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プロフィール
コメント数 487
性別 男性
ブログのURL //www.jtnews.jp/blog/23806/
年齢 41歳
自己紹介 多少の恥は承知の上で素直に書きます。

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141.  ミスト 《ネタバレ》 「キングのファンとしては、割と原作のイメージに忠実であるというだけで嬉しかった。タコ足の登場シーンでは普通なら失笑してると思うけど、「うわ、懐かしー」と喜んでしまった。そうそう、数あるキングの小説のなかでも『霧』は飛び抜けてB級風味が強いんだよね。 ラストの賛否が分かれるのは当たり前。ただ正直な話、原作のぼやけた幕切れよりは数段ましだと思う。微かな希望を暗示する結末ではあったが、はっきりいってお茶を濁して終わった印象だった。キング本人が映画版の結末を認めたのも、あの中篇の最大の欠点がそこにあると自覚していたからじゃないだろうか。 このラストはあざといといえばそれまでだが、作品のコンセプトが明快になったのも確かだと思う。つまりは、ときには災難それ自体よりも人の恐怖心やパニック、絶望のほうが命取りになり得る、ということ。誰も指摘しないのが不思議だけれど、この作品の状況設定はスーパーマーケットに閉じ込められる『ゾンビ』によく似ている。『ゾンビ』の方は人間同士の悪意によって自滅するのに対し、こちらは精神的な脆さに焦点がある。仮に異次元の怪物ではなく大規模な自然災害を題材に選んだとしても、似たようなストーリーが成立したはずだ。 冷静に振り返れば、実は人々が冷静、かつ用心深くさえいれば、死傷者は半減しただろう。怪我人が霧中に危険があると証言した時点で、そこに留まって警察や軍隊の救援を待つというごく当たり前の判断をしていればよかったのだ。遭難したときに下手に動かずレスキューを待つのが賢いのと一緒で。ところが恐怖という感情は厄介なことに、伝染する。スーパーから逃げ出すはめになったのは恐怖心に支配された群衆のせいだが、逃避行に最悪の形で終止符を打ったのは、自分たちの恐怖心のせいだ。そもそも冷静に考えれば、工夫次第でさらに生き延びることができたはずではないか? 最後に再登場するあの母親が、もう一歩で助かり得たのだという冷厳な事実を突きつける。 ところでこの狂信者の女、アメリカ人からするとどれだけリアリティが感じられるキャラクターなのか、気になるところだ。日本人からすればこいつに惑わされるなんて絶対ありえないように思うが……いや、細木数子みたいなのがいれば数人は騙されるのか?[DVD(字幕)] 8点(2008-09-26 11:56:27)(良:1票) 《改行有》

142.  Dolls ドールズ(2002) ある意味、究極の純愛映画でしょう。「最も危険な性的倒錯は純愛である」と言った作家がいましたが、それを端的に表している。無償であることが愛情の本質だとしても、あまりにもその精神が純化してしまえば狂気と相違ない。映像も綺麗といえば綺麗だが、できすぎた感のある美しさは逆に怖い。自然色にしては色彩が鮮やか過ぎて、美しさを超えてほとんど空恐ろしい気持ちになる。登場人物たちの純粋さもこれと一緒。  ただし、個人的には北野さんの演出があまり好きになれないので低得点に。台詞の抑揚のなさは北野流のリアリズムなのだろうが、やりすぎていて却って不自然だ。「かっこつけない」というポーズをとることが一種の「かっこつけ」であるように、演出も極端に抑制すれば、過剰に演出しているも同然になる。わざとらしく、リアリティが感じられない(フィンランド人から見たカウリスマキなんかもこうなのだろうか? 外国語で聞けば抵抗が薄れるとか……)。とくに肝心の中心となるエピソードに首を傾げるような部分が多く、冒頭で笑う人たちの演技からしてすでに嘘臭さ全開、結末もギャグすれすれ。人形浄瑠璃の映像については知識がないとまったく理解できない。ヤクザネタにもううんざりしているのは自分だけだろうか? なくてもなんとかなったんじゃないかと思えてならない。  映画のテーマは悪くないと思うのだが、その提示の仕方に傷が目立つように思えた。[DVD(字幕)] 5点(2006-01-09 10:05:33)(良:1票)

