みんなのシネマレビュー |
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1. ラスト サムライ 本当にヒドイ。デタラメな設定や時代考証には全て目を瞑ったとしても、なお余りある下らなさ。薄っぺらな心理描写、ご都合主義で配置された人形のようなキャラクター。ハリウッドの大作映画にありがちな、ステレオタイプでチープな世界観だが、特に強くそれを感じてしまうのは、やはり日本が舞台だからか。要するに、この映画を本当に作りたかった人は誰もいないのだろう。これは「作品」ではなく「企画」。こんな企画ならいけそうよ、という企画書が提出され、予算が付いて、スタッフが人選されて、プロジェクトが動いていく。スタッフ個々人はプロであり優秀だから、ちゃんと仕事はする。しかし出来上がった映画は、細部はよく作られているものの、伝えたいこと、表現したいことは何もない、大仰なだけの空箱になる。「名誉」とは何かを考えもしない人が、「名誉」をテーマにした映画を作ることの皮肉、というところか。観る前から大体予想はついてたんだけど、諸般の事情で観ざるを得なかった。観てしまったからには、言わざるを得なかった。泥臭くてリアルな殺陣に1点、随所でニヤニヤ笑えたことに1点。2点(2004-01-27 01:25:57)(笑:1票) (良:4票) 2. 気狂いピエロ 村上春樹の『海辺のカフカ』という小説に、こんな一節がある。『シューベルトというのは、僕に言わせれば、ものごとのありかたに挑んで破れるための音楽なんだ。それがロマンティシズムの本質であり、シューベルトの音楽はそういう意味においてロマンティシズムの精華なんだ』・・・そう、ゴダールというのは、ものごとのありかたに挑んで破れるための映画。この作品こそ、まさにロマンティシズムの極地。自らを取り囲む社会に挑み、そして散っていくあまりにも美しい物語。かれこれ10数年前の学生の頃に出会い、自分の「映画」観に、いや「表現」というものへの向き合い方に、決定的な影響を与えた一本。それ以来、僕にとって常に一種の基準として機能し続けている。自らにとっての“世界”への違和感を表明すること。それこそが「表現」であり、その方法論の違いが「作家性」なのだと思う。日常への倦怠、それを打ち破る恋愛、反社会的行為の快楽、逃避への願望、死と破滅への憧れ、けれど生きていたいという情けない思い・・・。“世界”への違和感が生み出す、こうした全ての感情が叩き付けられた結果が、稀有な一回性を生み、1965年という時代を刻印した。間違いなく、ゴダールの最高傑作であり、ヌーヴェルバーグの頂点。10点(2004-03-05 00:15:32)(良:3票) 3. 鳥(1963) 《ネタバレ》 「息子の恋人に対する母親の嫉妬心が鳥の攻撃に象徴されている」という解釈をよく聞くが、それだけではなく、“鳥”とはヒッチコックにとって耐え難かった“負の女性性”とでも言うべきものの象徴ではないだろうか。一見かわいらしくても攻撃的で、群れて行動し、うるさく囀る。そして何を考えているか読み取れない鳥たち・・・。そんな“負の女性性”は、女優の上にも色濃く投影されている。ティッピ・ヘドレンは人形のようにかわいらしいが、実はかなりわがままで「感じワル~」な女。一方、息子を溺愛する母親(ジェシカ・タンディ)の表情や言動もかなり不気味。二人とも観客が全く感情移入できないキャラクターとして描かれていて、男から見ると、どうしても生理的嫌悪を感じてしまう。ブロンド美女の女優がお好みながら、女性性を嫌悪するヒッチコックの内面は、この作品で最もサディスティックな形で噴出したのではないだろうか。ガソリンスタンド爆発時に一瞬だけ挿入される、空から見下ろす鳥の視点の映像が印象的。7点(2004-02-01 16:13:58)(良:2票) 4. タイタニック(1997) 「それほどスゴイのなら」と当時劇場で見たが、周りからすすり泣きが聞こえてくるほどに、気持ちが冷めていったことを覚えている。おとぎ話のラブストーリーで泣くことなどできないほど、大人になってしまったということか。ストーリーは至ってシンプルだが、歌ったり踊ったり叫んだりと、演出が過剰すぎて白けてしまう。大声で怒鳴れば伝わるという発想の貧困さ。ニューシネマなどまるでなかったことになっているハリウッドそのものだ。コストとCG技術がふんだんに投入されているのは分かるが、肝心の演技がマズくてお人形さんのメロドラマにしか見えない。無意味な長時間上映で大作感を煽って元を取る手法で、アカデミー・マーケティング賞を受賞、ってか。3点(2004-01-27 18:36:54)(笑:1票) (良:1票) 5. テルマ&ルイーズ 《ネタバレ》 最悪のニューシネマごっこ。というかパロディー? リドリー・スコットは一体何を撮りたかったのやら。