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プロフィール
コメント数 1311
性別 男性
自己紹介 【名前】「くるきまき」(Kurkimäki)を10年近く使いましたが変な名前だったので捨てました。
【文章】感想文を書いています。できる限り作り手の意図をくみ取ろうとしています。また、わざわざ見るからにはなるべく面白がろうとしています。
【点数】基本的に個人的な好き嫌いで付けています。
5点が標準点で、悪くないが特にいいとも思わない、または可も不可もあって相殺しているもの、素人目にも出来がよくないがいいところのある映画の最高点、嫌悪する映画の最高点と、感情問題としては0だが外見的に角が立たないよう標準点にしたものです。6点以上は好意的、4点以下は否定的です。
また0点は、特に事情があって採点放棄したもの、あるいは憎しみや怒りなどで効用が0以下になっているものです。

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1.  口裂け女2 《ネタバレ》 映画のもとになった都市伝説はリアルタイムで知っているが、すでにそれなりの年齢だったため怖いと思ったこともなく、最初から笑いを含んで語られる話のように思っていた。しかしこの壮絶な映画を見てしまうともう笑えない。自分にとってはこの映画で、口裂け女というキャラクターのイメージそのものが一変してしまった気がする。 劇中では不可思議な現象も起こるものの、あからさまに超自然的な要素を導入することはなく、基本的には現実世界の出来事のまま最後まで引っ張っていたように見える。冒頭と末尾のキャプションを見れば、この映画で描かれたのは空想世界の口裂け女の誕生とも、あるいは現実世界の都市伝説の起源とも解することができるが、特に劇中さかんに出ていた噂話は、このように陰惨な事件まで無責任な都市伝説に仕立て上げてしまう人間社会の無情さを訴えているように感じられた。 ところで、主人公は見ていて可愛い。最初の方の気恥かしい展開は狙ってやっているわけだが素直に乗せられてしまい、その後の場面が痛々しくて見ていられなくなる。主要人物のほとんどは実質的な被害者であり、最初の凶行に及んだ馬鹿を除いて本質的な悪人はいないように思うが、特に姉の夫はどうやら本当の善人だったらしい。この男が同居しようと言ってくれたところが最後の救いだったのかと思ったが、よく見るとわずかの差で間に合っていなかったようだ。主人公が題名の姿になるのはラストの一瞬だけだが、この場面の表情を見てもなお可愛いというか、自分としては彼女が哀れで愛おしく感じられた。多分、父親の立ち位置から見ているからだろう。 なお、メイキング映像で主演女優が普通に笑っているのを見るとほっとする。本人が歌う主題歌も結構きつい内容で、久しぶりに心が痛い映画を見た気がした。[DVD(邦画)] 9点(2013-06-03 21:08:02)(良:3票) 《改行有》

2.  シン・ウルトラマン 《ネタバレ》 ゴメスで始まりゼットンで終わる。映像面が旧作と段違いなのは当然として、そもそも荒唐無稽な怪獣モノに各種突っ込みを入れておいて「理に適ってる」とか言いながら言い訳していたのが微妙に可笑しい。巨大生物が繁殖もせず単体で生息しているかに見えるのは、もともと生物兵器だからということらしい。 また宇宙人(外星人)が組織的な動きでなく、単独行動で侵略しに来たようで小スケールに見えるのは、宇宙では個体で活動するのが普通だからということのようで、それで××星人という名前でないのかと思った。ちなみに個体で活動する宇宙人から見た地球人は、例えていえば人間から見たアリの群れのようなものかと思った(旧作のメフィラス星人がアリと言っていた)。 この映画では人類の特性として「群れ」を作ることを挙げていたが、別にそれが悪いのではなく弱いからこその事情であって、その群れの内部で支え合い、時には他人のために自分を犠牲にすることもある、ということだと思われる。また人間はウルトラマンに頼っていればいいのかという問いは旧作でも出ていたが、さらにこの映画では無力感が依存/服従につながることへの懸念を示し、求められるのが自律/自立であることを明瞭にしていた。 最終的に人類の未来は人類自ら担うことになったようで大変結構だが、それにしても劇中政治家が心許ないのはまことに困ったことで、ザラブというのが日本に来たのも世界で最もちょろい国だからでないのかと思った。どうもこの映画では最初から「国」という群れの単位を当てにしておらず、代わりに地球という「星」の人々に期待をかけていたようで、これは元の子ども番組に由来する考え方かも知れない。「シン・ゴジラ」が「この国はまだまだやれる」なら、今回は地球が”やればできる子”くらいの扱いではあった。 結末はよくわからなかったが最低限、ウルトラマンが仲間や相棒を大事に思ったというのは共感ポイントかも知れない。あまり楽観的に語ってしまうと現実味が薄れるが、あえていえば地球の人間と他星の人間が、史上初めて同じ群れの仲間になった物語ということか。あるいは遠い未来において、「光の星」にとっての地球という星が、挑戦者でも脅威でもなく対等な「バディ」になる日を夢見る映画だったとも取れる。 そのようなことで、古きよき怪獣特撮のリメイクということだけでなく、旧作のメッセージを踏まえて現下の内外情勢も反映し、現代なりの希望を語る映画に見えなくはない。またけっこう可笑しい場面が多いので娯楽性も高い。特に期待していなかったが悪くなかった。 以下その他雑記: ・劇中日本の対米関係は笑えない。/「鼓腹撃壌」という言葉に特定のニュアンスを込めていた可能性がある(不明)。/zero-sumが領土切取りのイメージとすれば、それとは違うwin-winの関係を目指すべきという考え方でもあったのか(不明、断片的)。 ・職場に趣味関係の雑多なものを持ち込んでいる奴がいて、サンダーバード・スタートレック・マイティジャックとSRIのトータス号は見えたがウルトラシリーズは存在しない世界になっていた。 ・山中に怪獣が出現する風景はウルトラマンらしい。「虫が多くてやだ」という台詞があったが、都市部にもいるハエ程度を嫌がるようでは甘い。山間の農地が破壊されていたのは痛々しいが、上手の水田は既に耕作放棄地だったようでもある。 ・子どもを保護すると言い出して山道を走る後姿は、何でお前が行くのかという突っ込みを誘うが、これはこれでお約束というか開き直りのおとぼけと見える。 ・特にザラブ編では、もとの番組の場面や展開がまともに生かされている。 ・「河岸を変えよう」というのが古風で粋だ。ここだけは「ウルトラセブン」第8話を思わせる場面で、オチも含めて圧巻の印象だった。これほど複雑に表情を作る宇宙人など怪獣モノにかつてあったか。 ・ウルトラマンの超能力として、1キロ先(だったか?)の針が落ちたのを聞き取るとは言われていたが嗅覚も犬並み?犬以上?だったのか。意識の高い宇宙人に悪態のネタを提供してしまっていた。 ・公安調査官役の人が好きになって来た。生物学者役の人もいい感じを出している。[インターネット(邦画)] 7点(2022-12-31 10:12:24)(良:3票) 《改行有》

