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【製作国 : 日本 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
1. 夜明けのすべて おそらく、PMSやパニック障害の完治は難しいのだろう。だから、周りの人たちが (病状について) よく理解し、長い目で暖かく接してあげることが何より大切だと感じた。本作は、あくまで障害を持つ二人を主役にすえてはいますが、ある意味では、これは彼女たち二人を取り巻く会社の人々の献身の物語でもあり、そして私たち自身 (が、するべきこと) の物語でもあるのかと。 夜空には、無数の星があるから一際と輝く星があり、その輝く星が無数の星たちを照らすように、美しい星座を形成する。 星と夜空とプラネタリウムのエピソードは、本作のテーマにとても寄り添っていて、静かで抑制の効いた映画作りも正解だったように思う。[インターネット(邦画)] 7点(2025-03-03 13:23:57) 2. 陽光桜-YOKO THE CHERRY BLOSSOM- 《ネタバレ》 新種の桜作りにその生涯を捧げた、実在の農業家である高岡正明氏の映画です。本作を観るかぎりでは、かなりの変人ではあるが (失礼) 、その屈託のない人間性が人を惹きつける好人物、、そのように描かれていた。 ストーリーが「奇跡のリンゴ」によく似ているが、実はその映画で主人公のリンゴ作りを邪魔する敵対キャラとして出演していたのが、笹野高史さん。その二年後に本作のキャスティングとは、なかなか面白い巡り合わせと思う。 前半はコメディタッチですが、背景に戦争が見えてくると、映画に漂う空気と、正明氏に対する見方 (印象) も変わってくる。氏は戦争で苦い経験をしながらも、他国への敵対心を燃やすことなく、桜によって外国との友好を目指したところ、そこに深い信念を感じました。 やや、NHKの連続テレビ小説のような映画でしたが、立派な志を後世に伝えていく、、という意味では、価値のある一作と思えます。[インターネット(邦画)] 6点(2025-02-09 14:09:00) 3. ひと夏の隣人 《ネタバレ》 これを言ってしまうと元も子もないけど、千織 (山口まゆ) は、まるでカルピスのCMのように爽やか溌剌なイメージで、登校拒否中の引きこもり女子にはまるで見えない。なんかこう、、人間不信を感じさせるような、もう少し陰のある役作りがほしいところ。 最終的にその千織が復学し、隣人 (田口トモロヲ) は逮捕されて、全て一件落着、、のようには見えるけど、、彼女が女教師に行った数々の所業は立派な殺人未遂であり、この映画がそれを看過していることが、どうしても納得できない。 一方の、隣人さん。千織との交流によって過去を悔い改め、そして自首することを選んだ、、この展開を私は期待したが、普通に「お縄を頂戴」で見事にズッコケさせてくれた。 さも二人が前に進んだような終わり方だけど、この出会いによって二人が反省したり成長したようには見えないんだよなあ、、。 困ったことに。[インターネット(邦画)] 3点(2025-02-07 22:42:56) 4. PERFECT DAYS 《ネタバレ》 音楽、写真、観葉植物、、といった「趣味」。 銭湯、飲み屋、古本屋、、といった「場所」。 そして、少しのお金と、それを得るための仕事。 平山 (役所広司) の「ルーティン」は、まるで私のことのように当てはまり、だから、とても居心地良く、安心して観ていられた。 その平山が案内人となり、渋谷や下町あたりの、普段あまり気にも留めないような風景が美しく撮られていた。それは毎日同じ風景のようでいて、時間、天候、季節によって全く違う顔を魅せる。 つまり、トイレ掃除も、日々の「ルーティン」も、毎日が劇的なドラマであり、およそ退屈とはほど遠い、完璧な日々ということになるのだろうか。 ・・・PERFECT DAYS。