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プロフィール |
コメント数 |
250 |
性別 |
男性 |
自己紹介 |
サンボリズムとリアリズムのバランスのとれた作品が好きです。 評価はもちろん主観です。 評価基準 各2点ずつで計10点 1.物語の内容・映像にリアリティを感じるか? 2.視覚的に何かを象徴できているか? 3.プロットの構成は適切か? 4.画面に映る動き・台詞や音にリズム感があるか? 5.作品のテーマに普遍性はあるか? |
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1. 83歳のやさしいスパイ
スマホもまともに使えないおじいちゃんが虐待の告発のために老人ホームに潜入する、こう書くと重苦しい社会派映画のようですが作品から受ける印象は真逆で朗らかで優しくかわいらしい感じの映画です。お年寄りって子供みたいなところがありますよね。妙にずれたことを言ったり、またある時は素直だったり、そこがおかしみを生んだり時にはもの悲しさを感じさせたりもします。この映画はチリが舞台ですが日本でもどこの国でもあり得ることでしょう。ドキュメンタリーとは思えないほど絵作りや色づかいは凝っており、ストーリーの構成も明確です。悪く言えばやらせっぽくもあり、そこが気になる方もいるかもしれません。しかしもし劇映画ならば役者の自然な演技が上手すぎますのでやっぱりこれはドキュメンタリーなのでしょう。カメラマンやマイクが映り込むのも演出のうちで、見ているこっちまで本来の目的を忘れそうになるとちゃんと劇中でもツッコミが入ります(笑)。聖フランシスコ特養ホームという名前を見ても舞台はカトリックが運営している老人ホームらしく、あちこちにキリストの十字架や像が置かれており、それが意図的にカメラに収められています。これは宗教的押し付けがましさというよりも、この映画が人間を愛することについての物語だということを象徴しているのだと思います。やさしいスパイという邦題は内容を的確に表現できています。[インターネット(字幕)] 8点(2023-08-28 23:36:28)
2. ベネデッタ
さすがにご高齢ともなると直球のエログロエンターテインメントはきつくなったので文芸風味の体裁を整えてみましたというところでしょうか。結局できあがったのはただのエログロ娯楽映画でキリスト教批判や同性愛の要素は具体的なメッセージというより単に下品な場面を見せるための口実としてしか機能しておらず、熱心なキリスト教徒でもなければこの程度の描写に心を揺さぶられるとも思えません。物語を語る上で不必要なほどの暴力やヌードに濡れ場、それも往年ほどの過激さはなく現代ではもはやありふれた大人しい描写でしかありません。中世は性的な抑圧や不当な暴力に溢れていたなんて今時誰でも知ってますしそこにテーマとしての目新しさもありません。歴史物として衣装や美術はちゃんとしていることが却って内容の平凡さを際立たせているとすら言えます。この程度の内容ならば80年代に作ることも可能だったでしょうし、その時代ならばより挑発的で意義深い作品になったでしょう。ここに見られるのは成熟というよりも老衰と言わざるを得ません。[DVD(字幕)] 4点(2023-07-29 23:08:24)(良:1票)
3. モリコーネ 映画が恋した音楽家
ジョン・ケージなんて正直何の価値があるのかいまいちわからなかったのですが、我々大衆に理解できなくともプロの世界には多大な影響を与えていたことがよくわかります。この映画で再発見したのはエンニオ・モリコーネは音楽家である以上に最高の映画演出家であったということですね。ウエスタンの冒頭シーンは音楽に頼らないセルジオ・レオーネの純粋な演出の力で見せているシーンだと思い込んでいたのですが、あれこそまさに現代音楽の発想を活かした演出だったのだと気付かされました。おそらく後世においては音楽を担当した作品のどの監督よりもエンニオ・モリコーネこそが重要な人物として名前を残すことになるのではないでしょうか(それと同じことがこの作品にも出演しているジョン・ウィリアムズにも言えるかもしれませんね)。そういう意味ではスタンリー・キューブリックは音楽を依頼するチャンスを逃してむしろ運が良かったのかもしれません(笑)。ジュゼッペ・トルナトーレ監督の作品は感傷的で大袈裟なメロドラマというイメージであまり好きではないのですが、この映画では観客へのサービスを意図した名曲集のような構成ではなくエンニオ・モリコーネのキャリアと思想を語るのに必要な映像と音楽を優先する姿勢で好印象です。ドキュメンタリーとしては基本的にインタビューと過去の映像を編集しただけの何の変哲もない作りではあるのですが、久々にこの映画が終わってほしくないという気持ちにさせてくれました。[映画館(字幕)] 8点(2023-05-03 21:47:39)(良:1票)
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