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【製作国 : タイ 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
1. バッド・ジーニアス 危険な天才たち 《ネタバレ》 基本的に「試験」と名のつくものを避けてこれまでの人生を歩んできたタイプの人間なので、国内も含めアジア各国から時折伝わってくる“カンニング”をはじめとする不正入試や、受験戦争に伴う社会の混乱のニュースを見聞きするたびに、「なんて馬鹿馬鹿しい」と思ってしまう。 本末転倒とはまさにこのことで、何のための勉強であり、何のための試験なのかということを、理解しようともせず右往左往する社会の様子は、なんとも無様だ。 そういった問題提起も無論根底に敷きつつ、このタイ王国版「That’s カンニング!」(観たことないが)は、世界に通用する確固たる娯楽映画として展開されている。 進学校の高校生たちが繰り広げるカンニングの様を、あたかもスパイムービーかケイパームービーのようにスリリングに繰り広げる映画表現としての水準の高さが先ず光る。 タイ語で書かれた試験のマークシートが押し迫る“時間制限”の中で塗りつぶされていくシーンは、試験のシーンとしてごく当たり前のカットの筈だが、スタイリッシュかつ緊張感たっぷりに映し出され、とてもフレッシュなエンターテイメント性を感じることができた。 出演するタイの若い俳優たちも、それぞれが個性的な魅力を放っており、一様に光っていたと思う。 これからもタイ映画界からは、国境と文化圏を超えた良作が量産される可能性を大いに感じる。 ただ、目新しく、楽しみがいのある映画であることは確かだが、一方でストーリー的にもやもやと気が晴れず、腹に落ちない部分もあった。 もやもやとする最たる要因は、最終的に主要登場人物の誰にも感情移入が仕切れないことだ。 特に主人公の言動を理解しきれないことが大きい。 彼女は、友人に懇願されているとはいえ、ほぼほぼ“首謀者”であることは疑いようもなく、「自業自得」という一言に尽きる。 家庭環境的にも、裕福ではないとはいえ、それほど劣悪なわけでもないため、彼女があのような行動を繰り広げた必然性が見当たらない。父親の彼女に対する愛情は一貫して揺るがないので、同じ親の立場からすると、只々父親が不憫でならない。 ラストシーンにしても、やけに清々しく正々堂々感を醸し出しているが、彼女の行動がすべて安直で浅はかなので、それが果たして正しい「責任」の取り方なのかと疑問符を払拭できなかった。 一方で、主人公と鏡像関係のライバルとなる天才苦学生の描かれ方は、是非はともかくとして容赦がなかった。映画の中で最も生真面目で清廉潔白だった彼を、これ程までに容赦なく“ダークサイド”に落とし込んでいくストーリーテリングには、この国の人々が抱えているのであろう社会における無慈悲や不合理に対する怒りとジレンマを感じた。 果たして、最も罪深い人物は誰で、その功罪はどのような形で示されるべきなのか。 その明確な“解”を映画内で示す必要はないけれど、“問”自体はしっかりと明示されるべきだったと思う。[映画館(字幕)] 7点(2018-11-15 08:32:12)《改行有》 2. チョコレート・ファイター 数年前に観た「マッハ!!!!!!!!」は、あまりに覚えづらいタイ人監督の名前と、「体を張る」ということの本当の意味を伴ったアクションを強烈に印象づけた映画だった。 ただし、主人公を演じたトニー・ジャーというアクション俳優のパフォーマンスがあまりに超絶過ぎるのに対して、ストーリーは陳腐なので、もはや一流アスリートの超人芸を映し出した記録映像を延々と見せられているようで、映画としてのカタルシスを得ることが出来なかった。 「マッハ!!!!!!!!」はそういった形で、とても勿体ないと思えた映画だったが、今作は数年かけて育て上げた天才少女ジージャー・ヤーニン(井上真央似)を主人公に配し、足りなかった映画的カタルシスを備えた“タイ産”美少女アクションに仕上がっている。 ストーリー的に嘲笑を抑えきれない部分はやはり多い。色々な意味で、決して“良質”な映画とは言い難い。 