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1. マンダレイ
《ネタバレ》 個人的にはドッグヴィルの方が良かったかな。マンダレイはかなり真面目でかつ政治的色彩を帯びた映画になっている(途中まで「社会」「政治」「倫理」「保健体育」の授業を受けているような錯覚に陥る)。
差別的でありながらも何とか最悪な事態を避けるために独自の慣習で上手く共存してきたある地域を、正義と法の元に武力で制圧し、暮らしてきた者の意向を問わずに強引に民主化を進めていくことへの警鐘や批判を込めた作品。
民主化を推し進めた結果、事態は混沌としながらも、いい結果に向かうようにも思えたのだが…。やはりトリアーの描く「人間の本質」は残酷だ。民主主義はいいように捻じ曲げられ、人間の醜さや恐ろしさ、弱さが露呈されていく。
ドッグヴィルで経験した抑圧された想いを知るグレースは、今回マンダレイにおいて同様に抑圧されていると感じた黒人たちを解放しようとする動機は充分理解できる。今回の経験が三部作最後の「ワシントン」でどのように活かされるのか、活かされないのかもまた注目である。
グレース役はニコールキッドマンからブライスダラスハワードに変更になっている。体当たりで頑張っているが、やはりニコールの方が一枚も二枚も上かな。役柄と年齢のせいもあるかもしれないが、ニコールとは違い、なんというか「疲労感」「虚無感」が感じられない。そうはいってもセリフとかはなかなか上手い女優だとは思う。むしろ人間的にも肉体的にも「若さ」が感じられる今回のグレースはニコールよりも若いブライスの方がよかったのかもしれない。[映画館(字幕)] 6点(2006-03-20 02:13:14)《改行有》
2. マルホランド・ドライブ
一切の予備知識なしでチャレンジした若かりし頃、見終った後の愕然とした気持ちを覚えています。「何もかも分からねぇ~、こんなん映画じゃねえゃ!」と吐き捨てた。見終った後に画面に出たキーワードを元に公式HPで映画のカラクリを理解し再チャレンジ。そしてストーリーや仕組みを理解はしたものの「映画としてのアイディアは凄いけど、内容はそれほど大したことはないね。」というのが2回目の感想。そして今日何年かぶりに観ました、これで3回目の鑑賞。「何もかも素晴らしいとしか言いようがない。」人間変わるものですね。DVDにはリンチのインタヴューがあり「映画のなかで全てが語り尽くされている」というのが本当に身に感じた。
前半の妄想には、本当はカミーラを殺したくない、殺しが失敗して欲しいそして自分とやり直してほしい想いが強く込められている。ハリウッドで失敗した憎しみや皮肉、アダム監督への恨みも強く感じられる。観ていてとても辛かった。ダイアンの想いが様々なカタチとなって、一見すると訳が分からないところにも複雑な意味が込められているのを知ると。そして妄想と現実との分岐点シレンシオで聴いた歌と前説で語ったセリフは意義深い。「オーケストラはいない、すべてまやかし。」前半はこの一言に尽きる。オーケストラは前半の登場人物達だろう。「あなたを忘れられずに一人で泣いている。自分に何ができるだろう、あなたを慕って泣きつづける以外には。」という込められた想いが重すぎる。はっきり言って、この映画はミステリーでもなんでもない、一人の女の切ないラヴストーリーと言っていい。青いカギを見付け殺しが成功したことを知ると精神を保てなくなり妄想に乗っ取られたようなカタチで自殺する。妄想に襲われなくても彼女は生きていけなかっただろう、カミーラがいなくては。冒頭のジルバ大会の明るい雰囲気と異なり、夢や希望とともにロスへ来て、夢が破れ、最愛な人に捨てられた絶望と恨み…。最愛の人を殺して自殺するというラスト…。それにしてもナオミワッツの演技は凄すぎる。彼女なしで本作はこれほど素晴らしい作品にはなり得ない、カミーラを見つめる眼の奥に愛情、憎しみが交じり合った複雑な想いが込められていた。点数は9点に留めておくが、まだ自分が完全に理解していないような気がするため。もっともリンチは理解するのではなく、音楽のように感じて欲しいと言っていたけど。9点(2004-11-03 19:09:07)《改行有》
3. まぼろし
言いたいこと、やりたいことは強く切なく伝わるんだけど、あまりにも映像がつまらない気がした。最愛の人をなくした喪失感を描いた映画は数多くあるが、経験不足からかどれもピンと来ない。
頭では理解はしているものの、心のどこかで夫が生きているかもしれないと思うランプリングはとても良かった、特に警察署であそこまで客観的事実を告げられても、夫の死を否定する所とか。
旦那の母親とのやり取りも重みがある、母と妻どちらの愛が勝っているか競っている感じ。
ラストも凄くいいけど、やはり深くはまれずにただのまぼろしだろと思ってしまった。5点(2004-05-10 23:30:56)《改行有》
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