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プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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【製作国 : スペイン 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
評価順12
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1.  ボーン・アルティメイタム 《ネタバレ》 観客を飽きさせないよう派手なアクションをやればやるほど「んなアホな」のスパイラルに陥る作品が多い中、本作は見せ場の連続なのにバカっぽくなく、そこにリアリティを感じさせる作りとなっています。特に素晴らしいのがロンドン駅での追っかけで、追っ手の配置や視界を先読みしながら対象を的確にナビゲートする様はあまり見たことのない珍しい見せ場。ボーンはただの強い殺し屋ではなく、状況判断やとっさの決断力にも長けた人間であることをちゃんと画で見せてきているのです。「陰謀のセオリー」「ロング・キス・グッドナイト」等、記憶を失った政府の殺し屋映画はいくつもあり、ボーンシリーズもネタ的にはありふれた作品なのですが、そんな中で新しさを発揮しているのは、世界を股にかけるエージェントに必要であろう知性を描いているためでしょう。目の前の危機を腕っぷしで乗り切るかつての主人公達とは違い、二手先三手先を読んで行動し、衝突はなるべく避けるという「当たり前」のことをきっちりやっているのです。またボーンが相手とするCIAも同様で、きちんとした官僚機構として描かれているので、悪役としての存在感を発揮しています。「CIAは巨大な官僚組織である」のは当たり前なのですが、これまでのアクション映画は見事なまでにこのおいしい部分をスルーし、その結果ボスと手下数人が勝手に暴走して主人公に倒されるという、何ともこじんまりとした組織となり下がっていました。そこにきて本シリーズは、個人の通話でも自由に盗聴できるハイテク機器を操り、世界中即座にエージェントを送りこむ豊かなネットワークを持ち、警察機構に指示を出すこともできる強大な権限を持った組織として描いています。そこに従事する人々も魅力的で、その切れる頭で出世したと思われるパメラ、現場の叩きあげで汚れ仕事をしているうちに感情も麻痺してしまったアボット、組織のためなら何でもやってしまう出世の鬼ヴォーゼンら、「官僚組織にいそうな人々」の熱いやりとりも見ごたえ十分です。賛否の分かれる細切れアクションについてですが、画面も話も「リアルに見えること」を意識した本作においては、その必要性があったように思います。アクションの中にリアリティを感じさせたい場合、「仮に現場に居合わせればこのように見えるだろう」という雰囲気を作り出せる手ぶれ映像や細切れの編集は、やはり威力を発揮しているのです。[映画館(字幕)] 9点(2008-08-26 02:26:24)(良:4票)

2.  アレクサンドリア 《ネタバレ》 拡大期にあったキリスト教が、現在のイスラム国やタリバンの如く多神教の文化や建造物を破壊しまくるという、かなり衝撃的な内容となっています。黎明期にローマ帝国より迫害を受けた歴史はしばしば語られるものの、一定の権威を獲得した後に従前の文化の破壊者となっていたという歴史はよく知らなかっただけに、本作の内容には驚かされました。 また、キリスト教の不寛容を描いた本作がカトリック国のスペインで製作されたという点も驚きなのですが、少しでも不備があれば文句がつきそうなセンシティブな題材にあって、監督のアレハンドロ・アメナーバルは文句のつけようのないほど徹底した完成度でこれに対応しており、作り手の気迫が画面ごしにも伝わってきました。CGに頼らず巨大なオープンセットを建設するという本物志向ぶり、モブシーンのド迫力など、歴史スペクタクルとして申し分のない仕上がりとなっているのです。 内容についてもどちらか一方の勢力を悪役に仕立て上げるのではなく、従前のローマ社会に大きな歪みがあって、社会システムからこぼれ落ちた弱者の受け皿としてキリスト教が拡大したという歴史がきちんと描かれています。基本的には人格者として扱われている主人公・ヒュパティアですら無意識のうちに差別的な言葉を使うという描写もきちんと挿入されており、歴史を多面的に描いて観客に問題提起しようとする姿勢も好印象でした。 問題点といえば、ヒュパティアがあまりに常人離れしていて、私を含めた一般の観客にとっては感情移入が難しいということでしょうか。信仰心はないものの、形式上はキリスト教に入信して批判をうまくかわしながら新旧文化の融和を図ろうとする弟子のオレステスと比較すると、敵対者にわざわざ攻撃材料を与えるかような言動をとるヒュパティアはうまくないなぁと思うし、その頑なさは、キリスト教側の強硬派・キュリロスと変わらないものではないかとの印象を受けました。[DVD(吹替)] 8点(2016-01-26 16:21:14)(良:1票) 《改行有》

3.  インポッシブル 友人との約束をしても、事前に決めておくのはおおまかな時間と到着駅のみ。現地に着いてから携帯で連絡すれば出会えるさという動き方が身に染み付いてしまった我々ですが、いざ通信手段がなくなった時に、自分は大事な人を探し出せるのかということを想像すると、何とも恐ろしい気分にさせられます。本作が優れているのは、そうした多くの人々が共感できる切り口を映画の中心部分に持ってきて、これをやりきったこと。日本人ならともかく、世界中のほとんどの観客にとって津波とはマイナーな災害であるだけに、その恐怖を疑似体験させるために日常的な不安を関連付けたことは、適切なアプローチだったと言えます。。。 本作が2作目となる監督の手腕も絶好調。大災害の悲惨さ、極限状態での感動的なエピソード、主人公家族が出会えるか出会えないかというスリリングな展開など、あらゆる演出を外していません。さらには、津波に襲われる場面では大迫力の見せ場まで作り上げており、とんだ大型監督が出現したものだとぶったまげてしまいました。こんな才能をハリウッドが放っておくはずがなく、『ワールド・ウォー・Z』の続編の監督に選ばれたようですが、あの不抜けた『ワールド~』をどこまで本気のゾンビディザスターに変えるのか、その手腕には大いに期待しています。[DVD(吹替)] 8点(2014-10-01 00:15:45)(良:1票) 《改行有》

