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自己紹介 ハリウッドのブロックバスター映画からヨーロッパのアート映画まで何でも見ています。
「完璧な映画は存在しない」と考えているので、10点はまずないと思いますが、思い入れの強い映画ほど10点付けるかも。
映画の完成度より自分の嗜好で高得点を付けるタイプです。
目指せ1000本!

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【製作国 : 日本 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
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1.  魔法少女リリカルなのは Detonation 《ネタバレ》 TVシリーズのStrikerSを見ると、なのはが再生困難な深手を負う展開を知っていたので、 一種の不穏さは予感していたものの、案の定そうなる割には意外にも最新鋭の再生医療によって無事に夏休みを過ごせたという。 御都合主義を外しても良いような、大団円でも構わないような複雑な心境だ。 登場人物が非常に多すぎて、描き切れてない印象はなくはない。 キリエを裏切ったイリスにも事情があって、さらに裏で手を引いていた黒幕がいたという入れ子みたいな構造もらしいというか。 こうなればあとは全力全開で突っ走るだけ。 前編では敵側だったディアーチェたちも共闘し、熱い展開とバトルを繰り広げる。 戦闘中でも印象に残る台詞ばかりで(下手したらあざとさもあるが)、 挿入歌「暁の祈り」をバックにしたディア―チェ vs ユーリの戦いが一番の白眉。 今までなのはが戦う動機としてのネガティブな面があまり描かれていなかったが、 本作では誰かを救いたい気持ちと自己肯定感の低さが背中合わせなのが良かった。 自分では大したことないように思えて、大事な家族と親友と仲間がいることに初めて"自分のため"だと受け入れることができた。 まだまだ小学生というのもあるが、命に関わる過酷な宿命故に大事なことを忘れていたかもしれない。 実は映画シリーズはまだ継続中だそうだが、ここまで描かれれば綺麗に完結でも良いだろう。 丁度3部作でキリが良いし、これ以上、インフレと複雑さで空中分解してもおかしくないから。[インターネット(邦画)] 8点(2025-02-20 00:14:23)《改行有》

2.  魔法少女リリカルなのは Reflection 《ネタバレ》 魔法少女もののフォーマットに複雑なガジェットとハードSFの要素を併せ持つ無印とA'sは、 TV版も映画版もとても気に入っていた。 ただ、A's後のTVシリーズであるStrikerSにはガッカリして途中で視聴を切った経験からして新作の2部作に不安しかなかったが、 高速道路から遊園地までを舞台にインフレを振り切った熱いバトルあり、血を超えた親子愛あり、 複雑な事情を持った敵勢力の裏切りのドラマありで106分ダレることなく最後まで飽きずに見れてしまった。 (なお、TV版と映画版はパラレルワールドという設定)。 中盤からシリアス展開のつるべ打ちな分、ほのぼのとした日常シーンを序盤でしっかり描いていて、 ファンへの目配せも忘れず、リリカルなのはとしての面白さが詰め込まれていた前編だった。 後編からよりハードな展開が予想され、如何に納得のいく結末に持っていけるかに期待できそうだ。[インターネット(邦画)] 8点(2025-02-17 23:50:33)《改行有》