テルマとルイーズを初め、夫も恋人も強盗も刑事も、誰一人として共感できないキャラクターばかり。かといってリアリティがあるわけでもなく、みんな絵本の中の登場人物のよう。大体、全て夫のせいにして自立せず責任も取らず、ぬくぬくと生きてきただけの主婦が、ブラピと一回セックスするだけで、いきなり強盗ができて銃が撃てるようになるわけないだろうに。レイプ問題を取り上げるならば真っ向から描くべきだし、平凡な主婦が道を踏み外していくことが主題ならもっとリアルな人間像であるべき。演出も平凡で不必要な描写が多く、緊迫感も焦燥感もない。セリフはいちいち説明的で、音楽の使い方は俗っぽくて印象に残らない。取ってつけたようなカーチェイスは、配給会社からの要求か? いい作品になりうるテーマなだけに残念。スーザン・サランドンの演技だけは評価に値するが、トラウマ全開という分かりやすい役どころだから当たり前ではある。3点(2004-03-07 14:44:31)(良:2票) 6. ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還 三部作全体を通して描かれる最大のテーマは、月並みながら「友情」や「信頼」ということだろう。それはフロドとサム、ピピンとメリーのホビット族同士の友情であり、人間とエルフやドワーフの種族を超えた友情である。それらの「友情」や「信頼」がどのような危機にさらされ、そしてその危機をいかに乗り越えていくかが描かれる三部作であり、その一方で、ローハンとゴンドールの対立に代表されるように、人間同士ではなかなか「友情」や「信頼」が結べないことが露わになる10時間でもある。そんな欠点だらけの人間たちが、対立しながらも協力し、自分達の能力を発揮していくことで、中つ国は「神話」の世界を脱し、人間たちが主役の時代、「歴史」へと移り変わっていく。不死のエルフたちが中つ国を離れていくのは、「神話」から「歴史」への変化の象徴と言える。そしてその大きな変革の時に、戦争を通じて、人間の世界に「王権」というものが生まれる・・・。21世紀初頭の映画史に輝くこの三部作は、そんな人間の「歴史」の始まりを見せる映画であった。それは、現代人の「神話」である『指輪物語』を映像化したいというピーター・ジャクソンの想いが強烈だからこそ可能だったのであり、単に豊富な資金を投入し、最先端のCG技術を導入すればできるというものではない。その「想い」の有無こそが、この歴史的な三部作と、『ラストなんとか』のようなハリウッド製企画モノ超大作との、最も大きな分かれ目なのだ。8点(2004-03-17 01:26:47)(良:2票) 7. 愛する者よ、列車に乗れ いかにもフランス映画な感じだが、全体に散漫な印象。群像劇と言えば聞こえはいいが、収拾がついていないとも言える。死んだ画家の葬儀に参列するために、その画家の友人知人、家族親族が列車に乗って田舎町へ行くというのが前半。そこで彼らの様々な人間関係が断片的に示されるが、あくまで断片なので、詳しいことが把握できないまま物語は後半へ。田舎町での葬儀の後、もつれていた人間関係がいくつか修復されたり、決着がついたりする。こう書くと少しは面白そうだが、ストーリー展開には特に山場がなく、だらけてしまう。雰囲気は盛り上げるものの、雰囲気だけで2時間はもたない。死んだ画家の人となりも結局最後までよく分からないまま。とにかく、ゲイとおかまが主役級という時点でツライ。墓地の俯瞰のシーンは美しいけれど。4点(2004-02-09 00:28:28)(良:1票) 8. 2001年宇宙の旅 《ネタバレ》 ヒトの持つ「感性」と「知性」を、この映画ほど同時に激しく揺さぶる作品があるだろうか? 感じることと考えること。この相反していながらも密接に結び付くヒトの二つの能力を、極限にまで増大してくれる作品。その意味で、音楽でも小説でもなく、まさに「映画」にしかなし得ないことを最も高いレベルで達成した、20世紀の記念碑。「HALの反乱」という直接的な恐怖が表層的な物語を引っ張る一方、「ヒトとは何かを知ってしまうこと」への恐怖がジワジワと深層を浸していく。進化とは奇跡であり謎であり、運命であり偶然であり、善でも悪でもある。キューブリックの映画には、感動したい、泣きたい、笑いたい、怖がりたい、ドキドキしたい、などなどの「機能」を求めない方がよい。そうすれば、そんな予定調和的な見返りの代わりに、「何か」を手にできるかもしれない。ちなみに、アーサー・C・クラークの小説は原作ではなく、言ってみれば解説書とか手引書みたいなものなので、解釈の参考にはなる。もちろん、唯一無二の正解などないけれど。10点(2004-01-27 01:15:57)(良:1票) 9. 太陽に灼かれて 《ネタバレ》 緑美しいロシアの田園地帯の風景とは裏腹に、物語は徐々に重苦しさを増し、救いのないラストへと進んでいく。