4.  プリズン211 暴動が発生した刑務所に取り残されてしまった看守のサバイバルが描かれるサスペンス映画かと思いきや、思いも寄らぬ方向に話が転がっていくというサプライズに満ちた作品。よくよく考えればトンデモ展開ではあるのですが、キャラ造形がかなりしっかりしているので上映時間中は要らん疑問を抱くことなく見ていられるし、後半パートではサスペンスではなく友情ドラマへと映画の主軸が移っていくため、一粒で二度おいしい男気映画にもなっています。映画の印象とは事前の期待と実際の内容とのバランスで決まるものですが、B級丸出しのDVDジャケットからこれだけしっかりとした本編が飛び出せば、たいていの方は満足できるのではないでしょうか。[DVD(吹替)] 8点(2014-09-21 19:31:15)

5.  戦場カメラマン 真実の証明 原題の”Triage”とは『選別』を意味するフランス語で、戦争や大災害が発生した場合にどの負傷者を優先的に治療するのか、どの患者を救急搬送するのかといった優先順位を決めることを指します。序盤の舞台であるクルドの戦場では、まさにこのTriageが克明に描かれます。医師が命の選別を行い、ある命を救うために別の命を切り捨てるという非情な現実。ヨーロッパ映画である本作には『プライベート・ライアン』や『ブラックホーク・ダウン』のようなインパクトある見せ場はありませんが、”Triage”というテーマを見つけてきたことで戦場の恐るべき一側面を描き出すことに成功しています。重傷を負った主人公が生かされるか殺されるかの瀬戸際に立たされるなどサスペンス要素も巧みに盛り込まれており、この監督さんの手腕には感心させられました。。。 主人公が命からがら帰国して以降は映画が中弛みするのですが、精神科医であるクリストファー・リーが登場すると突如として面白くなります。彼の含蓄ある発言は非常に興味深いし、クリストファー・リーの奥行ある演技からも目が離せなくなります。そして終盤に待っている大仕掛け。脚本に仕込まれたこのひと捻りが非常に効果的で、テーマを浮き立たせることに成功しています。日本では劇場公開されず、レンタル屋でも目立たない場所に置かれている本作ですが、見逃すには惜しい良作です。[DVD(字幕)] 8点(2012-08-01 00:30:41)《改行有》

6.  グレート・ウォリアーズ/欲望の剣 《ネタバレ》 奪われたお姫様を王子様が救い出す物語。そんな古典的な題材であっても、バーホーベンの手にかかるとグログロバイオレンスに早変わりします。「中世なんてメルヘンの世界じゃなかったんだぜ!」という御大の熱い主張がビンビン伝わってくる120分。毎度のことながら、この強烈な作家性には敬意を覚えます。 誘拐されたお姫様は古城に幽閉(無傷で)…なんてことが現実にあるわけなくて、本作のお姫様は容赦なく輪姦されます。そのお姫様もお姫様で、貞操を守ろうと必死で抵抗するのかと思いきや、賊の首領に積極的に接近し、身の安全を確保しようとします。これを悪女の振る舞いと見ることもできますが、お姫様のメンタリティなんてそんなものでしょう。彼女達には自由恋愛などなく、家が決めた相手であれば、どんなにキモかろうが、おっさんだろうが、そこに嫁ぐしかない運命にありました。本作のシチュエーションにおいては、アグネスもまた最も高く売れる相手に対してわが身を売った。それだけなのです。こうした、本作の突き詰められたリアリティには感心します。 描写はグロの極みをいきます。頭をカチ割られた尼さんがおっぱい(ついでに陰毛も)丸出しでもんどりうったり、王子様とお姫様が腐乱死体の下で永遠の愛を誓い合ったり、王女様が輪姦される場面では、腰の動きに合わせて少年が太鼓をトコトコ叩くといういやらしい演出が入ったりと、いちいち神経を逆撫でするバーホーベンの過剰演出は、史上最高レベルに達しています。 さらに、その上をいくほど過激なのが、極限状態で露わになる人間性の醜さで、当初は美男美女だった王子様とお姫様の人相がどんどん悪くなっていきます。偶然起こったことを手前勝手に解釈し、悪事を正当化するという信仰の問題点や、その信仰を自分の目的のために利用する人間が現れるなど、本作の指摘は多岐に及び、かつ、深いです。 そんな業にまみれた物語でありながらも、主要登場人物は一人も死なず、それぞれがあるべき場所へ戻っていくというラストには妙な爽快感がありましたが、これには、続く『ロボコップ』にも通じるバーホーベンの人生哲学を感じました。『ロボコップ』では数人の悪党が成敗されただけで、オムニ社という巨悪はほぼ無傷で生き残ったし、マーフィの人権問題も有耶無耶にされたまま終わりました。結局のところ、物事は解決しないまま終わるのだということがバーホーベンの人生観のようです。[ブルーレイ(字幕)] 8点(2004-07-14 16:35:20)《改行有》

