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1.  ダ・ヴィンチ・コード 《ネタバレ》 原作が極めて素晴らしいというわけではないが、この映画は原作の持っている「良さ」をかなり失ってしまっている。 原作には「謎解き」の面白さが溢れていると思う。困難な謎が解き明かされるたびに、更なる不可思議な謎が待ち受けているという面白さに加えて、警察の執拗な追跡とオプスデイの不穏な動きがさらにストーリーをよりスリリングなものとしている。 しかし、この映画では肝心の「謎解き」がおざなりにされている。ソニエールが仕掛けた困難な謎が一瞬のうちに次々と解き明かされていく流れには興ざめしてしまう。 極めつけは、自家用機の中で謎の文字が書かれた文書をみつけた際にラングドンが「鏡をもってこい」と一言で片付けてしまっている点だ。原作では、古代文字に精通しているサーリーティービングでもラングドンでも判別不能な文字に両者ともに頭を抱え、行き詰まるところを、その困難な謎をソフィーヌヴーが解き明かすというシーンがある。そのシーンがあることによって、祖父と孫の見えない絆がみえてきて、二人が共にどうやって時間を過ごしてきたかが分かるというものである。この謎解きは、たんなる聖杯探求者では解き明かせないものであると同時に、ヌヴーとラングドンという二人が揃わないと解き明かせないということがよく分かるものである。 それが瞬時に「鏡をもってこい」では、ヌヴーの存在っていったい何かね?という感じになる。一つのシーンを除き単なるお飾りにしかなっていない。 ストーリーを進めることを優先して、ヌヴーに限らずこの映画のキャラクターはほとんど死んでしまっている。魅力ある俳優陣を揃えておきながら、ただセリフをしゃべって動いているだけであり、個性的で心に様々なものを抱えているキャラクターが全く活きていない。これでは誰が演じても同じではないか。例外としては、ヌヴーが自家用機内でシラスをぶん殴ったシーンと、ティービングの最後の瞬間に、その性格や気持ちが現れるのを知ることができる。 とにかく、この映画は原作のあらすじを2時間30分にスピーディーに収めたにすぎず、映画として評価することは難しい。全部描くのなら二部作にするか、大幅なカットが必要だろう。[映画館(字幕)] 3点(2006-05-21 00:41:24)(良:3票) 《改行有》

2.  バンク・ジョブ 《ネタバレ》 「追いつめられて」「13デイズ」のロナルド・ドナルドソン監督作品だけあり、緊張感ある作品に仕上がっている点が特徴だ。 また、本作の内容が実話かどうかは実際には定かではないが、リアリティのある内容に対して、「実話かも・・・」と錯覚してしまうほどのリアリティを醸し出しているのも特徴だ。 個人的に、上手いと感じさせる部分は、いくつかの対立軸を浮き彫りさせて、緊張感を高めている手法だ。 『「王女の写真」を巡る、MI5(又はMI6)と黒人ギャングとの関係』 『「汚職台帳」を巡る、売春関係者・汚職警官と警察との関係』 『「銀行強盗」を巡る、警察とMI5(又はMI6)との関係』 そして『「主人公」を巡る彼の妻と彼を愛する女性との関係』 これらの張り巡らされた関係の中に、突如放り込まれた主人公たちの困惑・焦りが見事に描かれている。 描き方によっては、「社会派映画」に仕上げることもでき、もっと複雑で緻密な玄人好みの映画に仕上げることもできたが、エンターテイメントを重視した軽めの仕上がりを選択したように感じられる。 この「エンターテイメント」と「緊張感」と「リアリティ」とのバランスが絶妙であり、なかなか好感がもてるものとなっている。 潜入していた女性の描き方を含めて、物足りなさを覚える部分はかなり多いかもしれないが、おかげでかなり見易くなっているのではないか。 70年代の古臭い事件をマジメに演出してもそれが正解というわけではないだろう。 ただ、車の中古屋のオヤジが、銃を持った殺し屋とレンガで立ち向かうというのはちょっとマイナスか。 アクション映画ではないのだから、あまりリアリティのないストーリーを展開させても仕方がない。 あそこは絶体絶命の危機に主人公に陥らせておき、最後の最後に「警察」に登場させればよかったと思われる。 ステイサムが殺し屋達を倒しても、倒さなくても結果は変わらない展開なのだから、なぜあんな展開にしたのかはやや真意が図りかねる。 オチの付け方に関しても、イマイチすっきりとはしないものだったが、実話の未解決事件なのだから、仕方がないところだろう。 偉い人と銀行強盗側との取引が既に成立しており、たとえ逮捕したとしても裁判で喋られてしまうのは困るという配慮があったものとは推測できる。[映画館(字幕)] 7点(2008-11-24 22:50:45)(良:1票) 《改行有》