143.  パッチギ! 好きになれない。 まず、主人公とヒロイン、アンソンと桃子といった物語の中心人物に厚みがなく、ラストシーンを含む肝心な場面で心を動かされなかった(少なくとも恋愛物としては最低レベル)。脇役たちもいちおう特徴的でわかりやすい個性があるものの、人間としての深みがあるとは感じない。マンガの世界にはとりあえず変な口癖と特徴的な外見、性格をつけておけばとりあえずキャラが成立すると思っている作家がたまにいるが、人間を描くということとキャラを立たせるということはまた別だろう。 物語はギャグと派手なケンカシーンのために退屈はしない。しかしあまりに予定調和が過ぎ、説教臭さが鼻につく。「出産」というイベントの凡庸さ、あざとさには呆れた。イデオロギーが消化しきれておらず、論文のようなごつごつした骨格を持つ不自然な脚本となっている。 そもそも、いまさらこのような形で問題提起をされても、教育現場やマスコミでさんざん説教されてきた者にはとくに感じ入る部分はない。むしろこういった感情的に押し付けるような社会批判が多すぎたからこそ却って現在の日本人の反発を招き、嫌韓流ブームが生まれたのだと思う。本当に問題提起したいのなら、こんなやり方は逆効果。日本人・韓国人の両方を相対的に描いた上で衝突を描くような冷静さがあればまだ好きになれたかもしれない。 にしても、この作品えらい評判がいいですよね。自分は何か取り違えたのかな? でもわざわざ観返す気にはなれないんだよな。[DVD(字幕)] 6点(2005-08-29 23:44:43)(良:1票) 《改行有》

144.  世界残酷物語 まったく対照的な文化を続けて観せるのは面白いです。犬を食べる台湾と犬を人間のように埋葬するアメリカのコントラスト。後者の映像では生きている犬がその墓におしっこをひっかけたりして、「犬からすれば人間が何をやっているのかわからないでしょう」って、すごい皮肉だなあ。人の営みの不思議さ、滑稽さを見せつけます。  ただ、映画としては普通につまらないです。酔っ払いやフラダンスのシーンなど、なんらかの効果を狙ってのことなんでしょうが、それ以前に退屈です。おまけに、全体的に胡散臭すぎる。ドキュメンタリーっぽく撮るならそれはそれでいいけど、あまりそれが上手いとは思えません。しかも少数民族やアジア人をバカにした描写が多すぎ。嘘ならなんでもOKなんでしょうか(「東京温泉」って何だ?)。差別意識ばりばりの胡散臭いものを出し物にする、昔の見世物小屋みたいな映画です。  作中で嘲笑されている芸術家イヴ・クラインは、お気の毒に本作の鑑賞中に心臓発作で亡くなったそうです。ヤコペッティには、撮る対象への侮蔑、差別意識があります。この人に「人間は愚かだ」式の説教をされたくありません。[ビデオ(字幕)] 3点(2005-05-02 13:47:52)(良:1票)

145.  ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ スピーディスピーディと言われているのでどんなに速いのかと思ったら、『スナッチ』を先に観ていたのでちょっと遅く感じたくらいだった。意外とゆるい感じ。ゆるゆると進んで、突然爆発する。悪党どもがドミノ倒しのようにパタパタ倒れていくのが笑えた。出てくるのは悪党ばっかりで暴力描写も盛りだくさんなのに、結末はほぼ勧善懲悪が完遂されるので後味がすごくいい。そしてなぜかいちばん迫力があったのは、バーを経営している主人公の親父。って、スティングじゃん! どうりで、目つきが只者じゃなかった…[DVD(字幕)] 7点(2006-01-06 10:03:15)(笑:1票)