ミハルコフ監督自身が主演し、監督の実の末娘も現実と同じ娘役で出演しているが、まさに天才子役というべき素晴らしさ。その純真無垢で天使のような存在が、逆に二人の男の悲しさを際立たせている。ミーシャが、昔話の形を借りて過去を語るシーンと、最後に自殺するシーンに登場する小さな太陽は、秘密警察となった彼の心に残された真実や愛の象徴だろうか?哀しげなテーマ曲が耳について離れない傑作。やや叙情に流され気味なことと、前半が若干冗長なことが残念。6点(2004-03-02 00:47:27)(良:1票) 10. 何がジェーンに起ったか? 心理サスペンスの大傑作。ベティ・デイヴィスの凄まじい演技だけでなく、演出や撮影でも職人芸を堪能できる。原作があるようだが、ストーリー展開も見事でラストまで引っ張られる。40年前の作品だが、今見ても2時間強を充分に楽しめる極上のエンタテインメント。ただし1962年の映画としては、BGMの使い方が若干大仰で時代がかっているのが残念。7点(2004-02-15 03:10:01)(良:1票) 11. 鬼火(1963) 学生の頃、青春真っ只中だった自分が、最も深く共感できた作品。深夜のテレビで、この作品にたまたま巡りあえたことで、引きこもりにも犯罪者にもならず、何とか社会人として暮らしていられるのかも知れない。アランの絶望ほど、自分にとってリアルな心理描写はなかった。個人的に最も客観的に評価できない映画。この点数はあまり他人の参考にはならないかも知れない。10点(2004-01-27 01:40:49)(良:1票) 12. 明日に向って撃て! ニューシネマの文脈で語って持ち上げてしまうよりも、いつの時代にも普遍的な、粋で洒落たピカレスクロマン、と言っておく方が、この作品の魅力の本質を伝えられる気がする。セピアカラーの使い方、バート・バカラックの音楽、ブッチとサンダンスの掛け合いのセリフ、西部の自然を鮮やかに映し出すカメラ・・・どこをとっても本当にオシャレ。素晴らしい脚本と演出に支えられ、エバーグリーンな作品になっている。ニューシネマの精神や60年代の時代性がテーマであったなら、こんなに美しく軽やかな作品ではなく、もっと暗く重たい悲劇になっていただろう。そしてその軽やかな印象を大きく左右しているのはサウンド。全編にわたって非常に静かで、無駄な音がしないため、ここぞという時にバカラックの旋律が際立つ。この話を現代を舞台に再現しようとすれば、実写ではリアルになりすぎて、独特のロマンティシズムが薄れてしまう。だから、この作品から多大な影響を受けたであろう我らが「ルパン三世」は、アニメでなければ成立しなかったのだと思う。8点(2004-03-05 23:24:20)(良:1票) 13. ライアンの娘 映画全体がまるで絵画のような作品。アイルランドの美しくも厳しい自然を背景に、そこで暮らす人々の織り成すドラマが丹念に描き込まれた一枚の壮大な絵画。激動する社会情勢に、個人の情念を絡ませていく骨太な展開は、まさにデヴィッド・リーン・スタイル。そんな映画のストーリーとキャラクターを突き動かしていくテーマは、一人の若妻の「性愛」への夢想。もっとベタな言葉で言ってしまえば「欲求不満」。たったそれだけのことが、いや、それだからこそ、時代の大きなうねりと彼女の情念がシンクロして、多くの人を巻き込んだ事件へと発展していき、悲劇と和解を生み出すことになる。このテーマと物語の展開構造は、実は14年後に撮られることになるリーンの遺作「インドへの道」でも繰り返されることになる。現代日本を舞台にすれば、さしずめ「東電OL事件」とか「主婦と男子高校生のメル友」みたいな話になってしまうようなテーマだが、それを芸術的な一幅の絵画にしてしまうところが、デヴィッド・リーンの真骨頂と言えるだろう。8点(2004-03-23 01:38:44)(良:1票) 14. 真昼の決闘 「人は口では法だ秩序だと言うが、腹の中ではどうでもいいのさ」・・・そう、人の本質は作品の舞台である1870年でも、制作年の1952年でも、2004年でも変わりはしない。だからこそ、人と社会をリアルに描くことが普遍的な価値につながる。西部劇に徹底したリアリズムを持ち込みつつも、娯楽作品として完璧な完成度を達成した一本。安っぽいヒロイズムを拒否する保安官も、戦いを拒否し逃げようとする女も、見て見ぬふりをする町の人々も、すべてが生きている生身の人間。印象的なテーマ曲、抑制の効いた演出が、リアルタイムで進行する85分を見事に支えている。ラストはリアルな、見方によっては情けないくらいの銃撃戦だが、この映画の文脈ならば、もっともっと泥臭く、恐怖心まで描かれていてもよいくらいだ。8点(2004-02-15 15:38:59)(良:1票) |
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