3.  ミッドナイトクロス 《ネタバレ》 ブライアンデパルマの作品群の中で良作の一本だと思う。 まず、設定がかなりユニークなのが良かった。「音響技師」が主役というのは珍しいと思う。「音」がキー(鍵)になる映画というのも、あまり見かけたことがなかったので、とても新鮮味があった。たまたま録音された「音」が徐々に事件の全貌を明らかにしていく様は見事である。 その描き方もなかなかリアルであり、凝った感じに仕上げられており、普段感じることがない音響や効果について学ぶこともできる。 ラストにナンシーアレンの悲鳴を作成中のB級映画に用いたのは賛否があろうが、個人的にはかなり良かったと思う。あの時のトラボルタの心境としては、自分に対する一種の「戒め」の意味が強いのではないかと感じた。 以前にオトリ捜査で失敗して、刑事を死なせているという過去を持ち、今回も再び失敗して人を死なせてしまった。しかも今回はただ人を死なせただけではなく、自分の愛する女性であり、自分に対して悲痛なまでも「救い」を求めた女性である。 あのときの「悲鳴」は決して彼は二度と忘れることはできないだろう。二度と耳から離れることはないと思うが、それ以上に己に対する「責め」を課したように感じる。どんなに忘れたくても忘れられない方法で、なおかつ絶対に消したくても消せない方法で、あの「悲鳴」を自己の作品に留めることによって、彼女を救えなかったという「罪」を一身に背負おうとしたのだろう。あのB級映画を二度と観なくても、映画界に席を置いている限り、その「罪」から逃れることはできない。たとえ映画界から離れたとしても、彼が生きている限り、やはり逃れることはできないと思う。救えなかった「罪」を一生背負い続け、生き続けるという決心を彼はしたのだと思う。 そして、本事件の真相は必ずしも明らかにならなかったことも逆に良かったのではないか。知事の死は単なる事故として処理され、知事の殺人犯は返り討ちにあった連続殺人鬼の死として幕を閉じる。 様々な事件はすべて闇へと葬られていくが、これら事件はひとつの「悲鳴」という形に結晶化され、事件の一端を物語ることになるという儚さが、美しい花火と対比的に描かれている。さらに、トラボルタの悲痛な表情やセリフ、流れる音楽が「後味の悪さ」に輪を掛ける。なんとも表現のしようのない独特の感情は他の映画では味わえないものだろう。こういった映画は高評価したい。[DVD(字幕)] 8点(2006-09-21 00:01:30)(良:2票) 《改行有》

4.  007/ドクター・ノオ 《ネタバレ》 40年以上前の作品だから、古くさくて鑑賞に堪え得るものではないだろうと高をくくっていたら、意外や意外。結構しっかりとした作品で、カーアクション以外は言われているほどの「古さ」は感じられなかった。アジトに潜入して捕まって、逃亡して、ボスと対決するという展開もほとんどマンネリ化しているはずなのに、本作では先が読めそうであまり読み切れない手に汗握る展開となっている。40年前にこれを観せられれば、確かに人々は熱狂するのも分かる気がした。 驚かされるのは、40年も前にすでにボンドの人間像は完全に固まっていることだ。近年の作品と比べても、ボンドの人間像には変化は感じられない。 女にもてて、敵・味方構わず抱きまくる。ギャンブルは連戦連勝、タイマンでの喧嘩や格闘ならまず負けない。射撃もドライビングテクニックはトッププロ級で、高級スーツを着こなし、料理や酒にも精通している。クールで冷酷でありながら、情熱的な部分もあり、ウィットにも富んでいる男である。男性からみると、まさに理想的な男性像がジェームズボンドなのだろう。ボンドが人々から愛される理由としては、夢のような完璧な男性像であるボンドに自分自身を投影して、一時の間、自分が憧れの存在になりきれるからではないか。 また、本作から近年の作品まで、脈脈と受け継がれるもう一つの魅力は、多国籍感だろう。 イギリスの諜報部員が主人公ではあるものの、舞台はジャマイカで、敵のボスはドイツと中国人のハーフ、アメリカのCIAも絡んでくる。冷静にみれば、一つの島で繰り広げられる、こじんまりとしたスケールの話でも、登場人物や舞台や設定だけで、かなりスケールの大きな話になってくる。世界規模で活躍するボンドの姿も、先ほど述べた彼の魅力に磨きがかけられるのだろう。 適役のドクターノウは鋼鉄の義手でボンドをぶん殴り、ちょっとはボンドを追い詰めていたようにも見えたが、確かにハラハラとさせる演出としてはイマイチだったようにも感じる。彼の重要性としては、スペクターの存在を語らせることに意味があったのかもしれない。 一応ストーリーの重要な核である「ロケットの打ち上げ」がほとんど無視されてしまったのも、勿体無いかもしれない。上手くリンクさせればさらにハラハラ感を増せただろう。 冒頭の三人組、途中でも一回出てきたけど、その後出てきたかな?中ボスとして出せばよかったかもしれない。[DVD(字幕)] 6点(2006-10-14 23:25:08)(良:2票) 《改行有》