146.  見知らぬ乗客 ヒッチコックは観客をじりじりさせるのが本当に上手く、ほとんどサディスティックですらある。おまけにただ単に緊迫感を盛り上げるだけでなく、どことなく洒落てる。遊園地やテニスの試合場といった場所の使い方、ボクサー犬(?)やライターといったアイテムのセレクトがかっこいいのだ。そしてなんといってもメリーゴーランドでの最後の対決シーンが最高! むしろ主人公や悪役よりも一場面一場面の強烈な絵が脳裏に焼きついている。なんというセンスの良さだろうか。  ところでブルーノが排水溝に落ちたライターに必死で手を伸ばすシーン、何かに似てるなと思ったら、なんと『ウルトラマン』でハヤト隊員が変身用の道具をつかもうとするシーンにそっくりだ。円谷さんはこんなところから影響を…? どんな分野の人間でも、ヒッチコックの才能に触れてしまったら影響を受けずにはいられないのかもしれない。だって、かっこいいもんなあ。[DVD(字幕)] 7点(2005-12-24 02:48:40)(良:1票)

147.  ゆれる 《ネタバレ》 隠喩とか象徴とか考えるのはあまり好きではないんだけど、いわばあの橋は兄弟の関係そのもので、間に一人の女が割り込んだがために激しく揺れ、その脆さを露呈したのだといっていいと思う。 猛の偽証はあんまりだという意見が多いけど、そうだろうか。殺人ではないにしても過失致死か傷害致死なのは間違いないわけで、結果を見る限り素直に同情できない。仮に助けようとしたとしても、危険なつり橋で人を突き飛ばすような男は刑務所に行って当然だろう。 最初、猛は兄が灰色であるのを承知でかばっていた。が、面会した兄は異様な言動を見せ、法廷では嘘をつき、偽善的なパフォーマンスまでやってのける。検事が「相手が落ちるのを予想して手を伸ばしたんだろう」と迫る下りは、なるほど証拠は無いがそれもありえなくはないな、と思わせた。あそこで傍聴席の猛がちらりと映されるが、あるいはあのときすでに、兄を疑い始めていたんじゃないだろうか。 無罪と思い込もうとしていたのが、終いには狡猾な男が芝居を打って罪を免れようとしているように見えてくる、そしてそいつを有罪にできるのは、自分だけ――だったら、あの行動もまんざら理解できなくない。 猛の証言に稔が微笑んだのは、たぶん、嬉しかったんだと思う。面会室で弟に唾を吐きかけたときから、きっと稔はどこかでああなることを望んでいた。初めて弟に本心を晒し、弟もまた本心でぶつかってきたことが、清々しかったのだろう。以前は表面的に仲の良い兄弟でしかなかったのが、おそらく生まれて初めて本気で兄弟喧嘩をしたのだ。 そしてラスト。個人的にはあの終わり方が一番よかったと思う。事件を契機に兄弟は初めて取り繕うのをやめて醜い悪意をぶつけ合い、それでも弟が再会を望んだから、兄は笑った。きっと彼らは関係の快復を望んだろう。でも確執が残っているのは当然で、元通りGSで働くのも難しいのだから、いきなりの和解なんて夢想でしかない。見通しは甘くないのを承知の上で、なおも希望を見つけようとする。 人は繋がりたがる生き物だから、どんなに頼りなくゆれる橋でも、向こう岸に渡りたいと望む。ラストが曖昧なのはごまかしではなく、そこに願いを込めようとしたからだと思う。[DVD(邦画)] 7点(2007-11-29 00:53:00)(良:1票) 《改行有》

