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【製作国 : イギリス 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
1. 逆転のトライアングル 《ネタバレ》 全編にわたって寄せてしまう"眉間のシワ"。 原題は美容外科用語から来ている。 監督の前作『ザ・スクエア』は視聴済み。 2作連続でカンヌパルムドール受賞の快挙らしいが、他に相応しい作品はあったのではないか? 格差社会を描いたテーマは過去にもたくさんあれど、 本作はその対象物(男性と女性、富裕層と労働階級、白人と非白人、健常者と障害者、資本主義と共産主義)を広げすぎてしまい、 ブラックコメディとしての切れ味がイマイチだった。 居心地の悪さと気まずい空気を生み出す巧さは相変わらずだが。 割り勘を巡り、インフルエンサーの彼女と長々と揉める立場の低いモデル男性の卑小なプライド。 「スタッフを休ませなきゃ」という思いつきで無理矢理泳がせるセレブばあさんの偽善。 ファーストフードも高級ディナーも口に入れば、吐瀉物も排泄物もみんな一緒。 無人島漂着時、セレブ全員にサバイバルスキルがないために、唯一持っている女性清掃員が女王に君臨するグダグダな一幕。 どこかで見たことのあるような展開で、いくら皮肉たっぷりに金持ちも貧乏人も全方位的にコケにしたって、 前者からしたら免罪符、後者からしたらガス抜きにしか見えない。 今の資本主義社会の権力者の横柄に"ノブレスオブリージュ"は必要だが本作を見て襟を正す人はいるのか(財○省とかね)。 金で買える"安全な場所"がある限り、ヒエラルキーの頂点に立つ者はどこまでも無礼になれる。 無人島がリゾート地だと判明した瞬間、女性清掃員にはその金がないし、いつまでも平穏は存在しない。 社会構造が転覆しようが、これからもずっと誰かが割を喰らい続ける。[インターネット(字幕)] 4点(2025-03-11 23:46:31)《改行有》 2. NIMIC/ニミック 《ネタバレ》 わずか12分でランティモス独自の不条理さを堪能できる短編。 チェロ奏者の男が謎の女によって、父親としても、夫としても、演奏家としてもアイデンティティを奪われ、居場所も奪われる。 最低限の台詞と生活感のない無機質な空気が常に緊張感を漂わせながらも、 見た目の時点で性別すら完全に違うのに誰も気づかない、演奏の下手さも模倣している辺りにブラックユーモアを感じさせる。 全てを失い、何も無くなった男は、電車でアフリカ系の青年に話しかけられるが、彼の人生を乗っ取るつもりだろうか? 入れ子みたいな構造でクセになりそう。[インターネット(字幕)] 7点(2025-03-11 22:57:22)《改行有》 3. ブルータリスト 《ネタバレ》 アメリカンドリームが華々しく煌びやかであるほど、あぶれた分だけ漆黒の絶望が広がっていく。 虚栄と強欲にあふれたアメリカで偽りの自由に囚われ、"アメリカ人"として生きていくこと、そして己の帰属意識とは? 「期待はしていない」と常にやつれた顔を見せる建築家。 ホロコーストから逃れても、新天地でも差別され、搾取され、凌辱されて支配される。 緩慢な地獄、そしてシオニズムへの回帰。 ブルータリズム建築物はコンクリートを中心に構成された、どこか無機質で冷たく、コントロールされた印象を受ける。 それはタイトルの語源である"Brutal"="残忍な"を意味する通り、 人間の残忍さだけでなく、狡猾さ、傲慢さ、醜さ、愚かさと卑小さを兼ね揃えている誰にでも持つ本質。 それでもなお、その先にある"到達点"こそ重要であると。 ユダヤ民族の苦渋の歴史を生々しく映しながらも、尊厳としての、抵抗としての建築物を残すこととリンクする。 そこに意思を貫こうとする"美しさ"があった。 (ただ、イスラエルのガザ侵攻を見るに、公開時期的にタイミングが悪いとしか言いようがない)。 215分の長尺であるが2部構成に分け、中盤に15分の休憩時間を差し込むことで、 意識の切り替えと後半への期待を寄せる、故に観客を退屈させない仕組みを構築している。 昔の大作映画にはそういうものがあったそうで、今までにない貴重な体験。 