3.  リョーマ! The Prince of Tennis 新生劇場版テニスの王子様 《ネタバレ》 公開当時、一部の識者から「ヤバい」と言わしめた怪作をようやく見れた。 タイムスリップ、ミュージカル要素があるとは知っていたが、意外にも"普通の映画”だった。 初めてテニプリを見る人には開いた口が塞がらない凄まじさだが、 私にはもっと狂ったものを期待しただけに肩透かし感はあった。 原作漫画こそ原点で頂点ということを再確認した形だ。 CGがプレステ2並みのクオリティだなんて些細なこと。 テニスギャングやらラップバトルやら脚にラケット付けてテニスやら、アレな情報量が多すぎる。 現役時代の南次郎に見つかっても、家族共々なぜか受け入れてしまうしツッコミどころ満載。 歴史改変を始めとしたタイムパラドックスとか大丈夫?かなんて気にしない。 「だってテニプリだから」で片付けられるヤバい世界だから。 原作の最初期に登場し、終盤につれて次第に存在が透明化していったヒロインの桜乃が、 本作ではメインで活躍していたのは嬉しかった。 原作者が製作に関わっているのもあるが、『テニスの王子様』の本質に立ち返った物語になっていた。 本作には二つのバージョンが存在しており、公衆電話からの通話相手がそれぞれ違い、 己の価値観に基づいたアドバイスをリョーマに授ける(全体のストーリーに大きな変化はなし)。 クライマックスでは強さの根源を探るべく南次郎と試合するのだが、なぜか青学の先輩たちを始め、 他校の選手たちも召喚されて踊り狂うミュージカルに。 特に突然の柳生比呂士の独断場に笑ってしまった。 声優がかつて『アナと雪の女王』のハンス役の吹き替えを担当していただけあって、 わざわざこのシーンのためだけにその上手さを笑いに変えているのがズルい。 少年誌原作ながら女性ファンの心を射止め、乙女ゲームまで作り、 ドラゴンボール並みにインフレ化していくギャグバトル"テニヌ"漫画としての側面も忘れない。 老若男女、誰もが笑顔になる、それが『テニスの王子様』だ。[インターネット(邦画)] 5点(2025-02-15 23:59:20)《改行有》

4.  劇場版 テニスの王子様 英国式庭球城決戦! 10数年ぶりに視聴。 ウィンブルドン開催の世界中のジュニア選手の強豪を集めた大会で、謎の組織によって選手たちが襲われる事件が発生。 日本代表校として招かれた青学、氷帝ら他校も例外ではなく、借りを返すために一部が組織の巣窟に向かうのだった。 これ、一昔前の玩具催促アニメの設定にしか見えず、テニスの形をした格闘技が繰り広げられる。 これぞテニプリ、これを待っていたんだ!と序盤はワクワクしたが、前作に比べるとインパクトに欠ける。 技のインフレで慣れてしまったのも大きいが、メインの試合が一本調子になってしまい、87分が冗長に感じてしまった。 如何に前作の演出が斜め上に神がかって、狂気を孕んでいたのかが分かる。 原作のキメているとしか思えないぶっ飛んだ発想を超えて欲しかったし、あのテンションを続けるには60分で限界だろう。[インターネット(邦画)] 4点(2025-02-15 23:46:00)《改行有》

5.  永遠の法 The Laws of Eternity 《ネタバレ》 アマプラで配信されていたので、せっかくの機会に視聴。 エジソン、アインシュタイン、ヘレン・ケラー、ナイチンゲール… 世界中の偉人たちが集う霊界版アベンジャーズ! ロボットvs怪獣バトルもあるよ。 エル・カンターレファイト! …と言いたいところだけど、 本作の第一印象は霊界とは「ユートピアの皮を被ったディストピア」ということだ。 "○次元○○界"といったそれぞれの偉人たちの住む階層化された天国に、 あの世に行けばその人の生涯が映画になって心の中まで筒抜けで、観客から評価次第で天国か地獄に行くプライバシーの無さに、 仲間のパトリックやロベルトみたいに心の持ち方次第では一気に地獄に落とされる。 パーフェクトヒューマンな隆太と夕子と違って、彼らみたいな人間臭さに共感するのに葛藤すら許されないのか。 何の疑問も持たないまま、「神を信じない」「心は脳の作用」「信仰の自由や宗教を信じないのも自由」を否定する見方に、 現実という名の地獄に苦悩する人間にとって逃げ場所がどこにもないのだ。 そもそも何の代償も無く、精神統一だけでお手軽に霊界に行ける時点で、一種の選民思想を感じてしまう。 いつもの幸福の科学アニメらしく、様々な偉人が登場しては世界観を延々と語るだけで見ていてしんどくなる。 20年近く前のインターネット黎明期の作品なので現在の観点であーだこーだ言うつもりはないが、 清廉潔癖に描かれるエジソンやマザーテレサのクズエピソードを知ったら映画化しようとは思わないはずだ。 地獄に墜ちたニーチェの「神は死んだ」に対する隆太の答えが「地獄にいるから、あなたは間違っている」で、 神の正しさを説き、身体が光り輝いて勝利するあんまりな展開に開いた口が塞がらない。 そして唯一盛り上がるのはヒトラー側の怪獣と霊界側の巨大ロボットの対決(なおロボットの伏線は張ってない模様)。 それ以降は九次元宇宙界に至るまでのアレな挿入歌が延々と流れて眩暈がした。 とにかく、隆太と夕子が欠点のないキャラとして描かれていて、無機質で全く感情移入できないのは致命的だ。 宗教や信仰を否定するつもりはない。 ただ、形式だけだとしても、何気ない生活の中に宗教が根付いていて、それが数百年数千年かけて、 その土地の文化を、倫理観を、社会基盤を形成して、グラデーションのある世界を形作っている。 神はただそこにいるだけで良い。 本作を見ると、便乗して信者に無理強いをすることが正しいと言えるのか。 ただでさえ、現実は地獄そのもので、自ら命を絶ったらカルマによって来世はもっと苦しい思いをする、 自助努力ではどうにもならない悲惨な環境でもそれは魂の成長の過程だから頑張れ!なんて言われたら、 本当に逃げ場がないから当たって砕けるしかないじゃないか。 犯罪者に墜ちるのはともかく、たとえ何も成せず、人知れず死を迎えても、苦しみも悩みも悲しみもなく、 安らかに眠らせてほしい、静かにそっとさせてほしいのが私の願いです。[インターネット(邦画)] 1点(2025-02-08 00:03:05)《改行有》