148.  エトワール(2000) 親戚にダンサーの女性がいるのだが、彼女は温泉の電気風呂にはほとんど入っていることができないそうだ。体脂肪率の低い全身筋肉みたいな体だから、身体が過剰に痙攣してしまい、まともに動くこともできない(!)のだという。その話を聞いたときは冗談だろと笑ったけれど、この映画を見て改めて慄然とした。針金のように細い身体が、精密機械のように完全に統制された動きをする。かといって機械的な訳ではなく、しなやかさと力強さを併せ持った、間違いなく生き物にしかできない動きだ。とにかく、すごい。人間にしかできない動きを人間業ではない領域まで昇華する。それに必要とされる気の遠くなるような努力。バレエのために他の何もかもを捨ててしまうだけの情熱は、一体どこから出てくるんだろうか? 想像するに、ダンスの快感は音楽や絵画といった芸術表現の快楽と、スポーツの身体を動かす快楽が一体となったものだ。自己表現の気持ちよさと、身体を動かす気持ちよさが同時になされる――それらの快楽の一端しか味わったことのない自分にも、なんとなくその凄まじさは理解できる。精神と肉体の快楽の頂点。それはきっと、性的快感をも凌駕しているだろう。だが、間違ってもバレエダンサーになりたいとは思わない。アーティストの苦しみとアスリートの苦しみを一身に背負うこと、精神も肉体も極限まで研ぎ澄ませることの苦しさを、いやというほど観せられたからだ。変な話だが、観終えた今は彼らを羨ましいと思う気持ちと、死んでもああはなりたくないという気持ちの両方が混在している。[DVD(字幕)] 6点(2006-01-10 10:28:33)(良:1票)

149.  夕陽のガンマン かっこよさを印象づける演出がすごく上手。冒頭の遠距離での銃撃戦、多勢に無勢の状態からの逆転、二人の出会い、最後の決闘などなど、けれんの効いたシーンが山ほどある。ライフルや独特の銃、オルゴールつきの懐中時計のような小道具の使い方も非情に効果的だ。脚本も思ってたよりもずっと凝っていて、後半で明らかになる敵の首領の狡猾さにうなった。『ホワイトアウト』のボスみたいな。それなのに甘さも見え隠れするところが、人間味があってよい。主人公に最強の男を据えないというバランス感覚も絶妙。  しかしあまりにもかっこよすぎて、おいおいそれはねえだろ~という部分もあったのでちょっと減点。わざわざポーカーでターゲットを倒してから、取り分に「お前の命を頂く」とは……かっこつけてないでとっとと撃てよ(笑)。その間に味方を呼ばれてるじゃねえかよ。[DVD(字幕)] 6点(2005-12-16 14:32:21)(良:1票)

150.  ブッチャー・ボーイ 《ネタバレ》 主人公の少年はいつもわめいたり悪態をついたりしていて、それこそブタのようにやかましい。でもそれは迷子になった子供が親を探しているときのような、痛ましい混乱と怒りに満ちたもので、結局彼はいつも自分を愛してくれる人を探して迷走していたように思う。彼はこれが「ブタの成れの果てだ」とブタの首を指して言う。誰にも気にかけてもらえず、やがては屠られてしまうブタに重なる彼の姿は、途方もなく孤独だった。ニュージェント夫人に罵られたとき、本当は「お前はブタなんかじゃない」といってくれる誰かが必要だったはずだ。それなのに家族は死に、親友は去っていき、心の拠り所としていた美しい幻想も奪われる。少年の混乱は頂点に達し、破滅へと向かってしまう。しかし、この映画のいいところは単に破滅を描いて終わるのではなく、穏やかなラストを用意していてくれたことだ。彼が成長し、ただ静かに手の中の一輪の花を見つめている姿を見たとき、涙が出そうになった。彼はもうブタのようにけたたましくわめいたりしない、もうブッチャー・ボーイではない。哀れな少年の心にようやく平安が訪れたのだと、救われた思いがした。[DVD(字幕)] 7点(2004-11-30 23:59:59)(良:1票)

