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【製作国 : イギリス 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
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21.  リボルバー(2005) 《ネタバレ》 「シャーロック・ホームズ」鑑賞時にはガイ・リッチーはそれほど大したことがないと思っていたが、本作を観れば、それが誤解だということが分かる。 「シャーロック・ホームズ」で不満に思っていたようなことが本作では全てクリアーになっていた。 先が全く読めない展開であり、一瞬も気を置けない緊張感で溢れている。 本作によって彼の評価は“特異な才能をもつ優秀な監督”というものに変わった。 デヴィット・リンチ、デヴィッド・フィンチャー、クエンティン・タランティーノ監督などの他の作品からのアイディア借用のような展開もみられるが、批判を恐れずに、自分のやりたいことを追求したことによって、個性の感じられる自己流の作品に仕上がった。 エッジの効いた独自の世界観が構築されているだけではなくて、ガイ・リッチー節が効いたクライムサスペンスをベースにしたエンターテイメント性も十分感じられる。 突然アニメを使ったり、エンドロールがなかったりと行き過ぎた点も見られるが、一種の“遊び”と捉えて、多めに見よう。 様々なことをやりたくなって、暴走してしまっただけだろう。 初見では完全に理解できたとは言いがたいところもあるが、彼が描こうとしたことはだいたい伝わったような気がする。 “全てが現実”から“全て独房における妄想”といったものまで様々な解釈が可能なので、あえて紹介する必要はないだろうが、個人的には精神を病んだ元囚人の見事な復讐劇だったという解釈にしたい。 ゲームに勝つために、彼は自分で自分を騙したのだろうか。 前半のゲーム性のあるクライムサスペンスから一転して、後半では心理的な要素をメインにしていくという思い切った意外性も評価したい。 おかげで付いていくのが大変かもしれないが、訳の分からない世界にいざなってくれたおかげで、各キャラクターと同様に何が現実で、何が虚構なのかという“混乱”した精神状態を堪能できるのではないか。 過去の彼の作品とは異なり、観客を騙す、騙されるという“オチ”のようなものを披露して観客を驚かすといった単純なものではないという点も評価したい。 初期の作品から成長して、本作によって前進しているのではないかと思う。[DVD(字幕)] 8点(2010-03-16 21:34:09)(良:1票) 《改行有》

22.  シャーロック・ホームズ(2009) 《ネタバレ》 つまらなくはないが、期待度が高かっただけに少々物足りなさも覚える。全体的にドキドキ感やワクワク感には乏しく、爽快感やサプライズも感じられなかった。もっとホームズを危機やピンチに陥らせて、もう少しハラハラさせた方がよかったのではないか。危機に陥ったとしても明晰な頭脳で切り抜けたり、本当に危険な際にはワトソンが助けてくれたりしないと盛り上がらない。屠殺場でのアイリーン救出劇や大爆発といった展開はもちろん用意されているが、基本的には予定調和気味の仕上がりといえる。 アクションをメインにしてもよいが、ホームズらしい謎解きという要素がほとんど見当たらないのも残念だ。ホームズがおかしな動きをしたり、やたら変な物をクローズアップして、伏線的なものはきちんと張っているが、観客が推理するという仕掛けにはなっておらず、観客はやや置き去り気味となっている。最後に一気にネタ晴らしされても、「ふ~ん、そうだったんだ」位にしか感じられない。 その肝心のトリックや謎や陰謀も分かるごとにテンションが下がってしまった。自分に従わない国会議員を殺すというどうしようもないネタには拍子抜けであり、トリックは古典的かつ既視感があるだけではなくて無理があるものばかり。ブラックウッド卿自身にカリスマ的な“悪”が見えてこないのもマイナスだ。 そのようなネタやトリックを無視できるほど、ホームズとワトソンの相棒愛やコンビが光っていたかというとそうでもない。ロバート・ダウニーJr.は頭脳明晰ではあるものの、人間的にやや足りず、女には甘いというルパンⅢ世のような親しみやすいユニークなキャラクターには仕上がっているが、アイリーンは峰不二子、ワトソンは次元や銭形のようなキャラクターには仕上がり切っていないため、肝心のホームズとワトソンの友情や信頼感などをそれほど深いものだとは感じられなかった。 変装して彼を見舞い治療するという姿にはやや驚いたものの、それだけでは足りない。 モリアーティ教授の登場は嬉しいが、こちらもどうしようもない動機にはテンションが下がる。モリアーティ教授を登場させるくらいならば、ホームズもブラックウッド卿も実はモリアーティ教授の掌で転がされていただけ、事件は何も終わっていない、むしろ今から事件が始まるというオチくらいのものを出して欲しいところ。 そうしないと続編に対する期待感を欠くこととなるだろう。[映画館(字幕)] 6点(2010-03-15 21:03:57)(良:3票) 《改行有》

