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【製作国 : ギリシア 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
1. 逆転のトライアングル 《ネタバレ》 全編にわたって寄せてしまう"眉間のシワ"。 原題は美容外科用語から来ている。 監督の前作『ザ・スクエア』は視聴済み。 2作連続でカンヌパルムドール受賞の快挙らしいが、他に相応しい作品はあったのではないか? 格差社会を描いたテーマは過去にもたくさんあれど、 本作はその対象物(男性と女性、富裕層と労働階級、白人と非白人、健常者と障害者、資本主義と共産主義)を広げすぎてしまい、 ブラックコメディとしての切れ味がイマイチだった。 居心地の悪さと気まずい空気を生み出す巧さは相変わらずだが。 割り勘を巡り、インフルエンサーの彼女と長々と揉める立場の低いモデル男性の卑小なプライド。 「スタッフを休ませなきゃ」という思いつきで無理矢理泳がせるセレブばあさんの偽善。 ファーストフードも高級ディナーも口に入れば、吐瀉物も排泄物もみんな一緒。 無人島漂着時、セレブ全員にサバイバルスキルがないために、唯一持っている女性清掃員が女王に君臨するグダグダな一幕。 どこかで見たことのあるような展開で、いくら皮肉たっぷりに金持ちも貧乏人も全方位的にコケにしたって、 前者からしたら免罪符、後者からしたらガス抜きにしか見えない。 今の資本主義社会の権力者の横柄に"ノブレスオブリージュ"は必要だが本作を見て襟を正す人はいるのか(財○省とかね)。 金で買える"安全な場所"がある限り、ヒエラルキーの頂点に立つ者はどこまでも無礼になれる。 無人島がリゾート地だと判明した瞬間、女性清掃員にはその金がないし、いつまでも平穏は存在しない。 社会構造が転覆しようが、これからもずっと誰かが割を喰らい続ける。[インターネット(字幕)] 4点(2025-03-11 23:46:31)《改行有》 2. 永遠と一日 《ネタバレ》 政治的要素はあまりなく、2時間強の長さのため、アンゲロプロスの中では取っつき易い方。 それでも初見時は長回しや難解な台詞の数々でしんどかった。 エレニ・カラインドルーの音楽と時空を跳躍した撮り方が頭から離れず、数年後再見したら秀作と再評価。 妻に先立たれ、自らも死を目前にした老詩人の魂の彷徨。 アルバニア難民の少年の強かさと未来への眼差し。 交錯する生と死。 "永遠"になった過去と新しい"一日"を刻み始める現在。 難しく考える必要はない。 これは新しく生まれ変わった詩人の物語だ。[地上波(字幕)] 8点(2015-09-06 15:33:02)《改行有》 3. ユリシーズの瞳 《ネタバレ》 採点不能に近い。 ハリウッド俳優のハーベイ・カイテルを主演に据えているものの、 3時間近い上映時間に長回しと政治的要素が強いため、映画館で観ていたら確実に寝ていただろう。 本来のアンゲロプロスの作風が純度100%詰まっている。 しかし、映像に目を見張るものがあるのは事実で、 白黒からカラーに移り変わる際に現れる青い船、ワンカットで捉えた数年に亘る元旦のパーティー、 運河を渡る巨大なレーニン像、雪のサラエボ市街の交響曲と霧の中の虐殺が目に焼きつく。 映画の歴史とは常に真実の記録と表現の闘いの歴史であって、 かつて独裁国家であったギリシャや旧ユーゴとは無関係ではないはず。 1995年のカンヌ映画祭では、クストリッツァの『アンダーグラウンド』が最高賞、 本作が次点であると見るに、当時の旧ユーゴ内戦の関心度の高さが伺える。[ビデオ(字幕)] 5点(2015-09-01 20:32:13)(良:1票) 《改行有》 4. 霧の中の風景 《ネタバレ》 政治色が強く、長回し及びロングショットの多用で芸術映画を地で行くアンゲロプロス監督作品の中では 一番分かり易く敷居の低い映画であることには間違いない。 深い黒で覆われたオープニングから引き込まれ、初めて列車に乗った時の高揚感に胸が躍る。 まだ見ぬ父親に宛てた繊細で詩的な手紙に雪で時間が止まった群衆、 失われていく馬の命と遠景の結婚式の対比、 あまりに透徹であまりに美しい映像の力に魅了される。 それ故に政治的・難解さといったフィルターがあまり掛かっておらず、 現実が寓話に侵食し破壊していく様をまざまざと見せ付けられる。 トラック運転手に犯されて"女"にされた姉や時代の流れで廃れていく旅芸人の一座、 ヘリに引き上げられた神の手がそれだろう。 再会し恋愛感情を抱いたにも関わらずすれ違いで別れる際の旅芸人の青年の詩的な台詞が胸に迫る。 悲惨な現実を経て、ボロボロになって辿りついた姉弟を迎え入れるようにそびえる樹木は、 死によって彷徨う姉弟を慰める父親そのものかもしれない。 ある意味で救いかもしれないし、監督の厭世観を感じさせた。[ビデオ(字幕)] 9点(2015-01-17 22:33:20)《改行有》
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