みんなのシネマレビュー |
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41. スウィート・ノベンバー 《ネタバレ》 出逢うはずのない二人が期間限定で恋人になる。 破天荒で天真爛漫な彼女だが、実は病魔が彼女を蝕んでいた…というよくある設定。 でもこれは”愛”を前面に打ち出せる良いスパイスなので、悪くはない。 観賞当時、私は10代でした。 まだまだ若さ故の未熟さがあったせいか、最終的に彼女が彼の元を 去ってしまう理由が長らく理解できずにいました。 「今までの誰より愛し、心から一緒にいたいなら、一緒にいればいいじゃない!」 そんな風に憤り、すべてが彼女のワガママに終止した、としか捉えられませんでした。 でも、今なら彼女の気持ちが少し分かるんです。 多分「本当に心から愛した人だからこそ」の決断なのでしょうね。 もし彼女が病気じゃなく、普通にこの先も長く生きていられたのならば、 彼女は彼と一緒にいる道を選んだかもしれない。 いや、恐らくそうしているでしょう。 でも、長く一緒にいられないことは既に分かっている。 そんな状況で、自分の気持ちの赴くままその道を選んだとしたら、 二人を待っているのは「死別」しかない。 そして彼に残るものは「絶望」と「虚無感」だけ。 彼女はそれを分かっていたからこそ『想い出は綺麗なまま遺す』という選択をしたのでしょう。 1ヶ月という期間も、また絶妙です。 確実にお互いが楽しい毎日を送れるラブラブ期間ですから。 そして毎年11月になれば、彼は彼女のことを思い出す。 彼女は「別れの悲哀」と引き換えに、彼の記憶の中で「永遠に生き続ける自分」を得たのでしょう。 人が愛の前で純粋になったり、素直になればなるほど、 悲しい想いや現実は表裏一体で影を潜めているのかもしれませんね。 「愛し合っている」だけじゃダメで、二人の”障害”に目を向けずに突っ走れば、 最後に傷つくのは結局お互いなんです。 「大人の恋」とは「清濁併せ呑んだ決断ができる愛の存在」を云うのかもしれません。 この映画は、ちょっと歪な大人の不器用な愛と慈しみが、美しく描かれているお話でした。[映画館(字幕)] 6点(2007-01-13 18:54:35)(良:1票) 《改行有》 42. スクリーム(1996) 《ネタバレ》 この映画の何が良いって、『映画への愛』が惜しみなく詰まっている所でしょう。 作中には過去の愛すべきホラー、サスペンス、ミステリー映画のオマージュが溢れていて、まさに「映画ファンの為に作られたホラー映画」だと思いました。 予定調和を逆手に取りつつ王道を行き、ドンデン返しも忘れない。これに好感を持ちました。 絶妙な間の取り方、緊張感、適度なエログロ描写、王道の逃走パターンなど、「抑えるべきホラー映画のポイント」はしっかりと踏襲しています。 翻って、主人公の身体能力の高さ、映画を引用したシニカルな台詞回しなど、「観客目線の疑問や不満」を型破りな手法で魅せてくれます。 ゆえに、観客はより登場人物たちへ感情移入してしまい、自分の思考回路も乱されてしまうのでしょう。巧いですねぇ。 登場人物が個性的で愛すべき存在であることも、大きな魅力の一つです。 主人公以外のキャラにスポットを当てると大抵は冗長になってしまうのですが、本作では当てたスポットが後々生かされ、且つその魅力もどんどん増してくるから不思議です。 何度観ても面白い、ホラー映画の王道作品です。しかし、型破りなホラー映画と言えます。バランス感覚に非常に優れているので、一見の価値ありです。[DVD(字幕)] 9点(2010-12-08 13:19:50)(良:1票) 《改行有》 43. チアーズ! 《ネタバレ》 まず驚いたのが、チアリーディングが凄まじく過酷であること。 