23.  ラブリーボーン 《ネタバレ》 素晴らしい作品だと思うが、同時につまらない作品でもある。ジャッジするのはかなりやっかいな作品だ。ただ、ピーター以外には作れないような作品に仕上がっており、独創性は評価したいところ。初見では上手く感じ取れなかったが、何回か見ることがあれば、評価は変わると思われる。 「事件の真相」「殺された少女が幽霊になり、家族にメッセージを送って犯人を暴く」「残された家族が犯人に復讐をする」といった視点からみてしまうと、はっきり言ってつまらない作品としか思えないだろう。本作はそういった視点をメインには描こうとしていない。大人の事情からかサスペンスタッチが前面に出ているテイストとなっているが、ピーターはそういった面はもっとカットしたかったのではないかと思えるほどだ。スタンリー・トゥッチが必要以上に頑張り過ぎてしまったのも誤算だったか。おかげでバランス感が悪くなった点は否定しがたい。 本作は「殺された少女が天国に行くまでの過程」及び「残された家族・関係者が再生していく姿」を描いた作品であると思われる。そういった視点から見てみると、本作の評価はがらりと変わると思う。ピーターにとっては、犯人の存在なんて本当はどうでもよかったのではないかと思われる仕上りだ。 殺された少女の少女らしい想いや、家族の苦しみや悲しみが、ストレートではないものの、時間を掛けてゆっくりと丁寧に描かれている。しかし、本来描きたい部分を何故か真正面から十分なヒカリを当てずに描こうとしており、豪華な俳優を起用しているのも逆に計算外だったか。各キャラクターを活かしきれていないと感じてしまうのは仕方がない。 面白いと感じられる点は、関係者それぞれが“愛”を見出して、スージーの死を受け入れていくところだ。スージーのボーイフレンドや妹は新たなパートナーを見つけて愛を感じたことで、スージーの死を受け入れることができたのではないか。また、娘の死という事態に上手く向き合っていくことができなかった父母も時間の経過とともに悲しみを癒して、それぞれの壊れかけた“愛”を再認識することで娘の死と向き合うことができるというまとめ方はなかなか感動的なところだ。喪失感・無力感から救われていく“希望”のような光が見えたような感じがした。しかし、つまらなさを否定しにくく、アプローチが監督の思惑とはズレていったようなところがあるので、賞賛しにくい映画ではある。[映画館(字幕)] 6点(2010-02-09 23:03:10)(良:1票) 《改行有》

24.  アバター(2009) 《ネタバレ》 お世辞抜き、文句なしの満点作品。全てがあまりに完璧すぎて涙が出そうになった。 人間が製作できるレベルを超えている映画。ジェームズ・キャメロンは不可能を可能にしたといっても過言ではない。圧倒的な才能を持つ者が尋常ではない努力を重ねた成果に生まれた作品であり、凡人にはもはや到達できない地点に達している。 映像については、CGとは思えないリアルで違和感のないデキとなっている。最初は3Dにアタマと眼が慣れていないためか、「こんなのゲームムービーじゃないか」と思っていたが、あっという間に世界観にリンクできる。映画館にいるというよりも、パンドラという星に実際に立っているかのような気分になれるほどだ(六本木ヒルズの映画館の高性能のおかげもあるが)。 映像だけではなくて、ストーリーも恐ろしくデキがよい。ストーリーが非常にナチュラルに流れていき、世界観に調和している。また、伏線やエピソードも全てを拾いきっており、全てが何かに活かされている。本作に描かれていることで無駄なものなど何一つもないといえる完璧な脚本。 さらにメッセージにも溢れている。『異文化との交流』『自然破壊・自然との共存』『戦いの悲惨さ』など時事にマッチングしたものばかりだ。ジェイクとナヴィ族の女性との交流が、実に穏やかでリアルかつ自然に描かれていることが非常に好感をもてる。彼らが豊かな時間を共有することで二人に“絆”を築かれていき、観客である我々もナヴィ族という異文化を理解する助けになっている。最初はジェイクや他の地球人同様に、野蛮で醜い下等な生物かエイリアンと思っていたはずなのに、次第に彼らは我々と近い存在と思えるような感情となり、見ている我々にも“友情”のようなものが育まれていく。ジェイクの行為は、地球人を裏切るようなものなのかもしれないが、彼の裏切りが理解でき、共感できるものとなった。我々にとっては単なる巨木・単なるモノなのかもしれないが、彼らにとっては生命そのものといえるほど非常に神聖なものということを理解させてくれる。自分の利益を追求し、従わない者を服従させることばかりではなく、お互いを知り理解し尊重することが共存に繋がるということをキャメロンは本作を通して伝えたかったことだろう。 最先端の映像技術の素晴らしさを体験するだけではなく、メッセージに溢れた作品であり、現代の我々が見るべき映画に仕上がっている。[映画館(字幕)] 10点(2009-12-23 18:32:41)(良:3票) 《改行有》

25.  ソウ6 《ネタバレ》 デキは意外と悪くはなく、合格ラインは突破しているのではないか。驚くようなトリックはないものの、ゲーム自体はなかなか凝ったものとなっている。また、ホフマン刑事にカリスマ性がないことが欠点だったが、そういう欠点を長所に変えるところがこのシリーズの良さでもある(Ⅲでも使った手法)。直接殺人を犯すという暴挙に出た彼に後継者失格の烙印を押して、今後のシリーズ展開を膨らまそうという狙いもみられる。 気に入らないところは、保険会社の担当者を殺す必要があったのかというところだ。彼のゲームのプレイを見ている限りでは、それほど悪い奴ではない。自分だけが生き残ることや自分が痛みを感じないことを第一に考えているわけではない。計算や数字で判断するのではなくて、純粋に仲間を助けたい、家族や子どもがいるかどうか、というような点で判断している人間的な一面が垣間見られる。 彼がどういうプレイをするかを母子が判断するという“ゲーム”があるとすれば、彼のプレイは間違っているようには思えず、母子の“ゲーム”はミスではないか。彼を殺さないことによって、今後は更生して何人もの命が彼の保険によって救われる可能性も出てくる。 彼をたとえ殺すとしても、もうちょっとタメが必要だったと思われる。母親がいったんは殺そうと決意するもののやはり最後には殺せないと嘆いて、観客に対して安堵感を与えておきながら、最後の最後に息子がもう一撃食らわせるということが必要だったのではないか。“彼が助かった”と感じさせないと息子の一撃が活きてこない。 “ゲーム”の趣旨を考えると、殺すこと自体賛成できないうえに殺し方も面白みに欠けるので、この点がマイナス評価となる。一応、“生への実感”“生に対する感謝”が本作のテーマでもあるわけなので、なんでもかんでも殺せばよいという問題ではない。父親を見殺しにされたから“むかついたので殺します”では、復讐や暴力を是認する残酷なだけのものであり、映画としての“深み”もなくなってしまう。 彼を殺すか殺さないかというのも製作者に対する一つの“ゲーム”だったような気もする。化学薬品を使った面白い殺人方法を思いついたから、実現させてみようぜというノリではないか。ハロウィーンシーズンに楽しむサスペンスホラーなので仕方がないとはいえ、製作者自身が“ゲーム”に負けているような気がする。[映画館(字幕)] 6点(2009-11-09 00:34:00)(良:2票) 《改行有》

