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プロフィール
コメント数 1891
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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【製作国 : フランス 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
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1.  あのこと 《ネタバレ》 まだ中絶が違法とされていた1960年代フランスを舞台に、予期せぬ妊娠が発覚し、自らの将来を守るためにどうしても中絶しようともがくある女子大生の苦難の遍歴を淡々と綴ったヒューマン・ドラマ。まぁ確かに言いたいことは分かるし、これまで社会がいかに女性に厳しく無関心であったかを告発するという意義も分かるんですけど、一本の映画としてはちょっと微妙な印象。あまりにも淡々とストーリーが進行していくし、暗いだけで魅力に乏しい主人公にもいまいち感情移入できないし、何より全体的に画が薄暗くて見辛いところが自分の好みとしては致命的でした。数年前にカンヌでパルムドールを受賞した『4ヶ月、3週と2日』と同じく、訴えたいテーマには共感できるのだけど映画としてはいまいち面白くなかったというのが率直な感想です。最後に流産した胎児の映像を見せるのも不快感しか残らず、そこを敢えて映すところも似てます。この時代、女と言うだけでここまで不自由な生活を余儀なくされた多くの女性の人生に光を当てようというその思いには好感が持てるだけに、映画としてのクオリティももっと大事にしてほしかった。惜しい。[DVD(字幕)] 5点(2024-03-30 08:39:35)

2.  ベネデッタ 《ネタバレ》 ペストの脅威にさらされる17世紀イタリアのとある修道院を舞台に、聖痕を受け聖者とされたある一人の修道女ベネデッタの数奇な運命を赤裸々に描いた歴史サスペンス。監督はそのどぎついエログロ描写で常にスキャンダラスな話題を振りまいてきた巨匠ポール・バーホーベン。と言う訳で、長年彼の大ファンである自分としては、けっこう期待して今回鑑賞。そんな僕の高まった期待をまったく裏切らない完成度の高い作品でしたね、これ。主人公ベネデッタはこの時代には最大のタブーとされていた、いわゆるレズビアン。そんな彼女がお気にの侍女を自らの寝室に囲んで夜な夜な破廉恥行為に耽るなんて、もはや日活ロマンポルノ(古い!)のノリ。母親から貰った木彫りの聖母マリア像の下半身を削って、震えないバ〇ブにしちゃうとかどんな発想やねん(笑)。夢に現れた磔のイエス様と裸と裸で身体を合わせちゃうなんて不謹慎にもほどがある!でも、そんなかなりお下劣一歩手前?な内容なのに、それでもちゃんと芸術作品として成立しているのが凄い。とにかく画がどれもキレイでお話の展開にも一切無駄がなく、なにより物語として明確な主題が首尾一貫して通っているのが素晴らしいですね。これは、キリスト教的倫理観でがんじがらめに縛られた窮屈な時代に、自由に生きようと願いそして実行したある少女の物語。聖痕が全て彼女の自作自演であったのかや、宗教的な葛藤、そして最愛の人バルトロメアとの愛と嫉妬と欲望が渦巻く関係性など、観終わった後にいろいろと考察したくなるところなどなかなか深い。カトリック教会上層部や地元有力者などに振り回される修道院長や、いかにも俗物でございと言わんばかりのローマ教皇大使など印象的な人物が多く登場するのもこの作品の魅力の一つ。最後、なにもかもを捨てて街を飛び出した2人が素っ裸で燃え上がる街並みを見上げるシーンなど、エロを通り越して神々しくさえありました。そして2人が下したそれぞれの決断……。歴史の巨大なうねりの中で必死に自分らしく生きようともがいたある女性の生涯を、極めて変態チックに描いたポール・バーホーベンの秀作でありました。[DVD(字幕)] 8点(2024-03-23 10:17:19)

3.  ヴィーガンズ・ハム 《ネタバレ》 ヴィーガン――。それは完全なる菜食主義者。動物の肉や魚はもちろん、動物由来である食品、例えば卵や牛乳やはちみつまで徹底的に食べることを拒否する人々のことだ。同じ生き物である動物たちの命を自らの欲望を満たすため、ましてや金儲けのために利用するなんて残酷極まりない。そんな思想を持つ人々にとって、町のお肉屋さんは何の罪もない動物の命を奪いその死肉を売り捌くという、とんでもない存在。彼らは日夜、そんな罪人たちを懲らしめるため、店舗を襲撃しては正義の鉄槌をくだしている――。長年片田舎で小さなお肉屋さんを営むヴィンセントとソフィ―夫婦もまた、そんなヴィーガンの活動に頭を悩ませていた。そんなある日、車を運転していたヴィンセントは自分の店を襲ったヴィーガンを見つけると思わず轢き殺してしまうのだった。自らの店に死体を持ち帰ったヴィンセント夫妻。食肉のように処理して証拠隠滅しようとした夫妻は、ふと思いついてその肉を食べてしまう。「なんと美味しんだ」。動物を食べない生活を送る彼らの肉はとってもヘルシーで、ほっぺたが落ちそうになるほど美味だった。希少なイラン豚と称してヴィーガンの肉を売り始めるヴィンセント夫妻。その味が評判を呼び毎日行列が出来るようになると、夫妻は肉を安定的に手に入れるため、ヴィーガン狩りを開始する……。いかにもフランスらしい、そんなシュールでウィットに富んだブラックコメディ。野菜しか喰ってないヴィーガンの肉をハムにするととってもヘルシーで旨かった!ってどんな発想やねん(笑)。でもこのぶっ飛んだ発想はなかなか面白かった。「確かにちょっと美味しそうかも」と思えてしまう、妙に説得力があるこの絶妙の設定が良いですね~。夫婦の娘の彼氏がゴリゴリのヴィーガンで、何の罪もない動物の肉を喰う人間がいかに最低かをひたすら屁理屈をこねくり回して捲し立てる、ちょーウザいキャラだったのが個人的にツボ。「早くこいつをハムにして喰ってまえ!」って何度も思っちゃったし(笑)。後半、肉を調達するためにヴィーガン狩りを開始する夫婦が肉屋らしく、ちゃんと旨そうなやつを品定めするところもナイス。ただ、そのぶっ飛んだ設定のわりにストーリーが若干振り切れていなかったのが惜しい。狩りを開始するまでが割と退屈で、もう少し前半から飛ばしてくれたらもっと良かったんですけどね。とは言え、全体的には程よく纏まっていてグロさもそこまでではないし、気軽に見る分にはけっこう楽しめます。『スウィーニー・トッド/フリート街の悪魔の理髪師』のライト版ともいうべき、愛すべき小品コメディでした。[DVD(字幕)] 6点(2024-03-09 07:37:21)