オープニングとエンドクレジットの意匠凝らしに、 クラシックへの回帰だけでは終わらせないアーティストとしての矜持を感じた。 そう、本作の監督はブラディ・コーベット。 ミヒャエル・ハネケのリメイク版『ファニーゲーム』に出演したぽっちゃり系の若者は生き残るため監督へと転身した。 若さ故だからこそ挑発的な作りであり、巷にあふれている消費されるだけの映画業界に対して抵抗を叩きつけた。 粗削りで暴力的とも言える野心たっぷりで、負けてたまるかと言わんばかり。 次世代のアーティストが力で押さえつけようとする時代と戦い続ける限り、これだから映画はやめられない。[映画館(字幕)] 8点(2025-02-21 22:36:03)《改行有》 4. 哀れなるものたち 《ネタバレ》 胎児の脳を移植され、甦った女性の魂は胎児のものか、それとも生前の女性のものか。 そのどちらもはっきりしないまっさらな状態のまま、彼女は知恵を得て、世界を見て、猿から人間に変化を遂げる。 そして支配欲に満ちた男が恐れるだろう、凝り固まった既存の常識をなぎ倒し、 愚かな所有物から独立して一人の女性としてのアイデンティティを確立する。 その成長過程をエマ・ストーンが余すことなく演じ切り、主演女優賞は納得。 ところが社会正義に目覚めようが、貪欲に知識を吸収しようが、倫理観と慈悲の心は身に付かなかったようだ。 フェミニズム映画のように思えて、"哀れなるものたち"とは一体誰だったのか。 現代における"正義の顔をした悪"の台頭に、本作はそれすら笑い飛ばしているように思える。 ルールを取っ払えば、男も女も悪知恵だけはある本能に従順な猿に過ぎないのだから。[インターネット(字幕)] 7点(2025-01-01 23:58:00)《改行有》 5. ブリッツ ロンドン大空襲 《ネタバレ》 タイトルの"Blitz"はドイツ語で"電撃戦"のことを指す。 1940年秋のナチスドイツによるロンドン大空襲を背景に、 黒人の血を引く少年が疎開を拒み、白人の母親の元に帰ろうとするシンプルなストーリーだが、 「戦争はやめよう、人種差別はやめよう」というメッセージの先にあるものがまるでなく、 内容が水のように薄かった。 母役のシアーシャ・ローナンをはじめ、俳優初挑戦の祖父役のポール・ウェラーの好演は言うに及ばず、 潤沢な資金を使った空襲シーンのCGの本気度、格調高い美術セットといった技術面のクオリティは高い。 だからこそ惜しい映画なのだと。 幾度の空襲に耐え抜いたイギリス国民の神話に対して異論を述べたかったのは分かる。 透明人間に近いマイノリティに光を当てたことは、黒人監督であるマックイーン監督ならではだろう。 だが、イデオロギーが強すぎて、物語と登場人物が"多様性社会"と上手く溶け合っていない。 別に祖父を死なせる必要はなかったし、最後に母子が再会しても何の感慨もなく、ただ終わっただけである。 とは言え、ディケンズの児童文学を彷彿とさせる雰囲気があり、ハードな描写が少なめのため、 児童からお年寄りまで家族で一緒に見るには丁度良いかもしれない。[インターネット(字幕)] 5点(2024-12-01 21:18:57)《改行有》 6. テトリス 《ネタバレ》 一度はプレイしている人は少なくないのではないかという『テトリス』。 シンプルながらゲームボーイでかなり熱中していた世代の一人だ。 それを如何に映画化するともなると、ゲーム単体にストーリーを付けるのではなく、 冷戦末期の旧ソ連で誕生したゲームのライセンス争奪戦というユニークな造り。 本作を見て思い出したのは、 『アルゴ』を彷彿とさせるポリティカル・サスペンスの側面と、 『AIR/エア』で描かれたビジネス映画としての側面だ。 (どちらもベン・アフレック監督作品で、前者で幾分影響を受けていたのではないか)。 実話と言っても、展開を盛り上げるためにかなり誇張している箇所があり、 主人公の家庭が崩壊直前までに追い詰められたり、開発者が起こしたボヤ騒ぎ、 終盤のカーチェイスからのソ連脱出劇はほぼ創作だろう。 最終的に大成功を収めるのは分かるのだが、 駆け引きに、裏切りに、友情に、期待に、失望に、信頼に、と上手く絡まり合い、 ある種のフィクションとして見るならラストまで目が離せなかった。 時折、挟み込まれるゲーム的演出が心憎く、任天堂が深く関わったこともあり、日本への目配せも忘れない。 