26.  パイレーツ・ロック 《ネタバレ》 非常にセンスのある作品に仕上がっている。 ミュージック、ファッション、作風・世界観いずれにも見応えがあり、アメリカ作品とは異なるイギリス作品らしいユーモアセンスも抜群だ。 下ネタがかなり多いが、下品になっておらず、こちらも絶妙なユーモアとセンスで上手く調理されている。 「板垣死すとも自由は死せず」という有名な言葉があるが、「海賊ラジオ死すとも、ロックは死せず」ということだろうか。 ロックを語れるほど、ロックに傾倒しているわけではないが、その自分にも「ロック魂」「ロック愛」のようなものが十分伝わってきた。 政府に禁止されようとも、船が沈没しようとも、最後の最後までロックを流し続ける、ラジオを流し続ける“魂”が熱い。 当時の人々が熱狂したかもしれないという理由が分かる気がする。 見ているうちに次第に、個性のあるイカれた野郎どもと1人の女性コックが愛おしく感じてくる。 自分もこの船の乗客になったかのように、アットホームで仲間内な雰囲気に飲み込まれていく。 それぞれの個性は強烈であり、キャラクターも生きているとは思う。 しかし、何度か見れば、当然感想も変わると思うが、初見では乗員それぞれの内面というものまでもは完全には伝わりきれていない。 ただ、それぞれのキャラクターに変なエピソードを設け過ぎると、その世界観や映画としての個性が崩れる可能性があるので、難しいところだ。 ロックを愛する訳の分からない連中が騒いでいるだけの映画でも、本作にとってはよいのかもしれない。 長所でも短所でもあるのが、この“ユルさ”である。 バカバカしいようなところでも、そのユルさによって、バカバカしくは感じさせない。 しかし、前半はその独特な世界観にハマるが、ストーリーらしいストーリーがなくキャラクター及び世界観依存型の映画なので、中盤は多少ダレてくるところがあったような気がする。 個人的には、船の沈没間近でも革パンを履いてくるところや、命よりも大事そうなレコードを「これはクソだ」と放り投げるようなところが気に入った。 『それぞれのキャラクターの内面が伝わらない』とは書いたが、このようなどうでもいいシーン一つ一つに、各キャラクターの余裕と生き様を感じられるので、何度も見て深く堪能して、それぞれのキャラクターの内面を感じ取っていく作品かもしれない。[映画館(字幕)] 7点(2009-10-25 23:46:57)(良:2票) 《改行有》

27.  ココ・シャネル(2008) 《ネタバレ》 「アヴァン」と併せてみると、シャネルの人生・生き様がより理解できる。本作はココ・シャネルの歴史を描き、「アヴァン」はシャネルとして成功するまでの内面が描かれている。「アヴァン」が“陰のシャネル”とすれば、本作は“陽のシャネル”といえるかもしれない。数多くの苦労や失敗は描かれているものの、基本的にはいずれも好意的に解釈されており、美化されているように思われた。内容面については同じことを描いているが、同じ人間を描いたとは思えないほど、この2作の内容は異なっているようにも感じられる。 しかし、波乱に満ちた一人の人生を2時間程度で描き切ることはできないのも事実。どちらもが本当のシャネルでもあり、どちらもが本当のシャネルではないのかもしれない。「アヴァン」はそれほど面白いとは思わなかったが、個人的には「アヴァン」の方が好みだったようだ。映画としての質は「アヴァン」の方が数段優れている(もっとも本作はテレビ用として製作されたようなので比べようもないが)。「アヴァン」を観なければ、本作をもうちょっと高く評価したかもしれない。 ただ、ココ・シャネルという生き方を理解しやすいのは文句なく本作の方だ。ココ・シャネルという人間を全く知らない人にはこちらを薦めて、ココ・シャネルの生き様をよく分かっている人には「アヴァン」を薦めたい。 ココ・シャネルという人物の歴史を知るには、本作の方が適しているが、その描き方はどこか表層的だ。バルザンやカペルとの愛情、親友やマルコムが演じた男との友情といった人間関係に深みがない。カペルとの関係は「アヴァン」よりも時間が割かれており、よりよく理解できるが、「結婚する」「別れる」といった二面でしか捉えられていないので、やはり「アヴァン」の方が深いといえる。突然、復縁を申し出る辺りも“映画の流れ”の上でスムーズとは思えない。事実通りに継ぎ接ぎをしていっているようなので、その辺りに歪みが生じている部分があるようにも思える。 マクレーンは文句のない迫力・存在感を発揮している。カペルとともに作り上げた“シャネル”というブランド及び服飾に対する情熱、自分自身に対する自信が感じられる。しかし、若き日のシャネルを演じた女優はオドレイほど深みのある演技をみせることはできていない。オドレイやマクレーンと比較さえしなければ、文句のない演技なのだが、相手が悪すぎたようだ。[映画館(字幕)] 5点(2009-10-24 22:04:36)《改行有》