[インターネット(邦画)] 8点(2025-01-06 23:07:02) 5. 悪人 《ネタバレ》 成り行きで、悪いことをしてしまった者。(祐一) 悪いことをしている、という自覚のない者。(増尾クン) 悪いことをしている、という自覚のある者。(ぼったくり商法のオッサン) 「誰が本当の悪人なのか?」を視聴者に考えさせる群像劇であり、出演者のほぼ全員による熱演も手伝って、たいへん観応えのある内容となっていた。 悪人の定義づけは難しいが、犯した罪を後悔しているか否か、そこが重要であると私は思っていて、そういった意味では、祐一は根っからの悪人ではなく、不運に見舞われた "被害者" のようにも見えるのが、本作の救いがあるところ。ラストカットの、祐一を再生へと導くように照らす朝日の美しさ、、そして、それに涙する彼の表情が多くを物語っていたと思う。 そもそも、被害者の佳乃 (満島ひかり) を見ると、SNSで男漁りに明け暮れて、自ら破滅していったような印象すら受ける。悪人なんて、そこら中にいる。すぐそこにもいるし、会社にも、電車の中にも、特にネット上なんてウヨウヨと潜んでる。だから、善人と「悪人」を見極めて生きていくことの大切さ (難しさ) 、、本作は被害者側や視聴者 (=第三者) の視点からも、改めて今の生き方や人間関係を見つめ直させるような、教訓的な内容にもなっていた。 話がそれるが、昔はネットで男女が出会う映画と言ったら、幸せなストーリーが多かったが、、時代が経つにつれて、まるで世情を映し出すように、荒んだ内容の映画が増えた気がする。 昔なら例えば、森田芳光監督の「(ハル)」、あれは本当に良い映画だった。たんなる偶然とは思えないが、同じく深津絵里が重要な役どころで、やはり本作と同じように、寂しい日本の片隅から、メール通信でひっそりと幸せを探していた。もしかしたら本作は「(ハル)」の姉妹編なのかもしれない。 SNSという画期的な出会いの手段は、多くの出会いを生み、そして多くの「悪人」を生む温床になるとは、あの頃は誰が予想できたであろうか?[DVD(邦画)] 8点(2024-11-27 21:20:11)(良:1票) 6. 侍タイムスリッパー 《ネタバレ》 大ヒットを嗅ぎつけての鑑賞。 何しろ「タイムスリップ」&「侍」ですからね。どう撮っても、そこそこは面白くなりそうな気がします。いやいや、実際に面白かったし、近年の時代劇コメディの中では、出色の出来だったと思えます。 しかし、私が思うに、たくさんの年配リピーターを生んだのは、高坂新左衛門、このおサムライさんの「お人柄」に尽きると思ってます。素朴で、純情で、はにかむ人。好きな娘を前にすると、ポッと赤くなる人 (笑) 最近の日本映画では絶滅危惧種のような人物であり、こちらが昭和時代の映画館にタイムスリップしてしまったのかと。きっとリピーターのみなさん、彼にまた会いたくて、映画館に戻って来てるんだな。 最後の殺陣では高坂新左衛門の勇ましさが際立ちますが、間違いなく "はにかみ屋さん" とのギャップ萌えによる効果もあったと思う (笑) 思えば、時代劇の "斬られ役" にここまでスポットを当てた映画もあまり記憶にありません。でも本作って決してそこにとどまらず、全ての端役、脇役、斬られ役、助監督、武術指導、衣装、カチンコ、、そして撮影所、、古今東西の映画 (時代劇) 制作に携わってきた全ての人や舞台への愛ある「裏方賛歌」となっていて嬉しいかぎり。[映画館(邦画)] 8点(2024-11-07 22:35:24)(良:1票) 7. 釣りバカ日誌 《ネタバレ》 本作の公開日は、1988年12月24日。つまり、「昭和」時代に公開された、唯一の「釣りバカ日誌」ですね。この時点で、長いシリーズの中でも、特別な一作であることを物語っている気がします。 シリーズを通して、大企業の社長 (スーさん) と万年窓際族の平社員 (ハマちゃん) の二人が、釣りという「趣味」によって、まるで上下関係が逆転したような姿は喜劇的であり笑えます。 ・・・でもね、この姿は本当は「普通」なんですよ。休日を返上してまで、早朝からお偉いさんや取引先の自宅までお車でお出迎えして、一日中、釣りやゴルフでゴマすり接待。そういう関係が常態化した日本の会社社会、この二人の関係が目新しいと思うこと、、むしろそれが "異常" なのかもしれません。 批判覚悟で言ってしまうと、長いシリーズのなかで、本当に良かった、と言えるのは本作だけです。もちろん、大きな理由があります。スーさんがハマちゃんの正体を知り、ハマちゃんがスーさんの正体を知ったこと。二人は驚愕し、悩み、、そして、それでもなお「釣り仲間」として今までの (対等な) 関係を続けたこと。シリーズ全てを観てはいませんが、これ以上に心打たれて感動するエピソードは、この先にはないと確信したから。 先日、西田敏行さんが逝かれました。 長い間、本当にお疲れさまでした、そして、邦画界にもたくさんありがとう。 どうかそちらでも、スーさん (三國連太郎さん) と、思う存分、釣り三昧してください。[地上波(邦画)] 8点(2024-10-18 22:22:03)(良:2票) 8. 猫は逃げた 《ネタバレ》 かわいい猫ちゃんの映画だし、あの今泉監督だし、ユルめの恋愛コメディと思っていたら・・・。その予想に反して、思い切った "濡れ場" の数々に驚かされた。 そこで、近年は世間 (映画界) を賑わせることも多い、映画監督による出演女優への性加害問題について。本作にも、まさにその騒ぎを予見するようなエピソードがあり、私は苦笑いをしながら眺めていた。自ら心当たりのある監督さんが、あえてこのようなエピソードを撮るはずもないので、そういう意味では、今泉監督はうまいこと "予防線" を張っていたわけだ。(ほめ言葉です) もう一つ、女優のラブシーンを撮るにあたり、近年は「インティマシー・コーディネーター」という職種が注目されている。それは、演出側と演者側の間に入り、間違いが起こらないよう演者の尊厳を守り演出を調整する、とされている。要するに、監督の監視役であり、女優のボディガードみたいなもん。その抜擢については監督の判断に委ねられるらしいが、今泉監督は本作でインティマシー・コーディネーターをおくことを選択し、その大役をどうやら「カンタ」にお願いしたようだ (笑) あれなら、きっと女優さんも安心するのではなかろうか。つまり、今泉監督はここでも、先手を打つように "予防線" を張っていたわけだ。(また言っちゃった) ・・・おっと、かなり話が脱線してきたので、ここまでにしておこう。 本作に登場する河川敷は、うちのすぐ近所で、私のいつものジョギングコース。映画の中の、見慣れた日常の風景に1点だけ加点。[インターネット(邦画)] 7点(2024-07-30 22:45:43)(良:1票) 9. ぜんぶ、ボクのせい 《ネタバレ》 松本まりかママは、優太クンに虐待はしていなかった。いやむしろ、愛情は少なからずあるが、自分に子育ての裁量がないことを理解していて、あえて子育てを保護施設に任せている、私にはそう映った。そういうことであれば、一緒に住んでいて育児放棄するよりは、よっぽど健全かもしれない。 ちょっと脱線したが、、本作は育児放棄を描いた社会派ドラマの体を成しつつ、優太少年の心の成長記、といった内容になっていた。 特に重要なことは、この境遇でありながら、少年が道を踏み外さなかったこと。私なら、、きっとグレてたと思う (笑) ・・・そう、この映画は、少年を非行へと走らせない。名古屋に行こうとしたら、「車」が燃やされた。次は「電車」で行こうとしたら、警察につかまった。まるで、名古屋へは行くな、と、何か見えない力が少年を引き留めているようだ。オダギリも、詩織少女も、気のいい人たちだったが、素行の良くない面もあり、少年が正しい人生に向かいたいなら、行かなくて確かに正解だったのだ。少女と少年が二人で見知らぬ地へ逃避行では、映画的にはロマンチックだけど、現実的にはそれは「非行」だから。 