(字幕)] 10点(2006-02-03 13:23:53)(良:2票) 《改行有》

3.  パッチギ! 《ネタバレ》 「ゲロッパ!」を見て「パッチギ!」を敬遠していたワタシに告ぐ。アンタは馬鹿だ。そうです、こいつには感動しました。人が一人死ぬ、人が一人生まれる。アンソン軍と大西軍の対抗戦は、勝ったり負けたり、やったりやられたり。鴨川を挟んでの大乱闘は「引き分け」。この大乱闘が象徴するようにこの映画はヒキワケの映画ではないか。直接的には「イムジン河」が南北朝鮮統一の悲願、日本人と在日朝鮮人の幸福な共存を謳い上げるのですが、敷衍して、この広い世界のあらゆる対立や、この長い歴史のあらゆる事象が、勝ったり負けたりといった概念を超えたところに本質、意義、求むべきものがある、つまりはすべてヒキワケなんだと。人生の勝組や負組などとほざいている連中にはパッチギかまして一歩でも前に進もうぜ、命かけてと誓った日からすてきな想い出は生まれるのだ、とそんなことを通勤電車の中で叫びたくなる映画であります。[DVD(字幕)] 10点(2006-01-31 13:12:56)(良:4票)

4.  鴛鴦歌合戦 これを見れば紅白歌合戦などショボすぎて見られなくなってしまうほど面白い。中でもみのもんた、いやいや市川春代の甘ったれた喋り方とけっして巧くはないがどこか惹き付けられる歌声がとっても魅力的。「ちぇっ!」ではなく「ちぇ」と毒を吐く彼女の口調を真似て、その後何か不愉快なことがある度に「ちぇ」と独り言を呟くほどになってしまいました。恋敵の傘をこれでもかと破る仕草もかわいい。短期間でもアイデアと編集でこれだけ楽し過ぎる映画を仕上げるマキノさんの職人気質に拍手を、傘を持った登場人物をドリーに乗って流れるように撮り上げた宮川一夫に喝采を、そして春坊(市川春代のあだ名)に思いを寄せて、春よ来い。[DVD(字幕)] 10点(2006-01-12 13:02:11)(良:3票)

5.  桃太郎 海の神兵 この作品は日本初の長編アニメーションで、おそらく作者は「海軍省後援」の戦意高揚作品でもなんでもよくて、とにかくアニメ映画を作ることができる幸せに満たされていたのではないかな~と思います。その意味では創意高揚作品とも言えますね。作画は丁寧だし、構図、アングル、カット割は豊かだし、伏線は効いているし、歌は楽しいし。「あいうえお~、かきくけこ~、・・・」なんて見た後ずっと口をついて出てきます。桃太郎を隊長に動物を擬人化、声はすべて子どもが担当し、牧歌な雰囲気が出ていますが、リアルな兵器、後半の占領作戦は結構生々しくて、おそらくパレンバン落下傘部隊やシンガポール陥落の山下パーシバル会談を下敷きにしたと思われるシーンなど戦史を学ぶ上でも大変興味深い作品です。歴史的に意義ある作品ですが、完成度の高い当時のアニメ技術にも注目したい作品でもあります。 [CS・衛星(字幕)] 10点(2005-11-10 13:19:36)《改行有》

6.  二十四の瞳(1954) 以前勤めていた会社に小豆島出身のとんでもない性悪な女性がいて、以来小豆島と聞くだけで反射的な嫌悪感に捉われていた私を見事に解放してくれたのがこの映画。“1リットルの涙”はこの作品にこそ捧げたい。大石先生が初めて教壇で名前を呼び上げた時の子どもたち一人ひとりのクローズアップ、射抜くようなまっすぐで純な瞳が後々の画面を最後まで射抜いているようで、記念写真の子どもたちを一人ずつカメラが移動していくその瞳と重なり、タイトルに相応しい映画へと昇華しています。盲目となってしまうも、心の瞳で記念写真が見える。二十四の瞳はいつまでも大石先生の、そして子どもたちの人生に輝き続けているんですね~。また演じる役者が変わっても、本当にその子が成長したかのようなキャスティングにも驚かされます。日本シリーズのロッテに合わせたわけではありませんが、ど~んと10点。[CS・衛星(字幕)] 10点(2005-10-26 13:06:03)(良:2票)