7.  マシニスト 《ネタバレ》 脳内オチ系の話であることは冒頭から察しが付くのですが、監督もそこを隠すつもりはなく、観客にあらゆる点を疑ってかかられることを想定して全体が組み立てられています。オチを隠そう隠そうとして失敗する作品が多い中で、本作はある程度の割り切りのもとで作られているため、作り手と観客との間での温度感の差ができていません。これは見事な判断だったと思います。 虚構と現実の混ぜ方がよく、観客の先読みをうまく利用して仕掛けを作っています。例えば、主人公を取り巻く女性たちの扱い。本作には2人の女性が登場しますが、この手の作品を見慣れている観客ほど、主人公と二人っきりでの登場場面しかないスティービーを妄想の産物であると疑うのではないでしょうか。ネタが割れてしまうと、スティービーは物語の真相とは無関係なデコイであることが分かるのですが、そこにジェニファー・ジェイソン・リーをキャスティングし、ヌードまで披露させて何かしら重要なキャラクターであると錯覚させた辺りの騙し方はうまいものだと思いました。 細かい点では、何気ない日用品に現実と妄想との間の橋渡しの役割をさせている点も興味深く感じました。例えば冷蔵庫。あれだけガリガリに痩せたトレバーはこの1年まともな食事をとっていないことが推測され、ならばあの冷蔵庫は1年間ほとんど開かれていないはず。トレバーの生活において冷蔵庫はタイムカプセルのような役割を果たしており、その中には彼の妄想の源流となる何かが詰まっていると見せかけているのです。観客の深層心理においても、しばらく開けていない冷蔵庫には底知れない気味の悪さがあります。外食が続いた後で久しぶりに冷蔵庫を開くとカビの生えたごはんですよが出てくるような経験は誰もが身に覚えがあるだけに、開けてみたいけど、中にはとんでもなく怖い過去の遺物が眠っていそうで開けたくない、できればフタをしたままにしておきたいというトレバーの心境とうまくシンクロさせています。 そんなミスディレクションの一方で、妄想に入る前には主人公がうたた寝をしかける描写を毎回きちんと入れており、演出面でインチキをしていない点が好印象でした。物語は一定の法則性の中で描かれており、すべてのピースがきちんと嵌るように作られています。監督は自分自身に制約をかけて「なんでもアリ」を許していないため、見終わった後にも納得感の高い作品となっているのです。[DVD(吹替)] 7点(2016-01-26 16:22:12)(良:1票) 《改行有》

8.  グリーン・ゾーン 《ネタバレ》 さすがは21世紀のジョン・フランケンハイマーことポール・グリーングラスだけあって、余裕で水準を超えるアクション大作に仕上がっています。細かいカットを積み重ねて構成される銃撃戦は臨場感に溢れているし、現場を走る兵士の視点と、それを上空からナビゲートするヘリの視点を交互につなぎ、観客に対して戦況をスムーズに伝えるという神業的な編集には脱帽するしかありません。「ボーン・スプレマシー」の大ヒット以降は手ブレ映像や細かいカット割を採り入れるアクション映画が急増しましたが、やはり本家が一番です。また、硬派な題材をエンターテイメントとして味付けするという稀有な才能も全開。オリバー・ストーン作品のような重厚なテーマがアクション大作の皮を被っていて、それらが水と油にならずにうまく共存しているのです。こんな器用な芸当ができる監督は他に見当たりません。。。と、監督は相変わらず良い仕事をしているのですが、奇跡的な傑作だったジェイソン・ボーンシリーズと比較すると脚本が弱く、そのことが、ジェイソン・ボーンの何倍も野心的な本作を傑作にしていない原因となっています。まず、主人公が陰謀に挑むこととなる動機付けが弱く、一方で「イラクを良くしたい」と願って積極的な行動をとるイラク人フレディの扱いが軽く、キャラクターの動かし方がうまくありません。また、秘密主義のCIAが現場指揮官に過ぎない主人公に接触する理由も弱いし、陰謀の黒幕となるパウンドストーンはどう見ても小物で、映画のスケールを背負って立つ悪役になっていません。アメリカ政府のウソを無検証でタレ流したマスコミへの批判もなされるのですが、ここで登場するジャーナリストも本筋とうまく絡んでおらず、いてもいなくても大差ない存在となっています。そして大きなミスだったのが、「大量破壊兵器はウソだった」という話を謎解きの中心に持って来てしまったこと。2003年当時ならともかく、現在では全人類が知っている話です。今さら「なんと、イラクは大量破壊兵器を持っていなかったんですよ!」と言われても、見ているこちらとしては「そりゃそうだろ」としか思えません。陰謀の背景などはさっさと暴露してしまって、イラク軍元将軍の口封じをしようとする米軍上層部と、それを阻止しようとする主人公との攻防を核とした方が盛り上がったのではないでしょうか。[ブルーレイ(吹替)] 7点(2010-10-28 20:06:38)(良:1票)