151.  ミクロコスモス 普段は気にも留めないちっぽけな虫の世界が、想像をはるかに超えて美しい。もちろんグロテスクなところはあるけど(とくに毛虫の群れとか、忘れたい)、アブラムシを取り巻くアリたちとテントウムシの動きや、闘うクワガタ、雨に戸惑うミズスマシ、濡れたクモの巣、奮闘するフンコロガシに、巣から覗くハチの幼虫など、透明感のあるきれいな映像のオンパレード。虫が地面を踏みしめる音まで聞こえてくるのが臨場感があってまたいい。小さな虫たちの生活がこんなにもドラマチックなものだったなんて。そして画面の虫たちの足元にときおりさらに小さな虫が通ることに気づいて、この世界の巨大さ、繊細さを実感。溜息が出ました。7点(2005-02-19 02:23:00)(良:1票)

152.  虹の女神 Rainbow Song 《ネタバレ》 安易にヒロインを死なせるような、べたなラブストーリーは好きじゃないんだけれど、これは例外だった。基本的にリアル志向で、過度にロマンティックな演出がないのがいい。 『世界の中心で…』みたいに、病気のために余命が予測できるというのは(不謹慎ないい方かもしれないが)ある意味で幸せだと思う。その人が逝く前にいろいろなことをしてあげられるし、いいたいことを伝える覚悟もできるだろうから。 けれども現実に訪れる死というのは、しばしば唐突で、暴力的なものだ。それはいきなりやってきて、永久に人生を変えてしまう。たとえばこの映画のように、いいたいこともいえないまま、自分の気持ちすらよくわからないままに愛する人が死んでしまって、一生後悔を抱えて生きていくはめになる。 そんな重い話だが、不思議と後味は悪くない。それどころか爽やかだ。あざとい部分もそうと感じさせず、自然に物語に没入して、二人の主人公を友人のように身近に感じることができた。 唯一気になったのは、他の方も言及されている相田翔子。相田さんは良くも悪くもオーラがあるので、脇役であっても無駄な存在感を放ってしまう。もっと普通の女優さんを採用していたら、普通に流せたかもしれない。[DVD(邦画)] 8点(2007-08-25 01:42:00)(良:1票) 《改行有》

153.  アモーレス・ペロス 奪い、奪われた者がさらに誰かから何かを奪う。そんな負の連鎖が描かれていると思いました。ほとんどのほとんどの登場人物が独りよがりの愛のために誰かを傷つけ、自らも大切なものを失う。殺しあう闘犬のように、自分がすることに何の疑いを持たない。事を起こした動機は愛情だったはずなのに、そのくせ他人を傷つけることに何の疑いも持たない。ぞっとする話です。最後の最後に初めて、無償の愛情を与えるエピソードになるかと思ったら、「愛してる」という言葉は届かない。一見確かにそこにあるように見えた愛が、結局は空虚なものしか残さない。彼らの人生は交錯しても、心が交錯していない。 それでいてラストシーンに希望があるのには驚きました。シビアな目を持ちながら、けっして希望は捨てない。こういう姿勢は大好きです。7点(2005-01-12 15:31:48)(良:1票)

154.  日の名残り 映画のできうんぬん以前に、主人公が好きになれなかったのでこの点数。共感できません。職務に殉じて、好きな女性を幸せにすることもできないのが大人の恋愛なの?と今年成人式を迎えた自分は青いことを考えました。4点(2004-03-03 05:23:24)(良:1票)