7.  Love Letter(1995) 公開時に劇場で見て大いに岩井俊二の世界観に心酔したもんだったな~、と遠い目をしながら十年ぶりに見直しました。「花とアリス」を見た後にも同じ結論になりましたがつくづく私は岩井ワールドがたまらなく好きなんですな~。分かっているんだけど、舞う桜とか、ひぐらしの鳴き声とか、セーラー服のシルエットとか、図書室に射し込む光とか、暖色系の灯りとか・・・そして分かっているんだけどピアノとかギターとかヴァイオリンとかの音楽にやられてしまうんですな~。ガラス工房の豊川と中山のキスとか、自転車のライトに照らされる柏原と酒井の顔とかのあの雰囲気にやられてしまうんです。岩井俊二、この人はう~ん、やっぱり天才ですわ。[映画館(字幕)] 10点(2005-07-10 21:50:19)

8.  流れる オープニングの川の表情からして、曲線的な丸みのある作品であることが了解されますが、名立たる女優が見せるたたずまい、そのすべすべとした潤い・・・。この作品では一つ屋根の下に暮す女たちが、それぞれに芸者屋の行く末に身を任せています。そして「あらどうしたらのかしら」という表情で事の成行きを見つめる女優のショットがテンポよく刻まれ、まさに流れるようです。大人の振る舞いを不思議そうに見つめる女の子、いなくなったり塀の上を歩く猫のポン子ちゃん。子どもはいつしか大人になり、動物はどこまでもマイペースで世は移ろいます。川の流れのようにいくつも時代は過ぎても、そこで人は「あらどうしたのかしら」と振り返り、猫は塀の上を歩いているのでしょう。[CS・衛星(字幕)] 10点(2005-06-20 13:18:23)(良:1票)

9.  浮草 これは「うちわ」の映画。京マチ子が、若尾文子が、杉村春子が、中村鴈治郎が、道行く浴衣姿の娘が、うちわを扇ぎます。緩やかに扇いだり、裏と表をゆっくり回したり、扇ぐしぐさに感情が滲みます。カラー作品は、風呂上りの京マチ子、川口浩を誘い込む若尾文子の艶やかな“色気”を画面にのせながら、芝居小屋の楽屋裏の雑然とした臭気、蚊取り線香やラムネやアイスクリームなどの夏の芳香を、小津安二郎はうちわで扇ぐようにフィルムの向こう側に届けるのです。若尾文子を小津作品で見ることができるだけで私には幸せなフィルムですが、挿し込まれるラムネのショット(ルビッチの「結婚哲学」のコーヒーとゆで卵を思い出した)に象徴されるように、じりじりとした夏を舞台にしながらも清涼な作品なのです。[映画館(字幕)] 10点(2005-05-29 20:11:13)(良:1票)

10.  冬の日 日本独自の文化である「連句」を一句一句、内外の名だたるアニメーション作家に解釈、イマジネーションしてもらいアニメーション作品とする着想が素晴らしいです。そして30数名ものアニメーション作家の作品を、流れるように鑑賞できる贅沢には幸せを感じます。池辺さんの音楽もそれぞれの作品に合っていい感じですね~。私はけっしてアニメに造詣が深いわけではありませんが、一つ一つの作品の個性から、その作家の他作品を見てみたいという鑑賞欲が湧き上がってきます・・・特にはロシアのアレクサンドル・ペトロフさんのガラス画の繊細なタッチに強くひかれました。それにしてもアニメーションとはまさにアニマ=魂が宿ったものであることを再認識させられた次第であり、先日放送されていたドキュメント番組で見た川本喜八郎さんの人形アニメに対する情熱には敬意を表さずにはおれないのであります。[CS・衛星(字幕)] 10点(2005-05-14 23:42:14)