4.  TITANE/チタン 《ネタバレ》 幼少期、父親の運転する車が交通事故を起こし、頭部にチタン製の金属部品を埋め込まれたとある女性。成長しダンサーとなった彼女がある日体験する悪夢のような出来事を暴力的なまでの映像で描いたシュルレアリスム劇。カンヌでパルムドールを取ったということで今回鑑賞してみたんですが、正直、僕にはその良さがさっっっぱり分かりませんでした。最初から最後まで、とにかくばっちい映像と痛々しい描写と下品なエロシーンの雨あられ。肝心のストーリーの方も独り善がりでつまんないし。久々に、最後まで観るのがこんなにも苦痛な映画と出会ってしまいました。まぁ人をここまで不快にさせる映画を撮れるのも一つの才能なのかなと思わんでもないですが……。自分の率直な感想は、「こんなつまんない映画に最高賞を与えるカンヌも落ちたものだ」でした。終わり。[DVD(字幕)] 4点(2023-12-18 08:37:36)

5.  アクトレス ~女たちの舞台~ 《ネタバレ》 人気と実力を兼ね備えたベテラン女優マリア・エンダースは、私生活の方も任せっぱなしの女性マネージャーとともに充実した毎日を送っていた。そんなある日、彼女はとある舞台の出演依頼を受ける。それは彼女の映画デビュー作である『マローヤのヘビ』のリメイク。若く美しい少女がお堅い中年女性をその美貌で翻弄し破滅させるという役柄で自分は一躍有名となったのだ。だが、その役は当然かつての美少女ではなく、なんと破滅させられるお堅い中年女性の方だった――。時の流れの残酷さをひしひしと感じ当初は断ろうとしたマリアだったが、恩師である映画監督の急死を機に前向きに検討することに。そんな彼女を献身的に支えてくれるマネージャーから知らされた、かつて自分が演じた美少女役に抜擢されたという若手女優ジョアン。ネットで調べてみた彼女はまさに自分が演じた役にぴったりのスキャンダラスな若く美しい女の子だった。彼女の存在に心を搔き乱されたマリアは、出演依頼を承諾することを決意するのだが……。確かに題材は良かったと思うんですよ、これ。かつてその悪魔的な美貌で一人の中年女性を破滅させるという役で一世を風靡した女優が、今度は逆に破滅させられる役を演じるというのはなかなかに興味をそそられるお話。しかも演じるのはジュリエット・ビノシュとクロエ・グレース・モレッツという、これ以上ないくらいのまさに嵌まり役な2人。そこにクリステン・スチュワートが絡んで三角関係のような心理劇となるなんて、どう考えても面白くなりそうな脚本なのに、これが一向にそうならない。何故なんでしょう?それはやはり監督の演出が終始、見事なまでに的外れだからじゃないですかね。観客が観たいのはそこじゃないだろ!!と突っ込みたくなるほど、どうでもいいシーンの雨あられ。主人公の女優と女性マネージャーが山にピクニックに行くシーンなどやたら長いうえにはっきり言ってつまらない。恐らく監督は、この2人の友情以上恋愛未満なシスターフッド的関係をこそ描きたかったのだろうけど、いかんせん深みが足らないせいで観ていて退屈でしかなかったです。また、肝心のクロエちゃんが出てくるのが映画も中盤を過ぎてからって明らかに遅すぎ!ようやくクロエちゃんが出てきたと思ったら、ここまで破天荒キャラで引っ張っておきながら実物は驚くほど優等生な女の子。ユーチューブの映像で散々お騒がせセレブキャラみたいに煽っておいて、これはアカンでしょ。物語の焦点となるはずの最後の舞台劇もまるで取ってつけたようで肩透かし感が半端なかったです。この3人の嘘とプライドが複雑に交錯する心理劇をこそ掘り下げて描くべきだった。華のある人気女優たちの豪華共演に+1点!![DVD(字幕)] 4点(2023-11-06 02:51:42)