155.  キサラギ 《ネタバレ》 普通に面白かったです。でもここでの平均点の高さにはちょっとびっくり。褒めている方は大勢いらっしゃるので、以下、あえて引っ掛かった点を挙げます。 何より気になったのが俳優の拙さ。香川さん以外の若い出演者の演技はみんなどこか不自然で、そもそもミスキャストではないかというくらいバラエティ番組での印象が固まった人もいる。ユースケ・サンタマリアは好きだけど、個人的には『ぷっすま』のイメージなので映画では観たくなかった。 脚本もテンポの良さは素晴らしかったけれども、一方で舞台劇特有のまくし立てるようなしゃべり方は耳障りだった。ラストが蛇足なのは言うまでもなく、とりわけプラネタリウムの場面のチープさはどうにかならないものかと思った。あと、映像的に面白みがなさすぎる。全体的に工夫が足りないのは素人目にも明らかで、鮮烈に脳裏に焼きつくような見せ場もない。大画面で観たいという欲求が全然そそられないのは、映画として少し寂しい。 いくら話が面白くとも、それ以外の要素がテレビドラマに毛の生えたレベルというのはもったいない。“映画は脚本”であることに異論はないけれど、それはあくまでも屋台骨として重要なのであって、すべてではないでしょう。[DVD(邦画)] 7点(2009-01-28 16:52:32)(良:1票) 《改行有》

156.  死刑執行人もまた死す 多少古びた感はあるにしても、やはり非常に見ごたえがある作品だった。暗殺者をあぶりだすために数百人の人質が取られ、もくろみが失敗すれば関係者全員が銃殺されることを前提に物語が進む。政治がらみとはいえ、ここまで酷薄で重厚な雰囲気のサスペンス映画も珍しい。  味方であるはずのチェコ人たちには、敵役のナチスほどではないにせよ空恐ろしさを感じた。密告屋らしい人物がいるとわかるとたちまち集まってきて、しまいにはリンチに発展しそうになる場面は生々しい。一人の暗殺者を守るために四百人の人質を死なせるという決断にほぼ全員がためらわずに賛成するのにも驚いた。  誇りを失うくらいなら命をも捨てる彼らに、戦時中に一億総玉砕を叫んだ日本人の姿が重なって見える。このような価値観を一概に否定すべきではないのかもしれないが、もし自分が暗殺者だったら自首したであろうことは確かだ。彼らの不屈の意志をテーマにした歌には完全に引いてしまった。  大戦直後のドイツを舞台とした小説で、ユダヤ人の子供たちが徒党を組んでドイツ人の子供を蛆虫と歌う場面があったのを思い出した。感情的になった集団はどんな行為をも正当化する。フリッツ・ラング監督がドイツ人であることを差し引いても、彼の群集心理に対する洞察力は否定できないと思う。  そして何より、小難しいことを言わなくても、単純に娯楽作として優れているというのが素晴らしい。もっとも、クライマックスもまた形を変えたリンチなのだが……[ビデオ(字幕)] 7点(2006-02-28 09:50:22)(良:1票) 《改行有》

157.  リュミエールと仲間たち 百年前の技術で撮影された映像は繊細な光と影が美しく、詩的だ。もしかして大して力のない人間が適当に撮っても、それなりに深いように見えるんじゃないかと少し疑ってしまった(いや、やっぱり差は出るだろうけど)。四十人の作品の合間に入るインタビューや撮影風景は余計に思えた。作品の撮影開始の瞬間、撮影終了の瞬間を作品に直接つなげるのは感心しない。冷めてしまうし、作品の味を殺している。曲の順番も考えない、数秒の間も置かないアルバムみたいなずさんな編集だ。一分間の異世界の余韻に浸る暇すら与えてくれない。監督への質問も、意味深長にみえて実は中身がない。  映画誕生時の撮影で、たとえ一分以下の時間でも素敵な映画が撮れるのはわかった。しかし総監督のサラ・ムーンのやり方には疑問が残る。贅肉を極限まで削ぎ落とした映画の結晶のような繊細な作品を乱暴に扱い、わざわざ蛇足を継ぎ足している。一時間足らずに収めるべきだったろう。[DVD(字幕)] 6点(2005-12-27 15:46:26)(良:1票)