5.  バスキア 《ネタバレ》 つまらはないが、面白くもない映画。 面白くない理由は、バスキアの「人生」や「苦悩」があまり見えてこないからだろう。 彼の「人生」の苦悩は確かにきちんと描かれてはいる。 貧乏時代の友人を失い、愛してくれた恋人を失い、支えてくれた画商を失い、「成功」を手に入れたはずの男がどんどんと「大切なもの」を失っていく。 「成功」したことによって、豊かになるのではなく、どんどんと貧しくなっていく様がきちんと感じられる。 また、自分の生い立ちにコンプレックスをもち、成功しても黒人ゆえに“下”にみられてしまうことが彼の人生に悲劇を生んでいるようにも思える。 偽札かどうか調べられるというキャビアの購買エピソードは面白いものだった。 レストランでの食事の際にも、白人の金持ち連中に自分がバカにされているのではないかと疑心暗鬼になり、彼らの分まで彼らに知らせずに払うという方法でしか、自分を満足させることができなくなっているエピソードは彼の人生を描き出していると思う。 そのように精神的に貧しくては、アーティストとして優れた作品を残すことはできないのだろう。 ヘロインによって身を滅ぼすのが分かる仕組みになっているが、肝心の彼の姿がどこか薄く感じてしまう。 大きな理由としては、他のキャラクターがあまりにも強烈なインパクトを発揮しているので、主人公の姿が見えてこないのではないか。 シュナーベル監督は画家だけあって、作家ではないというのが分かる。 主人公の内面を深く深く掘り下げて描くことはできていない。 一方、面白く感じられる理由は、まさに画家というビジュアル面の面白さだろう。 ウォーホルの死を聞き、取り残される「アヒル」がまさに画家的な描き方ではないか。 「夜になるまえに」ほどではないが、映像の面白さはやはり天性の才能を感じられる。 だが、肝心のバスキアのアートがあまり美しく描かれていない気がする。 本作を見ても、バスキアのアートがまったく印象に残っていない。 印象に残っているのは、冒頭のピカソのゲルニカ、中盤のウォーホルの小便アート、終盤のオールドマンが演じた画家がキャンバスに大量の陶器のようなものを貼り付けたアート(シュナーベルの得意分野)である。 バスキアの芸術の凄さではなく、他の芸術家の凄さしか感じられないのでは、「バスキア」という画家を描いた作品としては評価することはできないのではないか。[DVD(字幕)] 6点(2008-03-16 02:15:42)(良:1票) 《改行有》

6.  ラブ・アクチュアリー 様々な「愛」が溢れた心温まる素晴らしい映画。普通の恋愛だけでなく、言語を越えた愛やあり得ないシチュエーションの愛、友情や、兄弟愛、親子愛など様々な形の愛が描かれているのが特筆すべき点だろう。 どの愛にも美しかったり、切なかったり、応援したくなるようなものがあったりと、この短時間でよくもここまで良い内容にまとめ上げたなという気がする。この映画のどれかに共感できない人はほとんどいないのではないか。 その中でも、個人的には少年の片思いのストーリーと親友の彼女を見守り続ける男のストーリーには泣けた。 好きな女の子のために必死になれる少年の姿には心打たれたし、それに報いてくれる少女の姿も良かった。 また、親友の彼女のエピソードでは、好きな女性だからこそ素っ気無い態度を取り続けて、それがばれた時にでも、どうすればよいのか分からずにとりあえずカッコつける態度がどの国でも同じなんだなと思う。あの「愛」の伝え方もクールだな。悩みに悩んで相手を困らせないように相手のことを一番に考えた方法だろう。「enough」という言葉に重みと後悔のない潔さを感じる。 本当は10点を付けようか悩んだけど自分の心のどこかでそれをストップさせた。なぜなのか考えてみると、この映画は「なぜ二人は恋に落ちたのか」「なぜ相手を好きになったのか」を描いていないからではないか。ほとんどのエピソードでは既に相手のことが好きであり、「どうやって愛を伝えたか」「どうやって恋(友情)を成就(確認)させたか」「いかにして愛を成就させなかったか」という恋の起承転結のうちの「結」に特化して描かれていた気がする。だからこそ、これほど多くのストーリーを詰めこむことができたのだが、それが小さなマイナス材料にもなっている気がする。特に、首相の恋には何らかの引きがねと障害が欲しかった気がする。ヒューグラントは面白い役柄を演じていたが、あの二人の恋には何も感じるものがなかったのが残念である。身分ゆえの障害、見た目ゆえの障害というのももっと押し出すべきではなかったか。 [映画館(字幕)] 9点(2004-06-25 14:40:30)(良:2票) 《改行有》