6.  わたしは最悪。 《ネタバレ》 彼女の名は、ユリヤ。今年で30歳。高校卒業後、何となく進学した医学部を自分のやりたいこととは違うと途中で退学、新たに心理学を学びカウンセラーを目指すも相変わらずの詰め込み教育に嫌気がさし、これまた途中で退学。書店員をしながら今は直感的に向いていると感じた写真家への道を目指している。彼氏もその場のノリと勢いで付き合ったために上手くいかないことばかりですぐに破局。今は偶然知り合った漫画家の彼氏と何となく同棲している。それでも子供が欲しい彼とまだいらない自分との意見の違いから揉め、最近はなんだかギクシャク。何もかも中途半端に人生をぼんやりとやり過ごしていたら、気づけばもはや30歳。自分はいったいどうなってしまうのだろう――。本作は、そんな何処にもでいるような拗らせアラサー女子の日常を、序章と終章、そして12章からなる短い断片で切り取ったポートレートだ。とにかくこの主人公ユリヤのトホホ感に満ちた日常が魅力的でした。変に美化するわけでもなく、極端に自虐的にみせるわけでもない、彼女の生活を一歩引いたところから見つめるスタンスがなんとも心地良い。偶然紛れ込んだ知らない家のパーティーで出会う、のちの彼氏とのエピソードもすんごくトホホ感満載。お互い一線を超える勇気はないけれどそれでも酒で気が大きくなって思わずしたこと、それはお互いのおしっこしている姿を見せあうことでした。「これって浮気じゃないよね」って、いやそんなん浮気以前に人としてアカンやろ(笑)。そんなどうしようもないリアルな日常を延々描いていたかと思ったら、まさかの世界の一時停止!人々が動きを止めた街で惹かれている男に会いに行くシーンはもうこの監督のセンス爆発!空想の世界で彼とのデートを堪能し、そして元の彼氏との日常へ戻るところは大人の女心を繊細に描いていてすんごく良かったです。その後、彼氏に別れを告げるシーンはリアルで切なく、お互いの気持ちが分かる分、自分は過去の色んな思い出が蘇ってきて思わず泣きそうになっちゃいました。そして後半に明かされる元彼の現在……。実は末期癌に犯されていたという普通の映画だとお涙頂戴展開になりそうなところを、あくまでそうしなかった監督の絶妙な匙加減が素晴らしい。そんな場合じゃないのに、過去の浮気の真相を聞こうとする元彼の心理が何ともリアルでシニカル。最後、そんな2人が迎える切なくも哀しい別れ。でも、主人公の日常は続いてゆく…。1人の女性の人生を通して、生きることの辛さと幸せを優しく見つめた、なかなかの良品だったと思います。[DVD(字幕)] 8点(2023-10-02 09:08:12)

7.  インフル病みのペトロフ家 《ネタバレ》 ソ連崩壊後のロシアを舞台に、インフルエンザに犯されたある一人の男の妄想とも現実ともつかない世界をシュールに描いた不条理劇。最初から最後までなんかよー分かりまへんでしたわ、これ。一つ一つのエピソードはけっこう強烈で印象に残るんですけど、全体的なストーリーが正直言って意味不明。でも、画面の隅々にまで文字通り妙な熱気が感じられて、最後まで普通に観ていられたのは事実なんですけどね。なので嵌まる人には嵌まるんじゃないでしょうか。[DVD(字幕)] 5点(2023-09-28 23:45:56)

8.  オフィサー・アンド・スパイ 《ネタバレ》 19世紀フランスで実際に起きた冤罪事件を元に、巨大な権力に立ち向かったあるスパイの闘いをリアルに描いた歴史サスペンス。監督は、数々の賞に輝く名匠ロマン・ポランスキー。さすがベテラン監督だけあって、その円熟味を増した演出はもはや匠の技。非常に複雑でしかも基本地味なお話なのに最後まで観客を惹き付けてやまないストーリーテリングの巧みさは素晴らしいと言うほかありません。DNA鑑定はもちろん、指紋鑑定すらない時代に、ただひたすら破られて捨てられた機密文書を入手し気の遠くなるような手間と労力をかけて再現してゆくところなんて凄いとしか言いようがない。んで、肝心の証拠となるのは、専門家とは言え一人の人間が行う筆跡鑑定のみ……。そりゃ冤罪も生まれますわーー。でも、主人公はただ社会正義の為にそしてかつての教え子の冤罪を晴らすために孤軍奮闘してゆく。保身に走る上層部、主人公を陥れようという同僚たち、そして明らかとなる主人公の不倫スキャンダル……。それらのドラマが後半になるにしたがって加速度的に盛り上がっていくところはもはや圧巻。背景にある、根強いユダヤ人差別の問題にもちゃんと目を向ける監督の目線の鋭さにも感心させられます。そして迎えるほろ苦い結末。歴史の巨大なうねりの中で今はもう忘れられてしまった無名の人々の人生に改めて光を当てるこの物語の深い余韻に、自分はしばらく浸っておりました。最後まで充分見応えのある歴史ドラマの秀作、お薦めです。[DVD(字幕)] 8点(2023-09-06 09:35:24)