6.  Chime 《ネタバレ》 『CURE キュア』ver.2.0 と言えば良いのか。 ある異物が気付いたら存在していて、"恐怖"という名のウイルスがじわじわ広がっていく。 45分の中編である分、ストーリー性も含めて無駄な要素が徹底的に排除され、 如何に演出力だけで恐怖を伝えるかに注力している。 爬虫類顔の吉岡睦雄が適役。 料理教室の一生徒が異常のように見えて、後の面接シーンでは自分のことばかり延々と喋っていて不気味。 いや、妻も息子も唐突なアクションを起こし、どうしてそうなったのか説明されない。 黒沢清が追求する根源的な恐怖とは、この"分からない"にあるだろうか。 『関心領域』と同様に、本作でも音響が要。 BGMがない分、包丁で肉を切る音、空調設備の異音、空き缶を潰す音、その環境音がより際立ってくる。 気付いたら何気ないことでもストレスが蓄積されて、魔が差したように防衛本能としての暴力に走る。 音に敏感で神経質である分、避けたくなるような、悪いことが起きるかもしれないという恐怖と不安に共感してしまった。 外界の物音からシャットアウトされた映画館で観たかった。[インターネット(邦画)] 7点(2025-01-31 23:42:23)《改行有》

7.  劇場版 テニスの王子様 二人のサムライ THE FIRST GAME 《ネタバレ》 ふと思い出して検索してみたら、本作が登録されていたのね。 視聴時期はテレビアニメが流行っていた当時のものになります。 原作漫画もテレビアニメも本気で見てはいけない類のものだよ。 全国大会前後からテニスの形をした"テニヌ"という格闘技を描いた能力系バトルギャグ作品です。 中盤の不二の必殺技の演出からギアが入ってきて、ますます現実離れした展開に。 特に手塚ゾーンは腹を抱えて笑いっぱなしの歴史に残るシーンだろう。 テニスの試合で豪華客船が沈没して、水中で球の打ち合い、 終いにはドラゴンボールみたいに空を飛んで、服がビリビリに破れて全裸でスーパーショット。 あれってイメージですよね?演出ですよね? そういうツッコミを入れながら見る映画です。 なお、続編の『新・テニスの王子様』になってからは、予想の斜め上をいく能力系バトルギャグ漫画になっており、 あまりの開き直りっぷりと、連載から25年経っても勢いが一向に落ちないのは凄いとしか言いようがない。[DVD(邦画)] 5点(2025-01-26 18:45:56)《改行有》