7.  ゴーン・ベイビー・ゴーン 《ネタバレ》 アメリカで評価されていた通りの良作に仕上がっている。題材の良さを活かしており、監督・脚本家として才能の高さを示したといえる。事件モノ、ミステリー、ヒューマンドラマ、社会派映画といった複雑な顔を持ち、見ている者に色々と考えさせられる深い映画に仕上がっている点は評価できる。「何が正しくて、何が間違っているのか」が見えてこない難しいテーマに対して、スムーズな問題提起がなされている。主人公が果たして正しいことをしたのかどうかを考えざるを得ないだろう。主人公が行った「7歳の男の子を殺した犯人のアタマをぶち抜いたこと」と彼らが行った「少女の将来のために誘拐すること」は果たしてどちらが正義でどちらが悪なのかが分からない。ラストの選択については、人の親でもなく、女性でもない主人公だからこそ、あのような行動を取ることができたのではないか。娘が大切にしている人形の名前を間違えるような母親でもアマンダにとっては幸せなのかもしれないと考えたくなる気持ちも分かる。 一方、「実の娘を亡くした者」「不妊症に悩む妻を持つ者」「子どもが犠牲者になる姿を見たくないパートナー」、どのキャラクターも子どもに対して深い思い入れを抱える者である。子どもの明るい将来のため、子どもが確実に不幸せにならないために、法律を超えた行動を取ろうとする気持ちがよく伝わってくる。どちらの考えもよく分かり、この問いに対する明確な“答え”は存在しないだろう。 エンディングシーンも心に響くような仕上がりとなっている。 娘が実の母親の元に戻ったのだから、形式上はハッピーエンドであるのは間違いない。 しかし、これほど素直に喜べないハッピーエンドで締めくくったアフレックは凄い。 バッドエンドと考える者もいるだろう。 冒頭にも触れられていた「街」というキーワードも大事にされていたと思う。車の運転中に飛び出してきた子どもから暴言を吐かれるような「街」の姿が描かれている。子ども達が悪いのではなくて、そういう「街」で育ったことが起因となっているだろう。暴力や銃やドラッグが溢れていれば、大人たちがおかしくなり、子どもも徐々に汚染されていく。そういう子どもが大人になり、親となれば、彼らの子どももまた不幸になる。 そういった連鎖を断ち切らなくてはいけないということを「街」というキーワードを用いて、アフレックは一応の「答え」としているのではないか。[DVD(字幕)] 8点(2009-06-28 11:24:04)(良:2票) 《改行有》

8.  タイヨウのうた 《ネタバレ》 主人公の死という悲劇的な話ながらも、ラストにおいてはとても前向きで明るい映画に仕上がっているのが印象的だ。確かに、彼女の歌からも後ろ向きなメッセージは感じられなかった。死を前にしても、彼女の前向きな姿勢や生き方が周囲を変えたのだろう。 自分の病気をネタにして藤代に変な顔をさせれば、残された藤代には、悲しさは消えることはないが、苦しさよりも楽しさが残る(ラストの藤代の笑顔もそんな雰囲気が出ていた)。「自分の努力は全て無駄で、娘にやりたいことをやらせなかった」という後悔にさいなまれた父親が「もう全部脱いじゃえ」という言葉に対する薫の返事には、父親の想像を超えた彼女の「強さ」「成長」が感じられるとともに、父親の行為が間違っていないことを、薫は父親に示したものだ。残された父親たちからは「後悔」は消えていたのは清々しい。 また、恋愛映画としても押さえるところはきちんと押さえられている。 薫は藤代の無邪気で無垢で正直なところに惹かれていたということは描かれていたし、藤代は薫の歌を聞き、彼女の魅力や、大きさ、大胆さに魅了されていった点がきちんと感じられた。 二人の出会い時の、二人の微妙な距離感や、盛り上がらない会話も大きな効果を果たしている。二人の距離感が徐々に縮まり、バイクに後ろに乗った薫が頭を藤代の背中に預けた時には彼らの距離感がなくなったのがよく分かるようになっている。 そして、好きな人のために藤代ができたことも実によい展開になっている。 たまたまストリートライブを聞いたメジャー関係者がメジャーデビューさせるといったようなリアリティを欠く、荒唐無稽なものではなく、お金さえ払えば誰でもCDを創れるというネットの情報を基に、好きなサーフィンを一時あきらめ、清掃のバイトを行うというものである。その気になれば、誰でも可能な「現実」がここには描かれている。藤代の清掃シーンを比較的丁寧に時間を掛けて描いたことは、とても好感がもてるものであった。このような地味なシーンはカットされがちだが、こういったシーンはとても味わい深いシーンと思う。 病気が進行してギターを弾けなくなった薫は歌をあきらめようとしたかもしれないが、藤代の姿をみて、自分のできる範囲で頑張り、彼の期待に応えたいという気持ちが現れている。「歌を歌う」という薫の言葉を聞いて、思わず藤代が涙を流すのも自然なものだった。[DVD(邦画)] 7点(2006-12-31 00:11:40)(良:1票) 《改行有》

