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プロフィール |
コメント数 |
1286 |
性別 |
男性 |
自己紹介 |
【名前】「くるきまき」(Kurkimäki)を10年近く使いましたが変な名前だったので捨てました。 【文章】感想文を書いています。できる限り作り手の意図をくみ取ろうとしています。また、わざわざ見るからにはなるべく面白がろうとしています。 【点数】基本的に個人的な好き嫌いで付けています。 5点が標準点で、悪くないが特にいいとも思わない、または可も不可もあって相殺しているもの、素人目にも出来がよくないがいいところのある映画の最高点、嫌悪する映画の最高点と、感情問題としては0だが外見的に角が立たないよう標準点にしたものです。6点以上は好意的、4点以下は否定的です。 また0点は、特に事情があって採点放棄したもの、あるいは憎しみや怒りなどで効用が0以下になっているものです。 |
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1. 迷霊怪談集
《ネタバレ》 ベトナムのホラー映画である。原題の「Chuyện ma gần nhà」とは近所の怪談というような意味らしい。場所はほとんどホーチミン市(サイゴン)、終盤の農村部は近郊のロンアン省とのことで、現地の雰囲気が映像に出ていなくもない。
内容としては、一部屋に集まった若手男女が都市伝説3話を語る趣向である。人が集まると怪談会を始める民族性なのか(日本だけでないのか)と思わせるものがあり、それで終了後に怪異が起こるというなら百物語の風情だが、この映画では語り出す前から怪異が起きていて、最後はむしろ新たな都市伝説(現代風ゾンビ伝説)が生まれたという意味かも知れない。
物語としては、第1話は比較的わかりやすいが設定上の突っ込みどころが大きい。また第2・3話は意味不明であって、Wikipediaベトナム語版のネタバレを読んだら(Google翻訳)かろうじて大体わかった。おれはおまえだ的な展開が2回もあり、登場人物の人格が無にされたかのように見えるのは物語としてつらいものがある。
出演者としては第1話の主人公が可愛い感じで、また第3話の主人公も眉がきりっとして嫌いでない。難点はなくもないが、奇抜な映像や現地の情景など全体的な印象は悪くなかった。
以下雑記
・時代設定に関しては、最後のTVニュースは2020年代として、都市伝説の方は劇中の事物からして1990年代(末頃?)の話かも知れない。また都市伝説の原因になった事件はさらに遡った南ベトナム時代のことだったようで、主な観客層にとっての昔と、古いサイゴンやその周辺への懐古が表現されていたのかと思った。
・テーマ曲は、南ベトナム時代に発表された「私を独りにしないで」(Đừng bỏ em một mình)という死者の心情を歌った歌で、昔のホラー映画でも使われたりしたものらしい。エンディングのほか3話それぞれで曲名や歌やピアノのアレンジ曲が出ていた。
・第1話の絵は、現地で本当にこういう人物画を屋台に描く習慣があるようで、今は「コ・ミア」(Cô Mía/ミアさん)という呼び名が付けられている。その由来に関する都市伝説も実際なくはないらしいが、この映画の話とは違う。
・第2話の「賞金300万ドン」は南ベトナム時代の通貨価値によるものかも知れない。
・第3話の「人の魂は死ぬ時、3つに分かれる」は突拍子もない発想のようだが、19世紀末の朝鮮国に関する記録でも「人間には霊魂が三つあると考えられている。死後三つの霊魂はそれぞれ位牌、墓、《黄泉の国》に行く。」とされている(イザベラ・バード「朝鮮紀行」講談社学術文庫P374)。この朝鮮国での考え方は、故人の居場所が仏壇(の位牌)・墓・冥土(→来世)の3か所だということなら日本人にも納得しやすいが、この映画でも同じ考え方かどうかは不明瞭だった。[インターネット(字幕)] 6点(2024-08-31 09:06:57)《改行有》
2. 地縛霊 5階の女
《ネタバレ》 ベトナムのホラー映画である。原題の「Thang Máy」とは普通にエレベーターの意味らしい。監督はサイゴン生まれのアメリカ人で、1975年4月の「サイゴン陥落」時に逃れてロサンゼルス周辺で育ったが、現在はホーチミン市に戻って活動しているとのことだった。
撮影場所もホーチミン市とのことだが、舞台は主にマンションと廃病院なのでご当地感はほとんどない。また登場人物は富裕層なのかと思わせる人々で一般庶民の生活感も出ていない。かろうじて現地らしいのは、主人公の従姉妹の甲高い声が東南アジア風に聞こえることくらいだった。
有名な都市伝説を題材にしたとのことで、映画冒頭では「韓国の都市伝説に基づく物語」だと説明が出る。その一方で、今回見た映像配信サービスの解説では「日本にも「異世界エレベーター」と呼ばれる同系統の都市伝説が存在している」と注釈がつけてあるが、これは日本で公開した場合、日本にもあるだろうがという突っ込みが入ると予想されたからと思われる。
日本の「異世界エレベーター」では4→2→6→2→10→5と階を移動することになっているが、この映画では二度目の2階が省略されているだけなので共通性はある。邦画では「きさらぎ駅」(2022)でこの「異世界エレベーター」のアイデアを使っているが、アメリカ映画にも「エレベーター・ゲーム」(2023)というのがあって世界的にも有名ではあるようだった。
ホラー要素としては、エレベーターや廃病院自体の不気味さのほか、特殊メイクの人物数名と若干の異世界描写があるが特に独創的なものは感じない。また特に問題だと思ったのは、邦画にもある独りよがりの面倒くさい難解ホラーだということである。主人公の心の傷や義父への憎しみがドラマの中心だったようだが、少女の関係などわからない点が多く解明する気にならない。最後は単純な夢オチではないと思われるが、それがまた全体的にわけのわからない印象を出している。
結果としては困った映画だったというしかないが、しかし主演の人がかなりいい印象だったので悪い点はつけにくい。個人的には主人公が精神不安定という点で、邦画「アイズ」(2015)と似た雰囲気も感じた。ちなみにエンディングの曲は洋風の軽快な曲で最後に和まされた。[インターネット(字幕)] 5点(2024-08-31 09:06:55)《改行有》
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