8.  逃走中 THE MOVIE 《ネタバレ》 本音を言えば、作品の新規登録なんてしたくなかった。 誰かが身代わりになって酷評して欲しかった。 公開当時、あまりのクオリティの低さで、 映画系YouTuberから格好のおもちゃにされてお祭り状態。 興行成績も348スクリーンの大規模上映の割に初登場5位、次週圏外という悲惨さ。 邦画恒例の『○○・ザ・ムービー』という題名のTV番組の映画化と聞けば、 粗製乱造のネガティブなイメージしか湧かない。 そう、見る前から地雷原以外の何物でもなく、本作はその中でもそびえ立つク○の中のク○映画だ。 手抜き、子供騙しでもヒットするだろうという観客を馬鹿にした姿勢が透けて見える。 TV番組自体はよく知らないが、セミドキュメンタリー要素により、 結果がその後のストーリーを反映させているという(ある程度の台本はあるにせよ)。 ただ、この劇場版は100%台本ありきで動いているため、 要である「逃走中」要素に臨場感が全く伝わらない。 ゲスト登場のヒカキン、クロちゃん、ガチャピンをはじめとする着ぐるみキャラが 時折画面に挿入され、バラエティのノリをそのまま映画にした姿勢に安っぽさを禁じ得ない。 後半の異空間デスゲームでは前半のロケ撮影で製作費が尽きたのか、 クライマックスをひたすら引き延ばすグダグダが延々と続く。 主人公の青年たちが一人一人脱落するも即ではなく、 これでもかと青春のぶつけ合いみたいな陳腐なドラマを引き延ばす。 もはや「逃走中」ではなく「会話中」だ。 ワイルドハンターに捕食されるグロ描写など一切なく、 量子化されて吸収されるCG演出に、振り切って観客を楽しませる気などないらしい。 全体的に友情物語が薄っぺらすぎてバラバラになった絆が一つになっていく説得力も感じられない。 女子高生と口の利けない弟の存在は要らないし、番組を乗っ取った謎の組織の詳細も投げ出したまま。 ケバケバしい衣装やら、チープなセットやら、本作の評価を決定付けさせるマズい予感しかなかった。 アイドル映画として需要はなくはないが、誰もが魅力も演技力も感じられず、 一週間も経たずに忘れ去られるだろう。 無許可撮影で近隣住民とのトラブルが発生し、 クルーが「あなたたちとは違うんです」と開き直る始末。 過去の栄光と成功体験にしがみつき、その選民主義と言わんばかりの傍若無人さが、 まともで才能のあるスタッフを流出させ、下請けに任せてばかりで番組制作能力を失い、 やがて大御所タレントのスキャンダルから始まった局ぐるみの大問題に繋がったのは当然と言える。 総務省が庇ってでも、偏向報道、質の低い手抜き番組しか作れないフジテレビに存在価値が果たしてあるのか? 最悪、倒産によりサブスクで見れなくなる可能性があるが、駆け込み需要で見るほどの価値すらない。 かつて、ドリフのお笑いやごっつええ感じ、トリビアの泉で楽しませてもらったが、 東日本大震災直後の粗製乱造の手抜きとゴリ押しとフジテレビ抗議デモで見限ることになった。 それから10数年して落ちるだけ落ちたフジテレビには何の感慨もない。 本作はフジテレビ末期を象徴する世紀の大愚作と言えよう。 実写版『デビルマン』のように歴史に残さず、存在自体を抹消したい。[インターネット(邦画)] 0点(2025-01-24 23:53:22)(良:1票) 《改行有》