9.  ザ・ディープ・ハウス 《ネタバレ》 「幽霊屋敷 in 池の底」。それ以上でもそれ以下でもないお話(笑)。物語は、再生数を稼ぐことしか頭にないユーチューバーカップルが、より刺激的な映像を求めて、森の奥深くにある湖の底に眠っているいわくつきの廃墟へと侵入するってだけの内容です。でも……、この水の中という舞台設定が技あり!!こんなにベタベタな内容なのに、これが湖の底というだけでこんなに面白くなるなんて意外でした!気持ちの悪い魚が不気味に泳ぐ水の底で誰もいない廃墟へと入ってゆくシーンがとにかく怖い。家具や食器がゆらゆら漂ってるリビングとか今にも何かが飛び出てきそうでヤバかった。そして地下室で明らかに拷問を受けたであろう死体を発見する主人公カップル。でも、彼らは何か違和感を感じてふと呟く。「どうしてこの死体はこんなキレイなままなの?まるでさっきまで生きていたみたい……」。ここからラストまでもうヒィィィって感じで見入っちゃってました。ゆらゆらとゆっくり近づいてくる水死体がこんなに怖いとは。ここに酸素ボンベの残量が残り僅かだという水中ならではの要素も加わって、最後は普通に手に汗握っちゃってたし。何気に色んなゴミとか藻屑が漂う水の中なのに画面がずっとキレイで見やすかったのもポイント高い。アイデア一発勝負ながら、なかなか面白かった!ビール片手に真夏の熱帯夜に観るのに最適な映画、お薦めです。[DVD(字幕)] 7点(2023-09-06 08:31:19)

10.  僕とロボと不思議な惑星 《ネタバレ》 広大な宇宙を旅するとある冒険家家族。様々な惑星に降り立ち、未知の生物を調査して廻ってこれから地球へと帰ろうとしていた矢先、彼らは突然の流星群に襲われるのだった。瞬く間に宇宙船は崩壊、一人息子のウィリアムはたった一人、救命艇に乗って難を逃れることに。何日も宇宙を漂流した末にウィリアムが辿り着いたのは、今まで見たことがないような謎の惑星だった――。別の救命艇で逃れた両親が自分を見つけてくれるのはいつになるか分からない。ウィリアムは、救命艇に乗っていったロボットのバックとともに救助を待つことに。だが、この星は未知なる謎の生物がいたるところに跋扈する危険な惑星だった……。両親とはぐれ、謎の惑星へと漂着した一人の少年のサバイバルをファンタジックに描いたCGアニメーション。というあまりにもベタな内容だったのだけど、フランスで制作されたということで、もしかしたらほのかに毒の効かせたウィットなストーリーやオリジナリティあふれるキャラクター、あるいはセンスのいい映像などで魅せる内容なのかなと今回鑑賞。感想は……、ビックリするくらいベタベタな子供向けアニメでした。とても芸術の国フランスで制作されたとは思えない、アメリカンな内容。しかもピクサーやドリームワークスといった一流どころではなく、2番手くらいの制作会社が作ったんじゃないかというくらいのクオリティ。王道中の王道ストーリーにどこかで見たようなキャラクターのてんこ盛り。新しい部分など1ミリもありません。まあそーゆーもんだと割り切って観れば、CGはそこそこよく出来ていたし、ストーリーのテンポも良かったしで最後までぼちぼち楽しめると思います。でもまぁ自分のようなおっさんが夜中に一人で観るもんではありませんでした(笑)。[DVD(字幕)] 6点(2023-09-04 08:26:20)

11.  ニューオーダー 《ネタバレ》 娘の結婚披露パーティーを開催中のとある富裕層家族。強固なセキュリティに守られ、政財界の大物を多数招待したパーティーが佳境に差し掛かっていたまさにその時、彼らを予想もしなかった悲劇が襲う。拡がり続ける格差に不満を募らせた貧困層が暴徒化、鉈や拳銃を手に屋敷に雪崩れ込んできたのだ。示し合わせたかのように各地で勃発する暴動に警察の手も追い付かず、高価な財産はことごとく略奪、泣き叫ぶ家族も容赦なく皆殺しにされてしまう。豪邸内は瞬く間に阿鼻叫喚の地獄絵図と化すのだった――。パーティーの主役である花嫁マリアンは、突然の事態に戸惑うばかり。だが、根が純粋で世間知らずのマリアンは、難病を患う妻を病院に連れていきたいと願うかつての使用人を助けるために街に出てきてしまう。暴れまわる暴徒や軍隊によって大混乱へと陥る中、マリアンは高級車で街を彷徨うことに。何とかして元使用人の元へと辿り着いたマリアンだったが、それもむなしく彼女は軍を裏切った兵士によって誘拐されてしまう。多くの人質とともに劣悪な牢獄へと監禁されるマリアン。果たして彼女の運命は?政情不安に揺れる中南米を舞台に、突如として殺戮と略奪に巻き込まれる一人の女性の運命を終始冷徹に見つめたサバイバル・ドラマ。あくまでリアルに徹した、この殺伐とした空気感は凄かった。まるで戦場カメラマンが現地で撮った映像を繋ぎ合わせたかのようなリアリティで、この息詰まるような世界に終始圧倒されっぱなし。誰が生き残り誰が死ぬのか、全く先の読めない展開はこの世の不条理を容赦なく暴きだしている。ただ、それが映画としての面白さに繋がっているかというと、自分は正直「否」と言わざるを得なかった。ひたすらこの主人公マリアンが不幸な事態に巻き込まれ、何も悪いことをしていない無辜の民がことごとく悲惨な最後を迎えてゆく。そして最後も慈悲などなくただ淡々と……。これが目を背けてはならない現実だと言うのは分かるのだが、映画としてはやはり優れたフィクションの力で観客を魅了して欲しかった。映像や世界観の作り込みは素晴らしかっただけに、惜しい。[DVD(字幕)] 6点(2023-08-07 05:02:20)