3.  時をかける少女(1983) 《ネタバレ》 冒頭の場面で原作のオチを軽く蹴飛ばしてしまい、この映画は違うんだと宣言しているかのようだ。違っている点は、原作の登場人物が中学生のため思春期の一時的な心の揺れで済ませられるのに対し、この映画では年齢が高校生まで上がっているので、劇中の出来事がその後の人生を直接左右する恐れがあるということである。果たしてこの映画ではヒロインと、その幼馴染みがとばっちりで人生を狂わされてしまった。こんな理不尽な映画に誰がした、と怒りを覚える。どこが理想の愛だ。だいたい深町が憎たらしい。 しかし、本編終了後のプロモーション映像のような場面になると一転、ヒロインがにこにこしてとにかく可愛いので、見ている方も顔が緩み、テーマ曲に合わせて身体を左右に揺らしてしまう。周囲の登場人物もヒロインを盛り立てようとしているのが嬉しい。この幸福感で本編のいろんなことは全部許してしまい、あーよかったという気分になって映画の評価が確定。終わりよければ全てよしという結末。 ところで、舞台の街が超レトロであり、また一部の特殊効果が超安手なのは、映画自体が古いせいだと思う人がもしかするといるかも知れないが、これはリアルタイムで見てもそのように感じられたと証言しておく。[DVD(邦画)] 7点(2011-12-31 23:49:07)(良:3票) 《改行有》

4.  ハウルの動く城 《ネタバレ》 最初に見たのはTVだったが、その時は何が何だかわからず単純に面白くなかった。その後は見直す気にならなかったが故あって改めて見たところ、大人になれない若い男と老婆のような若い女が影響し合って最後は幸せな家庭を築いた話に見えた。 男の方は世間の風など関係なくお花畑に身を置いて「人殺しどもめ」と戦争を蔑んでいればいいと思っていたが、具体的に守りたい相手ができたとたんに何人殺しても構わないほど舞い上がってしまい、これはまずいと女の方が抑えにかかって安定状態に至ったように見える。女の方はもう人生終わったかのように思っていたが、私だけの王子様のようなのが突然現れて、駄目な男だけど本当は優しい人だから何とかしてあげたいと思ったり、私のことをずっと待っていてくれたと感激したりしてやっと年齢なりの女子になったということか。それでも基本的に落ち着いた主婦向きの人物なので、男が恋人に母親を求めるような都合のいい話になっていたようである。 劇中で戦争が起こったのは二人を高次の人格に導くための契機ということだろうが、物語を動かすために起こした戦争など「バカげた戦争」というのは当然であり、物語の終了と同時に戦争が終わったのも変ではない。あるいは実際に、王室付きの魔法使いが生涯最高の弟子を表舞台に引っ張り出すためにわざと起こした戦争ということだったのかも知れない。まともに取れば多数の人命が失われたのだろうが、そもそも観念的な戦争のようでどれだけ人が死んだかなど気にしなくていい感じだった。 以上のような感じで大まかな説明はできなくもないが、それで面白いかというと大して面白くはなく、映像面でも風景や事物などに既視感のあるものが多い。宮崎アニメはいわば国民的アニメであるから一度は見なければと昔は思っていたが、別に見なくても問題ないと初めて思ったのがこれだった。 なお端正な美形女子が年を取ると鷲鼻になるのはなぜか不明だが、これならシータが年を取るとドーラになるというのもわかる。[DVD(邦画)] 4点(2017-01-23 23:42:08)(良:3票) 《改行有》

5.  北の零年 《ネタバレ》 DVDの時間表示で02:48:58にも及ぶ長大な映画であり、物理的な大作感は十分である。欠点と思われることはここまでの間にほとんど書かれているが、特に自分としてはわざとらしく芝居がかった感じの人の動きや事件や展開が気に障る。序盤はまだしも後になるほど違和感が拡大して、終盤に至るともう嫌悪すら覚える。また、最初はさんざん嫌な奴に見せておきながら実はそれぞれ事情があり真心もあり愛もあって、最後は全員が都合よく”本当はいい人”の範疇に取り込まれていくような展開は、全ての人に暖かく優しい目を向けています、というようなことかも知れないが、個人的には安っぽく幼稚に感じられる。  一方、この映画で感動的だったのは何といっても中盤の「夢を見ているようだ」であり、これは具体的にそういう経験がないにもかかわらず激しく共感する。堰を切ったように号泣するなどというのでなく、娘を膝に抱いて微笑みかけようとしながらも感情があふれ出てしまうのが奥ゆかしい。「どうして泣いているの」と尋ねるこの子がかわいいから泣くのである。 しかし、そういったプラス評価を完全に覆してしまうのが終盤の展開である。この映画は男が生命を棄てて正義を回復し、妻子のために殉じようとするのを無益なものとして否定するのか。それだけの決意をした男を「死なないで」で泣き落とそうと思う発想が気に食わず、また「生きてください」という発言も“とにかく人は死んではなりませぬ”という程度の観念的かつ無責任な綺麗事のようにしか聞こえない。“下郎”の妻のように生物学的に生きて繁殖するのが第一義というなら随意にすればいいだろうが、個人のプライドなど全く頓着なく自分のペースに巻き込まなければ気が済まないというのはどれだけ能天気で傲慢であることか。 そういうわけで激しい憤りを覚えたので、当然ながら零点である。  なお知り合いの淡路島関係者が、劇中の稲田家当主の扱いが変だといって怒っていたのでついでに書いておく。それからどうでもいいことだが、見ているとまず戸を閉めろと言いたくなる場面が目立つ。北海道は冬でも温暖なのか。[DVD(邦画)] 0点(2013-11-18 19:54:46)(良:3票) 《改行有》