詩織が歌った「夢で逢えたら」は、刹那的に美しく、まさに夢のようであった。二人はあの瞬間を大切にして生きていけば、それでいいと思う。 全体的に、出来事に対して答えをハッキリと見せず、意図して視聴者に考えさせるような展開が多かった。 ママが育児放棄する理由。(さっき考察してみましたが) ウサギが死んだこと。(自然に死んだ?殺された?誰に?) 車を燃やした犯人。(本当にあの不良たち?) 象徴的に登場する「一路橋」。(ネットで検索してね) そして「ぜんぶ、ボクのせい」の意味。 最後は人生のドン底に落ちきった感じで、そういう意味では実は前向きな終わり方ですかね、、なかなか複雑な気分。[インターネット(邦画)] 7点(2024-07-22 23:36:16)(良:1票) 10. Helpless 《ネタバレ》 本作につき、健次 (浅野忠信) が着ていた、ニルヴァーナの「Nevermind」Tシャツが妙に気になりませんか? このアルバムが発売されたのは、1991年の9月。そして、本作の時代設定は、1989年の9月。・・・ はい、つ、じ、つ、ま、が、合、い、ま、せ、ん。 青山監督。これがうっかりミスならば、さすがに救いようがない。 (まさに、Helpless) しかし、あれほど "PR" しているわけだし、あの名盤の発売日を監督が知らないはずがない。(よね?) であれば、、実は、監督はニルヴァーナ「Nevermind」の "アンチ" なのか。(つまり、単なるTシャツの絵、程度の扱いとして、わざと間違えてやった) それとも、健次があのTシャツ着て登場した以降は、1991年以降の設定だったりして。(二年ほど早送りされていた) あるいは、映画は芸術性 (映像・音楽・空気感) でこそ評価されるべし、という強い自己主張の表れなのか。 まあ、、全ては私の考えすぎかもしれません (笑) こんなことは、大したことではない、あまり気にするな、ということ。(まさに、Nevermind)[インターネット(邦画)] 5点(2024-06-23 18:03:30) 11. ちょき 《ネタバレ》 まず、導入部から波多野青年 (吉沢悠) の日常を丁寧に描いており、とても好感が持てる。続いて、美容室にて常連客たちとの軽口があり、彼の人柄や人間関係もわかりやすく、実に手際が良い。 やがて、満を持してサキ (増田璃子) が登場すると、まるで「そよ風」が吹いたように、映画全体が爽やかな空気に包まれた。 その彼女が青年と二人、バイクに乗って海岸線沿いを颯爽と走り、マリーナシティを楽しみ、砂浜を歩く。それだけで視覚的には十分に楽しめるものだが、、しかし、彼女は盲目だ。バイクの疾走感と彼の背中、海のかおりと潮風とつないだ手の感触、、我々も一度は目をとじてみて、彼女の「体感」を想像してみるのもいいだろう。 神社の「絵馬」のメッセージが感動的なのは、その前段において、サキが見えない目で書道に取り組んだからである。それはつまり、伝えたい言葉を (つたなくても) 自分で書きたい、、そう思わせる下地があったからこそ。 全体的には、透明感ある青と白を基調とした、色合いのキレイな映画だったと思う。 また個人的には、なぜだか「ジョゼと虎と魚たち」を思い出す映画だった。 最後に余談だが、和歌山県産の映画に好作多し。大げさではなく、有田みかん、紀州梅干、と併せて、もはや "和歌山三大特産物" に認定したいほどだ。[インターネット(邦画)] 7点(2024-04-12 21:26:43)(良:1票) 12. ヲタクに恋は難しい 《ネタバレ》 この映画って、さも面白そうには見えます。でも実際には、高畑充希、山﨑賢人の顔芸と、佐藤二朗、斎藤工のエキセントリックな芝居と、ヲタク心をくすぐる小ネタ (演出) の数々、、そういう一発芸的な笑いを延々と羅列しているだけで、その中身はスカスカで薄っぺらい、と言わざるを得ません。 「ヲタク」について掘り下げているわけでもなく、それすらも、やはり笑いのネタとしての「ヲタク」であって。 