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1. 秘密と嘘
10点を付けようか迷うほどの傑作だと思った。
久々に人間を描いた映画らしい映画を観た充実感を味わえるような気がする。
演出、脚本、演技のまさに三拍子揃った素晴らしい作品としか言いようがない。
個人的には、本作の役者(特にシンシア)の表情の変化がいいと思う。
冒頭は皆、どことなく表情が曇り気味でどんよりとした不幸せな感に満ちている。それもそのはず、それぞれがそれぞれに人には言えない秘密を心に抱えて生きている。
シンシアやモーリス家族だけでなく、モーリスが写す被写体の人々にも一瞬見せる笑顔の下には、人には言えない秘密を抱えているようにも思われた。
しかし、シンシアとホーテンスとの出会いをきっかけにシンシアが大きく変わる(特に表情)のがとても印象的だ。シンシアが変わり、またホーテンスの表情も豊かになっていく。
そしてあの誕生日会へとストーリーが繋がっていく…。
生きている以上、誰しも心に傷を負ってしまうのはやむを得ないのではないか。かくいう自分も色々と傷を負っている気がする。しかし、その痛みを分かち合える人がいるから人々は立ち直れるのだなあと気づかされた。確かに自分も傷を負ったときには、家族や友人に傷を癒してもらった気がする。本作は「家族」や「親子」をテーマにはしているが、広い意味で「人と人との関係」としても描かれているのかもしれない。
そう考えると、あの写真家の先輩みたいな人には、傷を分かち合える誰かがいなかったのかもしれないから、あんな風になってしまったのではないだろうかとも感じた。
それにしても、「人生は不公平」だとか、「人生ままならぬ」といったセリフが聞えてくる中で、ラストでは「人生っていいね」いうセリフを聞けるとは思えなかった。ラストの三人の会話や表情も心に響く。[ビデオ(字幕)] 9点(2005-07-17 03:54:11)(良:1票) 《改行有》
2. ヒューマンネイチュア
もの凄い洒落が効いているブラックユーモア。
「テーブルマナー」=現代文明の中における不要なもののメタファーとして描かれている点もユニークだ。
ネズミに不要な「テーブルマナー」を教え、安全な社会を作ろうとする博士ネイサン。
全てが外見で判断される容姿第一主義であるこの世界には生きれない毛むくじゃら女ライラ。
誰一人この世界では本能のまま生きることはできないし、本能を隠すことがこの世界に生きている証である中で一人本能のまま生きる野生児パフ、と素材は面白いし。
パフは銃でネイサンを殺し、ライラに罪をかぶせ、人々に嘘を付くというような「人間の身勝手さ」だけを学び取り、文明に毒されればもはやネズミですら元の姿には戻れないというラストも唸らされる。
しかし、ラストのネタに至るまでの話が正直上手くまとまっていないと感じられる。
ネイサンが「自分も類人猿になりたい」と本当の気持ちで叫ばせる必要があると思うし、そのためにはそれまでの過程をしっかりと描く必要がある。
ライラも上手く機能していない感じはする。
そしてパフによって「自然回帰」の大演説が打たれて、群集が本当にそのような気持ちにならないと、ラストが上手く活きてこないような気がする。
どこか論理が一つ飛んだか、少し結論を急ぎすぎたような気がするな。
もっとも「自然回帰」までも皮肉るつもりはなかったので、そこまでしっかりと描かなかったのかなという気もするが。
ともかく、お仕置きをしてまでオペラ鑑賞法やテーブルマナーを教育する姿には現代の本末転倒さを感じさせる。また、ストレートに「人間社会」と「文明」を皮肉った面白さは評価したい。8点(2005-03-21 02:14:40)《改行有》
3. ピアノ・レッスン
映像は確かに驚くほど美しいものであったが、ストーリーは多くを語らないタイプの映画なので、ちょっとイマイチな印象を受ける。
自分の言葉であり、また命でもあるピアノと主人公の関係に対して二人の男性がどう絡んでいるのかがポイントでしょう、この辺を頭に入れて観ないと共感できるかどうかが違ってくると思われます。
サムニールは指を切り落としピアノとの決別を図る、カイテルは強引にピアノを船に乗せ、最後まで守ろうとする。
そしてハンターは指を失い、命であるピアノが海に落下した時に自分もそのまま海の藻屑と消えて、何も変わらない以前のままで死ぬかどうかの選択があった。しかし結果は言葉を練習しピアノも忘れないという新たな自分・生き方を選択するというストーリーは確かに感動できるものではあったんだが…ちょっと受けとめ方が難しい映画。6点(2004-04-06 20:05:35)《改行有》
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