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とにかく,すごい!の一言.完璧!映画作品史上最も優れた作品.フェリーニの,いや20世紀の映画の到達点であり,神がかってさえもいる.当作品中に登場する文芸評論家の言葉に「映画は芸術の中で最も遅れている」というような台詞があったが,まさにその通りだ.なぜならば,他の芸術作品に比べて,映画は洗練すべく要素があまりにも多すぎるからである.フェリーニには,本当の芸術家(映画人に本当の芸術家を見つけることは難しい)であるがゆえに,この作品で映像の芸術としての限界点に到達してしまったと見受けられる.皮肉にもそれ自体を作品のモチーフにしてしまっているところがフェリーニの天才ぶりを示している.「皆さん,この作品が20世紀の映像作品の限界ですよ」って映像作品の恥部を暴露してしまった.巨匠の作品がある作品を境にしてクオリティが落ちてくるのも映画の芸術としての限界による意欲喪失によるものではと個人的には想像している.映画が登場してたかだか100余年であり,映画が芸術作品として完成するには,あと400年くらいかかるのでは?ただし,この作品はおそらく400年後でも残っている唯一の作品であろう.絵画で言えば「モナリザ」,音楽作品で言えばモーツアルト作品.フェリーニのような(動画+音声を,まるで息をするかのように自由自在に操る)「映像の魔術師」は稀有の人材であり,さらに「8 1/2」はその作品の中でも群を抜いている.このような完璧な神の奇跡に因る作品は今後まず登場し難い.モーツアルトの作品がどうすごいのかを説明することが難しいのと同様に,この作品のすごさを言語で説明することは大変難しい.すごさを理屈で説明できる作品はたかが知れている.理屈ではない,とにかくこの天才の作品の1シーンごとにもたらす視聴覚情報に,圧倒され続け,ショックが脳天を直撃し続けるのである.映画に限らず,天才の作品に共通することであろう.ついでに言うと,フェリーについで,20世紀を代表する映像の巨人をもう一人挙げるとすれば,芸術家と言うよりむしろ完璧な職人技を持っていたキューブリックであろう.10点(2003-07-22 01:34:29)
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