6.  手紙(2006) 《ネタバレ》 たまたま原作を先に読んでしまったので、映画だけ見た場合にどう感じるかがわからなくなってしまった。そもそも原作の内容がすっきり頭に入っていないので何ともいえないところがあるが、原作の骨格はきちんと残す一方で、兄弟や家族の情愛に重点を置いたように見えるのは映画的には正しいのかも知れない。 ただ物語の前提になる加害者家族への悪影響について、住居への落書きやネットの書込みといった即物的で単純な悪意として表現していたのは安易に感じられる。また勤め先の会長の発言も、全部を台詞にはできないにしても説明不足になっており、理不尽なことをただ甘んじて受入れろと言っているかのようで素直に受け取れない。劇中では、世間の人々が犯罪者から距離を置こうとする原因として、「自己防衛本能」という言葉とともに親の心情(元彼女の父親と主人公本人)の例が挙げられていたが、それ以外にも悪意によらない排除の作用が働くことを観客がちゃんと納得できたらよかったがと思う。 ところで主人公の妻になった人物について、当初は主人公がこれほどの超絶美形女子に全く見向きもせず、別人に気を取られていたのは非常に不自然に思われる。他の映画でも似たようなことがあったので、やはりこの女優が出ると否応なしにそうなってしまうのかも知れないが、まあそれでも男連中が地味に見える分、この人がこの映画の華になっていたのは間違いない。個人的にはそもそも沢尻エリカ目当てだったこともあり、原作既読の立場としても、この人がいなければあえて映画を見る必要はなかったという気までする。 ほかに原作との関連で非常に落胆したのはバンドのはずが漫才になっていたことだった。映画化に当たって各種事情もあったのだろうが、いくら何でも漫才ではちょっと格好がつかないではないか...とは思ったが、しかし終盤でこの設定が最大限に活かされていたことは認めなければならない。これは完全にやられた。ラストで見事に泣き笑いさせられてしまった点についてだけは間違いなく原作を超えていたといえるかも知れない。[DVD(邦画)] 5点(2014-02-17 22:53:15)(良:2票) 《改行有》

7.  埼玉喰種<OV> 《ネタバレ》 「東京喰種 トーキョーグール」(2017)と同年の製作だが、本家に堂々と対抗する気概を感じるわけでもなく、単に東京を埼玉に取り換えて人目を引こうとしただけらしい。なおグールghoulでなくグールーghoulouとした理由についてまともな説明はなかった。 題名に出したからには埼玉でなければならないので「埼玉にこんな山があるなんて」というような台詞を2回くらい言わせていたが、その山へ行く途中の駅がJR青梅線の軍畑駅(東京都青梅市)で、「高水山/青梅丘陵ハイキングコース/東京都」という表示が映ったりするのは真面目にやっているようには見えない。とりあえず埼玉映画としての性質は全く感じられなかった。 内容としては予告編から受ける印象以上のものはない。人を食うよう運命づけられた巨乳生物の切ない物語(後日談付き)を一応作ろうとしたようだが形だけなので真面目に見る必要はない。脚本のほか演出・撮影・録音・音楽など全般的に低調で、そもそも映画を作ろうとする気がないのではと思ったが、監督は「ホラー・ドキュメンタリー」に携わって来た人物らしく、そういうものの延長で映画のようなものを作るとこういうものができるのかとは思った(ちなみに制作会社はAV会社の系列とのこと)。なおエンディングの前に5分半程度のメイキング映像を入れていたのは作り手の姿勢に問題を感じる。 スタッフはともかくキャストはみな一応の役者だろうが、主演扱いの(ほとんど演技しない)雨宮留菜という人だけは人気グラビアアイドルとのことで、要はアイドルホラーとして作られたものらしい。身長143cmでHカップという極めて特徴的な体型だそうだが、劇中でそれが生かされているわけでもなく、単にその場に突っ立っているだけの人物に見えた。ファンなら姿が見えさえすればいいのかも知れないが。 最初からこういうレベルで作ったにしても独創性もなく平板で、もう少し頭を使って作るということができなかったのかとは思った。それからスタッフにもう少し国語の得意な人がいた方がよかった。 なお女優では、女子社員→母親役(実質主演)の竹内奈菜という人はかなり個性的な風貌だが、特に序盤はほどよく色気が出ていて目を引いた。また犠牲者役の大町沙矢佳という人は、美形ともいえないがなかなかキュートな感じではある。そういうところでも見ないとほかに見どころが全くない製作物だった。[DVD(邦画)] 1点(2019-10-05 09:58:21)(笑:1票) (良:1票) 《改行有》