12.  キャメラを止めるな! 《ネタバレ》 低予算ながら類い稀なるアイデアと優れた脚本の力で日本で大ヒットを飛ばしたゾンビコメディ映画『カメラを止めるな』。そんな大ブームを巻き起こした作品がまさかのフランスでリメイク!しかも監督は、『アーティスト』でアカデミー賞の栄誉に輝くミシェル・アザナヴィシウス。と言う訳で今回鑑賞。世間ではいまいち評判が良くないみたいですけど、自分はこれはこれでけっこう面白いと感じました。オリジナルはとにかくコメディ全振りで最後の方なんて大笑いしながら観てましたけど、こちらはけっこうブラックな皮肉が効いていて思わずニヤリとしてしまう感じですかね。ここらへん、日本とフランスの国民性の違いなのかな。最近の行き過ぎたポリコレを揶揄するようなきわどいネタをサラっとぶっこんでくるとこなんてナイス!冒頭、ゾンビ映画の主人公たちがバリバリ西洋人なのに何故かみな日本名という不自然さの理由が明らかにされたとこなんて普通に笑っちゃったし。なるほど、パール・ハーバーですか(苦笑)。ただ惜しいのは、肝心のそのワンカットゾンビ映画のクオリティが明らかにレベルが低くなってしまっているところ。キレの良さとかテンションの高さとかはやはりオリジナルの方が圧倒的に上ですね。あとこれは好みの問題なのかも知れませんが、主人公の女性が致命的なほどタンクトップとホットパンツが似合ってないのはひじょーーーに残念!!とは言え、オリジナルを忠実に再現しながらも独自のセンスを織り込んだ本作、僕はそんなに嫌いじゃなかったです。[DVD(字幕)] 6点(2023-08-07 03:38:28)

13.  アンネ・フランクと旅する日記 《ネタバレ》 『アンネの日記』――。それは第二次大戦中、ナチスによるユダヤ人迫害から逃れ、アムステルダムの小さな一軒家に家族と隠れ住んでいた一人の少女によって書き綴られた日記だ。作者であるアンネ・フランクという名の少女はその後、謎の密告者の裏切りによってアウシュビッツへと送られ、そこで15年という短い生涯を閉じることになる。彼女の死後に発見された日記はその後、出版。そのユーモアを交えた瑞々しい筆致や鋭い人間観察眼、思春期を迎えたばかりの少女の不安や戸惑い、暗い時代にあっても常に希望を失わない彼女の強さは多くの人々の感動を呼び、世界各国でベストセラーとなる。そして現代、ホロコーストの悲惨さを現代に伝える歴史的名著としてユネスコの世界記憶遺産に登録されるまでになった。本作は、その『アンネの日記』で彼女の架空の友達として呼びかけられるキティーが現代のアムステルダムによみがえったらという驚くべき着想で描かれたファンタジックなアニメーション。監督は、パレスチナ紛争を題材にした政治的主張の強い『戦場でワルツを』というアニメでデビューを飾ったアリ・フォルマン。『アンネの日記』は昔読んで、そのキラキラとした才能の塊のような文才に感銘を受けると同時に、もし生きてちゃんとした小説を書いていたらきっと世界的大作家となっていただろうと思うと改めて怒りと切なさに打ち震えるような感情を抱いた思い出の一冊。なので今回期待して鑑賞してみた。この監督らしい独自の画のタッチに最初は戸惑うものの、空想上の存在であるキティーが日記のインクから現実世界へと降り立つファンタジックな描写に惹き込まれる。その後、まるで中世ファンタジーに現れる悪の軍勢のようなナチスドイツや彼らに立ち向かってゆく英雄たちがアンネの愛した映画スターたちという発想はオリジナリティ抜群で、アニメ作家としてのこの監督の面目躍如といったところだろう。ただ、それに対してお話の方は僕は疑問に思わざるを得ないものだった。空想上の存在であるはずのキティーが現代によみがえって?作者であるアンネを捜すというこの設定がいまいち腑に落ちない。こういう荒唐無稽なお話こそより細部の設定を細かく詰めるべきなのに、本作はそこが非常に甘いのだ。なので全体的にフワフワとした捉えどころのない作品となってしまっている。また、アンネの足跡を追って遥か異国の地まで旅していたキティーが後半、何故か現代の難民を救うために尽力する展開となるのも強引さが否めない。もう少し脚本を練るべきだった。ホロコーストの悲惨さを現代に伝える歴史的アイコンとしてもはや象徴的存在となってしまったアンネ・フランクの、その人間的側面に脚光を当てようとする試みは好感が持てるだけに残念だ。余談だが、本作を観終わって本棚の奥に眠ったままだった『アンネの日記』を久々に手に取ってみた。まるで今もどこかでこの現代を見つめているかのような生き生きとした彼女の文章に改めて感動の念を抱いたことをここに記しておこう。[DVD(字幕)] 5点(2023-07-31 08:09:48)