9.  太陽の法 エル・カンターレへの道 《ネタバレ》 昔だったら信者でもない限り、レンタルでの視聴も困難なはずが、 今やサブスクでも見れる良い時代になったものだ。 隆法の代表的経典をアニメ化したものだけあって、 歴史番組をそのままなぞっただけのストーリー性のない代物であり、 さらに思想強めの説法が延々と続き、一体何を見せられているんだ? 如何にもなアレな映像の洪水に、映画館で観ていたら気が触れていただろう。 何度見てもついていけない。 『UFO学園の秘密』で登場した宇宙侵略者のレプタリアンは既に本作からいたのね。 隆法亡きいま、関連のアニメ作品のほとんどがサブスクで見れるとのことで、 あとは『永遠の法』と『宇宙の法 黎明編』を見るのみ。 どの作品もネタで見てるにしても時間が勿体ないと感じる。 生活していくために嫌々請け負ったアニメーターと出演声優たちに労いの1点を献上します。[インターネット(邦画)] 1点(2025-01-23 22:21:07)《改行有》

10.  シティーハンター(2024) 漫画の実写化と聞けば地雷のイメージでしかなく、それも邦画なら尚更だろう。 過去にフランス実写映画版が好評ともなれば、 その高すぎるハードルを乗り越えるためにも入念な準備を重ねたと見た。 事実、本作は懸念材料を見事払拭している。 鈴木亮平演じる冴羽獠の作り込みは圧倒的で、 コミカルな時はとことんコミカルで、シリアスな時はとことんシリアス。 どちらが本心か分からないくらいに複雑な二面性を持ったキャラクターを、 神谷明寄りの声質も肉体的なアクションも余すことなく自分のモノにしている。 フランス版に比べるとシリアス寄りで血生臭さが目立つものの、 原作への熱意もリスペクトも伝わる、"本家実写版"ならではの矜持を感じた。[インターネット(字幕)] 7点(2025-01-02 15:58:37)《改行有》

11.  AKIRA(1988) 15万枚のセル画に込められた、破壊、破壊、破壊、……そして誕生。 かつて遠い昔に見たまま、理解できないまま終わった物語に再び触れた途端、 新たな神話と繰り返されて来た歴史の環が浮上する。 モノであふれかえり、精神が荒廃し、閉塞感打破のために暴力に回帰していく。 "アキラ"という概念に振り回され、大義名分として暴走がインフレしていくカオス。 当時の時代が生み出したこの圧倒的エネルギーは現在では絶対に模倣できないだろう。 超能力のぶつかり合い、アメリカンな台詞の応酬、 緻密なディテールに裏打ちされたメカニックとサイバーパンクな世界観。 日本アニメの一つの到達点であり、先行きの見えない現代において破壊の先に何があるのか、 自分自身で答えを見つけるしかない。[インターネット(字幕)] 8点(2024-12-06 23:37:52)(良:1票) 《改行有》

12.  JUNK HEAD 《ネタバレ》 ギレルモ・デル・トロの世界観に近いものを感じる。 退廃的な廃墟の緻密なセットといい、グロテスクなクリーチャーの造形といい、 受け狙い一切なしのクリエーターが独学で本気でぶつけた情熱に、 ギレルモ本人の目に留まったのだから。 不気味で暗さを感じさせる内容ながら、 ユーモラスな登場人物にゆる~い会話の数々が上手くバランスを取っている。 生理的に拒絶しそうなのにどこか虜になりそう。 切り取られたクノコや三人組のペットの尻尾が生殖器に見えてしまい、 永遠の命と引き換えに失った生殖能力へのアンチテーゼにも見える。 生命の危機に直面したからこそ見えてくる、主人公の発する"生きている実感"があまりに皮肉だ。 3部作とのことで最終的な評価は完結編ができてから。 現段階で7点にしておきます。[インターネット(邦画)] 7点(2024-10-26 00:22:03)《改行有》

