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1. 白いリボン
《ネタバレ》 冒頭10分くらいで「子どもの映画だな」と解った。真一文字の口に薄い唇のゲルマン顔でいっぱいの2時間半。居丈高な男とただ黙ってそれに従う女、その様子は台詞でも態度でも過剰なナレーションでもいろいろと伝えてくる。けれど、そこから出る膿を吸った子どもの内面はほぼ見せず、その顔だけで攻めてきた。内容は意外にありきたりで解りやすく、これだけ時間を掛ける必要もないだろう。私のハネケ作品へのやや偏重した期待は裏切られた気がしたが、新しいタイプの子ども映画にも思えてきた。鑑賞しながら「白いリボンなんて大人の屁理屈だね。」と思ったけれど、その言葉がそのまま自分に向かってきた。長時間全く飽きなかったのも思い返せば不思議なこと。点数はまだ伸び代を残して付けておこう。[DVD(字幕)] 9点(2011-08-30 14:23:20)
2. 隠された記憶
《ネタバレ》 余韻を持たせて観るものを引き込んでいくのとはわけの違う、なんか「ピーマンニンジンタマネギはそろえたよ味付けはこんなんどうかな」と材料だけ揃えて、多くの作業をこっちに投げているような映画に思える。ラストを迎えてもさっぱり掴めないストーリーは「見ろ、感じろ、考えろ」と監督が鞭打っているかのような感覚。きっと家庭で観賞した方の多くが、どこかに伏線がないか、どのシーンに意味があるのかと繰り返しビノシュやオートゥイユを眺めたろう。犯人はあれですよ、ハネケです。長回し好き監督の趣味ビデオ…とふざけつつ、高尚のようで下世話でもあるこの混沌とした感じを嫌いにもなれない。点数付けづらい映画№1。[DVD(字幕)] 7点(2007-01-06 00:59:45)(良:1票)
3. ピアニスト
《ネタバレ》 主人公エリカの、苦みばしったような表情が忘れられない。人生のほとんどをピアノに費やし、威圧的な母と同じベッドで眠るオールドミスの女性。この映画の母子関係に自分を重ね合わせた女性は少なくないと思う。「愛」がよく解らないのに、突然光がさすように現れた青年から真っ直ぐな愛情を受け、どうしていいかわからずにいる。彼女がとる行動の一つ一つが痛々しく、思わず「止めなよ」「だめだよ」と声をかけてしまう。ラストシーンもすごかった。遠くの回転ドアから、ワルターがいつ入ってくるかジット息を呑んで見入ってしまった。ここまで感情移入してしまうのは、この映画がすごい力を持っているからだと思う。この映画を見て、私の心の中の何かが動きました。確実に。10点(2003-12-27 23:22:59)(良:1票)
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