14.  コーダ あいのうた 《ネタバレ》 彼女の名は、ルビー・ロッシ。寂れた港町で漁業を営む家族とともに暮らす平凡な女の子だ。勉強やスポーツが特に出来るわけでもなく、人が羨むような特技もない。見た目だって普通、交友関係もいたって人並。だけど、彼女には他の人とは違う特徴が一つだけ。それは、彼女以外の家族全員が耳の聞こえない、いわゆる聾者だということ――。そう、両親はもちろん彼女の兄も一切耳が聞こえず、言葉を話すことも出来ない。家族との会話は全て手話、食事のときも食器の音以外何も聞こえない。どうしても他の人とコミュニケーションを取りたいときは、唯一の健常者であるルビーの力を借りなければならなかった。彼女はいわゆる〝コーダ(聾者の両親に育てられた子供)〟。それでも家族とともに充実した日々を送っていたルビーは、ある日、ふと思いついて高校の合唱クラブへと入部することに。緊張しながら初めて人前で披露した歌声。顧問の先生は、指導を続けてゆく中で粗削りながらも彼女の歌声に秘められた可能性を感じるようになる。ボストンの音楽大学への進学を薦められるルビー。でも、私がいなくなれば家族の生活はますます大変なものに。思い悩んだ末にルビーが出した結論とは?耳の聞こえない家族の元で育った17歳の女の子の青春を瑞々しく綴ったヒューマンドラマ。アカデミー作品賞受賞ということで今回鑑賞。感想は、良くも悪くもとにかくオーソドックス。全編通じて、何処かで見たような映像と何処かで聞いたようなお話のてんこ盛り。主人公カップルが崖の上からキレイな森の湖に飛び込むシーンなんて、この手の青春ドラマでもう何回見てきたことか。誰もいない湖面で2人泳ぎながらキスするとか、トム・クルーズの『カクテル』ぐらいから受け継がれてきたもはや青春映画のテンプレなんでしょうね。クライマックスの両親が見守る中での発表会なんかも、まぁ~~既視感満載。でも……、このベタさ、自分はけっこう嫌いじゃない。それはやはり、主人公をはじめとする登場人物誰もがみな魅力的だからでしょうね。この家族、障碍を持っていても誰も自分を憐れんだりしていない。自分たちだけで健常者と普通に渡りあおうとするし、頼るべきところはちゃんと頼るしたたかさも持ち合わせている。そんな両親を愛していながらも世間に引け目を感じてしまう主人公も気持ちが分かるぶん切ない。何かと言うと家族の責任を前面に出し娘に依存しようとする両親も最初はちょっとウザかったですけど、最終的には娘を清々しく送り出すところは素直に感動しました。妹にちゃんと自立した道を歩んでいって欲しいと願う兄も凄くいい奴。妙に下ネタが多いところも、障碍者を必要以上に美化しないという決意が感じられて好感持てますね。自分は最後まで清々しい気持ちで観ることが出来ました。ルビー、これからもっと幸せになれよーー![DVD(字幕)] 7点(2023-06-12 07:40:39)

15.  ストーリー・オブ・マイ・ワイフ 《ネタバレ》 1920年代、マルタ島。大型貨物船の船長を務めるヤコブは、世界の海を航海するベテラン船乗りだ。一度海に出れば長く陸には戻らず、常に危険と隣り合わせの彼は、最近何か物足りないものを感じていた。それはきっと心から守りたいと思える存在がいないからだ――。そう気づいたヤコブは、久しぶりの休暇で訪れた街のカフェで友人とある賭けに出る。「誰であろうと、次にこの店に入って来た女性と結婚する」。じっと入り口を見守っていたヤコブは、その人が入って来るのを見た瞬間、自らの運命を確信するのだった。すぐさま声を掛け、結婚を申し込むヤコブ。意外にもそのリジーと名乗る女性は、何のためらいもなく彼の提案を受け入れ、一週間後には本当に結婚してしまう。そうして始まった2人の新婚生活、もちろんお互いのそれまでの人生も人柄も分からない。それでもヤコブとリジーは情熱と欲望のおもむくまま、お互いに満ち足りた生活を謳歌するようになる。だが、そんな2人の充実した毎日に謎めいたリジーの男友達が現れたことから……。これはそんな「私の妻の物語」であり、船乗りヤコブと七つの教訓の物語。監督は前作で男と女のままならなさを、センスあふれる映像と精神と身体性の相克という独自の視点で描いたイルディコー・エニェディ。この監督の知的で考え抜かれた脚本と何処を切り取っても絵になる美しい映像、そして品のいい音楽は相変わらず健在。3時間弱という長尺ながら、最後まで惹き込まれて観ることが出来ました。なによりヒロインとなるレア・セドゥの存在感と言ったら!!決してそこまで美人と言う訳ではないけれど、男を惑わす妖艶な魅力が半端じゃない。物憂い表情で常にこちらを見下すような態度を取る彼女は、この時代の雰囲気も相俟って、何処か谷崎潤一郎『痴人の愛』のナオミを髣髴とさせるファム・ファタルぶり。ちょうどいい肉付きの身体などなんとも官能的で、彼女に身も心も溺れてしまう主人公の気持ちは同じ男として痛いほど分かる(笑)。愛と嫉妬が渦巻く2人の心理劇も常に主導権が入れ替わる濃密なもので、一度でも夫婦となった人ならどれも身につまされるものばかり(と言っても僕は一度も結婚したことないんですけどね笑)。この2人以外のエピソードの見せ方も巧く、夫を惑わすいけ好かないブルジョア息子や街のしがないチンピラから裏社会で徐々にのし上がってゆく悪友の存在など誰も彼もちゃんと印象深い。中盤の豪華客船での火事のシーンなんてそんじょそこらのパニック映画よりハラハラしちゃいました。愛してぶつかりあって傷ついて、身も心もボロボロになりながらもそれでもまた愛して――。そうして迎える2人の結末。ラストシーンはなんとも切なく、自分はしばらくその心地良い余韻に浸っておりました。8点![DVD(字幕)] 8点(2023-05-13 08:09:41)