下手をすれば、その辺の運動部よりも高い身体能力を要求される。 日本ではあまりメジャーでないチアリーディングだが、アメリカではチアリーディング(特にリーダー)をやることは、大変名誉なことだそうな。 スポ根モノだと言われれば、確かにその要素は多々含んでいる。 しかしどちらかと言えば、万能でない主人公が困難を地道に解決していく姿を描いた青春ドラマだろう。 しかも、主人公を演じるキルスティンが本当に適役で、ごく普通の思春期の女子高生を見事に演じている。 派手でも地味でもなく、健康的で素朴な可愛さや純粋さが備わる彼女に好感を抱くのは、ある意味当然の流れ。 そんな彼女も、家では生意気な弟とチアリーディングを理解してくれない母親に苛立ちを隠せず、 一部の女子からは嫉妬を含めた嫌味を言われ、ライバルからは目の敵にされてしまう。 もちろん、普通に恋もする。 しかし奥手同士で微妙な距離感が甘酸っぱく続く。 これぞまさに青春。 私もこんな素敵な青春を送ってみたかったな…。 彼女の成長していく姿を追って行くと、様々な変化が垣間見えるので、 いつしか心の底から彼女を応援したくなってしまう。 最後の結果も、あえて優勝をさせないのが良い。 主人公を含めたチームメイトたちは、皆負けてもとても爽やかな顔をしている。 これこそが、友情、仲間、努力、フェアプレイを貫いた結果の姿なのだ。 「勝ち続けることだけが全てではない」ことを物語っている。 青春は素晴らしい。 蛇足ですが、私は剣○部だったので、別の意味で(甘)酸っぱい香りの学生生活を送っていました。 母によく「思春期の女の子の部屋の匂いじゃない」と言われていたあの頃。 懐かしいです。[DVD(字幕)] 7点(2004-11-16 21:47:01)(良:1票) 《改行有》 44. 男はつらいよ 寅次郎夢枕 《ネタバレ》 寅さんシリーズ、鑑賞4本目。 八千草薫さん演じる千代に感情移入しっぱなしでした。 女としても、母としても、彼女の発する言葉、彼女の見せる表情、気持ちのすべてに共感してしまった私がいます。 千代が土手で息子のサトシくんと会うシーンは、たった5分ほどの短いシーンです。さして多くが語られている訳ではありません。 けれど、あのシーンだけで千代が抱えている様々な気持ち、送ってきた人生の苦渋などを読み取ることが出来てしまい、涙無くして見ずにはいられませんでした。 第2作でも寅さんのお母さんが言っていました。「どこぞの世界に自分の子どもを喜んで放る親がいるんじゃ」と。 本当にその通りです。 母親が自分のお腹を痛めて産んだ子をわざわざ手放すには、それなりの理由があると思います。 時代も時代だから、もしかしたら父親が譲らなかったのかもしれない。 はたまた、我が子の幸せを総合的に考えた上で、母親が泣く泣く子を手放したのかもしれない。 必ずしも、母親が我が子を引き取るだけが愛情ではない。 どんな理由であっても、子の幸せのために我が身を切る決断を出来るのが母親だ…と、当該シーンは語っているように思えました。 サトシくんと一緒にいる間は涙を堪え、見送りながら小さく肩を震わせて泣く千代の姿に、世の母親は涙を隠せないはずです。 そして、何気ない千代の発言からも、女一人で生きていく人生の不安、大変さ、辛さが表れていて、胸が締め付けられる思いでした。 荷物を運んでくれる寅さんに「やっぱり男手って必要ね…」と彼女は言います。 これ、力仕事における労働力だけを意味している訳ではないと思うんです。 自分に力を貸してくれる男性の存在そのものに安心し、癒され、喜びを見出しているのではないかと思いました。 千代と息子の関係を気遣う寅さん&とらやの人々に対して「寅さんの気持ちが伝わってきて、私、本当に嬉しいの」と喜び泣いたとき。 