28.  サブウェイ123 激突 《ネタバレ》 オリジナル未見。 トニー・スコットに関しては、スタイリッシュかつなかなか凝った独特な映像を用いるので好みの監督なのだが、ときたまハズレの作品があるというイメージ。 今回はハズレではないだろうという期待があったが、どうやらハズレだったようだ。 極端につまらない作品ではないが、意外と捻りがなく盛り上がらない作品に仕上がっており、サプライズ感はほぼゼロに等しい。 予測どおりにストーリーが進み、予定どおりにストーリーが終わっている。 “地下鉄”という珍しくユニークな設定の割には“動き”がほとんどなく、地上で人質を取っている場合とさほど大差がなかったのもやや拍子抜け。 “地下鉄”という設定の良さを活かしきれていないように思われる。 “地下鉄”のプロとハイジャック犯との地下鉄を舞台にした頭脳戦が繰り広げられるという類の作品ではなかった。 本作は派手なアクションでもなく、濃厚なサスペンスでもなく、『かつて絶頂を経験した男が何らかの事情でどん底を味わうものの、再び這い上がって、男としての生き様・散り際をみせる』というテーマが本作の根底にあるように思われる。 これらのことはライダーもガーバーにも共通している。しかし、価値観は異なるものの、同じベクトルが向いているはずの二人の“出会い”が上手く表現されていないようだ。どん底を経験したガーバーだからこそライダーの気持ちは分かるはずだ。ライダーの気持ちを察してのガーバーの最後の行動という“エンディング”に向けての盛り上げ方がかなり足りないように思う。ベクトルが同じ方向なのか、それとも相対するものなのか、“家族”や“宗教的な要素”も交えながらまとめて欲しかったところだ。 また、“どん底を味わった”という想いを抱えているのは彼らだけではないはずだ。 不倫疑惑の市長、この事件で名前をあげたいはずのイタリア系の警察官、ガーバーの後釜の管理職、もしかしたら人質の中にもそういう者がいたかもしれない。 このような複雑に絡みあうはずの人間模様がカットされているのはもったいない。 ライダーとガーバー以外はほとんど“空気”と同じというのは良作とは言えないのではないか。 たとえ単純な事件であっても、それぞれの思惑を抱える登場人物が掻き乱すことによって、ダイナミックとなり、豊かで複雑なものとなっていくはずだ。[映画館(字幕)] 5点(2009-09-23 22:43:04)《改行有》

29.  ウルヴァリン:X-MEN ZERO 《ネタバレ》 正直いって、「X-MEN」シリーズはそれほど好きではない。 自分とブライアン・シンガーとの相性の悪さもあるが、純粋に楽しめる作品に仕上がっておらず、アクションエンターテイメント作品としてはどことなくヌルさを感じていたところである。 ただ、監督が代わったこともあってか、「ファイナルディシジョン」からは面白いと評価できるようになった。 このような経緯もあり、それほど期待していなかった本作だったが、何も考えずに楽しめる合格レベルのエンターテイメント作品に仕上がっていると感じられた。 それぞれのミュータント能力を活かしたバトルシーンは上手くかつ熱く描かれており、見せ場がたっぷりだ。 また、意外と丁寧な作品作りがなされていたことも好感がもてる。 戦場でしか生きることができなかった兄と弟の間に、微妙なズレが生じていくことを一連の戦争の歴史の中で描き出している点は上手いの一言。 さらに、兄と弟の関係や姉と妹の関係も描かれているのも面白い。 兄弟でいくらいがみ合っていても仲直りできてしまう点や、妹のために自分の愛さえも犠牲にできてしまう点など、切っても切れない“血”という宿命の面白さも感じられる。 ウルヴァリンと恋人の関係(特に名前に刻まれた想い)や、老夫婦とウルヴァリンの関係なども、短いながらも心にきちんと残るように丁寧に描かれており、監督の力量が窺われる。 命名の由来のエピソードは完全には理解できなかったが、恋人の“月”と引き裂かれた“ウルヴァリン”は、ローガンの方ではなくて、恋人の方だったというのは面白い。 確かに、孤高となり静かに夜に輝き続ける“月”と、孤独なローガンの姿は少々ダブるところがあるかもしれない。 展開は恐ろしいほど拙速なものとなっているが、極力無理がないように上手く編集されている。 各キャラクターの心情や動機を窺うことができるほど、心の深い部分まではきちんと描きこまれていないのは確かなことだが、エンターテイメント作品なので、この程度でも許されるのではないか。 しかし、ウルヴァリンが記憶を失うという“既定路線”に対して、上手くリンクできなかったことが悔やまれるところか。 「そうなっているのだから、しょうがない」と取って付けたような仕上がりにせざるを得なかったのはもったいない。 “続編”という手段もあるので、あまり急がなくてもよかったのではないか。[映画館(字幕)] 7点(2009-09-12 23:21:05)《改行有》

30.  消されたヘッドライン 《ネタバレ》 リアリティのある仕上りであり、ラッセル・クロウの演技も見応えがあった。クロウ演じる新聞記者が真相に気付くまでは、もうちょっと高い評価をしようとしたが、予期せぬ“どんでん返し”があったため、評価を下げることとなった。観客が驚くオチを考えようとするあまりに墓穴を掘ったという貴重な例だろうか。 あまり頭が整理できていないので、間違っているかもしれないが、ネタを整理すると「議員が戦友と親友の“友情”を利用して、自分をスパイしていた民間軍事企業を逆に陥れようと画策した」というところか。「スパイ行為を行っていたものの民間軍事企業は殺しまでは手を染めていなかった」ということが真相だろうか。脚本的には上手くオチている気がするが、映像上では上手くオチている感じがしない。新聞記者がカラクリに気付いてから、殺し屋が最後の行動を起こすまでの一連の流れが拙速すぎるという印象をもつ。議員の奥さんの一言だけで全ての糸が解れるというのはあまりにも唐突だ。 殺し屋も最後に何をしたかったのか、なぜあの場所に居られたのかも不明。本作の“肝”になるところなので、もっと丁寧に描いて欲しかったところだ。異なるエンディングの1バージョンというような浮ついたものとなっている。 また、本作の「友情と真実」というテーマも上手く描き切れているとは思えない。“真実”の追求するためには友情を利用・犠牲にしてもいいのかという記者の“苦悩”がもっと必要ではないか。この部分が緩いため、逆に“友情”を利用していたのは議員の方だったというオチが効果的に機能していない。 さらに、レイチェル・マクアダムスの演技にも不満が残る。もともとはウェブ版の担当ということであり、冒頭は“軽め”の演技でも問題ないが、終始その“軽さ”が払拭されなかったという思いが強い。目の前で証人が死んでいるにも関わらず、あまり大きな変化が感じられなかった。最後の記事を“送信”できるほど、本物の“ジャーナリスト”に成長して欲しかったところだ。 悪くはない作品だが、“素材”を活かしきれておらず、最高の調理ができたとは思えないので、評価をやや下げたいところ。「大統領の陰謀」を参考にしているようなところもやや気になる。当初はブラッド・ピットが新聞記者を演じることとなっていたが、彼が降板した理由も少々理解できるものとなっている。出演してもあまりプラスにならない映画だ。[映画館(字幕)] 6点(2009-06-28 11:31:07)(良:1票) 《改行有》