16.  TUBE チューブ 死の脱出(2020) 《ネタバレ》 理由も分からぬまま狭いチューブに閉じ込められたある女性の決死の脱出劇をノンストップで描いたソリッドシチュエーションスリラー。主人公となる女性が放置されるのは、ほとんど棺桶ぐらいの広さしかない狭い空間。そこはカラフルなネオンによって無機質に照らされ、同じような空間がどこまでも続いている。しかもそこには様々な罠が仕掛けられ、腕に取り付けられたタイムカウンターがゼロになるまでに脱出しないと死にます。とまあ一言で言うと『キューブ』の狭い版ですね。本家と全く違うのは、とにかくセンスが悪い!主人公の着ているコスチュームもダサいし、舞台となるチューブ内の映像も凡庸。なんですか、あのチューブを照らす変なネオンは。また各チューブに仕掛けられた罠もまるで小学生が考えたようなベタなものばかりで、さっぱり盛り上がらない。急に参戦してくるゾンビまがいのモンスターなんて何の意味があったのやら。途中で主人公の過去を巡る幻想的なシーンを差し挟んでくるのも違和感しか感じません。また演出のキレもすこぶる悪い。ずっと画が変わらないのに、主人公がひたすらグダグダやってるから途中の中だるみ感が半端ありません。最後のオチも投げっぱなしの酷い代物。これなら本家『キューブ』のように、最後までこのチューブ内だけで物語を完結させてしまった方が良かったんじゃない?まぁとにかくセンスのなさとキレの悪さが際立つ作品でありました。こういった設定勝負のB級映画に最も必要なものなのにね。[DVD(字幕)] 4点(2023-03-13 05:14:27)

17.  アイダよ、何処へ? 《ネタバレ》 1995年、冷戦終結により勃発した民族紛争が泥沼化していたボスニア・ヘルツェゴビナ。ムスリム勢力の町スレブレニツァはセルビア側の激しい攻撃の末、とうとう陥落してしまう。2万5千人におよぶ町の住民たちはたちまち難民化、安全を求めて国連平和維持軍が駐留していた基地へと一斉に雪崩れ込んでくる。当初は住民たちを受け入れていた国連側も余りの数の多さに途中で受け入れを拒否。結果、基地の周りには行き場を失くした町の住民たちが大勢なす術もなく立ち尽くすことに――。国連の通訳として働く元高校教師アイダは、そんな難民の中に自分の家族も含まれていることを知るのだった。夫と2人の息子だけでも基地に入れてほしいと上官に懇願するアイダ。だが、更なる混乱を恐れた上官は彼女の要望を拒否する。到底納得できないアイダは、何とかして家族を安全な基地内に引き入れようと画策するのだが、さまざまな手続きの壁に阻まれどうにもうまくいかない。そんな折、セルビア側の司令官ムラディッチ将軍から住民を安全な場所に移動させるので速やかに引き渡せとの要請が国連側に届く。何か信用できないものを感じたアイダは、家族とともに逃げようとするのだが……。デビュー以来、一貫してボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争を題材とした映画を撮り続けるヤスミラ・ジュバニッチ監督の最新作は、そんな過酷な運命に翻弄される一人の女性を通して戦争の不条理を冷徹に見つめたヒューマン・ドラマでした。この監督の作品は今回初めて観ましたが、全体を覆うひりひりするような緊張感がとにかく真に迫っておりました。この時代、この地で実際に撮られたドキュメンタリー映画なんじゃないかと思えるくらい。そんな中、ただ家族を救いたいがために奔走する主人公。国連にたまたま通訳として現地採用されたというだけで、軍人でも実力者でもない単なる一市民のエイダに出来ることなんてたかが知れている。それでも愛する子供たちをなんとしても救おうと駆けずり回る彼女には胸が締め付けられる思いでした。でも、そんな過酷な現実は彼女だけのものではなく、ここに押し寄せた2万5千人の全ての人々にそれぞれの事情がある。そう思うとやはりやり切れない思いにさせられます。みんな普通に生活していただけなのに。そして最後に辿り着く悲惨な現実――。戦争の愚かさをこれ以上ないくらい痛感させられてしまいます。過去を乗り越え、気丈に振る舞っていたエイダがそれでも最後に辿り着いた場で泣き崩れてしまった姿に自分も思わず涙してしまいました。最後に表示される、「スレブレニツァの女性たちと殺害された8372名の息子・父・夫・兄弟・いとこ・隣人に捧ぐ」というテロップが重い。ただただ最後、彼女が育てた教え子たちがいつまでも平和に過ごせることを祈るばかり。人間の愚かさと悲哀を鋭く捉えたなかなかの秀作と言っていい。[DVD(字幕)] 8点(2023-02-10 08:33:06)