8.  犬鳴村 《ネタバレ》 地元PRに使えるネタではないはずだが、現地の自治体が実名を出して特別協力していたのはかなり驚いた。県警名と車のナンバーも実在であるのに電力会社だけ架空になっているが、ちなみに現実の犬鳴ダムは県営である。 ストーリーはかなり説明不足に見えるので、欠落部分を勝手に補うと次のようになる。 ***** 村人は昔から周辺住民に忌避され恐れられてきたと想像される。ダム建設なら金と脅しで立ち退かせれば済むはずが、皆殺しにまで至ったのは会社の意向というよりも、この機会に忌まわしいものを一掃したい、という周辺住民の集団意志があったからではないか。その先頭に立った旧家に主人公の母が嫁に来たのは、憎むべき家系の廃滅または乗っ取りの意図が背後にあったと思われる。また今回の事件がきっかけで、それまで知らぬふりをしていた周辺住民も、まるで全てが旧家のせいだったかのように責任転嫁を始めたようだった。 事件のあと、旧家は家庭崩壊を免れたようでもあったが、しかし村人の子孫は確実に社会に紛れ込んでおり、その異能はやがて周辺住民の脅威になっていく恐れもある。そうするとダム建設時の虐殺も、社会の多数派たる周辺住民にとっては一理あったことになるか。あるいは大した脅威でもなかったものを、脅威のように言い立てて差別し迫害した多数派への復讐が始まるということかも知れない。 ***** 家単位で見ると憑物筋の特徴も出ていたようだが、村単位ではネット発祥の怪談「コトリバコ」や、欧州でのポグロム(イェドヴァブネ事件など)を連想させられた。ちなみに実在した犬鳴谷村はこれとは全く違うものであり、上記はこの映画限りでの解釈である。 個別の場面としては、若年女子が股間を黄色くして歩くのが衝撃的だった。白い服に映る映像を振り払おうとする演出も悪くなかったが、終盤のトンネル内の揉め事は早く終わらせろと言いたくなった。なおラストのトンネル映像が本物だったとすれば、ここが一番怖かった。 人物関係では、三吉彩花嬢は長身で美形の医師かと思ったら臨床心理士だそうで、女性っぽさは抑えていたがすらりとした姿には終始見とれていた。ちなみに劇中の子役はこの人の子役時代とは似ていない。また村娘役の宮野陽名という人は撮影当時まだ中学3年生だったとのことで、若いのにプロ根性があるようなのは感心した。ほか突撃バカ役の大谷凜香という人は、「ミスミソウ」(2017)でも悪役だったが今回またひどい役だったので、今後もどうか頑張って演技者として大成してもらいたい。逆さになった一瞬の表情は輝いていた。 [2022/7/23変更] 突っ込みどころの多い映画だが、「牛首村」までのシリーズ3作の中では最も総合的なエンタメホラーになっていて悪くないと思ったので点数を+1にしておく。エンディングの空撮とテーマ曲が心に残る。[インターネット(邦画)] 6点(2020-10-17 08:22:32)(良:2票) 《改行有》

9.  小さき勇者たち ガメラ 《ネタバレ》 実物の子ガメはともかくガメラの造形も可愛らしい。成長後はそれなりに凛々しくなるが最後まで童顔を残しているのは“愛すべき怪獣”を体現している。成長段階に応じた最初の火球攻撃と最初の回転ジェットのタイミングは感動的だった。また子役が煩わしく感じられないのは、昭和ガメラに比べると著しい進歩といえる。ほか美少女が出るのは現代風だが、これも歓迎する。 それで映画の内容としては、映像面では平成以降の水準と特徴を受け継ぐ一方、ドラマ部分は昭和ガメラ直系の後継作と思える。心に欠けたところのある少年とガメラとの関係性をもとにドラマを作っているのは昭和ガメラ第一作への回帰のようで、またキャッチコピーに書かれたように、子どもらがガメラを助け、ガメラがそれに応えてくれるというのは、古き良き昭和ガメラの本質を示しているように思われる。劇中の大人は善人でも結局自分のことしか考えておらず、「みんなが逃げるためにガメラが戦ってくれてる」とはあまりの言い草で、ウルトラマンその他に任せて安心と思っている世代の根性が情けない(自分はこっちに近いわけだが)。やはり観客の思いを託すのは子どもらでなければならず、石のリレーが不自然なのは言われなくてもわかっているが、正直ここは泣けた。君らもヒーローだと言ってやりたい。自分もガメラの鼻先を撫でてやりたい。 ただリアリティを削ぐのがカリカチュアライズされた役人の存在であり、こういうバカみたいなのは出さなくていい。要は政府や自衛隊が動いていることが示唆されればよいので、半端な社会描写などは割愛し、主人公周辺の人間関係だけに限定でよかったと思われる。これは戦争映画に大局感が必須でないのと同様である。 以上、子どもの出るファンタジックな映画のため攻撃性が鈍るのも確かだが、子どもだましと貶めるよりも、あえて大人がだまされてもいいと思える映画である。何より個人的な趣味嗜好が嵩じたような人々ではなく、ちゃんとした大人が作っているという安心感がある。 40年間の全ガメラ映画を当事者的に眺めて来た立場からすれば、この映画が映像面とドラマ部分を総合して最も高水準の内容が実現できており、子どもを中心に据えた怪獣映画の理想像を提示したものと思える。いいものを見せてもらった、というのが率直な感想であり、評点についても、ここまでの最高が9点なのに励まされる形でいい点を付けておく。[DVD(邦画)] 8点(2013-01-20 08:46:42)(良:2票) 《改行有》