ストーリーテリングが必要以上にシリアスなのに、諸々の場面設定はチープだし、キャラクターの行動の整合性も欠けている。 そもそもがこの手のジャンル映画としては、あまりに話が暗過ぎるし、特に序盤の鬱積感は観ていて辛ささえ感じる。 でも、そういう諸々の粗や鬱積を“助走”として、少女の体そのものから文字通り「解放」されるアクションがもの凄い。 エンディングで映し出される「NGシーン」もとい「事故映像」が伝えるままに、描かれるアクションは痛々しいまでにリアルで半端ない。それが、今回は「記録映像」に留まっていない。 ブルース・リーをはじめ、ジャッキー・チェン、ワイヤーアクション、チャンバラに至るまで、あらゆる格闘アクションに尊敬とオマージュを捧げたアクションが、映画の中で「進化」し、“ジージャー”という新星の唯一無二のオリジナルアクションへと「昇華」していく。その進化の過程に対して、何よりもカタルシスを覚えた。 繰り返しになるが、ストーリーはお世辞にも褒められたものではなく、極めて陳腐だと言わざるを得ない。 ただし、DVDを観終わった深夜のリビングで、思わず「フォワーーッ」と発しながらハイキックをしてしまった。 もちろん“ジージャー”のそれと比べると、「ハイキック」と呼べるほど自分の足は上がっていなかったけれど、映画を観終わってそういう反射的な行動を引き起こさせる、これを「本物のアクション」と言わずして何と言う?[DVD(字幕)] 8点(2012-01-27 00:48:57)《改行有》 3. マッハ!!!!!!!! 昨今のアクション映画といえば、右を向いても左を向いても“ワイヤー”に引っかかる。そんな中で飛び出したトニー・ジャーのアクションは、アクション映画において、なんだか懐かしい革新であると思う。蹴る、走る、跳ぶ、そして飛ぶ。“わあ人間てこんなに動けるものなのかあ”ととても根本的な部分で驚愕する。ジャッキー・チェンの引退が近づいてきた今、彼の存在はアクション映画ファンにとって、大きな希望であろう。今後の伝説の構築に期待したい。しかし、この映画何人怪我人が出たのだろうか?(主役も捻挫してエライ腫れてましたけど……)6点(2004-11-26 11:47:11) 4. 地球で最後のふたり 正直、“足りないもの”は非常に多い映画だ。そのことがストーリーを展開していく上で、分かりにくさにつながる部分は確かにあり、曖昧な空気感が退屈に感じることも無いとは言えない。でも同時にその物足りなさが、なんだか心地よかったりする。日本人の男とタイ人の女の“片言の対話”が不思議だけれど、とても純粋な人と人との交わりに見えてくる。この監督の前作「シックスティナイン」の印象が強いので、日本ヤクザの登場による抑揚の強い展開を期待したところはあるが、期待を裏切り、美しい映像によってあくまで淡々と終始する映画世界は、洗練された世界の果てを想像させる。7点(2004-11-06 18:22:23) 5. 快盗ブラック・タイガー 映画自体の雰囲気から醸し出されるバカバカしいノリを期待したのだけれど、思ったよりもハジけた演出が無くテンポの悪さに拍子抜けした。大した話じゃないくせに妙にまどろっこしい展開は退屈そのもだった。1点(2004-01-28 16:33:13) 6. 6IXTYNIN9 シックスティナイン タランティーノ、もしくは日本のSABU監督作品を思い起こすような、日常の破錠によるバイオレンスな展開がシニカルなユーモアと衝撃に溢れタイのこの新鋭監督に力量を感じた。汗が染み出るようなじっとりとしたタイの空気感が異様な緊張感に拍車をかける。なかなか魅せるタイ映画だった。7点(2003-12-08 16:58:41) 7. アタック・ナンバーハーフ バレーをやっていたものにとっては、プレー描写に間の抜けた感は拭えないけど、見事なまでのゲイっぷりを演じた役者たちのキャラクターに圧倒された。この強烈な物語が実話だってんだからタイという国自体の奥深さを感じずにはいられない。苦しいことや辛いことはどの国でも多いけど、そんなの吹き飛ばす信念があれば無理なことなんてないと素直に感じた。水牛ノンちゃんサイコーです☆[ビデオ(字幕)] 6点(2003-12-03 17:07:22)
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