これも、彼女の心の奥にある辛さや寂しさに寄り添おうとしてくれる人たちがいる、という事実に、彼女は救われたのだと思います。 「ああ、私は一人ぼっちではないんだ。こうして優しくしてくれる人がいる。それだけで十分。また頑張れる」そんな気持ちだったのではないかと思いました。 そして寅さんへの愛の告白。 「私、寅さんと一緒にいると気持ちがホッとするの。寅さんと話してると『あぁ、私は生きてるんだぁ』って楽しい気持ちになるの」 千代は初登場のシーンから、常に笑顔で穏やかでした。辛さや寂しさなんて、微塵も感じさせないほどに。 別に無理に隠しているとも思いません。 けれど、自分でも知らぬ間に気は張ってしまうものです。「強く生きねば」と。 それが、何も考えず、何も気にせず、自分の気持ちがホッとして、気がつくと自然と笑っている…それが寅さんだったのでしょう。そういう人って、なかなかいません。 この愛の告白は、寅さんを一人の人間として最大の賞賛をし、一人の男性としても温かい愛情を示しているのだと思いました。 それだけに、寅さんが及び腰になってしまったことがとても口惜しい。 寅さんって、傍目は大口叩いて自意識過剰に見えるけど、実はとても傷つきやすくて自信が無い人だと思います。寅さんがもっと自惚れ屋さんだったら、きっと彼女の告白を受けていたでしょうね。 私は個人的に、インテリ先生がいなかったら、二人は結ばれていたのではないかな…?と思います。二人だけのタイミングで、二人だけの時間の進み方で関係が深まっていったら、もしかしたら…と思えてなりません。 いや、これも叶わぬ私の願望かな?[インターネット(邦画)] 9点(2018-12-01 00:00:19)(良:1票) 《改行有》 45. かもめ食堂 《ネタバレ》 縁もゆかりも無い人々が、縁もゆかりも無い土地で出会い、そこで生じた小さな縁により、それぞれの人生や生活に影響を与えていく。鑑賞後は、なんとも言えない温かい感情に包まれました。 サチエさん、ミドリさん、マサコさんが『何故フィンランドを選んだか?』の明確な理由は、最後まで明かされません。きっと理由はさほど重要ではないのでしょう。明確な目的など無くても、自らの意志さえあれば、どんな旅でも希望が持てるのです。そんな人生も楽しそうだし、とても素敵ですよね。 印象的だったのは、マサコさんのトランクの中身が開かれたシーンでした。行方不明になったトランクの所在を繰り返し尋ねていたマサコさんに、サチエさんは言います。「大切なものが入っているでしょうから、早く見つかると良いですね」と。曖昧に返事をするマサコさんは、恐らく思い返したのでしょう。『無くして困るほどの物を、いったいどれほど持ってきたのだろうか?』と。 ようやく見つかった彼女のトランクを開いてみると、中にはあの森で拾ったような美しい落ち葉が溢れ返っています。たくさん拾ったのに何処かで落としてしまった、フィンランドの森の落ち葉。木漏れ日が射し込み静寂が佇む、まるでフィンランド人の穏やかさを象徴しているかのような美しい森で拾った、鮮やかなたくさんの落ち葉。きっとマサコさんが日本から持って来たトランクの中には、彼女が心から必要としているものは無かった、という意味なのでしょう。彼女が必要としているものは、ここフィンランドにあった。だからマサコさんはフィンランドに残ることを選んだ。 フィンランドという土地で素朴な日本の姿が徐々に受け入れられていく様や、言葉の壁を物ともせずハートとハートで人間関係が繋がっていく過程は、何とも言えない充足感や幸福感を与えてくれます。人と人との出会いは、ある意味「糸」のようなもので繋がっているのかもしれません。その「糸」は「縁」あって「絆」に変わっていくのでしょう。 