監視と密告とハニートラップと賄賂が当たり前のソ連体制側においても、 国家の利益のために主人公に手を貸す誠実な者、国家すら信用せず私腹を肥やしたい腐敗した者、 それぞれの思惑があって、いつか国が崩壊するのも分かっている。 共産主義国の恐さと閉塞感がひしひし伝わるも、一つのゲームが歴史を変えた壮大な物語に仕上がっていた。[インターネット(字幕)] 7点(2024-11-18 22:17:34)《改行有》 7. ぼく モグラ キツネ 馬 《ネタバレ》 わずか34分の短編なのに傑作長編映画を見たときのような濃度と満足感。 原作絵本のタッチをそのまま活かしたラフの線を残したアニメーションに、 家までの旅路を静かに優しい眼差しで見守っている。 だからこそ、時折挟み込まれる哲学的で、下手すればあざとさも感じてしまう台詞の数々が、 スッと心に入ってくる。 「弱さを見せることは強さだ」。 「今まで言った中でいちばん勇敢な言葉は何?」。 「助けて」。 「助けを求めることは諦めるのとはちがう。諦めないためにそうするんだ」。 彼らは出会うまでどこか孤独だった。 モグラが罠にかかったキツネを助けた勇気、肉食のキツネが彼らと一緒にいる勇気、 馬が自らの秘密を明かした勇気、それが大きな力となって目的地の少年の家に導かれていく。 ところが少年は我が家ではなくて、二匹一頭の元に帰ることを選んだ。 目頭が熱くなる。 なぜ少年は雪原に迷い込んだのか、そして目的地だった我が家が本当の居場所なのか分からない。 そこを踏まえると、様々な隠喩と想像を掻き立てられる。 愛にあふれ、優しくて、温かくて、美しい映画だった。[インターネット(字幕)] 9点(2024-11-18 21:13:58)《改行有》 8. シビル・ウォー アメリカ最後の日 《ネタバレ》 アメリカは世界一の経済大国であり、IT大国であり、エンタメ大国だ。 だが、新自由主義を推し進めたが故に格差が著しい大国でもあり、今なお残る人種差別に、 機会はあれど能力に恵まれなかった者にはひたすら容赦なく残酷だ。 それが圧倒的な凶悪犯罪率であり、大都市には麻薬に溺れた路上生活者で溢れ、絶望死した者も少なくない。 一方で成功した一部のマイノリティが己の価値観を強制するポリコレによって保守層の不満が募り、 上記の極端な事例によるトランプの台頭、やがて対立・分断し、長年の社会の歪みがツケになって顕著化した成れの果てが本作だ。 関わることを諦めた地方の無関心、そして「お前はどういうアメリカ人だ?」という問い。 そこには外部がズカズカ入り込めないアメリカの病みが詰まっている。 世界の警察やらグローバリズムやらを伝搬して、諸外国に首を突っ込んでいるクセにである。 そんな世界をジャーナリストは誰かを犠牲にすることでフレームに真実を収める。 初心な新人カメラマンが次第に冷徹な人間へと変わっていき、最後は主人公の犠牲をも手柄にしていくのは皮肉だ。 大統領の死体と兵士の笑顔が写る一枚に、アンミスマッチな曲が流れるエンドロールの居心地の悪さと来たら。 自分事にならない限り、自国の危機に誰も動かないだろう。 次期大統領がトランプになろうが、カマラになろうが、詰んでいるとしか言いようがないアメリカ。 外部から対岸の火事として見ている日本はどうだろうか? 大国にひたすら媚びへつらって搾取される側を選ぶのかね。[映画館(字幕)] 7点(2024-10-04 23:59:48)《改行有》 9. FALL/フォール 《ネタバレ》 もう二人がやっていることは完全に自業自得。 映画の半分以上は高度600mの狭い足場の二人芝居で展開されるため、 どう展開していくのかが腕の見せ所で、錆びたハシゴの描写に今にも緩みそうなナット、 CG合成だと分かっていてもいつ落ちるか冷や冷やしてしまう。 あの簡素な鉄塔が実在するのかよ、とツッコミどころが少なくないのは確か。 特に通知が届いて助かりましたは分かるが、救出描写の割愛にしろ、 その御都合主義な顛末が本作の希有さを凡庸なものにしてしまった。 ヒロインが生還できたことに対するメッセージを述べたところで何の感慨もなく、 ヤバい誘いをしてくる友達は選びましょうくらいしか言えない。 時折、YouTuberが高所の撮影中に転落死する事故が起きると、 手軽に発信できるネットを想像力が欠如した愚者に使わせるとどうなるか、 警鐘を鳴らす意味でバッドエンドの方が良かったのではないか? 