高畑充希のミュージカルパート、そこだけは例外的に良かった。[インターネット(邦画)] 4点(2024-03-25 10:46:11) 13. 川っぺりムコリッタ 《ネタバレ》 本作はご存知、荻上直子監督。 ご飯のうまそうな映画、、そこはブレることなく継承しながらも、人の描き方は過去作品からかなり変化が見られます。例えば、「かもめ食堂」「めがね」では、登場人物たちの過去を明かさず、あえて素性をぼやかすような作りでしたが、本作の彼ら (山ちゃん、島田さん) は過去の苦悩をみなに吐露していて、実に人間味のある描き方をしています。 そして、テーマである「再生」を意識したのか、出演俳優も (常連組から) 一新されているし、「川っぺり」は監督ご自身の新たなスタートでもある、、そういう意気込みを感じさせる映画でありました。 特筆としては、「死」にまつわるエピソードの数々、、そのインパクトが大きい本作ですが、死を感じてさらに生きる意欲、つまり食欲が湧くという、紛うことなき「食」の映画であることは間違いありません。 しかし、うれしいことに監督の売りでもある "ほのぼの感" はまだ健在であり、これは鑑賞直後よりは、後からジワジワと評価が上がってきそうな予感がしてます。 さてと、、イカの塩辛、買いに行こっと (笑) →2025/1/6 追記。 再鑑賞して感じたこと。川っぺりムコリッタって、「川っぺりの向こうへ行った」とも聞こえませんか。この映画自体が、三途の川の向こうへ、死者をお見送りするお話ですかね。 あと、どうでもいいことだけど、吉岡秀隆と松山ケンイチが並んで話すと、「小雪のことを頼んだぞ」と聞こえてきそうです (笑)[インターネット(邦画)] 7点(2024-03-11 22:34:17) 14. 長い散歩 《ネタバレ》 主演は名優の緒形拳さん。 年老いても凜とした存在感は健在であり、孫のように幼い娘と歩くその姿だけでも、充分に惹きつけられるものでした。本作公開からまもなく亡くなられたので、まるで羽をつけた天使に天国へとエスコートされているように、見えなくもなかった。 親の虐待と育児放棄から子を救うために、赤の他人が連れ去ってしまう・・。犯罪的行為を犯罪的行為で阻止するわけですが、目の前で困っている子を見過ごしておけない、、こういう人徳は尊重されるべきものだと思うし、老人はうまいやり方を知らない「不器用男」そのもので、自作の覆面と竹の棒で懲らしめるお姿はなぜか笑えてしまうような部分もあった。 二人の刑事 (デカ) が登場するけど、やる気も空回りして、ちょっとドジなところ、、昔のバディもの刑事ドラマのような味わいがあってよかった。こういった事案では、警察は初動も遅く肝心な時に頼りになりません。でもそれは組織やルールとしてのことであり、彼らも、それぞれ情熱や正義感はある。そういう意図があったとは思う。 なお、今や名女優の安藤サクラさんがウェイトレスの端役にて長編映画デビュー。彼女の父であり、本作の監督でもある奥田瑛二さんによる推しの抜擢、と察します。本作のテーマである、親の「育児放棄」とは裏腹に、ここでは親の過保護をまざまざと見た気がいたします。[インターネット(邦画)] 7点(2024-03-10 13:18:48) 15. 暗いところで待ち合わせ 《ネタバレ》 2006年の映画ですか、、。あの田中麗奈ちゃんが、なっちゃんの面影を残しつつ、すっかり大人っぽくなっておりました。ストーリーは火曜サスペンス調ですが、彼女のフォトジェニックな存在によって最後まで飽きることはなかった。 映画としては、主に「家」が舞台。しかし、全盲者が一人で暮らすことにより目が離せないドラマになるし、そこにアキヒロが潜むことによりサスペンスを生む。 もう一つの舞台として駅のホームがあり、時間、目線、構図をいくつか変えることにより、やはりたくさんのドラマがありました。このあたりこそ、映像化した意義があるのではないだろうか。 そして、公園で歩き出すラストは際立って美しく、実に後味の良い終わり方となっていた。 