彼女たちの「いらっしゃいませ」は、今日も新たな縁の糸となっていることでしょう[DVD(吹替)] 8点(2009-01-08 23:13:47)(良:1票) 《改行有》 46. シティ・オブ・エンジェル 《ネタバレ》 当時、この映画のCMで流れていたBGMに、私の心は奪われました。透き通るような女性ボーカルの声、柔らかなメロディ、美しいメグ・ライアン。(ニコラス・ケイジに関しては自主規制)「あの曲をもう一度聴きたい」その一心で映画も楽しみにしていました。 しかし、不運にも劇場に足を運んで鑑賞することが出来なかった私は、DVD化を待ちました。月日は流れ、劇場公開から2~3年後、ついに私は本作を鑑賞することに!!しかし、あの音楽が私の耳に届くことはありませんでした。激しく落胆しました。これで作品自体が面白ければまだ救いがあったのかもしれません。けれど、皆さんもご存知の通り内容はこのザマ。何なんですか?この映画は。 私のやり場のない怒りは作品への嫌悪に変貌を遂げましたが、これもまた月日の流れとともに沈静化が進みました。そして数年前、ようやくあのBGMがPaula Coleの「I don't want to wait」だったということが判りました。 そして、ついにレビューする日がやってきました。怒りも収まり、時間も経ち、冷静になった自分で公正なレビューができるからです。 この映画は3点です。 3点のうち2点は、映画のCMにPaula Coleの歌を使ったことに対してです。つまり、映画自体は1点でも良いと思っています。 月日が経とうが、怒りがおさまろうが、ひどい映画はひどいままだということに、少々複雑な思いでもあります。[DVD(字幕)] 3点(2012-04-28 23:23:03)(良:1票) 《改行有》 47. リング(1998) 《ネタバレ》 約8年の歳月が経った今でも『貞子』の名前は多くの人の記憶に残っている。これってスゴいことです。 ホラー映画って、興行収入や制作費などの『記録』ではなく、いかに『記憶』に残るかが名作としての絶対条件だと思うのです。 8年前に初めて「リング」を見た時、私の心は恐怖と感動でいっぱいでした。 若かったからかもしれないですけど、これほどの緊張感と恐怖心で支配されたジャパニーズホラーは、その時の私には初めての経験だったのです。だからこそ、恐怖を超越してある種の感動を覚えてしてしまったのです。 で・・・でも、やっぱり貞子こえぇ~っす(泣) 鑑賞後の夜、お風呂から出てきた時に独りぼっち&部屋が真っ暗だと怖いから、パパンに起きて待っててもらったのは良い思い出です(夜中の2時)。 <2020年10月:点数を7点→8点へ修正> たまたま見る機会があり10数年ぶりに鑑賞しましたが、これは本当に名作ですね。よく出来てるなぁ…と改めて嘆息が出ました。 ジャパニーズ・ホラーの原点って、やはり「水」なのかな?と思ったりしています。 水というか、ジメジメヌメヌメした梅雨時のような、あの肌にまとわりつくようなベッタリした不快感です。汗なのか湿度なのか判らない、あの不快指数100%のようなじっとりした肌感覚です。その言い知れぬ不快感が「リング」からは常に漂っていて、見ているうちにいつの間にかしかめっ面になってしまうんですよ。 しかしこうした不快感を恐怖として変換・認識できるのも、日本という海に囲まれた島国で育った日本人特有の感覚なのかもしれません。土着信仰も大いに影響しているように思います。 かつては幽霊と言えば「お岩さん」を思い浮かべる日本人が大多数だったにもかかわらず、今日では「貞子」がその地位を取って代わり、確固たるものとしています。この作品がジャパニーズ・ホラーの代名詞として一つの文化を作り上げたのは、紛れもない事実でしょう。 ところどころに粗はあるものの、封切りから20年以上経っても色褪せない良い作品だと思います。