18.  ほんとうのピノッキオ 《ネタバレ》 イタリアの児童文学の名作を最新の映像技術を駆使して実写化したファンタジードラマ。監督は『五日物語』などで独自の世界観を構築するイタリアの鬼才、マッテオ・ガローネ。うーん、自分はいまいち嵌まらなかったですね、これ。絶妙にグロテスクなこの唯一無二の世界観は確かに凄いとは思うんですけど、脚本がいまいちな印象。考え抜かれたプロットや胸躍るような起承転結などはほぼ皆無、ひたすらこのピノッキオ少年があっちにいったりこっちにいったり、何の脈絡もなく出てくるキャラクターに翻弄される様を延々見せられるだけ。もう少し一本筋の通った物語があればよかったんですけどね。ねちょねちょナメクジ婦人(あ、カタツムリか!笑)や正反対の判決を下すサルの裁判官など、登場するキャラクターはけっこう魅力的だっただけに惜しい![DVD(字幕)] 5点(2023-02-07 06:03:21)

19.  ギレルモ・デル・トロのピノッキオ 《ネタバレ》 命を宿した木彫りの人形の大冒険を描いたイタリア児童文学の名作『ピノッキオ』。アニメや実写などこれまで何度も映像化されてきたこの名作を今回クレイアニメという手法で映画化。しかも監督はなんとギレルモ・デル・トロ!これは観ないわけにはいきますまい。早速インターネットで鑑賞してみました。そんな僕の期待を裏切らない、素晴らしい出来の作品でした!とにかく圧倒的に手間暇かけたであろう映像が凄い。見た目はちゃんと手作りの人形なのにここまですべらかに動くんですから、いったいどれだけの時間をかけたのやらと気が遠くなりますなぁ。ゼペット爺さんに造られたという主人公の造形も思いっ切り木彫り感が残っているリアルな質感で、可愛すぎず気持ち悪すぎずという絶妙の匙加減でした。嘘をついたときに伸びるハナも思いっ切り普通の樹木なのも拘りが感じられて良い。当時のムッソリーニ政権がもたらしたファシズムの暗い影をテーマとした物語も深みがあって非常に良かったです。声優陣も豪華で、特にコオロギのクリケット氏を演じたユアン・マクレガーが声だけなのに彼と分かるほどの存在感が凄い。最後の歌声なんて聞き惚れてしまいました。ウサギたちが働く死者の国もユーモラスで大変グッド。僕の大好きな『パンズ・ラビリンス』を髣髴させる、この何処か暗い世界観がとにかくツボでした。うん、なかなか面白かったです。8点!![インターネット(字幕)] 8点(2022-12-27 04:52:38)(良:1票)

20.  ビッグバグ 《ネタバレ》 時は2045年。人類は、高度に発達した科学技術とAIにより自ら思考し行動するロボットに頼り切った生活を送っていた。全ての家事をこなすお手伝いロボと豪華な一軒家で暮らす中年女性アリスもそんな一人。ある日、彼女の家に偶然6人の人々がやってくる。アリスと親密なお付き合いをしているテレビプロデューサー、彼に無理やり連れてこられた息子、今は新しい妻と新婚ほやほやなアリスのかつての夫、その妻、彼らが新婚旅行に行く間この家で過ごすことになっているアリスの娘、そして迷い込んだ飼い犬を捜しにたまたまやって来たお隣のおばさん――。表面上は和気藹々と過ごしていた彼らに、突然悲劇が訪れる。なんと急に家のロックが掛かり、開かなくなってしまったのだ。どうにかしてドアを開けようとするも、AIに全てコントロールされたセキュリティは住民にはどうにも出来ない。しばらくすると彼らは衝撃の事実を知ることになるのだった。量産型人型ロボット「ヨニクス」が反旗を翻し、なんと人類を奴隷にしようと言うのだ。果たして、家の中に閉じ込められたそんな7人とロボットたちの運命は?近未来を舞台に、ある一軒家に閉じ込められた人々の右往左往をスラップスティックに描いたブラック・コメディ。監督は、『アメリ』や『天才スピヴェット』で有名なジャン・ピエール・ジュネ。僕の大好きな監督の最新作ということで、今回期待して鑑賞してみました。そんな僕の期待を全く裏切らない、素晴らしい出来の作品でしたね、これ。正直、この映画に中身などこれっぽっちもありません。ただひたすら監督の悪ふざけ一歩手前のドタバタを延々見せられるだけ。なのに、最後までワクワクしながら観ていられたのは、ひとえにこの監督の遊び心溢れるセンスのなせる技なんでしょう。とにかくオシャレ!お手伝いロボをはじめとするアンドロイドたちのキュートさなんて、もう最高でした。このお手伝いロボが人間の見栄や嫉妬や愛情をいちいち数値化して驚くところとか最高に皮肉が効いていて大変グッド。他にもアインシュタイン型ロボやレトロなお掃除ロボもみな魅力的で、自分もこんな家に住みたいなんて思っちゃいました(たぶん3日で限界迎えそうだけど笑)。対する人間たちも全く負けておりません。性欲持て余し気味の奥様カップルに意識高い系の元夫夫婦、そして思春期拗らせティーンエイジャー。特に死んだ犬のクローンを何匹も飼ってる隣の家のヒステリー気味マダムとか、鬱陶しいのに妙に憎めないところなんてまさにジュネって感じですね。後半のヨニクスがやってきてからのドタバタも終始センス爆発で最高に面白かったです。最後のオチはいかにもB級SF映画って感じのキレの良さで思わず拍手。ポップなセンスと底意地の悪さだけでこんな愛すべき佳品を撮れちゃうジュネ監督はやっぱり凄い!うん、何処までもついていきます~~。[インターネット(字幕)] 8点(2022-12-22 08:37:50)

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