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1. 日の名残り
《ネタバレ》 古き良き英国を体現するかのような、静謐で重厚なトーンで構築された渋い味わいの作品。ジェームズアイヴォリーの巧みな演出と、アンソニーホプキンス、エマトンプソンの演技が光る。原作とは趣きを少し変えており、映画では主役2人の淡いロマンス、もとい名優2人による演技合戦がよりフォーカスされている。薄暗い部屋の中、2人が本を巡って触れ合うシーンは特に秀逸。結局キスシーンにはならなかったのだが、凡百のキスシーンよりも甘く切ない場面になっているのはどうしたわけだろう。これぞ演出の妙であり、演出の教科書に載ってもおかしくないくらい、印象的な場面だった。
映画は名優同士の演技合戦に比重を置いてあるせいか、原作で読者を騙す巧妙なトリックや、原作における(ミスケントンが関わらない)感動的なクライマックスについては、バッサリと削られている。ストーリーの妙や、物語のテーマをより深く味わいたければ、原作を読むことをお勧めする。[DVD(字幕)] 8点(2021-10-20 07:41:32)《改行有》
2. ビューティフル・デイ
暴力的で病的な雰囲気ながら、美しく詩的なシーンもあるし、最後はなんだかんだハッピーエンド。良いところはたくさんあるのだが、映画全体に漂う、主人公の不安定な精神を表現したような病的な雰囲気が、あまり心地よくはなかったため、7点評価とする。ただこの雰囲気を高く評価する人が、少なからずいることは理解できる。カンヌで高評を得たのも、本作の病的かつアート的な部分が評価されたからではないだろうか。
タクシードライバーと比較する人もいるようだが、個人的にはタクシードライバーは病的でハードな部分とメロウな部分(バーナード・ハーマンによる、ジャズ調の優しいスコア)が上手く調和していて、どこか心地のよい物語になっていたのだが、本作はメロウな部分が少ないため、アートで病的、そうしたハードな部分が際立ってしまったという印象がある。したがって、完成度についても、タクシードライバーよりは下だろうと評価する(じゃあどうすればよかったんだ?といわれるとなかなか難しいのだが)。
ちなみに観賞していて、なんかインディーズのオルタナ系音楽の香りがするなぁと思っていたら、案の定、音楽はジョニー・グリーンウッドが担当していた。そりゃ音楽も尖った感じになるわな。[レーザーディスク(字幕)] 7点(2020-04-04 14:01:58)《改行有》
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