[DVD(字幕)] 8点(2006-08-16 10:02:53)(良:1票) 《改行有》 48. 特攻野郎Aチーム THE MOVIE 《ネタバレ》 懐かしさに誘われて観賞しました。まだ幼かった私ですら記憶の片隅に残っている特攻野郎Aチームが、まさかスクリーンで甦るなんて!!そりゃ心も躍ります。 観賞後、近くにいた人たちの会話が気になりました。「面白かったね~」という問い掛けに対し「ハリウッド的だよ、まったく(笑)」と嘲笑気味に返答してダメ出しをしているお相手。確かに、その方の仰る通り。良くも悪くも本作はとても「ハリウッド的」です。 個人的に、こういった映画の粗を探すのは野暮だと思っています。ご都合主義的展開、超人的な個々のポテンシャル、非現実極まりない任務など、「有り得ねぇ~!!」と乾いた笑いが出てしまう。でも、頭のどこかで「アメリカなら有り得るかも・・・?」という考えも生まれてしまう。それがこの手の映画の楽しみ方でもあると思うからです。 頭を空っぽにして、ただただ目の前で繰り広げられるド派手なアクションを楽しむ。そういう映画も無いとつまらないものです。 という事で、そんな映画がお好きな方には一見の価値アリです。思いっきり笑い飛ばしてやって、スカッとしちゃってください。[映画館(字幕)] 6点(2010-09-20 12:38:12)(良:1票) 《改行有》 49. 踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ! 《ネタバレ》 ドラマシリーズも前作も鑑賞済みです。ドラマは楽しく拝見していましたし、新しい刑事モノとして良く出来ていたと思います。しかし、映画第1作目に辟易したため、本作に対しては過度の期待はせず臨みました。 それでも、この映画に対しては酷評をせずにはいられません。散々張り巡らせておいた伏線もあんな形で中途半端に回収をし、怒りが湧きます。あれだけ引っ張っておいて、あれだけ風呂敷を広げておいて、これなのですか?観客を舐めるのもいい加減にして頂きたい。完全な内輪ネタ。身内だけのお祭り騒ぎ。そう思われても仕方のない作品だと思います。 映画は、エンタテイメント・娯楽だと私は思っています。故に、オチを笑いで回収することも一概に悪だとは言いきれません。そして人それぞれ感性も価値観も違いますから、作品に対して様々な評価や感想があるのは当たり前だと認識しています。しかし、それは『鑑賞対象者が万人であること』が前提ではありませんか?「踊る~」の映画シリーズは、それと逆行している気がしてなりません。『テレビ作品の映画化というだけで、既に対象者は絞られている、コアなファンもいるのだから文句を言う奴は見るな』という主張もあるかもしれません。しかし、それは理屈として違うと思います。 テレビドラマの映画化でも、成功例は多々あります。制作陣が本当に良作を多くの方に届けたいという姿勢で臨めば、それは観ている者にも分かるはずです。本作の制作陣は、本当にそういった姿勢だったのでしょうか?映画第1作目が興行的に成功し、2もヒット確実が目に見えていたために、遊び心が強すぎたのではないでしょうか? 真実は分かりません。ただ、人が人を評価する時は「目に映った物や抱いた印象」で下されることが多いです。映画も同様でしょう。少なくとも、私が抱いた印象や目に映った物からの評価は、上記のようなものでした。不快な気持ちばかりが残り、今ではドラマのDVDすら見なくなった事が、とても悲しいです。[映画館(字幕なし「原語」)] 1点(2009-10-25 21:55:17)(良:1票) 《改行有》 50. ファーゴ 《ネタバレ》 昔、母から「ひとつ嘘をつけばその嘘を隠すためにまた嘘をつく必要がある。 嘘の上塗りは自分も苦しめ、他人をも傷つける」と教わった。 この映画はまさに、嘘の上塗りによって訪れた悲劇の数々。 