31.  ターミネーター4 《ネタバレ》 大金が投じられたド派手なアクション作品なので、鑑賞時間分は楽しめるが、観てよかったと感じる部分は少ない。序盤は期待感があったものの、ありがちなストーリーに終始している。多くのSF作品からのアイディア流用も多く、オリジナル性が感じられない。不満な部分は以下の通り。 ①【中身のないストーリー】本作は基本的に中身がなさすぎる。コナーとカイルの出会いという意味はあるが、大して意味のあるものではなかった。本作がターミネーターの隠された歴史に何かが刻まれたとは思えない。タイムパラドックスという問題があるが、むしろ歴史が変わるようなことがあった方がストーリーは面白くなるのではないか。 ②【強力な敵の不在】T1000、TXという強力な敵がいるから、このシリーズは面白いのである。ターミネーター同士のガチンコバトルが本シリーズの見所であるが、本作には手に汗握るようなバトルが描かれていない。シュワの復活には心が躍ったが、盛り上がったのはあのシーンだけだ。せっかくマーカスという新キャラクターを盛り込んだにも関わらず、彼とT800のバトルに盛り上がりが欠いたのはもったいない。 ③【ラストの心臓エピソード】本作において「人間と機械の違い」について語られていたと思う。個人的には「人間には限りのある命がある」から、機械とは違うのではないかと考える。「心臓がもたない」から交換しましょうでは、機械の発想と変わりがない。このエピソードを盛り込んだ趣旨や意図が全く分からない。このエピソードのせいで、評価は下げざるを得ないだろう。これよりも、マーカスはコナーをかばってT800と相打ちになったり、T800のエネルギーを爆発させるためスカイネット本部に残って爆破させた方がよかっただろう。マーカスを機械としてではなく、より人間として描くこともできる。 ④【新シリーズへの期待感】本作を観て「続編が楽しみだ」と感じる者は多くないだろう。ヒットしなかったら、シリーズを打ち切れるように予防線を張ったとしか思えない中途半端なハッピーエンドで幕を閉じた。「おいおい、この後どうなるんだよ!」という衝撃的なエンディングを用意しないと、シリーズはもたないのではないか。スカイネットに主要人物が捕まるといった選択肢があるのに安易なエンディングで逃げたとしか思えない。 残念ながら、新シリーズは好ましくないスタートを切ってしまったようだ。[映画館(字幕)] 6点(2009-06-07 20:19:41)(良:2票) 《改行有》

32.  ある公爵夫人の生涯 《ネタバレ》 つまらない作品ではない。「ジョージアナ=ダイアナ妃」とダブらせれば、面白みも増し、基本的には飽きることはなかった。ただ、飽きることのないのは、ストーリーがお昼のメロドラマ級に波乱万丈に満ちているからであり、映画としてのレベルは決して高くない。感情が全く揺り動かされることがなかったという点が最大の欠点となっている。それぞれのキャラクターに対して“深み”を感じさせないので、基本的には誰にも感情移入できず、ただストーリーを追うだけの展開になる。 自分が男だからかもしれないが、ジョージアナに対して、時代や背景を考えると大胆な行動力は感じられるが、愛のない満たされない人生から逃げ出したかっただけなのではないか。チャールズを本気で愛していたのかどうかは分からない。 むしろ、男の自分にはジョージアナよりも公爵の立場がより身近に感じられた。彼も彼なりの愛し方でジョージアナを接していたのだろうと思われる。幼いころから誇り高い貴族として育てられて、世継ぎを産むことが自分に課せられた唯一の使命というプレッシャー下において、一人の男性と一人の女性という関係を築けるはずがない。ストレートに愛情表現することができない男に対して、ジョージアナは理想の愛を求めすぎたような気がする。誇り高い公爵が歩み寄れるはずがないので、ジョージアナがもっと努力をすべきではないのか。友人を屋敷に招きいれたのはジョージアナであり、予期できる当然の帰結に対して非が無いとは言い切れない。 公爵は、ジョージアナが愛人の子どもを身籠ったとしても産まさせるほどの度量の広さを感じる。チカラを使って、連れ戻すこともせず、別れさせることもせず、“子ども達の手紙”を使って、自分の“役割”を再認識させて、自らの意思で戻させ、自らの意思で別れさせるという方法を用いている。ある程度の権力を行使しているが、やり方は実にスマートだ。 最後のパーティーでも、チャールズを会場に呼ぶことを許し、公衆の面前で会話させるというのも彼の度量の広さだろう。歩み寄らない彼女に対して、最後の最後には自分から歩み寄ろうとしている。そういう彼の気持ちを知ったのか、自分の死後にはきちんと公爵と友人との関係を認めているようだ。結局は全てキレイに収まってしまい、見所がさらになくなってしまった。見所はアカデミー賞受賞の衣装とノミネートの美術だけになってしまったようだ。[映画館(字幕)] 5点(2009-06-06 12:49:59)《改行有》