目の見えない女と闇を抱える男が、暗いところで待ち合わせ、そして二人は明るい未来へ・・・。 観終えてみて、うまい題名だと思った。[インターネット(邦画)] 6点(2024-03-05 22:57:27)(良:1票) 16. ひゃくはち 《ネタバレ》 まず、出演者たちが確りと野球をこなしており、全く芝居に見えないことが驚愕ですが、本当に秀逸なのは、彼らのノリとか、彼らが醸し出す雰囲気そのもの。実を言いますと、私が高校在学中に、わが校の野球部が甲子園に出場しておりまして、当時のヤツらったら、まさに本作のようなヤツらだった (笑) こういう、わざとらしくない雰囲気を (正確に) 作り出せるのは、監督の手腕によるところが大きいと思います、はい。たまに合コンとかあってもさ、365日も野球漬けだからファッションなんぞ知らん、だから服装はダサいんだ、それでいい。 ところで本作、甲子園を目指す高校野球の強豪校、そのベンチ入りのはざまを彷徨う球児が二人、彼らは親友であり、いつしか最後の一枠を争うライバルへとなる・・。何だか、書いてるだけで胸が熱くなるお話でしたが、なぜか私は、弁護士を志して退部した彼のエピソードに心を (カキーン!と) 打たれました。なぜって、本作は夢見る補欠の物語ですが、「退部者」の描き方にも愛を感じたから。野球から逃げたのではなく、別の夢を追うことにした、、という、彼を敗残者にしないところに優しさを見ました。 ちなみに、「ひゃくはち」って、硬式球の縫い目と人間の煩悩と除夜の鐘、の数。 "甲子園" が持つ狂信的な求心力と、頭を丸めて来る日も来る日も (野球という) 修行に励む高校球児たちの姿。その関係はどこか宗教じみたところがあるので、なかなか奥深い題名なのかと。 最後にどうでもいいことだけど、野球少年が神社にいらっしゃると「耳をすませば」のカントリーロード、聴こえてきそうでした (笑)[インターネット(邦画)] 8点(2024-02-06 22:31:34) 17. 島にて 《ネタバレ》 山形県唯一の有人離島「飛島」と、島に住む人々の暮らしに密着したドキュメンタリー映画。 まず、上映開始直後の巨大なタコに思わずニヤリ。ちょうど、今日の晩酌のつまみにタコの唐揚げを考えていたからだ。私がスーパーで購入した真だこは130gで550円、いったいこの巨大な真だこはその何食分になるだろうか (笑) さて、本作は島民の方たちの素朴な暮らしぶりがよく伝わる内容となっていた。 映画的な出来映えとしては、場面が変わるところの挿入画に監督の光るセンスを感じさせた。 島の緊急ヘリポート。 放し飼いになった山羊。 寂れながらも生活感のにじみ出る古民家の数々。 はるか海の向こう (の本土) にそびえ立つ雄大な鳥海山・・・。それぞれ、この島ならではの風景を厳選しており、いつの間にか私は次の挿入画を心待ちするようになっていた。 本作は、島の過疎化問題への取り組み (島おこし) が大きなテーマとなっている。その事例として、UターンやIターンによる新規サービス業や、バーベキューイベントなど催しの様子も紹介されていた。しかし、とても良い取り組みであると素直に思う反面で、島おこしが大当たりして多くの人と喧騒で賑わい、まるでリゾート地のように開発される島 (の姿) もあまり想像したくない自分がいた。 手付かずの大自然。 140人が暮らす島。窓から海が一望できる教室で、たった一人の生徒にたった一人の先生。 それはそれで、この島ならではの贅沢だろうし、誇りたい文化でもあるように思えたからだ。「飛島」自身は、どう考えているのだろうか? 少し身勝手な意見になったが、、この島の古き良き文化を残しながらの、飛島と島民みなさまの繁栄を願いたい。[インターネット(邦画)] 7点(2024-01-29 23:08:08) 18. 由宇子の天秤 《ネタバレ》 インタビュイーを見つめる由宇子 (瀧内公美) の、まるで実験動物を観察する学者のような (冷たい) 眼差しが印象的。 