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1. 戦場にかける橋
《ネタバレ》 正直言って、初見では本作の良さがよく分からなかった。
この映画が言わんとしていることを上手く感じ取ることができずに混乱したが、そのような“難しさ”が本作の良さかもしれない。
戦争というものは、単純に割り切ることができず、不条理なものということか。
捕虜であっても、軍人としての“誇り”を失わずに規律に則って自己の職務を全うするということは感動的でもある。
捕虜であっても奴隷ではない、我々は規則を守る文明人である、人間として何かを成し遂げたい、という主張が大佐からなされており、その主張は立派であり、心を打った。
『敗北しても勝つことは出来る』というイギリス人の“誇り”が、日本軍の斎藤をも変えたと捉えることができる展開だ。
欧米風の騎士道と東洋風の武士道の“融和”のような感触も得られる。
綿密な計画を立てて能率的なイギリス人と、「お茶!」の伝言を繰り返す非効率の日本人、失敗したら切腹しようとする精神論的な日本人の対比も見事である。
しかし、最後の展開によって何もかもが崩壊してしまったような気がする。
誰と戦っているのか、何のために戦っているのか、そもそも戦いとは何か、戦争とは何か、その様なことが何もかも分からなくなるようなラストだった。
もし、大佐がイギリス軍の作戦の意図を感じ取り、自らが精魂込めて築いた橋を自らの意志で大義のために破壊したのならば、最高の軍人として理想化されるような映画的な展開になるのだが、そのような展開にしなかったことが本作の良さかもしれない。
本作は映画らしくなく、観客に“混乱”を巻き起こすラストではないか。
自らが築いた橋を壊そうとするイギリス人に反抗するイギリス人大佐の姿、誰もが死に何もかもが破壊された姿をみて、医師同様に「狂っている」とつぶやきたくなるようなラストだった。
確かに、戦争というものは、美しい友情が築かれるものでもなく、感動的な秘話や美談が語られるものでもなく、そういう狂ったものなのかもしれない。
自分にはそこまで深いものを感じ取ることができなかったが、この不条理感は心に残り続けるだろう。[DVD(字幕)] 6点(2011-04-23 21:48:11)《改行有》
2. 戦場のピアニスト
映画を超越している作品を観た気がする。ほとんどドキュメントに近い完成度の高さだと感じた。こんな映画は今までに見たことないという衝撃を受けた。
「悲惨さ」や「酷さ」が伝わると同時に、やはり一人のピアニストの生き様が激しく描かれていたと思う。何もないときでも常に指を動かしている様子、弾けるはずもないのに隠れ家のピアノを前にしたときの喜び、そして久しぶりにピアノを弾く際のなんとも言いようもない激しさ。
あの時のピアノの音に何を思うのかは観た人によって異なるだろう。
殺されるかもしれないという恐怖(もはやそんなことも感じられなくなっていたかもしれないが)を感じつつも、まず何かを噛み締めるように音を確かめていき、自分がピアニストだったことを徐々に思い出していく。そして、苦しみ、悲しみを音に乗せていき、内に秘めた怒りを徐々にあらわしていき、それがどんどんと大きくなっていく。また、怒りを爆発させると同時に、ピアノを存分に弾ける喜び、かつ、これが最後になるかもしれないから悔いの残らないようにという思いや名残惜しさも感じられる。そんな演奏だったように思われた。
ある意味、監督自身もシュピルマン同様に逃亡者であり、シュピルマンが満足にピアノを弾けないのと同じく、ポランスキー監督も満足に映画作成はできなかったのではないか。しかし、この映画で存分に満足のいくまでの映画作りができたポランスキー監督の姿とぼろぼろになりながらも満足のいく演奏をしたシュピルマン(ブロディ)の姿がだぶって見える気がした。[DVD(字幕)] 9点(2006-01-03 06:54:31)《改行有》
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