13.  カリスマ 《ネタバレ》 刑事ものの導入部分からホラー・ファンタジーを彷彿とさせる不条理劇への移行、 時折挟み込まれるシュール・コメディな演出の数々に、 ジャンルらしいジャンルが分からない唯一無二の雰囲気が醸し出されている。 カリスマという一本の木を巡り、その存在に振り回されていく人間模様。 どの勢力にも属さないアウトサイダーだった刑事がやがて狂気の中心になっていき、 「世界の法則を回復せよ」の問いに対する「ありのまま」の対応は下界にさらなる混沌を巻き起こす。 しかし、しがらみがある以上、誰もが「ありのまま」にはなれない。 それが今の現実で、狡猾な政治屋なり、口が巧い実業家なり、寂しさに付け込んでくる宗教家なり、 彼らに振り回されて疲弊してなんて滑稽なことか。 "カリスマ"とは土壌に張り巡らされた毒そのものだ。 『CURE キュア』をさらに難解にその一歩先を行く世界をラストで描いているわけだが、 "何か"に縋り付いて自由を失った普通の人と、執着を手放しありのままを受け入れた刑事、 どちらが正常でどちらが狂っているのだろうか? 一度破壊された世界に"カリスマ"が新たな秩序を形作っていく。[インターネット(邦画)] 5点(2024-10-03 22:56:47)《改行有》

14.  Cloud クラウド 《ネタバレ》 黒沢清の映画は多作故に当たり外れが非常に大きい。 本作は明らかに後者。 タイトル通り、雲のようにあやふやで掴みどころがない。 それは主人公のはっきりしない対応であり、転売で当たるかどうか分からないギャンブル要素であり、 ネットで増幅する姿の見えない悪意である。 悪びれることなくどこか他人事で、常に棒読み台詞で人の形をした空虚みたいに。 射幸心。 一山当てたいがために中毒性のある一過性の幸福を手に入れ、ひたすら視野が狭くなっていく。 主人公の関心は如何に安く仕入れた大量の商品が高く売れるかで、 物欲大好きな恋人よりも、猟友会の男が死んでも、殺人による死の危機を脱しても、 売り物が無事であるか、そして売れるかどうかしか見ていない。 それはSNSの「いいね」にそのまま当てはまる。 不特定多数の何かに依存し、四六時中ウォッチして、「いいね」が少なければ人は病んでしまう。 黒沢清ならではのダークな画作りと演出に、おおっと思わせるシーンはあった。 ところが中盤以降の廃工場のガンアクションで映画が既視感だらけの薄っぺらになってしまった。 ほぼ『蛇の道』のクライマックスのまんま。 助手にパソコンを使われたり(パスワード掛けろよ…)、主人公が攫われて殺されるかもしれないのに忍び込む恋人、 なぜか主人公に執着する狙う側の元職場の経営者と守る側の助手(どこかボーイズラブらしさがある)、 それぞれの背景がはっきりしないまま終わってしまった。 100%描き切れば良いわけではないが、この曖昧さのバランスの悪さが足を引っ張っている。 素性がバレ、恋人に裏切られ、これから巨大な組織に取り込まれるだろう主人公には深い地獄の入り口が待ち受けている。 自業自得と言えばそれまでで転売ヤーに対する目が厳しくなっている以上、 彼らに一切関わらない、ネットに依存しすぎない、真面目に働こう、という教訓が得られるくらいか。[映画館(邦画)] 5点(2024-09-27 22:58:18)《改行有》

15.  わんだふるぷりきゅあ!ざ・むーびー! ドキドキ♡ゲームの世界で大冒険! 《ネタバレ》 ネタバレ踏む前に鑑賞したが、内容が内容だけにこの手の映画は敷居が高すぎる。 恒例のシリーズ作品の映画版ともなると追加戦士が登場するが(実は本作を含め2作しか見てない)、 ただの追加戦士ならともかく、「2年連続で男子プリキュアが登場するのか」という情報が錯綜し、 界隈では意見が分かれる事態になっているからだ。 当初は「女の子だって戦いたい」というコンセプトだったが20年も続く現在において、 メインターゲットの女児による売上が少子化で減少し、 次第にリアルタイムで当時のシリーズに触れ、成人になって出戻ってきた層にシフトしている。 それが後日談だったり、舞台版のぼくプリだったりするわけだ。 そう、新陳代謝を促すために、去年はレギュラー初の男子プリキュアであるキュアウイングを発表し、 個人は個人としてそれなりに受け入れられているものの、 これが恒例になっていくことでシリーズのアイデンティティーが逸脱していくのではないかという懸念がされていた。 それで結論を言えば……出る。 ペットと飼い主の関係性がテーマであるが故に、男子ペアが登場するのである。 71分の短い上映時間の中で、詰め込むだけ詰め込んだ"お祭り映画"として頭空っぽに楽しむ内容なので、 ストーリーの整合性とか映画の深い背景はなく、歴代シリーズのクロスオーバーにワクワクして、 とにかく暴力的なまでの映像の洪水がカオスの如く押し寄せて体感するしかない。 近年の邦画でよく見られる薄っぺらなメッセージや安い感動でゴリ押ししてくるより、 映画館に見に行く人たちを第一に楽しませる姿勢において誠実だろう。 アカデミーやカンヌで賞を取るような映画ではないし、数年経てばファン以外から本作の存在を忘れ去られるかもしれないが、 短い間だけでも非日常を楽しみたいという意味ではエンターテイメントとして健全な姿だと言える。 ただ、映画館での謎の一体感みたいな、そういう異様な空気は多分忘れないだろう。 今頃、お待たせしましたと言わんばかりに追加戦士のファンアートが捗っているはずだ。[映画館(邦画)] 6点(2024-09-14 00:26:34)《改行有》