11.  おかあさん(1952) なんと爽やかに泣ける映画なんでしょう。長女を演じる香川京子が障子の影に隠れてニコッと顔を出す・・・これなんです。戦後のクリーニング屋一家を舞台に、家族が一人また一人と消えていき、その時はみんな障子の影に隠れたように伏せるのですが、次にはニコッと顔を出し未来を覗かせるのです。おかあさんの奮闘ぶりも仰々しくなく、戦後に生きる庶民の生活=働く・着る・食べる・寝るを淡々とユーモラスに、そして愛情豊かに綴られるショットのリズムの心地よさ。“ママの思い出”のように語られる香川京子の独白は、思い出どころではなく、ここからしっかりと生きていくという母への誓願のように聞こえました。涙でしわくちゃになった顔にはどうぞアイロンでもあてて下さい。傑作です。[CS・衛星(字幕)] 10点(2005-05-09 22:05:53)(良:3票)

12.  かっぱ六銃士 成瀬巳喜男のみならず、本年は斎藤寅次郎の生誕百年でもあります。評価の高いサイレント時代のフィルム散逸は、あな哀し・・・ですが、喜劇一直線の精神性は日本映画界の大いなる遺産であると思う私は、この節年に一本でも多く斎藤フィルムに戯れたいな~と願うわけです。さてこの映画、かっぱと人間のナンセンスコメディですが、花菱アチャコ、伴淳三郎、堺駿二、益田喜頓などの喜劇人がかっぱに扮したり人間に扮したり、座布団の枚数を競うかのような笑点的競演はほんま楽しいです。その中で私が座布団をあげたいのが堺駿二で、歌い踊りまくるインチキ宗教の神様は、マイツボにハマッてしまいました。うら若き八千草薫がかっぱに扮しラストでレビューを見せてくれるのもさすが宝塚映画ですな。寅さん映画といえば斎藤寅次郎・・・今年はそれでいきましょう![CS・衛星(字幕)] 10点(2005-04-02 11:56:19)(良:1票)

13.  しとやかな獣 このタイトルいいですね~。ある団地の一家で繰り広げられる舞台劇のような空間を会話とカメラが所狭しと行き交い交錯し、ただでさえ熱気の充満する冷房装置のない夏時間を、登場人物のギラギラした生きる欲求がムンムンと湿度を上げているにもかかわらず不快指数は高くない。出てくる人間を傍から見れば、なんちゅう連中なんや~、と顔をしかめてしまうような無味無臭の良識をあざ笑うかのように、あっけらかんと悪意なき彼ら彼女らの言動は涼しげに。高級洋酒、キャビアに託される<生きていることそれだけで素晴らしい>といった虚妄の突貫は軽やかに。踊り狂う姉弟から聞こえてくる肉体の声の生々しさは高らかに。乱れぬ足並で行進する彼ら彼女らが奏でるマーチが痛烈痛快な映画であります。ラストシーンに合掌。10点(2005-03-25 13:01:02)(良:1票)

14.  怪談(1964) とにかくため息の連続・・・、なんだこの美術セットは、なんだこの色彩美は!!幻想の小舟に揺られるように3時間うっとりと画面を眺めていました。「黒髪」の黒は「雪女」の白に反転し、白に混じる赤は「耳無芳一の話」の平家の情念燃ゆる赤に引き継がれ、「茶碗の中」の無色が全てを鎮めるように見る者を手招きする。必要最小限にして最大効果なる音響が夢幻なる画を作り上げる。は~、とにかくため息です。10点(2005-03-10 22:55:49)(良:1票)