10.  牛首村 《ネタバレ》 「恐怖の村シリーズ第3弾」である。 今回は「坪野鉱泉」と「牛首トンネル」という2つの心霊スポットを取り上げているが、題名のとおり牛首関係の方が中心で、廃ホテルとはエレベータなど“落ちる”場面で本筋とのつながりをつけている。「村」に関しては実在の地区名があるようだが(江戸時代は牛首村)、八坂神社(祇園社)の祭神である牛頭天王に由来するのであれば別に呪われた地名などではない。ほかに牛首つながりとしては“そんな怖い話は誰も聞いたことがない”という「牛の首」説話とか、予言獣「件」(くだん)とかいうネタを出しており、また「七つまでは神のうち」など各種要素を積極的に(やたらに)取り込んでいるのが特徴的ともいえる。 この映画に何かまともなテーマがあるとすれば牛というより双子に関することのようで、昔あった「畜生腹」という言葉と、具体的な動物としての牛を無理やり結び付けた形かと思われる。現代日本で双子を忌み嫌う風潮などはさすがにないだろうが、それでも多胎児家庭は虐待リスクが高まるため支援が必要という声もあり、また世界的にはなぜか多胎児の多い地域があるようで(食物の関係?)、それが人権問題につながっている場所や時代もあったのかも知れないが、そういう社会的な問題提起のようなものがこんな映画に込められているわけもなかろうという気はする。 以上に関して無理にいえば、関連性の曖昧な各種要素を逐次投入して観客を眩惑させておき、最終的に真のテーマに導く意図だったと取れなくもないが、単にまとまりがないだけのようでもある。さらに今回は邦画ホラーらしい怖さも特になく、適度にふざけた部分もないので真面目に見えるが面白味がない、というのが素直な感想だった。 ほか今回は地元PRにも気を使っていたようで、Aクラスの蜃気楼が出た時は実際に魚津市役所がアナウンスするとの噂もある。映像面では魚津駅の大雨が印象的だった。 登場人物に関しては、芋生悠という人が全く可愛くない役だったのは残念だ(本人がよければいいが)。またレギュラー化した突撃ユーチューバーが「オカルト特集第3弾!」と言っていたので、この人が犬鳴村と樹海村から無事に生還できた世界での話かも知れない。せっかくなので、この人のYouTubeチャンネル「アッキーナTV」で定番だった「ハロー!アイムアッキーナ!世界の皆さんこんにちは〜!ども、アキナです!」をフルバージョンでやってもらいたかったがそうでもなかった。同行のミツキちゃん(演・莉子)も愛嬌があって可愛いので、次の機会にまた生き返って出てもらうのもいい。[インターネット(邦画)] 5点(2022-07-23 09:44:01)(良:2票) 《改行有》

11.  アイ・アム まきもと 《ネタバレ》 「おみおくりの作法」(2013英伊)のリメイクとのことだが、撮影場所からすれば「おくりびと」(2008)の成功に味をしめた制作会社が二匹目のドジョウを狙ったように見える。変な題名は我の強い人々には受けるかも知れないが、自分にとっては見る気を減衰させる効果しかない。 内容的にはコメディ要素らしきものが多いが笑えない漫才のようで寒々しく、また本人の性格特性を言い訳にして、お役所だから非効率も許されるはずという前提で話を作っているのは安易な印象がある。都合よく人を死なせて泣かせるのは薄っぺらいドラマというしかない。 物語に関しては、世評によれば結構忠実なリメイクらしいので、この映画に対していちいち突っ込みを入れる気にならない。もとからこういう変な話だったということだ。 一つ書くと、死を語る映画であれば死者よりむしろいまを生きる人々を前向きにさせるメッセージがあってもらいたいと思うが、それがこの映画では「頑張った」だったのか。オウムが言っていたように日々の自分を励ますため、あるいは主人公のように最後にこの言葉が言えるよう、日々悔いのない働きをしようということならわからなくはないが、何にせよ最後の締めの言葉だというのが後向きの印象を残す。 未来に向けて生きていこうと人を元気づける映画でもなく、どちらかというと人生後期の人々向けに、そろそろ自分の最後を意識しておけ、という終活映画のように思われた。今の時代にふさわしい。 以下関係ないが個人的な思いとして、自分としては劇中の元炭鉱夫のように、死んだ後はもうどうでもいいので死体を適切に処理してもらいたいとしか思わない。もう死んでいるので葬式に人が来なくても困らないが、しかしそれでも自分の死を悼んで来てくれる人がいるとすれば有難いと思う(心霊になっていれば泣く)。故人を思う生者の気持ちは大事にしなければならず、自分もまた生きている限りそのような気持ちは持っていたいという程度の感慨を催す映画ではあった。特に同じ時代を生きて来た人が先に行ってしまうのはつらいものがある。[インターネット(邦画)] 4点(2024-01-20 19:55:30)(良:2票) 《改行有》

12.  実相寺昭雄監督作品 ウルトラマン 《ネタバレ》 実相寺監督は「狙われた街」で、金城哲夫氏の生真面目な脚本を茶化して通俗化していたのが腹立たしい。また「ペギラが来た!」「超兵器R1号」「光る通り魔」で印象深い田村奈巳さんを、「怪獣墓場」では変人のような扱いにしたのも気に入らない(この映画ではカットされている)。 そういうわけで嫌いな監督だが、それはそれとして、この監督の回だけを集めるといかにも変に見える。怪獣側に同情的というのもそうだが、この5作の中に怪獣を宇宙へ返そうとするものが3つもあって、毎度こういうことをしていたのだなという感がある。また撮り方に関してもこの監督の特徴とされているものがすでに出ており、見ていて結構退屈しない。ただ集めただけではあるが、これは集めたこと自体に一定の意義があると思われる。 ところでDVDに入っている本人の語りを聞くと、自分が“正統ではない”と意識した上で羽目を外していたというのはいいとして、そのことで「ウルトラマンを駄目にした、という批評もあった」と言っていたのは意外だった。自分にしてみれば、この変なことをやる監督は初めから織込み済で円谷特撮を見ていたのであり、確かに本人のいう通り正統ではないにせよ、なくてはならない彩りだったことは(嫌いとはいえ)積極的に認めなければならないと思っている。ハヤタがスプーンをかざしたエピソードが嫌いな子どもはいなかっただろうし、このシリーズ自体がそれだけの許容度を持っていたことも評価されてしかるべきと思われる。 なおこの映画で改めて気づいたのは、イデがTBSの局内?を徘徊する場面のBGMと仕草が微妙に変だったことで、またその直後に地底人を発見したのが「Gスタジオ」という場所なのを隠そうともしないのがまた図々しい。こういう比較的シリアスなストーリーの中に、必然性のないとぼけた場面が入っているのは相当笑える。[DVD(邦画)] 4点(2014-06-11 20:27:47)(良:2票) 《改行有》