33.  スラムドッグ$ミリオネア 《ネタバレ》 最近には見られなかった直球の映画。クイズという形を借りて、彼の生き様を描き、彼の生き様を通して“夢”や“愛”を手に入れるという単純なハッピーエンドムービーを単純に楽しめことができた。スラムの負け犬でも、諦めなければなんとかなる、思い続ければなんとかなるという“甘い”ストーリーは非常に好みだ。本作は、社会派の映画でもなければ、リアルなインドの実態を描いた映画でもないだろう。ましてや、教養のない人間が、難問のクイズに答えられるはずもない。リアルティのある作品ではないが、そういうことはでうでもよくなるほどの出来栄えだ。 インドが舞台であることが、本作の勝因ともいえる。 この舞台がアメリカや日本だったら、全く面白くはないだろう。 出来すぎたストーリーに嘘っぽさを感じてしまうはずだ。 アメリカにはもはや「アメリカンドリーム」はないかもしれないが、発展を続けているインドには「アメリカンドリーム」があると感じさせるパワーやパッションの溢れる街であるというように魅力的に描かれている。 また、クイズを絡めて、一人の男の生き様を語るというのは素晴らしいアイディアだ。 普通に描けば、大して面白くないストーリーでも、この手法によりダイナミックさが加わった。ストーリーに飽きることがなく、画面に集中させる効果も非常に高いといえる。 個人的には、最後の問題をジャマールは回答できなくてもよかったのではないかと思う。ジャマールにとっては、“愛”さえ手に入れれば、“金”などどうでもいいもののはずだ。「三銃士」の三番目と命名したラティカ自身が分からない「三銃士」の問題を間違えるというのも面白い運命とも思ったが。もともとゼロからのスタートなのだから、ゼロの状態からジャマールとラティカがスタートする方がもっとイマジネーションは膨らむと思う。あの二人にはむしろ“大金”は不要ではないか。 さらにレベルの高い演出をするのならば、司会者が正解かどうか答える瞬間に画面が切り替わり、駅のシーンへ移行してもよかったかもしれない。彼が正解できたかどうかを、観客の心に委ねてもよいだろう。 ただ、最後のエンドクレジット中のダンスはややマイナスといわざるを得ない。 ダニー・ボイルはインド的なものを取り入れようとしたのかもしれないが、せっかく気持ちよくさせてもらったのに、あれで“夢”から一気に冷めてしまった。[映画館(字幕)] 9点(2009-05-10 21:44:04)(良:2票) 《改行有》

34.  シャロウ・グレイブ 《ネタバレ》 劇的な展開はラストまで繰り広げられず、ダラダラとした部分も垣間見られるが、それがなかなかいい味になっている。 彼らは一応「友達」という設定であるので、“金”のためにいきなり殺し合いをすることはない。 大金を手にした途端に、彼らの中で劇的な変化はいきなり生じないが、今まではキレイに回っていた三者の“歯車”が微妙に狂い始めて、徐々に“金”という悪魔に“友情”が蝕まれていくような“不気味さ”が上手く描かれている。 メガネが死体切断を自分だけで行ったために、メガネが総ての苦労を背負ってしまったことが要因だろうか。 処理を行ったことによる後遺症に悩んでいるのに関わらず、能天気で浮かれる二人を見て、キレてしまったのだろう。 苦労をして手に入れた“金”は全部自分のものとでも思ったのではないか。 本当の友達であるならば、三人で協力して行い、全ての苦労も分かち合えば、こういう結果にはならなかったということか。 ギャングや警察の登場により、三者のパワーバランスが徐々に崩れていき、三者の亀裂が徐々に大きくなるところも面白く描かれている。 結論やオチもそれなりには面白いものとなっている。 捻りのあるユニークなオチであるが、彼らの中に勝利者を生んでしまったことはやや引っかかるところはある。 金を山分けせずに隠したメガネ、リオに高飛びしようとした女医、金に細工をした新聞記者、三者ともに友達を信頼していないのである。 その中で、彼だけが勝利者たるに値する人物というようには描かれてはいなかった。 むしろ、三者ともに破滅に向かうというオチでも良かったかもしれない。 勝利者を生ませるということは、「友達を信頼できるかどうか」というテーマとやや矛盾してしまうところもある。 確かに、彼は大金を独り占めしようとするよりも、「アパートを出て行った者負け」という展開に持ち込んだので、他の二人よりもある程度はマシな部分は垣間見られるが。[DVD(字幕)] 8点(2009-05-10 21:41:05)(良:1票) 《改行有》

35.  ミリオンズ 《ネタバレ》 ダニー・ボイル監督らしいユニークであり、ファンタジックであり、独特な世界観は見事である。 また、全体的に子ども目線で上手く描かれているように思われる。 しかし、自分に宗教的な素養が足りないことも問題かもしれないが、物足りなさを覚える作品となっている。 教訓的な要素も、感動的な要素もあまり感じられなかった。 序盤こそ、面白みを感じていたが、中盤に差し掛かり失速していった気がする。 起承転結のうち、“転”が上手く描けていないのではないかと思われる。 お金の存在を知った父親と女性、犯人の登場、ユーロ騒動が上手く機能しているとは思えず、結論に対してスムーズにオチていないのではないか。 ユーロ騒動が描かれているが、彼らが欲を出しすぎて、時期を失して、ポンド紙幣が全て紙切れ同然となったというオチもなく、あまり意味をなさない(ユーロ騒動があったから大金が手に入ったわけだが)。 また、本作のテーマの一つである“母親が聖人になれたか”というオチに導くとすれば、ダミアンの起こした行動がもう少し周囲の人間を変えていくようなミラクルが欲しかったところだ。 ダミアンが正しい使い道を模索して、失敗を繰り返しながら、本当の使い道を探し出したり、周囲の者が大切なものに気づくという流れにもっていけなかっただろうか。 お金を燃やして終わり、井戸を掘り当てて終わりというオチは、キレいではあるが、どことなく疑問や中途半端さを感じた。[DVD(字幕)] 5点(2009-05-10 21:40:20)《改行有》