追記:サウスダコタ州に"KVLY-TV塔"という本作のモデルらしい電波塔が実在しており、 メンテナンス作業する姿がYouTubeで投稿されているのでリアルな恐怖を感じたい方は是非。[インターネット(字幕)] 6点(2024-06-30 15:08:17)《改行有》 10. 関心領域 《ネタバレ》 「私たちはシステムに組み込まれている」。 その枠組みの中で劇的な展開が起こることのないホームドラマ。 主要人物がアウシュヴィッツ強制収容所の所長の家族であることを除けば。 『2001年宇宙の旅』を彷彿とさせるBGMのみのオープニングで"音を観る映画"だと認識させる。 一枚一枚完成度の高い、硬質でスタイリッシュなショットの数々は不純物を取り除いた無機質さであふれ、 今まで排除されてきた不純物が遠くから見え隠れする。 それが壁一枚隔てた収容所の黒い煙であり、悲鳴であり、銃声であり、 川に流れ込んだ遺灰であり、日常に溶け込んでいる。 そんな生活を送っている家族は何を思って日々を過ごしていたのか。 現在そのレビューを書いている自分にも同じことが言える。 ウクライナとガザ侵攻のニュースが対岸の火事として日々流されている裏で、 日常化したアジアや中東やアフリカや中南米の紛争・内乱について現在ほとんど触れることはない。 それだけでなく、日本でも見て見ぬふりしている問題が点在している。 100円台で提供される菓子パンの裏で、 激務の果てにベルトコンベアに巻き込まれて従業員が死亡したパン工場での事故。 ペットブームの裏で人間の身勝手で捨てられ、殺処分される愛玩動物。 セーフティーネットから取りこぼされ、命を落としていく社会的弱者。 私たちはその問題を知っている。 だが、「何もしてあげられない」。 こちらにだって社会的立場があり、生活がかかっている。 きっと80年前の所長の家族も同じだろう。 オスカー・シンドラーのように人道のために踏み出せる人などたかが知れている。 かつてジャミロクワイのPVを手掛け一躍その名を知られたジョナサン・グレイザー監督はユダヤ人の血を引く。 アカデミー賞受賞時にイスラエルのガザ侵攻を非難したが、 ハリウッドの多くを占める同胞のユダヤ系映画人は彼のスピーチに一斉に猛抗議した。 「アウシュヴィッツで起きたことと、ガザで起きていることは全く別物だ」。 自分たちが恩恵を受けてきたシステムに背くことは今まで築き上げた所有物を犠牲にする覚悟である。 大量虐殺可能なガス室の建設が決まり、 「人としておぞましいこと」を自覚しているのかは知らないが、誰もいない通路で所長は独り嘔吐しかける。 それは最後に残された彼の"人間性"か。 博物館として現代の収容所に積み上げられた虐殺の痕跡を前にルーティンワークとして淡々と掃除するスタッフたち。 ニーチェ曰く、「深淵を覗く時、深淵もまたこちらを覗いている」。 80年後の世界を見つめる彼には裕福な生活を、愛する家族を守らなければならない。 異常さに耐え切れず、手紙を置いて密かに邸宅を出て行った所長の妻の母親が帰宅後に意識を切り替えるが如く、 自分もまた、悲鳴だらけのエンドロールから“普通の日常生活“へと取り繕うだろう。 「私たちはシステムに組み込まれている」。[映画館(字幕)] 7点(2024-05-24 22:30:17)《改行有》 11. 生きる LIVING 《ネタバレ》 オリジナルは鑑賞済。 忠実なリメイクになっているものの洗練された造りになっており、 主人公と元同僚の若い娘との絡みはオリジナルと比べてくどくなくて良かった。 これはお国柄の違いだろうし、スタイリッシュな出で立ちのビル・ナイを起用したキャスティングの勝利だと言える。 葬儀後のグダグダな展開はバッサリ削り、上手く場面転換をしながら綺麗に"THE END"へと着地していく。 オリジナルのお役所体質への批判は最低限に留め、新人職員と若い娘の見せ場を増やして、 普遍的で誰にでも見易いヒューマンドラマに仕上げていた。 当然、オリジナルの凄みには及ばないかもしれないが、コンパクトにまとめたリメイク版を推す。[インターネット(字幕)] 7点(2024-05-15 21:56:01)《改行有》 12. ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密 《ネタバレ》 グダグダだった前作に比べれば、何とか持ち直したと言ったところ。 単品で見れば魔法界の最高権力者を目論むグリンデルバルトの野望を阻止するシンプルな筋書き。 魔法生物はやや置いてけぼりながら重要シーンで盛り込み、一応は幸福なひと時で映画を締めている。 冤罪で降板させられたジョニー・デップに代わり、マッツ・ミケルセンがグリンデルバルトを演じているが、 魅力的なヴィランを上手く引き継いでいると感じた。 しかしながら、主人公のニュートの影が薄く、ダンブルドアとグリンデルバルトの愛憎劇へと脱線していくのでは、 本筋のファンタスティック・ビーストである必要がないので次回は原点回帰して欲しいものである。[地上波(字幕)] 5点(2024-03-30 21:26:04)《改行有》 13. 西部戦線異状なし(2022) 《ネタバレ》 1930年製作のハリウッド版は視聴済みであるものの、本作はリメイクではなく古典の反戦小説の再映画化であり、 現代の観点で脚色されたのもあるからか、似通ったシーンがほとんどないに等しい。 せいぜい冒頭の生徒たちの出兵を煽る教師と、中盤の妻子持ちの敵兵を直接殺してしまった狼狽ぐらいだろうか。 死んだ兵の服をはぎ取り、洗濯・お直しして新兵の服として提供するところからして、 ただの部品としか見ていない戦争の非情さを良く表している。 憔悴していく主人公の青年と並行する形で軍部上層部のやり取りで見られる豪華な食事もそう。 あと少しで停戦なはずがお偉いさんの大義のために無理矢理突入させられ、 理不尽な形で消費されていく主人公を含むその他大勢の兵士たちの死… 非常にオーソドックスながらハリウッド版とは違ったドライさが突き刺さる。 確かに今の時代だからこそ見るべき映画なのかもしれないが、現代ならではの新しい切り口が欲しかった。 もし本作みたいなことが日本で起こったら、我々にできることは国外脱出するか、 国会議事堂を包囲して大規模な反戦デモを敢行することくらいだろう。[インターネット(字幕)] 6点(2023-12-09 01:41:41)《改行有》 14. 宇宙人ポール 《ネタバレ》 エドガー・ライトが監督でないことを除けば、いつものサイモンとニックのコンビに ステレオタイプな姿の宇宙人ポールが加わったドタバタ珍道中。 好評な割にあまり乗れなかった。 クセが少なく、見やすく、ただストーリーがダレ気味であまり印象に残らない。 ポールがスピルバーグ本人に電話で『E.T.』のアドバイスをしたり、 ラスボスが『エイリアン』で死闘を繰り広げたシガニー・ウィーバーだったりと、 面白そうな小ネタはあったんだけどね(すごく贅沢な使い方だ)。 遠い昔に見たままだったので、機会があればもう一度見たいと思った。[DVD(字幕)] 4点(2023-07-29 11:29:07)《改行有》 15. ファウスト(1994) 《ネタバレ》 人間の顔をした"悪魔"に気を付けろ。 そこには奇跡も魔法もないんだよ。 怪しげなビラに記された地図に導かれ、満たされない日々を送る男が体験する悪夢。 欲しいものと引き換えに悪魔に魂を売り渡す契約をしたが最後、 台本通り動く操り人形の如く、地獄へと一直線。 現実と虚構が曖昧になっていく中、道化師の呪文に右往左往される悪魔が笑いのツボに入った。 どこか既視感があると思ったら、過去作の『ドン・ファン』の要素も多少入っているのだろう。 もう一度言うが、人間の顔をした"悪魔"に気を付けろ。 心の隙間に入り込み、魂を食い物にする。 序盤に主人公とすれ違って逃げた男、新聞紙に包めた身体の欠片を見るに、 奈落への入り口に我々は立っている。[インターネット(字幕)] 6点(2023-05-24 21:39:57)《改行有》 16. ハリー・ポッターと炎のゴブレット 《ネタバレ》 原作既読済みだが、上下に分かれるほどの大長編で読むのが苦行だった気が… ヴォルデモートの復活、セドリックの死、ムーディが偽者くらいしか覚えていない。 それから10数年経って映画を見る機会があり、視覚と聴覚に物語が入ってくることの有難みを感じる。 思春期に入ったので少年少女共々面倒臭いに尽きる。 