13.  金メダル男 《ネタバレ》 原作・脚本・監督・主演の人物がこだわりで作った映画のようで、本人の人脈で一定の豪華キャストが実現したということらしい。基本的にはコメディで、爆笑するほどのものはないが終始ニヤニヤしながら見ている感じだった。泣かせる箇所も複数あり、そのような悲喜こもごもの断片が連なって流れていくのが人生ということかも知れない。 ただしそれによって描かれた主人公の半生に感動を覚えるかというとそうでもない。これまでやってきたことはいつか必ず生きる、というのはいいとして(かなりわざとらしいが)、また人生の折り返し点を過ぎてなお挑戦を続けるのもいいとして(というか、これ以外の生き方ができないとわかった?)、そもそも主人公の性格が個性的すぎて共感しようがない。多才な芸能人ならこういう生き方があるかも知れないが、無芸な一般人にとって人生物語としての効用はかなり限定的というしかない。 ところで自分がわざわざ映画館まで行くのは映画自体より主に特定の女優を見るためであり、この映画に関しては森川葵さんが目的である。何でキャスト配列順がこんなに下なのかと思ったが、登場順とのことで仕方ない。少なくとも自分としては、この人の出番は強烈に可笑しかった。 また土屋太鳳という人がものすごく清純で可愛らしい顔で出ていたのがかなり意外だった。エピソードとしてもトリダンスは圧巻で、ほか坂本龍馬も含めて「表現部」全体が面白い趣向である。ほかの出演者としては、宮崎美子さんの最初の場面は20代相当とのことで、自分としてはカメラのCMの頃を思い出した(とまでいうと嘘だが)。平泉成氏も最初はまるきり年齢不詳の役柄で笑ったが、最終的には見事な老夫婦になっていて感動を誘う。 以上、本筋のところで共感しづらいところはあるが、楽しい要素も多いので否定できない映画だった。ちなみに背景音楽も個人的には時代背景を感じさせて悪くない。点数はかなり甘くしておく。[映画館(邦画)] 6点(2016-10-25 19:59:49)(良:2票) 《改行有》

14.  ガメラ3 邪神<イリス>覚醒 《ネタバレ》 この映画では前作の設定を引き継いで、ガメラの行動原理についてうまく整理をつけた印象がある。そしてガメラはやはり人間の味方だったことがわかるが、正確には、自分を助けてくれる人間がいるからガメラも人間を守るということらしい。 一般論として、仮にガメラが災害出動したとすれば(しないだろうが)、一方的な人助けなので万人に感謝されるだろう。しかしギャオスのような外敵と国内で戦闘すれば今回のように巻き添えが出たり、一般民を見殺しにせざるを得なくなる場面もある。それでも可能な限り個別の人助けもするだろうし、特に年少者を守ろうとするのは人情として当然のことである。たとえ被害者が出るとしても、ガメラがいない方がいいというのは本末転倒であり、いなければ外敵を利し、被害者は増えるばかりということになる(劇中では、ガメラがいるからギャオスが来るのだ、という屁理屈までは出なかった)。それが人々を守るということの現実だろう。そういう自分も、身内が死ねばガメラを恨み、怒りは一生消えないかも知れない。しかしガメラの立場がわからないほど理性に欠けてはいない。 劇中では、大人っぽくなった浅黄ちゃんがあくまでガメラを信じ、ガメラもそれに応えていたが、自分もこのガメラを信じる。彼は強い意志と力を持つだけでなく、人間同様の心を持った誠実な生き物であり、最後まで“ぼくらのガメラ”だった。これにより平成ガメラ(映画でなくキャラクターとしての)に対する個人的評価が確定できる。 上記のほか、女性鳥類学者の「生物は最後の瞬間まで生きようとします」という台詞には共感できた。人類はきっと生き延びるだろう。また元警部補がどこまでも逃げようとして逃げ切れず、最後に立ち向かう覚悟を決めた場面も好感が持てる。 評価できるのは以上である。映像面は、現代の映画ならこの程度で当然ともいえる。渋谷の場面は、破壊衝動を満足させたい観客のニーズに応えるためか徹底しすぎで、これをやるなら昭和ガメラの第一作に戻るか別映画ですべきだった。 また京都を火の海にした新キャラクターの面々は、こうなる前に全員死んでもらいたかった。というか映画が始まる前に死んでいろ。バカにしか見えない少年も一緒に死ねば本望だったろう。一体何を作っているつもりなのか。[DVD(邦画)] 3点(2013-01-20 08:46:38)(良:2票) 《改行有》