15.  弥次喜多道中記(1938) 遠山の金さんと鼠小僧次郎吉がひょんなことから弥次さんと喜多さんになり東海道を旅するはめになる、という筋立てからして<面白そう>なこの映画は、静寂たる日本橋を鼠小僧次郎吉と追手が喧騒に包むオープニングをもって、きっと<面白い>に予感は変わるのです。ホンモノの弥次さん喜多さんを歌手の楠木繁夫とディック・ミネが演じ、そののどを存分に生かしたオペレッタでエンタティナーぶりを発揮し、ニセモノの弥次さん喜多さんを演じる片岡知恵蔵と杉狂児が旅の一座に出会ってからは、恋あり友情あり笑いありお涙ありの活劇へと突入しもはや<面白すぎる>状態に陥るのです。雄大な富士山のバックをはじめとするロケーションにセットを絡めたマキノさんの演出リズムと小国さんの発想豊かな脚本がオペレッタと揺るぎなく融合し、これこそが「エンタの神様」であると、泣き笑いで顔をクシャクシャにさせた私は、ただ呆然とそうつぶやくのみでありました。これにてレビューは一件落着~~。10点(2005-01-20 17:23:46)(良:3票)

16.  麦秋(1951) これはシンクロナイズドスイミングを見ているかのような映画です。人物の所作や会話の呼吸、そして配置。キャスト全体で一つのチームです。一人ハッパをかけている笠智衆はさながらシンクロチームのキャプテンてとこでしょうか。「ねえ~」「ねえ~」の呼応、「勇!」で動き出す兄弟、「ほんとにほんとよ」「え~」の杉村と原・・・。同じタイミングでコップを口に運ぶ原と淡島のショットから同じく口に食べ物を運ぶ菅井と東山のショットへのカットつなぎ。レストランで4人がお茶を飲むシーンは、既婚組を動かし手前と向うの2対2の構図を作り、最後に原と淡島が同時にお茶を口に運びます。それらを持って、いつの世も、子供はそんなもので、親はそんなもので、でもって家族はそんなもので、それが繰り返されて時が刻まれる悠久の営みを語ります。凧、喫茶店の席、紀子が勤めていた会社の窓から見る風景・・・。そしてたった一度の会話でタイトルにまで昇華させ、死者の存在を浮き立たせる小津さんと野田さんの脚本のセンス。時はめぐりながら死者もしっかりと生きていることを麦の揺らめきで堂々と語るラスト。技術点、芸術点、ともにハイポイントの素晴らしい作品です。10点(2004-12-12 23:50:11)(良:2票)

17.  我が家は楽し(1951) 島津保次郎門下の中村登作品。この監督は公約数的にまとめにくい作品群が並んでいますが、この作品はズバリ松竹大船調のホームドラマです。ストーリィに起伏があるのが小津作品とは違うところでしょうか。夫と妻、4人の子供。絵に描いたように理想的なそれはそれは暖かい家族。貧しい中に仲睦まじく子供たちに精一杯の愛情をそそぐ夫婦、両親の愛を受け止める子供たち・・・。非現実的に流れそうなところを役者陣の名演がぐっと引き止めています。夫婦役は笠智衆と山田五十鈴という非常に珍しい組合せですが、この二人の食堂でののろけぐあいにはまいった・・・本当の夫婦だ、こりゃあ。しかし山田五十鈴の演技の達者なこと、素晴らしいとしかいいようがないです。カメラは、静的な中にズームやパン、アップを使用し起伏のあるストーリィとうまく調和しています。構図よりも役者の素材を活かそうとしている感じでしょうか。高峰秀子さんがただじっと前を見つめるだけのショットの数々、植木鉢のショットで見せる病院から家へのカットつなぎ、隣家の物言わぬ老人(高堂国典)のショット、これらが実に多弁に展開していきます。ラスト、岸恵子さん(デビュー作だそうです)が歌うホームスイートホーム、家族がみんなで歌い出し、そのまま障子越しのシルエットになり隣家へと流れていくカメラ・・・反則や~と思いながらも、な、泣ける。ランナーが帰ってくるベースは、やっぱりホームベースなんですね~。10点(2004-12-08 00:28:13)(良:2票)