深い理由も無く、各々の私利私欲や自己防衛本能が引き起こした悪夢。 そんな人間の汚れなど知りもせず、壮大な地を覆う純真無垢な雪景色。 純粋さの象徴である自然でさえ人の手により汚される様は、 その生々しさに思わず息を止めたものの、 皮肉なことに美しさに魅せられてしまったこともまた事実だった。 淡々としたストーリーなのになぜか最後まで飽きず食い入るように観てしまうのは、 映像の見せ方の巧さと、人間の本質を突いた心理描写よる貢献が大きいと思う。 まさにコーエン兄弟ならではと言ったところか。 登場人物の誰も幸福そうに見えないのが、何ともいたたまれない気持ちにさせた。 そして、人を殺す事に何ら躊躇いの無い人間は狂気だが、 私利私欲のために動く人間の業の深さ・欲深さには恐怖と哀れみを感じざるを得なかった。 [DVD(字幕)] 8点(2007-04-11 16:24:51)(良:1票) 《改行有》 51. サマーウォーズ 《ネタバレ》 ごめんなさい、低評価にします。 当時高校生だった従弟に激しく勧められたので鑑賞しましたが、まったく面白く感じられませんでした。 細田監督の映像演出は、確かに細かくて美しいと思います。でも、肝心のストーリーが楽しめなかったんです。やけにオタク臭がすると言うか、妄想臭い展開に萎えてしまいました。こうして文字にしている今も、言い知れぬ不快感が込み上げて来ます。多分、あの女の子のあざとさ?や、変身するシーンが気持ち悪くてダメなんです。。 好きな方には本当に申し訳ありません。またいずれ、書けそうな時に再投稿します。 <<再投稿>> 映像演出については、前述の通り。 昭和と平成を融合・共存させようとしている努力は良いと思う。しかし、それは「映像演出においてのみ」発揮されていて、ストーリーとしては疑問符が残る。 まず、キャラ設定が安易で稚拙。主人公は、奥手だが実はとても賢くて、というヒーロー要素を備えるキャラ。ヒロイン1は、明るくて可愛くてちょっと強引なツンデレタイプ。ヒロイン2は、趣味も格好も男っぽい、一人称は「ボク」と言いそうなタイプ。 抽象的な表現だが「あ~、結局それね」と思わず言いたくなるステレオタイプに辟易した。 そしてこれは私の個人的な意見だけど、どちらのヒロインも同性に好かれるタイプには見えないのよね。。 二人とも悪い子じゃないとは思う。けど、同性からすると「絡みにくい・難しい」と思われるタイプな感じ。往々にして、そういう子の方が異性に好かれるんだけどね。 次にストーリー展開。古き良きノスタルジックな昭和と、現代的な平成の価値観を絡ませようとするのは面白い。しかし、その絡ませ方が微妙。おばあちゃん、どんだけ権力者なの?(笑)そして身内がみんな公務員というのは少し乱暴では?それとも田舎ではこんなもんなの?いち高校生が、小さな村のひと家族が、こんなに大きな問題を簡単に解決出来ちゃうあたり、リアリティに欠ける。 詰まる所、全体的に幼稚な感じがして楽しめなかったんですよね。男性の憧れが詰まったキャラや、男の子が喜びそうな描写を気持ち悪く感じてしまったのは、捻くれた私の性格の所為なのは分かっています。。だからイジメないで(><) ま、私はこの映画に向く人間じゃないんでしょう。この類の作品は、素直な心の方々にお任せします(^^;[DVD(字幕なし「原語」)] 2点(2012-04-28 22:58:37)(良:1票) 《改行有》 52. 下妻物語 《ネタバレ》 ロリータとヤンキーまではいかなくても、そういえば私の周りの友達も みんな個性が強くて、自分とは性格や考え方が正反対の子が多かった。 恋愛ではよく正反対の者同士が惹かれ合うけど、 女同士でその仲が成立するのは確かに難しい。 きっと女は男より欲深くて自尊心の高い生き物だからかもしれない。 