9.  キングダム・オブ・ヘブン リドリー・スコットってのは、良くも悪くも映像派ですね。まず良い点は、とにかくすべてのシーンが美しく、どのカットをとっても絵画のように綺麗。そしてあのとんでもない戦闘シーンのド迫力。確かに「ロード・オブ・ザ・リング」のヘルム峡谷戦やミナスティリス戦とかぶるわけですが、こちらの方がレベルが上ですね。CGで作ったのが丸出しの「ロード~」に対して、こちらは生身の迫力に満ちてました。2時間丸々戦闘シーンという「ブラックホーク・ダウン」を作り上げた手腕はダテじゃないのです。一方悪い点は、ストーリーテリングに明確な弱点がいくつかあることです。人間関係が複雑な割に拾い切れていない要素が多く、バリアンが亡くした妻子のことは後のストーリーにまったく影響を与えず、彼の複雑な親子関係も実にアッサリとしたものです。(「グラディエーター」もそうでしたが)主人公のロマンスに深みはなく、むしろ蛇足になってるような気もしました。「人を救うはずの宗教を巡って異教徒と殺し合う」という矛盾をテーマにしている割に登場人物たちに葛藤はなく、悪者は最後まで悪者、善人は最後まで善人でした。このテーマであれば、誰もが自分なりの大儀や正義を目指しているがゆえに戦いが起こるという話にした方がよかったと思います。と言うか、いまだに続いている宗教戦争の本質ってそれですよね。それぞれが正義だと信じているからこそ相手に対して不寛容となり、争いが起こってしまうと。しかしギーという明確な悪役を作ってしまったがために、話からその深みが奪われたように思います。これでギーも善人で、自分なりの信念を貫く人間であれば、戦争というものの本質をえぐった傑作になっていたかもしれません。それにしてもリーアム・ニーアムとジェレミー・アイアンズはかっこよすぎですね。「これぞナイト」という風格に満ちており、彼らが映ってる時には完全に画面を独占してましたよ。演技ができる俳優さんはいろいろいますけど、彼らのように風格を出せる俳優さんってのはあまりいませんね。あとどうでもいいことですけど、劇中「13ウォーリアーズ」で聞いたことのある曲が流れたので「まさかパクったんか」って気になってたんですけど、エンドロールにはちゃんと「バルハラ ジェリー・ゴールドスミス作曲」ってクレジットされてました。他の映画の音楽をまんま使うってこともあるんですね。ちょっと驚きました。[映画館(字幕)] 7点(2005-06-05 00:27:47)

10.  ザ・ガンマン 《ネタバレ》 これまで娯楽作への出演を避けてきたショーン・ペンが、突如ジョエル・シルヴァー製作、ピエール・モレル監督というコッテコテのアクション映画に主演。しかも自分で脚本を書くほどの熱の入れようということで、事前にはどんな映画になっているのか見当もつかなかったのですが、雰囲気だけはメチャクチャによくできています。『ブラッド・ダイヤモンド』や『ザ・バンク』のような重い社会性を帯びた娯楽作であり、本編はB級アクションらしからぬ重苦しい雰囲気に覆われています。また、ひとつひとつの仕草にまでこだわり抜いたと思われるほどアクションシーンにおける主人公の行動は洗練されており、きちんとプロの傭兵に見えるだけの説得力があります。それを演じるショーン・ペンの肉体改造は凄まじく、体脂肪率の低そうなバッキバキの肉体を披露。『エクスペンダブルズ』の面々ですらここまで体を作ってきている者はおらず、御歳55歳にしてアクション俳優としてのキャリアが開花しそうな勢いなのです。 ただし、お話しの方がまるで面白くありません。主人公は8年前の暗殺事件を発端とした国際的な陰謀に巻き込まれて命を狙われ、その黒幕を探し始めるのですが、イマイチ観客の興味を引くような流れを作り出せていません。怪しい奴を捕えると、こちらが聞きもしていないことまでベラベラと話してくれる。本編はこれを何度か繰り返すのみなので、面白いわけがありませんね。ラストの展開などは噴飯もので、主人公が持つ証拠動画と、敵に囚われたヒロインを交換しようという取引がなされるのですが、いくらでもコピーできる動画ファイルをわざわざ受け取りに現れる敵一味が間抜けにしか見えません。また、犯罪を首謀した行為の隠蔽がそもそもの目的だったにも関わらず、追い込まれたラスボスは公衆の面前で銃を振り回して女性を追い駆け回すというアホな行動をとり始める始末であり、仮に過去の犯罪行為を隠蔽できたとしても、新たな罪状で逮捕されるだろと呆れてしまいました。 主人公とヒロインの悲しい恋愛や悪人との三角関係、主人公の重病設定も本筋のサスペンスを盛り上げることには貢献しておらず、無駄な枝葉になってしまっています。ショーン・ペンを含めてオスカー受賞者が3人もいるにも関わらず高いレベルでの演技合戦を楽しむことはできず、専ら不自然な展開を誤魔化すために彼らの演技力が費消されているという点も残念でした。[ブルーレイ(字幕)] 6点(2016-08-10 20:36:34)《改行有》