15.  宇宙大怪獣ギララ 《ネタバレ》 上映当時は見ておらず、衛星放送が始まった直後くらいが初見だったが、昔の怪獣映画など期待して見ても落胆させられる場合があることを初めて思い知らされた映画だった。 まず一応褒められる点としては、ミニチュアセットの中で小さい車両を動かすのにこだわっていたことである。また怪獣のデザインも未来的で、外見だけ見れば「宇宙大怪獣」にふさわしい。しかしこの怪獣が変にオーバーアクションで、鳴き声もBGMも単調でやかましいのは評価を落とす。ストーリーに関しても、特に人類の火星到達を阻止しようとした勢力が何だったのかわからないまま終わってしまい、せめて登場人物の台詞で“宇宙にはまだわからないことが多い…”くらい言わせないと最後が締まらないだろう。 一方で登場人物としては、主役のオヤジじみた男、香港映画にでも出そうな通信士、可愛くない外人女性、わがままいっぱいの外人医師など全てが魅力に欠けている。特に主役は和洋で両手に花状態になるのが極めて不自然に思われる容貌だが、まああまりこの人の悪口を書いてしまうと「ミラーマン」<TV>(1971~1972)の村上チーフに対して失礼ということになるので自粛する。 劇中でかろうじて好意的になれるのは日本人ヒロインであり、見た目はわりと地味だが外人女性に比べていかにも若々しく(撮影当時は17歳程度?)、またすらりと背の高い人のようで外人女性に負けておらず、日本人の男連中が低身長に見える。この原田糸子さんという人は女優としての活動期間が短かったようだが、この映画のほかには「レモンのような女」<TV>(1967)の第6-1話(佐々木守脚本、実相寺昭雄監督)で主演しており、昭和特撮ファンにとっては少し重要人物かも知れない。[DVD(邦画)] 4点(2014-01-06 23:46:23)(笑:1票) (良:1票) 《改行有》

16.  心が叫びたがってるんだ。(2017) 《ネタバレ》 アニメ版は見たことがない。チケットカウンターで「ここさけ20:45からです」と言われてそういう略称だったのかと思った。 ここさけ初心者として率直に書くと、意外にも普通に感動的なお話だった。若年者の心情に密着し過ぎて部外者には共感しづらいのではと思っていたが、実際は対象年齢以上にも広く受け入れられそうな普遍性が感じられる。また殊更に人の暗黒面を見せつけるタイプのものでもなく、人間の善性を信頼した物語のようで安心させられる。 なんで突然ミュージカル?とは一応思うわけだが実際やれば当然感動的で、特に2つの旋律にそれぞれの言葉を乗せて重ねる趣向は非常によかった。恋愛感情も絡んで来るがあまり生々しくもなく、物語を進める原動力になった後は一定の整理をつけて未来につなぐ形になっていたのは清々しい。最後に観客みんなが笑顔になるようなものにしたい、というような感じのことを劇中人物が言っていたのは正解である。 全体的には都合良すぎのようでもあり、また細かく見れば説明不足だとか意味不明に思われるところもなくはなかったが、あまり気にならない範囲でうまくまとめてあるようには見えた。アニメ版と雰囲気などの違いがあるかは後で確認したい。 ほかキャストもなかなかいい感じで、芳根京子という人は高校生というには少し年齢が上に見えたが、いかにもアニメ少女っぽい挙動とか“つぶらな瞳”感のある目などはよかった。また石井杏奈という人も親しみやすい顔を見せており、ダンスのような場面も一応入れてある。端役ながら見覚えのある金澤美穂・萩原みのりといった人々が出ていたのも個人的に嬉しい。また成瀬順の幼少時の子役(平尾菜々花)が上手すぎて、父親が呪いの言葉を吐きたくなる気分が大変よくわかった。父親にまで共感してしまった。[映画館(邦画)] 7点(2017-07-25 00:22:11)(良:2票) 《改行有》

17.  ひまわり(1970) 《ネタバレ》 2022/2/24撮影の動画で、ウクライナ人の女性がロシア兵に対し、ヒマワリの種をポケットに入れておけ、と言ったのを見てこの映画を思い出した。 実際にヒマワリ畑の映像はウクライナで撮影したとのことだが、しかしこの映画自体はウクライナのことなど全く意識していない。字幕を見る限りは「ロシア」としか言っておらず、映像的にもモスクワ周辺が映っている場面が多かったらしい(ネット上のロケ地紹介記事によれば)。物語の設定上も、主人公の夫が「ドン河」で戦ったのだとすれば、現在のウクライナより東のロシア領の話だったかも知れない。現下のウクライナ情勢を受けて、今こそ見るべき映画として全国各地で上映する動きもあるようだが、ウクライナという国に注目して見ようとするとちょっとずれた印象を受ける恐れがある。ただ最低限「戦争反対!」とはいえそうだ。 ちなみにヒマワリは別にウクライナ原産でもなく、ロシア帝国時代の18世紀?に持ち込まれてから現在のロシアとウクライナに広まったとのことで、現時点でのネット上ではロシアの国花と書かれている記事もある。これをロシアではなくウクライナだけのシンボルとして位置付けるのは不自然であり、両国共通に親しまれている植物と思うのが妥当ではないか。今回の戦乱によって両国のヒマワリが分断され、ウクライナのヒマワリが国際的に公認されてロシアのヒマワリが否定されるとすれば変なことになる。国で分けるのではなく人々の連帯のシンボルにでもなればいいだろうが。 ドラマに関しては、基本的には共感しづらい人物が多く、どうも外国の映画は馴染めないものがあると思わされる。ロシア人妻が可憐に見えたのはよかったが、心が乱れてしまって子どもに当たっていたのはよろしくない。 主人公は冷戦下のソビエト連邦に入ったわけだが、現地のソビエト市民は平和で友好的でそれなりに満ち足りた暮らしをしているように見える。まるで社会主義の成功をアピールするPR映画のようでもあるが、それはそもそも合作映画なので当然としても、もともとイタリアは西側の中でもソビエト連邦と友好的だった関係もあるかとは思った。主人公をヒマワリ畑へ案内した役人は、親切そうに見えて実は監視役だったのではないかと皮肉を書いておく。 なおどうでもいいことだがイタリア語で蚊はzanzare(単数zanzara)というらしい。ロシア語は知らないがНе знаюだけはわかった。[DVD(字幕)] 5点(2022-03-19 09:57:04)(良:2票) 《改行有》