まず、視聴者によって、映画のテーマ自体の受取り方が分かれそうな内容だ。 「罪」の重さについて。 報道することの是非や倫理観について。 正義と悪、その境界線の脆弱さ。 かいつまんで、犯した罪を後悔して苦悩する父 (光石研) 、悪意を以てそれを隠蔽しようとする由宇子。果たしてどちらの罪が重いのか、、それは天秤に乗せて量ることはできないけど、むしろこの映画は、インタビューや報道、そのどこにも映らないところにこそ「真実」は存在する、、至極当たり前のことを逆説的に語っているような気がします。 ちなみにですが、由宇子の「宇」の字が天秤 (の形) に見えませんか? はい、見えませんね (笑) でも、目に映ったこと、そこから感じたこと、それもまた人それぞれ。[インターネット(邦画)] 8点(2024-01-25 12:25:27)(良:1票) 19. そばかす 《ネタバレ》 まず、テーマである「アセクシャル」について私見です。 例えば、他に趣味がたくさんあるから、一人でいる方が気楽だから、、要するに恋愛志向はあるわけですが、優先順位で並べると「恋愛は (今は) いいかな」という考えで、何年もそのまま独りって人も大勢いると思います。これって、アセクシャルに限りなく近いけど、別にそうでもない。でも、このまま周りに (アセクシャルと) 誤認される人も多そうだし、そもそも当の本人ですら自分自身がそうであるのか、考えたこともないケースが多いのではないだろうか? 個人的には、人それぞれ、色々な恋愛思考を無理やり「型」にはめて名前をつけるの、そろそろ止めにしませんか? って思うけど。 ちょっと脱線しましたが、、本作はまさにその核心を突いたような内容となっていて、いわゆるLGBTとはまた違う曖昧で複雑な感情に戸惑う、蘇畑佳純 (そばかす) を三浦透子さんが好演してます。 恋愛に興味が湧かない、、つまり余裕があるから本人の意に反して意外とモテてしまうわけで、冒頭の合コンからお見合いまで、グリグリすり寄ってくる男たちを、そばかすさんが素っ気なくもヒラヒラと身をかわしていく様子に笑えます。全体的に、冷めた彼女を取り巻くてんやわんやが面白可笑しくて、特に真帆の存在は、そばかすが「レズでもない」ことを強調する意味で、それだけでも必要なエピソードと思えました。 この映画は着地点をどうするんだろう? って観ていたけど、私は良い終わり方であったと思えます。 アセクシャル、それはとても曖昧、時に恋愛もする、それでいいじゃん。 北村匠海クンは最後に登場して、おいしいところ全部持っていきましたね (笑) それでは、、玉田真也監督、また次作を心待ちにいたします。[インターネット(邦画)] 8点(2024-01-24 12:35:15)(良:1票) 20. 家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。 《ネタバレ》 冒頭、安田顕による二人の馴れ初めの回想にて、舞台は寿司屋になりますが、そこで親父さんが榮倉奈々の幼い頃を回想する、、という、これはいわゆる回想の回想というダブル回想ですね。回りくどくて、私が最も苦手とするヤツだ。 ところで、加賀美じゅん氏はどうやら会社員 (らしい) ですが、いったい彼は何の会社でどんなお仕事しているのか、とうとう最後までわかりません。本作は、彼の仕事と職場と同僚たちが、単なる一エピソードではなく、ストーリーの中心として大きく存在しているので (二人の馴れ初めでもある) 、そこはキチンと説明してほしかったところ。 親父さんが寿司屋、というのはわかりやすくてよかったのに。そうそう、せっかく寿司屋の娘なのに、死んだふりコスプレで寿司ネタなかったのは残念。 寿司のネタなし。そりゃあ、残念に決まってるでしょ、、。[インターネット(邦画)] 3点(2024-01-23 15:06:38)
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