それでも心を通わせていくのは、お互いに『尊敬』をし合っているからだと思う。 桃子は周囲の目や言葉など気にせず、冷酷なまでに自分の世界をどこまでも貫く。 それが自分の幸せに通じる、と言うことを知っているから。 そんな桃子の「強さ」にイチゴは憧れと尊敬の念を抱いたのでしょう。 逆にイチゴは、人から虐げられる外見をしていてもポリシーとルールは持っている。 自分を変えたくて始めたことでも、すべてソレに染まる必要はないことも知っている。 そんなイチゴの「純粋」さに、桃子は戸惑いつつも『感情』を学んだのだろう。 桃子に足りなかったモノを持っていたのがイチゴ。 イチゴが欲しかったモノを持っていたのが桃子。 唯一、二人に共通していたモノは『素直さ』だったのだろう。 自分の世界を貫くのも、ストレートに感情を表現するのも、 どちらも自分に対しても他人に対しても素直でなければ出来ないことだと思う。 単純な構図だけど、人間が人間に惚れる時は、きっといつだってシンプルなんだ。 「男の友情は強く、女の友情は脆い」ってよく聞くけど、 女の友情だって捨てたモンじゃないでしょ。[DVD(字幕)] 9点(2006-08-18 10:22:50)(良:1票) 《改行有》 53. ゆれる 《ネタバレ》 私には2歳下の妹がいる。姉妹仲は恐らく普通。私たちはすべてが似て非なる存在のため、家族として当たり前の慈愛、信頼、寛容はあるものの、姉妹であるが故の嫉妬、劣等感、羨望も持ち合わせていることもまた事実だろう。同じ親から生まれ、どれだけ親が平等に扱っていたとしても、環境によって育まれた立場や認識の差は、なかなか変わらないのかもしれない。 事件によって大人しかった兄は豹変し、そんな兄に戸惑う父や弟。それぞれが描く互いのイメージ(認識)がことごとく覆され、沸き起こる不安。人は「家族」という存在に、心のどこかで絶対的価値を求めているのかもしれない。絶対など存在しなと思いつつ、それでもどこかで信じているのかもしれない。だからこそ、その考えが根底から覆された時の絶望感は計り知れない。小さな波紋はじわじわと大きく広がり、心は揺さぶられ、絆も揺るがされ、互いの存在や価値さえも揺るがしてしまうほどの恐怖に変化するのだ。 兄の稔は、必死で自分を助けようとする弟の猛に深い謝意を感じてはいるものの、同時に自尊心を傷つけられ、恥と屈辱を感じてしまう。皮肉なことに、稔自身も父や弟と同様に、自らの認識と違う弟を目の当たりにして戸惑い、不安や恐怖心が生まれてしまったのだろう。証言台で話す猛の表情は悲しいほど無機質で憎しみに満ちているが、その姿を見つめる兄の表情が安堵に満ちているのは、なんとも悲しい。 しかし、猛が偶然見たホームビデオに映し出されていたのは、取り合う手と手から感じられる兄弟の確かな絆。これを見た瞬間、私も猛同様に嗚咽を漏らしてしまった。幼かったあの頃の数々の映像が頭の中を駆け巡り、苦しくなるほど胸が痛んだ。同時に、温かく優しい感情にも包まれた。私は、自分が想像していた以上に妹を大切に想っていたことに気がついたのだ。 本作のように、いつか私たちにも認識のズレを感じる時が来るかもしれない。しかし、私たちにも見えない絆があると信じたい。不安定で不確かなことばかりだが、私と妹との絆だけは消えないで欲しいと願う。 最後に猛が必死に「兄ちゃん、家へ帰ろうよ」と叫ぶ言葉の裏には、「あの頃の二人に帰ろうよ」という願いも込められていたのだろう。そして弟の声に気づき微笑んだ兄の「帰る場所」が、どうか父や猛のいる場所であることを、切に願った。[DVD(邦画)] 9点(2008-06-19 00:30:23)(良:1票) 《改行有》 |
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