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1. ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男
《ネタバレ》 公開終了間際、滑り込みで映画館にて鑑賞。
”ダンケルク”補正がかかっており+2点追加で8点としている事を予め書いておく。
俯瞰ショットが多用が光る映画で、特に映画冒頭、当時のモノクロ映像からの議場を俯瞰するショット及びタイトルの映し方は、BGMと相まって素晴らしい出来だった(その議場に不在の主人公、という流れも含めて完璧)。
ゲイリー・オールドマンの演技や役への没入ぶりは、オスカー獲得も当然というレベルだった。
目元はゲイリーだが、身振りや口調は完全にチャーチル本人になりきっていたと言っていい。いささか大仰ながら格調高い文章をボソボソと聞き取りづらい口調で話す様子や、興奮した際の独特の抑揚のつけ方、猫背気味の立ち姿は本人そのものに見えた。事前に相当な研究を重ねたのだろう。
冒頭での見事な演出があったように、脚本や演出の出来もある程度満足できるレベルだった。ただ、ゲイリーの演技面での奮闘に較べれば、少し脚本や演出に文句をつけたい個所がある。
脚本面で言えば、地下鉄での市民との会話。さすがにあれはフィクション要素が強過ぎる。譬えは悪いが、それまでの史実に沿った話からいきなり”暴れん坊将軍”の松平健が市井の人々と触れ合う場面を見させられているような気になった。
あの場面よりも確執のあった国王との和解・協力を濃く描いた方がリアリティもあって、伏線の回収という意味でもよかったのではないだろうか。
演出面では、ゲイリー/チャーチルのような大物的キャラクターは、表情をあまり見せないか、内面をあまりわかりやすく描かない方が良かったと思う。ゲイリーの名演によってチャーチルの強さや弱さは描けていても、史実におけるチャーチルの老獪さ、どす黒さまでは描き切れてないような気もした(心情がわかりやすい分、多面性が感じられないというべきか)。
CGも予算不足なのか、ダンケルクのリトルシップの映像は明らかにCGとわかるレベルのものだったのが残念(”ダンケルク”が実写に拘っていた分、粗が目立つ)。
文句もいろいろと書き連ねたが、偶然にも本作は”ダンケルク”と表と裏をなしており、私は”ダンケルク”に大変高い評価をしているため、その補正により、本作は6点+2点追加で8点とした。
できれば本作と”ダンケルク”、セットでの鑑賞をお勧めする。その後はもちろん”空軍大戦略”へ。[映画館(字幕)] 8点(2018-05-09 19:27:05)《改行有》
2. 裏切りのサーカス
《ネタバレ》 ちょっと採点が甘いが7点評価で。
原作を読んだ上での評価だが、複雑極まりない原作をよく咀嚼した映画作品だと思う。
原作は曖昧な表現の文章が連続する上に、この映画以上に時系列がいじられていて、読者は頭を抱えながら読み進めなければならない。
たとえば、ジョンハート演ずるコントロールが退職前に何を企んでいたのかも、原作では伏せられている。登場人物の人柄も、映画ではやや単純化されているが、原作はそうはいかない。時系列は入り乱れ、人間関係も錯綜。誰が敵なのかさえわからぬまま、霧の中を歩かされるような、そういう苦しさの中で、主人公は過去の記録を読み漁り、丹念に記憶を再生しながら、その記憶の不審点を洗い出し、二重スパイを追い詰めていく、というのが原作の素晴らしさだった。
映画版では、原作の展開をある程度省略し、簡素化しながらも、そのエッセンスは抽出する事が出来ている。特にゲイリー・オールドマンの抑制された演技は秀逸。原作では主人公スマイリーは背が低く小太りの中年という設定だが、長身のゲイリーを見ても、普通にスマイリーっぽく見えてしまう。
ただ残念なのは、原作最大の魅力である、「過去の記録を徹底的に再調査し、記憶を蘇らせながら、不審点を洗い出す」過程が、この映画ではあまり描けていなかった。こんな地味な場面を映像化して面白くなるか実に怪しいのだが、ここが原作最大の魅力だから、映画版も何としても追及してほしかった。
本作を見て、難し過ぎるといっている方は、原作を読むともっと頭を抱えそう。でも、その迷宮のような世界をどうにかこうにか読み通すことで得られる、スパイの世界の寂寞感や荒涼感、その読後感はなかなかに味わい深い。ぜひ原作にも挑戦してほしい。[ブルーレイ(字幕)] 7点(2019-01-12 11:32:08)(良:1票) 《改行有》
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