36.  バーン・アフター・リーディング 《ネタバレ》 他のコーエン作品のレビューでも同じ事を書いているが、面白い設定の割には、あまり面白さを感じさせない不思議な作品になっている。騒々しさだけは伝わってくるが、基本的にはあまり中身がないためと思われる。徹底的に自己中心的でアホな連中を登場させたり、徹底的なブラックさでグロく攻めてくれれば、多少は評価できるが、評価できる部分が見当たらない。本作のラストにおいて自己評価しているが、「何の教訓も得られない作品」としか言いようがない。コーエン兄弟はアカデミー賞を受賞したので、あえて“中身がない作品”を作ろうとしたのだろうか。 この手の作品は、“単純な複雑さ”が求められるものだ。本作は、単純なことを回りくどく描いているだけのような気がする。 Aの行動をBが疑い、Bのその行動をCが疑い、Cのその行動をDが疑い、Dのその行動をAが疑うようなものが“単純な複雑さ”といえるケースになるだろう。 「全身美容整形手術費用をフランシス・マクドーマンドが欲しい」という基礎となる根っこがあり、「マルコヴィッチから金をふんだくる」というところまでは悪くはないが、そこから話が上手く転がっていない。CIAやロシアといった面白いファクターもあるのに、有効利用されていない。マルコヴィッチは、マクドーマンドのことをギャングかロシアのスパイと勘違いして、動揺して金を準備して、そのマルコヴィッチの不審な行動を、妻のスウィントンは離婚のための資産隠しと誤解するというように上手く転がせないものか。“データ”も“金”というアイテムも上手く活かせていないので、面白くなりようがない。 それ以外にも、執筆者であるマルコヴィッチは気づいていないが、ブラッド・ピットが手に知れたネタが実は重要機密が書かれており、CIAとロシアをも巻き込んだ騒動になるという王道ネタにすれば、まだ面白くなったのではないか。 オチに関しても、上手くオチているようには思えない。 「実はAが○○だった」というどんでん返しもなく、バタバタした挙句に訳の分からない拍子抜けのオチで逃げてしまった感が強い。CIAがマクドーマンドの主張を飲む理由も分からず、最低な“オチ”といえる。「実はマルコヴィッチはロシアのスパイであり、マクドーマンドの行動がロシアの利益に合致した」でも、「実はブラッド・ピットが○○○でいなかった」でもいいので、“オチ”をマジメに考えて欲しかった。[映画館(字幕)] 4点(2009-05-06 21:37:31)(良:1票) 《改行有》

37.  ウォッチメン 《ネタバレ》 原作未読。ザック・スナイダー監督作だけのことはあり、ビジュアルには文句がない。 練りに練られた映画であり、デキ自体は素晴らしいが、原作未読者にはあまりにも情報量が多すぎる上に、あまりにもストーリーがぶっ飛びすぎていて、付いていくのが精一杯だ。ストーリーは一本の線に収束されるように作られており、捨てる部分がないという気持ちは“理解”できるが、あまりにも詰め込め過ぎではないか。オジマンディアスの行動に“理解”はできるが、“賛同”もできないのと同じように、本作の作りには“賛同”はできない。ヒーローモノに必要不可欠な純粋な悪役が不在のため、軸の不安定さがあり、映画を面白くさせておらず、飽きる観客も増えるのではないか。 ただ、面白い点もいくつか見受けられる。 「ヒーローの限界」「この世の中はジョーク」「理解できない行動を起こすという人間の奇跡」というのは面白い部分だ。 ヒーローは火事から住民を救ったり、ギャング達をなぶり殺しにはできるが、世界を核戦争から救うことはできるのかという命題に対して、皮肉的ともいえる答えを提示している点は面白い。ヒーローの限界を知っていたコメディアンに世界地図を燃やされた際のオジマンディアスの目がとても印象的だった。 ヒーローの新たな一面や、善と悪との表裏一体性は確かに感じられるおり、この部分は評価すべきか。 また、「西部劇役者が大統領選に出馬する」ように、この世界は確かにジョークなのかもしれない。ロールシャッハのようなジョークが効かない人間にとっては、生きづらい世の中になったということだろうか。キーン条例制定により、ヒーロー活動を禁止されても、引退せずに地道に活動を続けてきた彼だからこそ、現実を受け入れることはできなかったのだろう。彼のような生き方が否定されるべきではないことは本作を通して描かれていると思われる。 さらに、人間は滅亡すべき存在なのか、救われるべき存在なのかという点にも触れられている気もした。 計算上では理解できない人間の本質や、人間という存在の奇跡的な面が描かれているが、こうした哲学的なテーマに飛んだりするので、本作を理解することが難しくなっているともいえる。 これらために、本作はまさに見る者によって、形が異なるロールシャッハといえる作品に仕上がっている。[映画館(字幕)] 6点(2009-04-19 22:37:51)(良:3票) 《改行有》

