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【製作国 : イギリス 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
1. 死にゆく者への祈り 主人公は元IRAのテロリスト。 かつて自らが犯した罪に苦しみ続けている。 この物語は、彼がその罪をどう受け止め、贖おうとするのかを静かに描き出していく。 主人公の内面の葛藤が率直に表現されており、信仰とは何か、救いとはどのような形をとるのかという問いが深く心に響いてくる。 単なるドラマを超えて、宗教的・哲学的なテーマが繊細に扱われている点が、この映画の大きな魅力。 ミッキー・ロークの抑制の効いた存在感が素晴らしく彼の頂点ではないかと思う。 微妙な表情や仕草から、苦悩に満ちた複雑な感情が滲み出る。 ボブ・ホスキンス、アラン・ベイツ、サミ・デイヴィス、そして若きリーアム・ニーソンらもそれぞれの役に説得力を与え、この物語の世界観を支ええう。 ビル・コンティが手がける音楽は、主人公の心情や場面ごとの雰囲気を見事に引き立てていく。 映像美も控えめながらも効果的で、静けさと緊張感が画面全体に漂い、作品全体のトーンをさらに豊かにしている。 この映画は、決して派手なアクションやスリルを期待するタイプではなく、静かに展開される人間ドラマが、観終わった後にも心に深い余韻を残してくれる。 丁寧に作られたキャラクター描写や、繊細なテーマへのアプローチが、本作を単なる犯罪映画以上のものにしていると感じた。 原作も読んだが、先に読んでなくてよかったと思う。 映画を観たシーンが小説を見た時に挿絵のように甦りますます小説の中に入り込む自分を感じてしまった。 素晴らしいストーリーがこの世の社会の葛藤に中に飲み込まれていく人の運命の儚さを伝えてくれるのだ。 素敵だったミッキーロークの時代と共に忘れられない名作。[ブルーレイ(字幕)] 9点(2025-03-21 18:27:24)《改行有》 2. ビーキーパー ジェイソン・ステイサムが元工作員として圧倒的な強さで復讐を果たす、爽快感あふれるリベンジアクション映画だ。 その強さったらこれまで以上でもはや芸術的と言えるほどか。 養蜂家として静かな日常を送る主人公が、恩人の老婦人を死に追いやった詐欺組織を徹底的に追い詰める姿は痛快そのもの。 一方で、その行動を追うFBI捜査官が、正義と法律の狭間で葛藤する視点も描かれ、単なるアクション映画を超えた深い余韻を残す。 物語はシンプル過ぎるほど善悪がはっきりし過ぎる感があるが 最後には正義とは何か、法律とは何かを問いかけるような切なさも漂い、不思議な物悲しさと共に胸に響く。 ステイサム映画の中でも、最も味わい深い一本だった。[インターネット(吹替)] 7点(2025-03-16 03:36:02)《改行有》 3. ウィッカーマン(1973) 『ウィッカーマン』は、1973年公開のイギリス製ホラー映画。 一度観たらその衝撃が忘れられない、まさにカルト映画だ。 公開当初は批評家や商業的に苦戦するも、1980年代以降カルト映画として再評価された作品。 結果、ガーディアン紙などがホラー映画のベストリストに選出するなど、後世に多大な影響を与える作品となった。 2019年の映画『ミッドサマー』は本作からの影響を受けており、類似したテーマや演出が見られるのはそのため。 物語は、孤島に住む集団が繰り広げる異教的な儀式と、厳格なキリスト教徒の警官が巻き込まれる展開。 島の閉ざされた空気感、古代の信仰と儀式の不気味さが際立っていて、当時の地域社会の独特なムードが色濃く表れてる。 いま観ると現代の洗練された娯楽と比べ、どうも時代遅れに感じるかもしれないので割り切りが必要。 エンタメとして楽しみたかったら2006、ニコラスケイジ版ウィッカーマンを見るべきだろう。 現代的な楽しさには欠けるものの、閉鎖された集団の異様な世界観と、そこに漂う神秘的な空気は評価できる。 ただし、二度目の鑑賞はほぼ無理というのが正直なところ。 だからネタバレ厳禁のレビュー記事が望ましい。 カルト文化の発掘のために鑑賞するなら7点だが 映画的な出来としては過去の映画に対しての尊重を込めて5点というところか。[インターネット(字幕)] 5点(2025-03-07 23:21:18)《改行有》 4. シビル・ウォー アメリカ最後の日 《ネタバレ》 観終えてまず感じたのは、「事前に抱いていたイメージと大きく異なる作品だった」という戸惑い。 タイトルから想像する“政府の崩壊”や“内戦によるアメリカの最期”といった過酷な描写を期待していたのだが実際に描かれていたのは、 無秩序となったアメリカを舞台に旅を続けるジャーナリストたちの混乱を追うロードムービー。 戦争や内乱といった大きなテーマを、政府機能の不全や戦闘シーンの連続としてではなく、人間の心理や生活に焦点を当てた描き方は斬新。 また、ロードムービー形式を採用することで、地域性や人々のサバイバル描写に重きを置いている点も興味深い。 “戦乱”を生々しい戦闘シーンとして見せるのではなく、人々の混乱や心情を描いていくのだ。 一方で、タイトルが示唆するほどの「社会構造の劇的な崩壊」がはっきりと描かれていない点には??。 これはおそらく日本語題の問題だろう。作中では内乱が勃発した理由や政府の問題点が直接的に示されるわけでもなく、 大統領の独裁的行動や憲法違反があったらしい、という程度の断片的情報くらい。 そのため、なぜここまで大規模な内戦へ発展したのかが終始つかみづらく、観客として状況をのみこみきれないままストーリーが進んでしまう。 ジャーナリストの視点で“真実を追う”ことがテーマになっているにもかかわらず、彼らが事態の核心に切り込む場面は意外と少なく、 どこか取材の記録映像のように表面的な混乱を映すだけで終始してしまう。 そうなるとやはり内乱勃発の具体的理由や大統領の極悪さなどが説得力をもって描かれていない点が気になって仕方ない。 国民同士が殺し合うほどの内戦であるなら、もう少し観客側が理解できる“決定的な背景”がないと納得できない。 戦争行為の理不尽さを伝えたいのはわかるが、映画としての構成が粗雑に感じてしまうとどうしても付き合いきれなくなっていく。。 さらに、ジャーナリストたちの使命感を描くはずが、いつの間にか戦場を撮り続ける行為そのものが“カタルシス”のように映ってしまう。 実際の戦場カメラマンの持つトランス状態や使命感は、もっと切実で非情なものであるはずだ。 作品の最後では主人公が不思議な“達成感”に包まれているようにも見え、観ている私が取り残されたような違和感に包まれる。 もし、こんなことが起きたら。という状況でのある種のSFのロードムービーとして、 “報道”の持つ意義や危うさ、そして混沌の中にいる人間ドラマを描いている点は評価できるのだろうが、 もう一度観るかと聞かれたら、しばらくは結構です。と答えます。[インターネット(字幕)] 4点(2025-03-06 02:28:03)《改行有》
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