9.  モンスターVSエイリアン 《ネタバレ》 3-D版を鑑賞。やはり迫力や美しさは格別だ。大したことのない風景や描写でも、3-Dになっているだけで、感動的なものに仕上がっている。3-D版を鑑賞したので、やや高めに評価している部分があるかもしれない。 3-D版の難点は吹き替えが中心になることだが、本作のベッキーとバナナマン日村はどちらも悪くなかった。もともとベッキーのことをよく分かっていないためか、彼女の吹き替えには違和感が全くなく、自然かつ上手く吹き替えをしている。素人とは思えないほどだ。 日村については、彼がセリフを言うたびに、日村の顔が浮かんでくるが、彼が吹き替えたボブというゼリー状のキャラクターが日村の外見や中身と酷似しているので、悪くはない効果が生じている。 ストーリーについては、深みはほとんどないが、ノンストップアクションが繰り広げられており、全く飽きることがない。今まで観たこともない驚くような展開は見られず、逆に「スター・ウォーズ」などの他のSF作品をやや想起させるようなシーンも見られるが(パクリというよりもパロディといえる)、王道的なストーリーが展開されているので、時間分はきっちりと楽しめるようになっている。「チーム」や「友情」というテーマもきちんと描かれているので十分だろう。 また、本作の良さといえば、各キャラクターが個性的である点だ。 ヒロインのスーザンの表情はアニメ作品としては珍しく豊かであり、弱さとともに強さを兼ね備えた好感のもてるキャラクターになっている。彼女を助ける4体のモンスターも個性的な仕上がりとなっている。ユニークな存在のボブ、マッドサイエンティスト・コックローチ博士、見かけだけのミッシング・リンクどれも上手くバランスが取られている。出しゃばりすぎず、存在感が薄いわけでもない。 全く喋ることができない巨大なムシザウルスにさえ、個性や愛着を感じるほどだ。 リンクがムシザウルスをきちんと“仲間”であると認識して接しているから、観客もそのように感じるのだろう。 大統領や将軍といった完全なサブキャラでさえ、個性や愛着を感じられるので、キャラクター造形については成功しているといえるだろう。 将軍が「50年間、モンスターを見守ってきた」というセリフを言っていたので、「オマエ、いったい何歳だよ?」と突っ込みをいれたが、その突っ込みに対する返答がエンドクレジット中に用意されているのも面白い。[映画館(吹替)] 6点(2009-07-12 14:35:59)(良:1票) 《改行有》

10.  月に囚われた男 《ネタバレ》 一般的な評価も高く、賞も受賞しているようだが、個人的にはハマることはできなかった。 良い設定のアイディアがひらめいたが、それを上手く発展させることはできなかったという印象も受ける。 エンターテイメント性を重視せずに、精神的な世界を描こうとしたことが自分には合わなかったのだろうか。 SFファンを楽しませてくれそうな小ネタや不可思議な設定が満載だが、あまりそういったことにも深い関心はない。 3年という労働期間が、彼らにとっての寿命なのか、月面作業による肉体崩壊(宇宙では骨がボロボロと聞いたことがある)なのかどうかも、何故ロボットではなくてクローンが働かされるかも、何故韓国企業なのかも、自分にはどうでもよい話だ。 クローンの悲哀のようなものは見ていても面白みには欠けた。 もちろんクローンではなくて、生身の人間の姿が投影されているとは思う。 単身赴任で何年も家族に会えないサラリーマン、会社で酷使されて使い者にならなくなったらポイ捨てされる労働者などといった、実際の生身の人間の悲哀のようなものを投影しているようには思えるが、上手くまとまっている印象はない。 ラストで「俺たちは人間なんだ」って言われても、あまりグッとは来ないが、コンピューターシステムのガーティがサムの味方をすることを考えると少し感じるものもある。 ガーティは何代もサムのクローンを見守ってきて、サムに対して友情に近い感情を持ち始めたのではないかと思う。[映画館(字幕)] 6点(2010-05-09 12:36:44)(良:2票) 《改行有》

11.  グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち ハーバード大学生役のミニードライバーがもし美人だったら、ちょっと興ざめしないか。ロビンの薦めた会社を蹴って、あのブサイクを追いかけていくことがデイモンの初めて本にも載ってない自分自身で導き出した「答え」だからこそ、絵空事とは思えない、何とも言えないリアリティのある感動に繋がるんだろう。 自分自身への苛立ち、自分自身をさらけ出す怖さ、弱さ、自分自身と向き合うことの難しさ、成長と色々な想いを感じさせる傑作。 脚本は素晴らしいの一言に尽きるが、難を言えば、悪役が一人もいないということか。ランボーも自分の名声に利用するのかと思えば、自分がなしえない夢を重ねていたに過ぎなかったし。ランボーもロビンも考え方は違うけど、親友同士なんだよな。 ラストのアフレックの笑みだけで、二人の深い友情を感じずにいられない。9点(2004-03-18 21:53:01)(良:2票) 《改行有》