38.  マンマ・ミーア! 《ネタバレ》 ABBAについてはよくは知らなかったが、「どこかで耳にしたことがある、この曲ってABBAの曲だったんだ!」という驚きが大きかった。 それにしても、30年前のグループの曲なのに、音楽が生き続けて、歌い続けられるということは“奇跡”と思わざるを得ない。 年月を経てもまったく色褪せないのは、音楽くらいではないだろうか。 歌のチカラはやっぱり凄いと実感させられる。 はっきりいって「歌がそれほど上手くない」「ストーリーがメチャクチャ」「恐ろしいほどにダサい」とは思ったが、“それがどうした?”というような映画だった。 “楽しくて、ハッピーならばそれでいいじゃないか!”というノリで押し切られてしまった。 いい意味での“適当さ”や“ダサさ”がABBAの曲やギリシャの陽気さにマッチングしている。 ミュージカルは完璧さが追求される世界かもしれないが、完璧なダンスや、メチャクチャ上手い歌を聴かされたら、本作においては逆効果になるかもしれない。 また、ストーリーと世界観とのバランスが難しく、「二兎を追うもの一兎も得ず」ということになるくらいならば、「ハッピーになれる」という長所を確実に狙ってきたのだろう。 奥深さは全くないが、狙い自体は成功したといえるのではないか。 上映終了後、劇場で鑑賞していた女性たちは皆楽しそうな表情をしていた。 ただ、ストーリーにケチを付けるのは野暮だが、映画としては、あまり高くは評価できない仕上がりにはなっている。 ドナとソフィの親子愛、女の友情、ある意味では敗者であるドナの悲哀、若いソフィが狭い島から抜け出して、世界に羽ばたくといったことなども、きっちりとは歌い込まれているが、あまり高いレベルの深さはなかった。 すべてをきっちりと高いレベルにしろとは言わないが、何かひとつ“ドナとソフィの親子愛”辺りは感動できるようなレベルにまで、きっちりと描いて欲しかったところだ。[映画館(字幕)] 6点(2009-02-11 22:47:39)(良:1票) 《改行有》

39.  ザ・ムーン 《ネタバレ》 映像は豊富であるものの、「月面旅行」を体感できるような類の映画ではなく、基本的にはコリンズ(アポロ11号に乗ったのに月面を歩けなかった人)を中心とした宇宙飛行士たちが語るエピソードがメインの眠くなる類のドキュメンタリーだ。 しかし、この手の分野には興味のあるものの知識がなかっただけに、“人類の進歩や挑戦”の苦労や興奮を体感できたり、「冷戦」を背景とした当時の“宇宙開発計画”の時代の裏側を知れたりと、非常に興味深い時間を過ごすことができ、いい勉強にはなった。 神秘的な映像を見られると思った人には、おっさん達のつまらない話としか感じないが、関心のある人には優良ドキュメンタリーとなるだろう。 本作を見ることで、ニール・アームストロングの『That's one small step for a man, one giant leap for mankind』(これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である)という有名なセリフの深さや重さを味わうことができた。 このセリフには感動させられる。 先人たちの無謀ともいえるチャレンジスピリッツがあるからこそ、現在の豊かな暮らしに繋がっているとも感じられるとともに、人類や人間には不可能はないということも感じられる。 そして、“月”を描くということは、間接的には“地球”を描くということにも繋がっているとも感じられた。 本作の裏のテーマは“地球”であるのは間違いないだろう。 奇跡の惑星である“地球”の美しさは見事としかいいようがない。 “月”から“地球”を眺めてみれば、“地球”を汚染したり、ちっぽけなことで争いをしている人類の愚かさを改めて実感させられる。 “地球”の奇跡を享受することを当然のことのように考えるのは、間違っているとも感じさせられる。 確かに、眠くなるドキュメンタリーかもしれないが、本作を見ることで、人類や地球について何かを感じ取れることができるのではないだろうか。[映画館(字幕)] 6点(2009-02-07 23:30:28)(良:1票) 《改行有》

40.  007/慰めの報酬 《ネタバレ》 傑作「カジノロワイヤル」よりは少々落ちるものの、満足のいく仕上がりとなっている。カーアクション、モータボート、飛行機、パラシュートと、過去の“007シリーズ”で描かれてきたことが非常に多く盛り込まれていると気付かされる。石油まみれで殺された女性の死体の描き方はもちろん「ゴールドフィンガー」からの引用だろう。 このシリーズに愛着ある者には“ニヤリ”とさせられるシーンが数多かった。 本作はやはり紛れもなく“007シリーズ”の系譜を引いている作品だ。 悪く言えばオリジナリティが欠如している作品かもしれないが、本作のオリジナリティといえば“復讐”の描き方だろう。 復讐に燃える二人の男女を描き、『復讐とは何か』を問うている。 鑑賞中は「ボンドは彼女に復讐を果たさせない」というベタなオチで締めくくるのかと思っていたが、「彼女に復讐を果たさせる」という予想外の展開だった。 確かに「彼女に復讐を果たさせない」よりも「彼女に復讐を果たさせる」方がより“深み”を増すという結果になっている。 たとえ、復讐を遂げたとしても、その後には何も残らない、呆然とへたり込んで一歩も動けなくなり、ただ死を待つだけだ。 “復讐を果たしても何にもならない”と言葉で説得するよりも、“実際に何もならない”と描く方がより説得力が増している。 ポール・ハギスの脚本の上手さがよく分かるシーンだ。 真の意味で“復讐を果たす”とは、「復讐するという気持ちを忘れて、復讐から自由になること」ということなのだろうか。 ボンドが投げ捨てたペンダントからは、そういう趣旨が伝わってきた。 ボンドが飛行機の中で6杯ほど飲んでいたお酒は、ボンド命名の“ヴェスパー”というお酒。前作で死ぬほど愛したのに裏切られた女の名前を付けたお酒だ。 こういうシーンも奥深くて、非常に上手いと感じられた。 ボンドの苦悩が感じられ、まだ開放されていないと知ることができる素晴らしいシーンだ。 そして、「相手を許して、自分も許せ」とマティスの言葉にも重みがある。 ボンドに対して恨みがあるからこそ、マティスの言葉には胸を打たれる。 さらに、かつてGUCCIのデザイナーをしていたトム・フォードの手掛けたボンドの衣装も必見だ。ファッションに興味のある人には、注目して欲しい。[映画館(字幕)] 8点(2009-01-25 21:55:41)《改行有》

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