それを集中して描けば良いのに心理描写が唐突すぎて、四面楚歌からのいきなりな手のひら返しと、 ただただ話をまとめるためにローテーションをこなしているように感じた。 見ている間は退屈しないかもしれないが、全体を俯瞰すると悪い意味でゴチャゴチャしていて、 原作を読んでいた頃は気にならなくても、生徒一人殺されてダンブルドアが責任取らないのは確かにモヤモヤする。 やはり原作トレースしたダイジェスト感が否めず、TVシリーズ向きな作品だろう。[地上波(字幕)] 5点(2023-05-18 23:13:38)《改行有》 17. アルゼンチン1985 〜歴史を変えた裁判〜 《ネタバレ》 1976年から1983年にわたり、アルゼンチンで発足した軍事独裁政権による国民への熾烈な弾圧が行われ、数万人もの犠牲者が出た。 政権が倒れたあと、当時の首謀者を裁くべく、正義を以て戦う検事と若き法律家を描いた実録法廷ドラマ。 堅苦しい映画ではあるが、小難しい内容にはなっておらず、知らない人にも分かりやすいエンタメ作品に仕上がっていた。 法廷シーンに移行してからはずっと引き込まれ、暴力描写に満ちた回想シーンを一切用いらなくても、 証言が雄弁に真実を語る力強さに圧倒され、脅迫されても何事もなく振る舞う家族のタフさに驚かされる。 検事とタッグを組む副検事が政権を握っていた軍を全否定しないように、 人間という矛盾した存在ながらも、人の尊厳を保つこと、いかなる組織でも罪は罪であることを認識させることの重要さを説く。 民主主義と社会正義を強く訴える検事の最終論告も実際の映像を交えながら力強い光を放つ。 ここで終わってくれたら完璧だったんだけどね、その後の展開が蛇足になってしまった感がある。 とは言え、再現VTRに墜ちておらず、映画としてはなかなかの良作。 ゴールデングローブ賞で受けたのも、言語を超えた普遍的なメッセージ性と時折挟み込まれるコミカルさによる敷居の低さかな。[インターネット(字幕)] 7点(2023-05-01 23:59:09)《改行有》 18. オテサーネク 妄想の子供 《ネタバレ》 2時間強とやや長めだが、切株の人形に命が宿ったあたりからジェットコースタームービーの如く引き込まれた。 シュヴァンクマイエル監督の映画を幾分見ていたのもあり、比較的分かりやすくエンタメ寄り。 ご丁寧にも元ネタの民話を説明してくれる。 「食べることは相手の命を奪うこと」。 そのグロテスクさを否応なしに突き付け、子供ができない夫婦のエゴイストぶりと重なる。 嘘を付き続けて、ますます引き返せなくて、増えていく犠牲者たち。 夫婦の秘密を知った隣人の少女はそれを分かっていながら、オテサーネクとの絆を選ぶ。 秘密を持つことにワクワクしながらも自身の所有物として見ている感じの子供の残酷さが際立つシーンだ。 短編『地下室の怪』(1983)のセルフオマージュ感あり。 キャベツ畑を荒らされた管理人の老婆が民話通りオテサーネク討伐を仄めかして映画は終わるが、 そう問屋は卸さない気がする。 期待通りの気色悪さ、堪能させて頂きました。[インターネット(字幕)] 7点(2023-04-27 23:32:42)《改行有》 19. ハリー・ポッターとアズカバンの囚人 《ネタバレ》 監督がアルフォンソ・キュアロンに変わったため、少し大人でダークな雰囲気になり、 新たな風を吹かせたことには成功した…かもしれない。 原作は読んでいたため、タイムパラドックスを取り入れた展開が一番面白く見られた。 本作を最後にリアルタイムでハリポタシリーズを見ることを断念しており、 原作が複雑長大化して読む体力が続かなくなったことが以降のシリーズ鑑賞のハードルを上げている気がする。 肩肘張らずにいつか4作目以降も見てみたい。[映画館(字幕)] 6点(2023-02-11 01:07:50)《改行有》 20. ハリー・ポッターと秘密の部屋 前作より少しダーク寄りになり、子供向けな演出が少し角が取れた分、頑張ればギリギリ大人でも視聴できるかも。 ワクワクさせる新キャラ、新要素が続々と登場して、長時間な割に退屈はしなかったけど、記憶がほとんど残ってない…[映画館(字幕)] 5点(2023-01-23 21:45:53)《改行有》
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