12.  300 <スリーハンドレッド> 《ネタバレ》 歴史や背景に関する知識はゼロで鑑賞したが、知識があまり必要な作品ではなさそうだ。史実と異なるかもしれないが、そういうことはあまり気にならない。 史実をきちんと描く必要のある映画もあるが、作品を通して“何を描くか”“何を伝えたいか”ということが大事だ。『職業:戦士』という言葉が心に残るほど“スパルタ”の精神が上手く描かれている。無駄に死ぬよりも、何かのために戦って死ぬために彼らは自らを鍛え上げている。国のため、愛するもののため、仲間のため、自由のために、戦場で死ぬことこそ、名誉であり誇りであるという精神は見事であり、どことなく“侍魂”にも通じるところがある。 また、ザック・スナイダーの恐ろしいほどのセンスの良さも光る作品に仕上がっている。素人でもプロでも、この仕事を真似できるものはいないといえる。彼だからこそ出来る映像表現ともいえそうだ。 素晴らしいグラフィックだけではなく、見応えのあるバトルも見事である。 しかし、バトルにはやや飽きてしまったところもあった。 サイやゾウ、爆弾魔術師軍団、停戦交渉ありと、手を替え品を替えたバトルが展開されているものの、基本的にはワンパターンというところがある。 レオニダスを苦しめた中ボス級の強敵が一人いたものの、こういった特異なキャラクターをもっと出すとさらに面白くなったかもしれない。 また、隊長の息子をドラマもなく単に無駄死にさせたことはもったいないところだ。 父親や王を護って死ぬというようなドラマや、楽勝のための慢心さが生んだ心の隙というような展開でもよく、何か物足りない展開だった。 圧倒的なグラフィックで、ただただぶった切るシーンで圧倒するというのも分かるが、バトルの中にもう少し“ドラマ”が必要だったのではないか。 男の映画ではあるが、王妃を通して女の戦いもきちんと描かれている。 スパルタは男だけではなく、女も強いということを描きたかったのだろう。 しかし、こちらも完全にはオチておらず、裏切り者の政治家を刺し殺すくらいならば、交渉する必要があったのかとは思うが、彼らスパルタ人の愚直さを表しているのかもしれない。 自分のためというよりも、自分を犠牲にして何かを守るために戦うスパルタ人の気質を表しているようにも感じる。 素晴らしいビジュアルや才能であるが、バトル等においてドラマが不在だったことがマイナスと感じられた作品だ。[DVD(字幕)] 7点(2009-04-19 22:30:48)(良:1票) 《改行有》

13.  ナイト&デイ 《ネタバレ》 鑑賞後は『楽しかったな』程度の感想しか抱かない深みのない作品ではあるが、本作のような何も考えずに気軽に見られるアクション作品もアリだと思う。 トム・クルーズのカッコ良さや、キャメロン・ディアスのキュートさが前面に押し出されており、それらを十分に堪能することができるという点は評価したいところ。 トム・クルーズ+キャメロン・ディアスという図式よりも、トム・クルーズ×キャメロン・ディアスという図式となっており、単純な足し算ではなくて、掛け合わさってお互いがお互いの魅力を引き上げている最高のコンビに仕上がっている。 このコンビならば、大して意味がなく全世界を駆け回っても、何でも許してしまえるほどだ。 また、「ミッション・インポッシブル」のような本格的なスパイアクションモノと、「オースティン・パワーズ」のようなスパイコメディモノの間を取ったようなバランス感覚も悪くはない。80年代の007シリーズを見ているような、いい意味でのユルさは逆に新鮮にも映る。 銃弾を浴びせられている最中にキスをするというようなあり得ない展開を、もっと要所要所に入れ込んでも良かったかもしれない。 ラストの展開もユニークであり、いい意味での裏切りを味わうことができる。 あの展開がなかったらもっと評価が下がったかもしれない。 全てが前フリのように使われており、『なかなかやるな』と後味の良い楽しい気持ちにさせてくれる。 傑作という評価はしにくいが、全体的にクールさやセンスの良さが目立つ作品に仕上がっている点も評価できる。 住む世界が違う二人ではあるが、相手に気付かれないように気遣うトム・クルーズのクールなカッコ良さ・スマートさと、キャメロン・ディアスのポジティブさが、二人を変えていったという面白さも本作にはある。 トム・クルーズとキャメロン・ディアスの絶妙なコンビに対して焦点を当てており、FBIのような組織やスペインの犯罪組織は基本的にはオマケという構造となっている。 二人の最高のコンビネーションを堪能できたので、その方針自体は間違っていないが、FBIのような組織やスペインの組織にも、きちんと焦点を当てていたら、もっとスリリングな作品に仕上がったかもしれない。 難しい判断ではあるが、完全に置き去りにはしなくてもよいのではないか。[映画館(字幕)] 7点(2010-10-12 21:38:13)(良:2票) 《改行有》