18.  小原庄助さん まあ大らか~な作品です。朝寝朝酒朝湯が大好きで村の人々から<小原庄助さん>と呼ばれるある名家の地主を、大河内傳次郎が大らか~に演じております。まったくはまり役です。戦後農地改革により土地を失った地主のペーソスとユーモア・・・実際の旧家をロケーションとして撮影しているのですが、前半の金貸しが登場するシーン、後半の競売シーンでの横に横にと動くカメラ移動でこの家の風格がよく伝わってきます。没落しても頼まれたらイヤといえない庄助さんの旦那ぶり、人のよさをエピソードを重ねて描き、その合間に見せる雨のシーンでの傘や瓦の家紋を写したショットに過去へのノスタルジックな哀愁をのぞかせます。また庄助さんがロバに乗って出かけるショットに漂うユーモラスな雰囲気・・・私はこのロバのパコパコゆら~りとした歩みがこの映画の肝だと個人的には感じています。ロバだけをとらえたショットが何度も出てきますし、最後ロバをも手離した時に、そのロバと子どもたちが去っていくのをず~っと見送る庄助さんの後姿、ここは名シーンです。清水宏さんの自然でゆるりとしたタッチが、復興活力にあふれる時代の頬をふわりとなでたような作品でありました。10点(2004-11-27 23:52:10)(良:2票)

19.  風、スローダウン 「正しい青春映画を作るんや!」、当時島田紳介さんがよくそういいながらこの映画のことを語っていました。若かりし頃、〝ハイヤング京都〟という深夜ラジオ番組で紳介さん担当の土曜日を本当によく聞いていた私は、彼のその熱さにこの映画の公開をわくわくとして待ったものです。このたび久しぶりにこの映画を見ましたが、荒削りながらも“この映画に賭けた!”といったような吉本若手を中心とした出演陣の演技、BOROのほのずっぱい曲の数々・・・特に「季節のない季節」が流れ出し、バイクレースを中心にそれぞれの青春の結末がクロスカットで描かれるラストシーンは、当時映画館で感傷に浸っていた自分が甦ってくるようで、照れ臭さを感じました。チーム監督の入川保則とレーサーの石田靖が埠頭で語るシーンをワンショットで撮ったカメラワークには映画的センスも感じさせてくれます。入川から引いて二人を捉え、歩き出した入川を追い海をバックにし、そこへ石田がまたフレームインし、そのまま海をバックに回りこみ最後には二台のバイクで二人を隠してしまう・・・いいシーンじゃないですか。今回の紳介さんの不祥事は事の真相はどうあれ、私としては彼の熱さを久々に垣間見てちょっぴり嬉しいんです・・・そんな気持ちも代弁して10点献上!10点(2004-11-10 22:12:47)(良:2票)

20.  赤西蠣太 昭和11年に作られた保存状態のよくないモノクロの時代劇で、これだけモダンでハイセンスな作品を見ることができるとは、イッツミラクル~~です。オープニングからピアノ音をバックに、雨に打たれる木→灯りの反射した地面を打つ雨→俯瞰ショットの傘二つ→伊達家家紋の瓦→字幕が入り、猫が一匹家屋へ・・・もうこれだけでこの作品の気品がうかがわれます。さっきの猫が行ったり来たりといったユーモア、テンポ、粋な会話、省略技法・・・ほぼ完璧であります。按摩師の殺害を角を曲がってから音だけで表現しているあたりは、「ライフイズビューティフル」が真似たのではないかな~と思ってしまいます。原田甲斐の登壇に、家臣がドミノ倒しのように次々と座っていく移動撮影、恋文の返事を読む赤西にインポーズされる小波といったカメラも見どころにあふれてる~。さらに片岡千恵蔵演じる、赤西と原田のコントラスト。女にまったく縁のない鈍そうな赤西、威厳あふれる勘の鋭い原田・・・この演じ分けもさすがです。終幕、メンデルスゾーンが炸裂し、クラシックと時代劇が見事に結ばれたのであります。イッツワンダフル!10点(2004-11-09 23:25:49)(良:2票)

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