158.  ボーン・アルティメイタム 《ネタバレ》 世界中を飛び回る相変わらずの展開は楽しいけれど、ちょっと飽きた。スピード感あふれる展開はいいんだけど、前作までですでにやったアクションの焼き直しが多く、新味のある見せ場が少ない。雑踏のなかを素人を守りながら逃走する下りなんかは最高だったけれど、車に乗り込む辺りでまたかよと思う。というか冷静に考えるとあんな乗り方していたら数分でプスプスいって止まると思う。ジェイソン・ボーンが最強過ぎるので、どうせ今回もなんとかするんだろうなーと悪い意味で安心して鑑賞(結末もボーンの不死身っぷりを見せつけるのが最大の狙いであって、必ずしも続編を暗示しているわけじゃないと思う)。まあそれでも、取ってつけたような人間ドラマの部分に目をつむればそこそこ楽しめるレベルだった。でも平均8点というのはちょっと驚きかも。[DVD(字幕)] 6点(2008-04-12 22:13:42)(良:1票)

159.  グラン・トリノ 《ネタバレ》 歯をむき出しにして犬のように「うー」と唸るクリント・イーストウッドが、可愛い。……この人を愛らしいと感じる日が来ようとは思わなかった。ユーモラスで、いつになく明るいトーン。最近のイーストウッド作品から重厚なドラマを予想していたら、きれいに裏切られた。いい意味で単純な、芸術ぶったところのないヒューマンドラマで、普通に友達に勧められるような作品だった。 中核にあるのは西部劇のガンマンのようなヒロイズムではあるけれど、理想通りには行かない酷薄な現実と向き合ってもいる。スタローンの『ロッキー・ザ・ファイナル』同様に、原点回帰の若々しい意志と、現実的にならざるを得ない成熟の両方があった。頑固な老兵は時代遅れであることをわかっていてなお、自分なりの流儀で戦うのだ。銃の代わりに、強い意志としかめっ面と、ちょっとばかりの茶目っ気を武器にして。 普段ならもっと癖のある作風の方が好みなのだが、これを否定するのは難しい。ストレートど真ん中の球だからこそ、そこにイーストウッドの信念、人間性が込められている。別にイーストウッドファンではなかったけれど、今でははっきりと好きだといえる。この映画も、彼その人も。[映画館(字幕)] 8点(2009-05-09 18:01:01)(良:1票) 《改行有》

160.  崖の上のポニョ 《ネタバレ》 やはり宮崎駿作品は、なにはなくとも絵を見てるだけで面白い。細密な海の生き物たちの描写から、一転して絵本のように単純で素朴な絵が出てきたりする、手書きならではのダイナミズムが楽しい。ワーグナーの音楽(『地獄の黙示録』……)とともにポニョが津波の上を駆けてくる場面は戦慄ものだ。冷静に考えると嵐の夜に女の子が海上を走って追いかけてくるのだからちょっとしたホラーだが。半魚人状態のポニョはクトゥルー神話の住人にしか見えなくて、けっこう怖い。 また津波シーンと並んで感じ入ったのは、ポニョが宗助の家を訪れた際の一連の牧歌的なやりとり。ごはんがおいしそうなのはいうまでもないが、安全に保護された状況で、幼い子どもが日常のささやかなことごとをたっぷりと享受する、あのぬくもりに満ちた情景の描写が素晴らしい。 ジブリがプロの声優を起用しないのは話題作りというよりは素人俳優を使いたがる映画監督と同じで、演技らしくない生っぽさを狙っているんじゃないだろうか。単に宣伝目的ならもっと旬の人気者を採用するはず。声優って上手いけれど割とオーバーアクトだし、人によっては人工的過ぎる声音だったりもするから。本作の芸能人の声優起用がすべて成功しているかどうかはともかく、ポニョと宗助を務めた子役陣は文句なしに良かったと思う。前の木村拓哉だって良かったし、個人的にはそこまで目くじらを立てて批判しようとは思わなかった。[DVD(邦画)] 8点(2009-07-28 23:20:21)(良:1票) 《改行有》


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