11.  私が、生きる肌 《ネタバレ》 【注意!激しくネタバレしています】 『顔のない眼』や『ムカデ人間』みたいなマッドサイエンティストものなのだろうと思ってみていたら、中盤で衝撃のドンデン返し。今までみなさんが女性だと思っていたこのお方、元は男性だったんですよ!これにはさすがに驚かされました。また、このドンデンを単なる一発芸に終わらせず、ドラマ上の重要なパーツとしても機能させているのですから、さすがは巨匠の仕事であると感じました。。。 中身にあるのは殺してやりたいほどの憎悪の対象であるが、その外見が変われば、その人間を受け入れ、愛することができるのか?なかなか興味深い問いかけだと思います。若い方であれば「そんなわけないじゃん」とアッサリ切り捨ててしまうかもしれませんが、長年連れ添った伴侶を失われたような方ならば、また別の回答をなさるかもしれません。人間は他人をどうやって識別し、何に対して愛情を注いでいるのか?非常に難しい命題を、本作はきわめて分かりやすい形で提示しています。。。 また、男性が女性へと改造され、これからは女性として生きていけと命令される。被験者となった男は、当然の如く当惑し、反発しますが、これは性同一性障害を患う人々の苦悩を、一般人にもわかる形で表現したものだと考えられます。荒唐無稽な設定でありながら物語にリアリティを感じさせたのは、こうした人間ドラマとしての完成度が極めて高かったためだろうと思います。。。 以上、ドラマとしての完成度は評価するのですが、展開が少々遅いことと、全体のアクセントとなる目の醒めるような場面がひとつも見当たらなかったことから、鑑賞中に何度か集中力が途切れてしまったという点は残念でした。もっとコンパクトにまとめれば、見違えるような傑作になったかもしれません。[DVD(吹替)] 6点(2014-01-02 02:15:42)《改行有》

12.  ワイルド・スピード/EURO MISSION アクション映画史上に残る傑作だった前作を越えるべく本作も特盛状態なのですが、老舗アクションシリーズの宿命か、本作は盛りすぎの域に達しており、お話も見せ場もインフレ状態となっています。。。 前作からのヴィン・ディーゼル、ドウェイン・ジョンソンに加え、ミシェル・ロドリゲスの復活に、女性格闘家ジーナ・カラーノ、『ザ・レイド』のジョー・タスリムの新規参戦と、本作ではアクションの出来る人間が随所に配置されているのですが、まずこれがマズかった。いろんな人がいろんな場所で戦っていて、話が分散しているのです。このことがアクション映画に必要な求心力を奪う原因となっているし、さらには物語をムダにややこしくしています。本作の観客は頭空っぽにして楽しめるアクション映画を観に来ているのだから、ムダに頭を使わせる話にすべきではありませんでした。。。 さらに、アクションも懲り過ぎ、やりすぎです。確かに前作もやりすぎではありましたが、あちらはシンプルなカーチェイスをやたらド派手にやったもので、第一作から続く『ワイルド・スピード』のDNAは確かに継承されていました。一方本作は、戦車を走らせたり輸送機を落としたりと、カーチェイスに付随する破壊ではなく、破壊そのものが見せ場となっており、前作までとはかなり毛色の違うアクションとなっています。もはや『ワイルド・スピード』の新作ではなく『トリプルX3』だと考えた方がしっくり来るほどであり、『ダイ・ハード』や『リーサル・ウェポン』同様、シリーズを重ねる毎にアイデンティティを失っていくというアクション映画の典型的な衰退サイクルに入ったように見受けられます。また、カーチェイス以外の要素が加わったことで見せ場は複雑になり、さらにはカット割の異常な速さとも相まって、目の前で何が起こっているのかよく分からないという状況にも陥っています。本作の方向性は、今一度見直すべきだと思います。。。 以上、本編には少なからず不満があったのですが、それでもラスト1分には大興奮させられました。『ワイルド・スピード』シリーズは我々の想像を越えた領域を目指しているのではないかという、そんな熱い期待感を抱かせるほどのインパクト。今回は不十分な出来でしたが、これはこれ。次回も絶対観ます![映画館(字幕)] 6点(2013-07-06 23:20:18)(良:3票) 《改行有》

13.  ウォーカー(1987) 《ネタバレ》 伝記映画と見せかけつつ、自国の利益のためであれば他国の主権を平気で侵害している80年代当時のアメリカを批判した作品。オリバー・ストーン監督の『サルバドル/遥かなる日々』と同一のテーマを扱った作品ではあるものの、『サルバドル』が強力なドラマ性によって時代に囚われない価値を有していることと比較すると、本作は今見ると古臭さを感じさせられました。 主人公・ウィリアム・ウォーカーは代表的なフィリバスターであり、作品は彼が私設の兵を用いて勝手にソノラ共和国を作った後に国軍により鎮圧される場面から始まります。独特の真っ赤な血糊やスローモーションの使い方がサム・ペキンパーっぽいなぁと思っていたのですが、後から調べてみるとアレックス・コックスはペキンパーの大ファンということでした。 その後、本国で裁判にかけられるも無罪となり、また彼の履歴に注目した富豪から、運河が通ると噂されているニカラグアの政権を取ってこいとの話を受けるウォーカー。彼を引き留めていた聾唖の婚約者もコレラで亡くなり、ウォーカーは再び中米に戻ることを決意します。この通り、序盤の段階でまぁいろいろ起こるわけですが、ここまでドラマ性ゼロ。監督は話を前に進めることのみに専念しており、ウォーカーの心情に触れようという気はビタ一文ないわけです。ソノラ共和国の挫折からウォーカーはどうやって立ち直ったのか、また婚約者の言葉を彼はどう消化していたのか、そもそも彼はなぜ他国への軍事介入をライフワークとしているのかなど気になる点は多いのですが、そこにまったく触れてくれないのでドラマに入り込めませんでした。 中盤以降もウォーカーの心情にはほぼ触れられず総合的には失敗した映画だと思うのですが、他方で司祭のような黒服を着て、銃撃戦の最中でも気にせず大通りのド真ん中をズンズン歩いていくウォーカーの、自殺願望があるんだか神の使いか何かだと勘違いしてんだかよく分からない姿などは妙に印象に残りました。どちらにしてもウォーカーはイっちゃってる人ではあるのですが、これにエド・ハリスが実によくはまっています。常にまっすぐ前を向いてはいるものの、どこに焦点を合わせているのかはよく分からない視線の動かし方や、ほとんど中身のないことを自信タップリに話す様など、信念を持ったキ〇ガイ演技がなかなか堂に入っているのです。 傀儡政権がどうも言うことを聞かなくなったということでこれを処刑して自ら大統領に就任したり、部下の反対にも耳を貸さずに奴隷制を復活させたりと問題行動が目立つようになったことから、ウォーカーは最終的にアメリカ政府からも富豪からも切られるのですが、ウォーカーの人となりは冒頭から何ひとつ変わってはおらず、問題が大きくなるまではこんな異常者を重宝していたアメリカの政府や財界こそがおかしかったのではないかという結論で映画は締めくくられます。時代劇でありながらリムジンやヘリを登場させる場面には、これが現在のアメリカの物語であることを示すための演出意図があったとのことですが、これらの演出がどうにもあざとすぎるように感じました。また、制作時点から30年以上経った今となると、これらのメッセージも古臭く感じられました。[DVD(字幕)] 5点(2018-05-08 19:02:51)《改行有》