14.  インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説 《ネタバレ》 大人が見ても楽しめるようにはなっているが、完全な子供向け仕様の映画になっている。 演出は「びっくり箱」のような子供だまし的な手法が多く、子どもを救うという展開や魔術的な仕掛けも甘々すぎる。 「レイダース」のような硬派な宝探しアドベンチャーというよりも、能天気アクションの方に寄りすぎてしまっているのが問題だ。 能天気アクションに寄りすぎているため、万人向けとなり、誰でも楽しめる内容にはなっているが、そのためリアリティ度が薄まり、何もかも現実離れしてしまい、「なんでもあり」という展開になってしまった。 そのため、高い評価をすることはできにくい。 ただ、トロッコのチェイス以降のハイテンション展開はさすがに文句なく面白い。 終盤のキレのある演出は、さすがはスピルバーグらしく素晴らしい。 [DVD(字幕)] 5点(2008-06-15 02:46:56)(良:2票) 《改行有》

15.  28日後... 《ネタバレ》 普通の「ゾンビ映画」とは一線を画する映画だ。ゾンビからの襲撃から生き残って、危機的な状況から脱することをメインに描くのではなく、危機的な状況下における人と人との繋がりをテーマにしているように感じた。「希望」がないと諦めたり、自暴自棄になるの簡単なことではあるが、主人公とヒロインの関係性が深まることにより、何かしらの「希望」が生まれることを描いているように感じられた。人と人との繋がりには、「絶望」ではなく「希望」が生まれるといいたいではないか。 また、「殺し合うこと」が人間の本能だとしても、危機的な状況下だからこそ、その本能を捨て去ることが大事なのではないか。自暴自棄になって短絡的な本能に従うよりも、どんなに危機的な状況でも「希望」を捨てないことを訴えている。 現実の社会では、ゾンビに遭遇することなどないが、災害等いつ危機的な状況になるかは分からないものだ。 さらに、旅の道中で、主人公が意味もなくチーズバーガー屋に入り、ゾンビ化した少年を殴り殺すというシークエンスが実は結構重要なのではないかという気がした。主人公は、ちょっと暇だったから、ゾンビでも殺そうかと思い、チーズバーガー屋に入ったのではないか。この行動は、遊び半分で楽しみながら銃を乱射する軍のソルジャーとさほど変わらない行為だ。「殺し合うこと」の本能に従った行為であり、ソルジャー達と何も変わらないことを知り、主人公の中で何かが変わるきっかけとなっている。 「HELLO」で始まり、「HELLO」で終わるという構成も見事だ。確かに、挨拶こそ、人と人との繋がりの一歩なのかもしれない。「HELLO」と返してくれる人のいる喜びも感じられる。 DVDにはもう一つのエンディングが収められている。もう一つのエンディングは、銃弾を浴びた主人公がヒロイン達の手当の甲斐なく、あっさりと死ぬものであり、まったく意味のなさないエンディングだ。幸いにも、日本の初版の劇場公開版は、「DVD版」がエンディングだったと記憶している(もう一つのエンディング版も後発で劇場公開されたかもしれない)。 主人公が死ぬという絶望的なものを描くことは、本作のテーマとはそぐわないだろう。 危機的な状況でも「希望」を捨てないことがテーマであるから、「HELLO」で終わる、最後に「希望」をもたらすエンディングこそ、適切なエンディングだったのではないか。[DVD(字幕)] 7点(2004-06-25 15:44:39)(良:1票) 《改行有》

16.  マルコヴィッチの穴 奇妙奇天烈なストレンジワールドを描くという面白さ同時に、「誰か別の(有名な)人物になりたいと思ったことは無いか」、「自分とはいったい何者か」「本当の自分とは何か」のような哲学的な問い掛けに対する面白さが得られる良作。 登場人物も実にユニークだ。 ボケっぷりが素晴らしい社長から、言語障害の部長、デンジャラスな雰囲気のマキシン、性倒錯者のロッテそして人形使いのグレイグ。 どの人物も内面や性格がしっかり描かれていると感じる。 晩年のマルコヴィッチと結婚したのは、あの部長さんだろうか。 これだけでも何か社長の深い想いを感じるエピソードのような気がする。あのエロ話も少しは伏線があったということか。 一緒にマルコヴィッチに入った他の人は会話が通じないのではないかという気がするがそのあたりは気にしないでおきましょう。 映画で気になったシーンはもっとグレイグの孤独なり、苦しみなりを感じさせて欲しかったというところ。 人形師として人気が出たのは「グレイグとしての自分」の腕のおかげなのか、それともマルコヴィッチの人気のためなのか。 マキシンが結婚してくれたのはグレイグ自分自身としてなのか、それともマルコヴィッチとしてなのか。 このあたりはもっともっと苦悩するシーンは描けたと感じる。 確かに社長から、マルコヴィッチから出ていかないとマキシンを殺すと脅されたときに、「ここから出ていけばただのグレイグに戻る」と嘆いていてはいたが、ここはもっと掘り下げるべきポイントと感じる。 ここがまさに「自分とはいったい何者か」の答えになるべきところではないか。 「自分とはいったい何者か」がロッテの性倒錯の発覚ということで片付けられている感がしてもったいない。 あまり「穴」について深く考える必要はないとは思うが、器であるマルコヴィッチの身体が社長たちに乗っ取られれば、本体のマルコヴィッチはどこへ行ってしまうのだろうか。 そうなれば、あの女の子も44歳くらいでどこかへいなくなってしまうというのも何か哀しい話のような気がする。8点(2005-03-19 21:33:58)(良:1票) 《改行有》