16.  映画 プリキュアオールスターズNewStage3 永遠のともだち 《ネタバレ》 偶然テレビ放送されていて鑑賞した思い出。 元になったTVシリーズと歴代プリキュアに思い入れがないと評価が決め辛いのは確かだが、 そんなストーリーの整合性なんてどうでも良いくらい、"お祭り映画"として開き直っているのが良い。 本音を言えば、横浜の街の中を敵とチェイスするシーンをもっと見たかった。 ゲストキャラの一般人の少女である坂上あゆみが一時的にキュアエコーになって、 戦いではなく対話で和解するあたりがキモだろう。 「女の子も戦いたい」という歴代のコンセプトのアンチテーゼかもしれないが、近年はバトルしないプリキュアも出てきたし、 パートナー妖精と変身アイテムの力を借りずに、ただ純粋な想いの力だけで変身しているあたり、 「女の子は誰でもプリキュアになれる」という映画のテーマを見事体現している。 (とは言え、去年から男の子もペットもレギュラーのプリキュアに変身できてしまい、時代の流れに苦笑い)。 過保護、引きこもり、といった問題を暗に含みながら、現実を一生懸命に生きることの大切さを 押し付けがましくなく描く、ファミリー映画としては及第点ではないだろうか。 余談1 劇場で中学生までの入場者にプレゼントされるミラクルライトでプリキュアを応援しようというメタ的な演出がある。 メインターゲットの女児が飽きないように考案され、シリーズ恒例になっているらしいが、 何もしなかったらバッドエンドになるんじゃないかと思った。 ある意味、応援上映の先駆け。 余談2 ちなみに20年もやっていると歴代プリキュアの年齢問題が大きく引っ掛かるが、 放送当時の時間軸から召喚されたり、社会人が全盛期の中学生の姿に一旦戻って変身するらしいです。[地上波(邦画)] 5点(2024-08-17 23:56:09)《改行有》

17.  クイール 《ネタバレ》 遠い昔見たことがあるが、無味無臭で終わった映画。 実話の映画化でありながら犬が主役の映画としては焦点が合わず中途半端さを感じる。 演技する犬の労力やストレスを考えれば仕方ないが、盲導犬の啓発だけならドキュメンタリーで十分だろう。 ファミリー層を中心に盲導犬とはどういうものかを知って貰う意味で、この言い方は野暮かもしれない。 視覚障碍者の目となり、道標として自由を制限された生き方を決められ、老いて役割を終えていく。 長きに渡って連れ添ったパートナーの飼い主からしたら代わりが利かない存在だが最期までいられない。 かつて無償の愛情を受けたパピーウォーカーの元に戻り、看取られながら生涯を終える、 その一生に切なさと儚さを感じてしまう。 雇われ仕事かもしれないが、同年の『血と骨』を撮った監督とは思えない。[地上波(邦画)] 5点(2024-08-17 23:24:08)(良:1票) 《改行有》