14.  ジェイソン・ボーン 《ネタバレ》 IMAXにて鑑賞。 『アルティメイタム』で綺麗に終わった話をどうやって再開するのかという点が鑑賞前の不安だったのですが、案の定、完成した作品は語るべき物語を見失って迷走していました。ジェイソン・ボーンのアイデンティティを探る話はまだまだ続くのですが、シリーズ継続のために捻り出された後付けの設定があまりにご都合主義的なので醒めてしまいます。『24』もそうでしたが、エージェントもので実は父親も陰謀に関わっていたという話を出し始めると、いよいよお終いですね。 国家が作り出した殺し屋というものを見たことがある人はほとんどいないため果たしてそれがリアルなのかどうかは分からないが、少なくとも「殺し屋とは、きっとこんな感じなんだろう」と思わせるような説得力ある描写こそがボーン3部作の魅力でした。地下鉄を脱線させろとか、大爆発を起こせとか言ってくるスタジオと喧嘩しながら堅実な作風を守ったダグ・リーマンが本シリーズの基本路線を作り、ポール・グリーングラスがそのスタイルを継承発展させることでボーン3部作は本物志向のアクション映画の太祖となったのですが、一転して本作は『ボーン・アイデンティティ』が登場する前の単純な爆破アクションに先祖返りしています。観客を楽しませたいというサービス精神は理解できるものの、ド派手になりすぎた見せ場にはもはや生身の人間が闘っているという感覚が残っておらず、見せ場が派手になればなるほど手に汗握らなくなるというアクション映画の典型的な衰退サイクルに入っています。クライマックスのカーチェイスなどは『ワイルド・スピード』の新作のような有様であり、本シリーズのファンが求める見せ場からはかけ離れています。そういえば、『ボーン・レガシー』続編の監督にジャスティン・リンが起用されたという話が一時期ありましたが、結果的にボツとなったその企画で考えられていたカーチェイスがそのまんま本作に流用されたのではないか。そんな邪推を生むほど、クライマックスのカーチェイスはシリーズ全体の雰囲気から浮いていました。 見せ場のインフレとともにジェイソン・ボーンはさらに超人化。パンチ一発で格闘家を気絶させるほどの格闘スキルに、プロのレーサーをも超える反射神経とドライビングテクニック、スリのような小手先の技に、電気配線に細工をする技術と、もはや何屋さんなのか分からないほどの多才ぶりを披露します。殺し屋みたいな潰しの利かない職業なんかにはつかず、何かひとつでも特技を極めていればその道で食えていたんじゃないかと思うほどの器用さであり、その多才ぶりゆえに殺し屋というそもそもの設定が没却してしまっています。これもやりすぎでした。 また、敵エージェントとの関係も変質しています。悪いのはラングレーのオフィスにいる上層部であり、現場のエージェントはただその指示に従っているのみ。命を狙われてもボーンは敵エージェントを恨んでいないし、殺し合いを演じつつも互いに敬意を払い合うエージェント同士の武士道のような関係性こそが本シリーズの熱さに繋がっていました。また、そうしたエージェント達の姿がエンディング曲”Extreme Ways”の歌詞と見事にシンクロしていたのですが、一方本作のエージェントは私怨剥き出しでボーンに襲いかかってくるため、戦いの意味合いがかなり変わっています。私としては、従前のエージェント達のプロフェッショナル道が好きだったため、この変更を良いとは思いませんでした。 国家によるSNSの監視や諜報機関OBによる機密情報漏洩などの時事ネタを出してきているものの、こちらもジェイソン・ボーンの物語とはうまく絡んでいなくて不発に終わっています。アクション映画としては及第点ではあるものの、待ち望まれた『ボーン・アルティメイタム』の続編としては期待外れな出来だったと言えます。[映画館(字幕)] 5点(2016-10-08 03:16:24)(良:2票) 《改行有》