17.  スイミング・プール 《ネタバレ》 この映画は、全てランプリングの頭の中のネタであり実際の娘は最後に出てきた歯の矯正をしたブサイクな女の子というオチなんだが、ちょっとこのオチはさすがにない方がいいと思う。 「マルホランドドライブ」なんかは妄想である必要があったんだが、どうも本作には妄想という必要がないと思われる。 ランプリングのサニエを見つめる複雑な感情が入り混じったなんともいえない視線や、「何も行動できないイギリスのおばさん」と言われたランプリングがジジイに執ったあの大胆な行動、社長とのやり取り、幻の作品等、全てが妄想と知ったら残念な気がします。 自分の中では、ラストを頭から消去して全て現実にあった物語とすることに決めました。5点(2004-06-25 15:18:16)(良:1票) 《改行有》

18.  エデンより彼方に 50年代の雰囲気を楽しむメロドラマ映画というのが事前の知識だったけど、人種差別などアメリカだけでなく、現代の日本にもまだまだ残る「偏見」を扱った映画。 楽しめるかどうかは別として、数多くの賞を得ているのも納得です。 外見にとらわれず本質を見極めることの難しさはいつの時代どの国でも一緒ですね。 「誇り高く生きて欲しい」という彼の言葉は胸に響きました。7点(2004-06-25 15:24:06)(良:1票) 《改行有》

19.  瞳の奥の秘密 《ネタバレ》 アカデミー賞外国語賞を受賞している世界的に評価されている作品。 一切飽きることはなく、興味深くストーリーを追うこともできる。 時代背景が必要なところもあるが、さほど難解さもなく、ストーリーは大体理解できたと思う。 しかし、受け手側である自分の人生経験不足ということもあり、個人的には世間的に絶賛されているほどハマることはできなかった。 自分は、まだまだ過去や思い出に生きるほどの熟した年齢ではないということか。 劇中においては、瞳の奥に刻まれた過去や思い出に囚われて生きる男の悲哀や空虚さのようなものが感じられる。 妻を殺された男性、その事件(もちろん事件だけではない)を忘れられない男性という二人の男性が印象的に描かれている。 彼らは“a”が打てないタイプライターのようなものかもしれない。 重要な部分のどこかが壊れている。 過去から一歩抜け出せれば、『怖い』→『愛している』のように何かが劇的に変われるのだろうか。 しかし、過去をどんなに忘れたくても、過去からどんなに抜け出したくても、簡単に抜け出せるほど、単純ではないということもしっかりと描かれているような気がした。 妻を殺された男性の場合には、『愛している』→『怖い』へと変わってしまったのだろう。 この事件によって、彼は“a”を打てなくなってしまったようだ。 冒頭の駅における別れのようなシーンが観客の瞳にも刻まれていくような仕掛けも見事である。 この印象的に描かれたシーンがどのように結び付いていくのかと、観客は考えざるを得ないだろう。 それぞれのキャラクターの瞳の輝きや微妙な表情など、セリフで描かれていない部分なども多く、それらも評価されたのだろう。 また、サッカー競技場における撮影方法についても見所があった。 上空のヘリコプターから撮影しているのだろうと単純に思っていたら、徐々にズームしていき、いつのまにか雑踏の中に視点が移っている。 「今のどうやって撮影したのだろう。どこかで切り替えたとは思うが、初見では分からないな」などと撮影技術などについても感心させられる。[映画館(字幕)] 7点(2010-10-12 21:34:12)(良:2票) 《改行有》

20.  AKIRA(1988) 原作を読んでないので、勝手なことを書くけど、映画の世界は現在の世界を縮尺したようなものではないかと考えてしまった。 テツオの持ったチカラは「核」のようなもので、テツオや金田たちは一つの国と考えると分かりやすい。 金田のようにリーダーの国がいて、その同盟国としてチカラがない追従するしかないテツオのような国がある。 そのような弱い立場にあるモノがとんでもないチカラを持つとどうなるか、そういった世界を想像しながら観た。 立場が弱く鬱積していた感情が爆発し、徐々にエスカレートし、しまいには自分でもコントロール出来なくなり、破滅する。 ただ、自分のことを認めてもらいたかっただけだったかもしれないのに。 そのチカラが愛する人や友を殺すことになるともしれずに。 その他にもチカラの亡霊に振り回される人たちが上手く描けていた。 ただ、ケイの存在というか役割がイマイチ掴みづらい。 人間には世界を破滅へと追いこむチカラもそれを回避するチカラもそれぞれ持っている。 そのチカラをどう使うかいつ使うかは分からないが、もうそのチカラを使い始めているのかもしれない。9点(2004-06-25 14:14:05)(良:1票) 《改行有》


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