18.  CURE キュア 《ネタバレ》 CUREとは"解放"。 『羊たちの沈黙』『セブン』の影響は受けているだろうが、遜色のないクオリティ。 二作品と比べるとひたすら静かに長回しで進んでいくのに、どうなっていくのかという吸引力がある。 質問を質問で返す、コミュニケーションが成り立たない間宮との会話から次第に彼に取り込まれていく恐ろしさ。 日常の延長線上に突発的な殺人が起こるワンショットの破壊力。 そして精神を病んだ妻との関係で追い詰められている高部の本心もまた、 間宮に付け込まれていくきっかけを生んでしまった。 ただ、今までの加害者と違い、高部には"伝道師"としての素質があった。 間宮は後継者を探していたのだろう。 オンとオフ、どちらが本当の自分なのか? それどころか自分は誰なのか? 自分が守ってきたものは何だったのか? その自我が崩れたとき、高部は全てを放り投げ出したように"空っぽ"になった。 二度描かれるファミレスのシーン。 一度は残した料理を、二度目はきれいに平らげ清々しい表情になっている。 タバコの火を合図にウェイトレスが惨劇を引き起こすことを予見して映画は終わる。 一見、良い顔をした優しい善人だとしても心の中に常にわだかまりを抱えている。 その親切が誰にも伝わらない、見返りが感じられないものだと分かったら… 人はどこまでも孤独で、利己的で、誰かと関わる社会が存在する以上、そこから逃れられない。 エンドロールのピアノがその世界への諦観のように思えた。[インターネット(邦画)] 8点(2024-08-17 02:17:54)《改行有》

19.  回路 《ネタバレ》 インターネット黎明期だからこそできた映画だろう。 膜に覆われたような不透明感が、ノストラダムスの予言が外れて先の見えない閉塞感が、 大海より広大なインターネット空間とリンクしている。 どこかで誰かと繋がりたい孤独な人たちが次々と開かずの間に吸い寄せられ犠牲になっていく。 だが、霊界は既に死者であふれており、現世で黒い染み=地縛霊として永遠に留まらなければならない絶望が待っている。 そして終盤のポストアポカリプスは、もはやホラーとしてはスケールが大きすぎるが、 ありきたりなホラーからどこまで解体できるか挑戦しているように感じた。 工場からの飛び降り、音で脅かすことに頼らない湿気をまとった不気味な演出は非凡なことは認めるが、 主演男優の棒読みが恐怖を半減させていて、せっかくの題材が勿体ないと感じた。 「行けるところまで行く」。 人として生きていく限り、誰かと繋がりたい。 孤独とコミュニケーションを屈折した角度で撮った視点は『CURE キュア』と一続きなのかもしれない。[インターネット(邦画)] 5点(2024-08-17 01:40:13)《改行有》

20.  劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:Re: 《ネタバレ》 テレビアニメ8話分を92分という荒業でまとめた前編とは一転して、 残りの4話分を描いた後編はそこまで駆け足でもなく、日常パートをじっくり描いてから、 クライマックスの学園会の演奏を際立たせる構成を取っている。 結束バンドのメンバーそれぞれの欠点を補いつつ学園祭の演奏を成功させ、 キラキラしたギターヒーローになった大団円で終わるわけでもなく、 いつものライブハウスで演奏してバイトする、ただの日常に戻っていく。 どこか客観的で、どこか醒めている、前編とは違う空気を感じる。 テレビ版のラストを見たとき、ひとりは一つの殻を破ったと解釈できるが、 新規カットであるその先の幼少期のシーンにどこか不安を覚える。 "ぼっち"とさえ呼ばれていなかったあの頃みたいに戻ってしまうのではないかという不安。 成功譚をコミカルに描いた妄想が強ければ強いほどに。 映画としてはなかなか楽しめる作品であるけれど、78分でそこまで思い切った編集があるわけでもなく、 一本の映画として2時間半で一気に描いて欲しかった気持ちはある。 ただ、日常4コマギャグマンガから独立した"青春の翳り"を何倍も増幅させたのはアニメ版ならでは。[映画館(邦画)] 7点(2024-08-10 00:33:01)《改行有》

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