15.  レッド・ライト 《ネタバレ》 アメリカの大槻教授みたいなシガニー・ウィーバー演じるマーガレット・マシスンが自称霊能力者・超能力者達のウソをばっさばっさと切って回る前半は非常に面白いのですが、中盤で彼女が謎の死を遂げ、主人公がキリアン・マーフィー演じるトム・バックリーに切り替わった辺りから、映画は急激に失速します。後半より科学者が超常現象としか考えられない現象に巻き込まれ始め、「科学vs超能力者」という前半の図式が崩れるのですが、この転換が意図したほど観客の興味を引きつけられなかったという点に監督の誤算があったと思います。 よくよく考えてみれば本作の脚本はよくできています。観客に主題を誤認させることでラストのどんでん返しを鮮やかに決めてくるのですが、見事に伏線が張られているため「ズルい!」とは思わせません。また、ヒールであるサイモン・シルバーについても劇中では合理的な説明がなされています。「超常現象を訴える人間には二つのタイプがある。神が宿っていると本気で信じ込んでいるタイプと、騙してもバレやしないだろうと高を括っているタイプだ」というセリフが、まさにシルバーの本質を説明しているのです。シルバーはニセモノなのですが、劇中ではトムが起こす本物の超常現象に何度か巻き込まれており、本来であればここで矛盾が生じてしまいます。本物の超常現象を体験した時点で、ニセモノは退場しなければならないのです。しかし、先のセリフに当てはめればシルバーは自分を本物だと信じ込んでいるタイプであり(ペテンの部分は、素人目にも分かりやすくするための演出とでも割り切っているのでしょう)、巻き込まれた超常現象は自分の力によるものであると彼の中では処理されたのです。だから彼は退場しなかったし、それどころかより自信を深めて科学者による研究への協力も買って出るようになった。この辺りのロジックの組み方は、本当に見事なものだと思いました。 さらに、超能力・霊能力に対する作品全体のスタンスも非常に良心的であり、前半部分ではインチキを暴いて回りながらも、「本当にそのような能力があれば人を幸せにできるのに」というポジティブな見解も後に示しており、ワンサイドに立って頭ごなしに否定しない点が作品に深みを与えています。マーガレットもトムもホンモノを探し求めているのだが、ホンモノを見極める過程がニセモノを追い詰める結果に繋がっている。こうした点で、作品の主題と人物設定を見事に融合させているのです。本当によくできた脚本だと思います。 問題は、超常現象に巻き込まれ始めたトムを通して「超常現象は実在するのかも」と観客に思わせることができなかったという演出力の弱さでしょうか。その原因はふたつあって、ひとつはトムの内面描写が不十分だったため、観客が彼のドラマに乗り切れていなかったこと。もうひとつはシルバーが終始ペテン師にしか見えなかったため、一連の超常現象は彼が引き起こしたものであるという推測を観客の頭の中で生み出せなかったことにあります。 また、基本的にはよく考えられた脚本であるものの、不思議なことに細部を詰め切れていないため、おかしな点が余計に目立っています。超能力研究機関の責任者らしきシャクルトン博士は、マジシャンがやるような簡単なトリックも見抜けないほどのバカだし、長年超能力を専門に研究していればうんざりするほどニセモノを見てきているはずなのに、なぜか超能力に対して肯定的な立場を崩さず、彼の思考についていけないのです。シルバーの真贋を確認する実験においても、彼が盲目ではないという最大のトリックを信じ込んでいるし(真っ先に疑うべき点でしょうが)、私物の腕時計を着用させたまま実験してまんまと騙されており、科学者としてあまりに無能で参ってしまうのです。ペテンであることを暴かれそうになったシルバーがトムを殺そうとするくだりについても、まさに自身の公演真っ最中の会場のトイレで、武器も使わず素手で殴り殺そうとするとか、もうバカかと。作品では明確にされないものの、オチから遡れば30年前にジャーナリストを殺害したのも、マーガレットを殺害したのもシルバーであると考えられるのですが、過去2件の殺人が他殺とも判断されないほど周到だったことに対して、トム暗殺がなぜここまで杜撰なんだと不思議になります。 あと、エンドクレジット後の映像がサッパリ意味不明。この手の暗示は、効果的にやれば解釈の幅を生んで観客に考える楽しみを与えてくれるのですが、正常な読解力をもってしても何だか分からんというレベルでこれをやられると、作品全体に対する印象を悪くしてしまいます。[インターネット(字幕)] 5点(2016-07-26 20:30:15)(良:1票) 《改行有》

16.  オール・アバウト・マイ・マザー 序盤、マヌエラが息子を失うマドリードのパートは非常に素晴らしかったです。この監督さんは人間の描き方が巧く、彼女の悲しみが痛いほどに伝わってきます。また、エステヴァンという本作においてキーとなる人物を、短時間の登場ながら印象に残るよう描いていることにも感心しました。しかし舞台がバルセロナに移ると、途端に感情移入しがたくなります。ゲイが女性と関係を持ったり、修道女が避妊もせず成り行きで男と寝たり、有名女優が昨日今日会ったばかりの他人を付き人として雇ったり、マヌエラが息子の死の原因となった女優と何事もなかったかのように親しくしたりと、目の前で起こっていることにいちいち疑問符が付いてしまうのです。重いドラマがどんどん軽くなっていき、最終的には母を失った子供を引き取ることで、かつて失ったエステヴァンの代わりができましたというハッピーエンドも、やっぱりよく理解できませんでした。また、出てくるのが女性かゲイばかりなので、男の私には彼女たちの会話や行動の面白さがイマイチ伝わらなかったのも問題でしょう。「たぶんこの演出は巧いんだろうな」と思いながらも、心には入ってこなかったという感じです。外国の人が「男はつらいよ」や「釣りバカ日誌」を見ると、たぶんこういう印象を持つのだろうという感じです。おすぎは絶賛しても、私には一生良さのわからない映画だと思います。[DVD(吹替)] 5点(2009-08-07 21:43:36)

