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【製作国 : チェコスロバキア 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
1. いばら姫またはねむり姫 岸田今日子の奇妙な童話が原作。「眠りの森の美女」の新解釈もの。情熱に突き動かされて、うつろになってしまうってところが監督の好きな女性像なんだ。息を荒げている人形ってのがけっこうエロティック。つまりこの人は人形にふさわしくない「過剰な情熱に翻弄される女性」ってのが好きなのよね。それを無表情な人形のなかに封じ込めることに、妖しい悦びを感じてしまう人らしい。けっこう不健全なんだ。そもそも人形を動かして悦びを得る「人形アニメーター」ってのに、変態の要素があるんだが、子どもの遊び初めは、だいたい手で持って動かす人形遊びなのではないか。人形とは、ただ眺めるものでなく、「動かないはずのものを動かす(アニメートそのもの)」悦びの最初の道具なのだろう。変態の目覚めとして。[映画館(邦画)] 7点(2013-05-20 09:55:47) 2. 百年の夢 スロヴァキアの老人たちを描くドキュメンタリー。『糧なき土地』や『アラン』の線だけど、やや詩情が過剰。作者が自分の詩を語っているみたいで、最初からそういう映画として見ればいいんだろうが、やっぱドキュメンタリーってのは、散文を連ねていった果てに魂の詩が見えてくるってのが理想だろう。ことさら孤独を強調する画づらも気になった。でも老人たちの顔がいいから許せる。予定調和的なインタビューを表情が無効にしていってしまう。これらの顔の前では「生きがい」とか「幸福」とかいった言葉が薄っぺらに聞こえてくる。宇宙小僧のようなおじいさん、面白かったな。楽器がよく出てくる。長いクラリネットのような変な管楽器、バグパイプ、二弦の低音弦楽器、バイオリン、まるで一人一人が楽器と同化し、この村が一つのオーケストラになってる、なんて幻想が湧くような、ちょっとおとぎ話っぽい気配がある。[映画館(字幕)] 6点(2012-05-03 09:48:42) 3. ファンタスティック・プラネット はっきり人間の視点から見た世界と支配者から見た世界とに、分かれるの。その支配者側から見た人間の群衆の動きなんか丁寧だった。まとまって動いたりなんかしない。大量殺戮シーンで球が人をくっつけていっちゃうのが怖かった。踏み潰すシーンとか。映画を見てるほうはその時々でどっちの側にも感情移入しちゃってる。ペット時代なんかはどっちかって言うと飼う側から見てたな。この設定、植民地の比喩と見ることも出来るけど、いろんなイメージに溺れる楽しみがこのアニメの核。だんだん引いていく議場の広さ。瞑想で体がマゼコゼになってしまうとこ。ホースがくねってるような大地で、雨が降ると各所が持ち上がるとこ。夜の発光。ネバネバのしずくを垂らす植物。そしてラストの像のダンス。まあよくいろいろ思いついたもんです。締めが物足りないって気もするけど。[映画館(字幕)] 7点(2011-02-23 10:57:55)(良:1票) 4. 盗まれた飛行船 レトロ感覚の人。ときどき挿入される大衆読み物の挿絵ふうの画像に対する愛着。子どもたちが猛獣に襲われているかも知れない、という場面で何枚かパラパラと綴られるやつ。そして銅版画ふうの線描世界。きっとこの人は、こういう時代に暮らしたかったという憧れを持ってたんだろうなあ。なんか寺山修司と共通した嗜好があるみたい。過去へ引きずられがちな傾向。プラハのほうの話でのいちいちのセット・建造物もいいし、少年たちのほうでは洞窟の中の入り江ね(これ『悪魔の発明』のときにも使った図柄じゃないか?)。とにかくとても面倒なことやって、自分の世界にしちゃってる。その特別なシーンだけが浮いてしまうことなく、一編の映画そのものがトリップしてしまう。新聞記者に発砲する家族がおかしかった。ただ筋立てが二つに分かれたぶん、『悪魔の発明』よりはいくぶん物足りない。[映画館(字幕)] 7点(2010-07-23 10:04:50) 5. 水玉の幻想 おっとこんな映画も登録されていたのか。これ『盗まれた飛行船』の併映で公開された短編。ガラス製のアニメーション。すごく面倒なことやってるんじゃないか。油絵のアニメってのもあったけど、こっちのほうがさらに手間がかかってるだろう。タンポポの男がパッとガラス=氷の壁にさえぎられるとこ、それが割れて流氷のように流れ出す、なんてのがよかった。一滴の水玉の中にも小宇宙、という発想。いまはCGの全盛、たしかにどんどん進歩していて、布の質感や肌の質感もかなりきめ細かく表わせるようになった。しかしそれはいいことなんだろうか。CGは、そのノッペリした質感が必要とされるときに一番生きている。変わった素材を十分生かしてそれぞれに合った新たな作品を作るという試みが、CG万能になるとすたれてしまいそう。シンセサイザーが生まれても、オーケストラはなくならなかった。こういう「ガラスでアニメ」なんていう無茶な試みをする人も、アニメ全体の表現を維持確保するためには、必要なんだと思う。[映画館(字幕)] 7点(2010-07-13 11:58:56) 6. 彗星に乗って 例の銅版画風タッチはやや控え目ながら、すっとぼけた語り口の妙には、やはり乗せられてしまう。一つの都市ごと彗星の引力に引っ張られて移ってしまうという設定からして、そうとうオカシイ。バラバラになって吸い上げられた建物が、また順番に積み上がっていくのが傑作。そのまま日常生活が何となく続いてしまうのがオオラカでよろしい。なんでも原作では女性を巡る二人の男の争いが話の中心になっているらしいが、それが映画では国家の争いに拡大され、そのぶん人間の演じる愚行に対するおかしみは倍化された。植民地支配を正当化したがる者に向けられた、東欧の視点。進化して後ろ足で歩いている魚がやがてイノシシになっていく。火星が近づいて世界の終わりになるというときに、一時的にユートピアが訪れるというあたりの風刺。海蛇の胴体がうねうねと続いているシーンの静かな美しさは、彗星に吸い上げられるシーンの激しい美しさと好対照。この人の奥行きのない世界は、影絵の世界に近いのではないか。崖から主人公が落ちるとことか、城壁からロープでヒロインを下ろしていくシーンなんか、影絵の雰囲気。一枚の絵葉書にすべてが還元していく締めくくりで、変なところもすべて納得してしまう。[映画館(字幕)] 7点(2010-05-19 11:59:50)
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