17.  ロスト・ボディ(2012) 《ネタバレ》 確かに結末には驚かされましたよ。ただしサプライズのためのサプライズであり、心情的にはまったく理解不能で感心するよりも呆れてしまいました。 母親の仇に抱かれ続ける娘と、そのことを止めもしない父親。この時点でもうありえないでしょ。しかも彼女が動かさねばならないのはターゲットの心という不確実なものであり、彼女がどれだけ美人で、どれだけ色仕掛けを使っても、ターゲットが妻との別れを決意し、しかも殺害にまで思い至るという保証はどこにもないわけです。確信部分がほぼ運任せという粗い計画。こんなものに長い時間と娘の貞操を費した親父がバカにしか見えませんでした。事故にでも見せかけてさっさと殺せばいいだろと。 また、冒頭で悲劇とはまったく無関係な警備員に瀕死の重傷を負わせるので、仕掛け人の側にも正義はありません。この点でも冷めてしまいました。[インターネット(字幕)] 4点(2016-10-20 21:29:19)《改行有》

18.  [リミット] 舞台は棺桶、映る役者は一人のみと極限にまで切り詰められたシチュエーションにありながら、よくぞ90分やりきったものだと感心しました。この手の映画では外部の様子を写したり、回想場面を挿入したりといったインチキをされることも少なくないのですが、本作は本当に棺桶の中だけで全編を完結させているのです。この監督のストイックさには恐れ入りました。 ただし映画としての面白さはまた別の話で、素材の新規性への関心が薄れる30分過ぎ辺りから猛烈に退屈しました。やはり、視覚的な動きのない状況で映画を90分もたせるという試み自体に無理があったように感じます。また、登場人物と観客の両方に頭を使わせることがソリッドシチュエーションスリラーの醍醐味だと思うのですが、本作はそもそもそういった方向性で話が作られていないこともマイナスでした。誘拐犯の目的と正体はすぐに判明することから謎解きの楽しみはないし、主人公に脱出のための打ち手が残されておらずただ救援を待つのみであることから犯人との知恵比べもなく、さらにはほぼ交渉の余地のない犯人であることから加害者と被害者との間の駆け引きもありません。さらには、主人公の手元にあるアイテムが邦題に反してノーリミットであり、携帯のバッテリーやジッポのオイルが異常に長持ちで、棺桶内の酸素が底を尽くこともなく、タイムリミットサスペンスとしての山も作れていません。[インターネット(字幕)] 4点(2016-10-07 15:43:31)《改行有》

19.  複製された男 どう見ても短編サイズ。日本でいえば『世にも奇妙な物語』のワンエピソードとしてやって丁度いいくらいの話を90分にも拡大しているので、中身はスッカスカです。確かにこの監督には才能があって、キナ臭い雰囲気作りには成功しているものの、ドラマチックなことが何も起こらない画面をひたすら眺めることは苦痛でした。また、初見時にはオチも理解できず、解説サイトを読んでようやく話を理解できたのですが、こんなもん、出された映画を見ただけで分かる奴なんていないでしょ。[DVD(吹替)] 4点(2015-10-14 15:45:09)

20.  チェ 28歳の革命 《ネタバレ》 予備知識がなければまず付いてこられない内容だし、仮に予備知識があったとしても、史実のつまみ食い状態でドラマ性が低く、カリスマ的な指導者の人となりに迫る内容を期待すると裏切られるという、伝記映画としては最下層に近いほどの作品だと感じました。キューバ革命と後年の国連演説を交互に見せるという、いかにもソダーバーグが好みそうなトリッキーな構成はまるで効果を上げておらず、それどころかせわしなく場面が切り替わることがウザく感じられたほど。そういう小手先の演出なんていいから、王道のドラマをきちっと見せてよとフラストレーションが溜まりまくるという、精神衛生上非常によろしくない鑑賞となりました。 とはいえソダーバーグ監督作品だけに決して手抜きではなく、戦闘シーンのビジュアルや音響には圧倒的な迫力があります。迫力はあるのですが、戦況がイマイチ不明瞭で革命軍と政府軍のどちらが優位に立っているのかが分からないし、革命成就という大目標に対して目の前の戦闘がどの程度重要なのかという点も説明されないため、そこに感情が伴っていない点は大きなマイナスですが。 ベニチオ・デル・トロは、彼が本来持つ個性も手伝ってちゃんとカリスマ的な指導者に見えているのですが、カストロを含めた世界中の要人に会いながら7年かけて役作りをしたという努力の成果はさほど作品に反映されていません。そこにドラマがないため、せいぜいモノマネレベルに終わってしまっているのです。作品が悪すぎて素材も役者も持て余しているという、何とも勿体ない作品でした。後編も130分あるのかと思うと、ひどく気が重くなります。[インターネット(字幕)] 3点(2017-03-20 21:55:54)《改行有》

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