18.  おくりびと 《ネタバレ》 大変申し訳ないが率直に書かせていただくと、基本的には登場人物が泣くのに合わせて観客を泣かす作りの映画と感じられる。序盤のコミカルな箇所は気に障るが、まあこういうのがないと娯楽映画として成り立たないのだろう。 ところで劇中では人間の生死に関する複数のエピソードが並列的に出ているが、そのうち映画の構成上は全編の最後、父親の遺体の場面が最重要なのだと考えられる。ここは単純な親子の情愛(和解)の表現にとどまらず、人間の“生の意味”を伝える場面、つまり子(主人公)が生きて、さらにその子(胎児)に生を受け継いでいくことが、父親(峰岸氏)の生きた意味にもつながることを主人公が悟る場面だろうと思われる。 しかし映像を見ていても“これをこうすればこう見えるはずだ”といった説明的な印象しかなく、意味はわかるという以上のものではない。鮭の遡上風景はこのラストにつながる布石ということだろうが、これも貧弱な造形物のため多少の脱力感なしには見られない場面だった。“一度きりの人生だから個人の生を輝かせなければ”という、何か強迫的にも思われる観念が一般化している今日、もう一度根本に立ち返って生の意味を問い直すはずの場面が印象的に見えていないのは、個人的にも残念に思う。 それから主人公の妻の問題発言については多くの人が唐突と感じるだろうが、これはまあ当該個人の意識の問題と取れなくもない。しかし地元在住の旧友その他の一般住民までが蔑視を当然のものとし、かつその感情を当人に向けてまともに表出することをためらわないというのはいつの時代のどこの話なのかと思う。必ずしも詳しい事情がわかって書いているのではないが、単に田舎だからで済ませられる話でもなく、少なくとも個別地域の社会事情と無関係にストーリーの味付け程度の感覚で軽々に取り扱っていい問題のような気はしない。 以上のようなことで、自分としてはあまり高く評価する気にならない。今さら何点付けようが大勢に影響はないという前提で、思い切って低い点を付けておく。[DVD(邦画)] 2点(2013-10-15 22:52:49)(良:2票) 《改行有》

19.  江ノ島プリズム 《ネタバレ》 主要人物の3人はそれぞれいい雰囲気を出している。前半はずっとコミカルな展開が続き、とぼけた感じの主人公に友人2人が突っ込むのがユーモラスで、ギャグのセンスもいいので気持ちよく笑える。それから何といっても地縛霊の今日子ちゃんが清楚で可憐で真面目で超かわいいのが感動的で、他の3人には申し訳ないがこの映画のベストキャラに思われる。花火の場面でこの人が喜んでいたのは観客としても嬉しかった。ほかオカルト研顧問の教員(吉田羊)も、端正な顔立ちながらけっこう笑わせる。 また物語の内容としては、劇中では「デロリアン」という言葉も出ていたが、時かけファンの自分としては「時をかける少女」との類似性が強く感じられる。女1人男2人の組み合わせは基本的な共通点だが、特に無邪気な三角関係がやがて崩れる展開は2006年アニメ版を思わせるものがある。一方で劇中の「タイム・プリズナー」という言葉は、1983年版風にいえば「時の囚われ人」とかいう表現になっただろうが、あるいは同作に出る「時の亡者」そのままの意味かも知れない。 ところでこの映画で非常に残念だったのは、修太の行動が引き起こした現象が納得できなかったことである。これは1983年版の最後にある“記憶のない再会”を再現するための設定だろうが、旧作では理解可能な理由で人為的に記憶を消去していたのに対し、この映画では自然の摂理で起こることにしたのは若干の無理が感じられ、またその自然現象が駅の場面でタイミングよく、かつ時間差をつけて起こっていたのは都合良すぎである。 それからその“記憶のない再会”の場面も実はよくわからない。ここで修太が拾ったプリズムの三面は幼なじみの3人の本来の姿を象徴していたわけで、そのことを他の2人も修太自身も知らないというのが哀しいのだと思われる。それならそれでいいのだが、青春映画に求められるのはやはり恋愛感情に基づく切なさだろうし、少なくとも個人的には泣けない場面になっていたのが大変遺憾である。これは女子の立場でミチルに感情移入すると泣けるのだろうか。 ただそれとは別に、せっかく心の通じた今日子ちゃんが修太に忘れられてしまったことの方は確かに切なく感じられ、男子にとってはこっちが本筋かとも思われる。とにかく自分としてはこの今日子ちゃんがかわいそうで仕方ないのだった。[DVD(邦画)] 7点(2013-12-22 17:45:44)(良:2票) 《改行有》

20.  サマーウォーズ 《ネタバレ》 登場人物の多い映画だが、主人公とヒロインに限ってみれば著しく都合のいい青春ドラマである。内気な男子が自分では何もしないのに、年上女子が勝手に手を握ったり抱きついたりしてくれて、その上「あの子をよろしく」とまで言われて本当はうれしいのに迷惑顔できるような、年少男子の願望丸出しの気恥かしいストーリーになっている。ただ、よろしくと言われたのは主人公しか知らないことなので、あとは自分でがんばれということだろう。 また、映画に出るインターネット上のサービスがコミュニケーションや商用機能だけでなく、インフラなどの社会システムまで担っている設定は不自然に思われる。しかしパソコンやネットには詳しくとも実社会とは接触不良の青少年が、自分も現実世界を救うヒーローになれる、と感じられるシチュエーションを準備するためには、多少無理でもこうする必要があったということか。ネットやゲームを馬鹿にする母親(=劇中の主婦連)を見返してやるというような展開は大人気なく、これもまた年少者に極めて甘い内容になっている気がするが、それでも最後は主人公が新しい人間的なつながりを作って終わっていたので、まあよかったとすべきだろう。 ところでこの映画では、インターネットに依拠しない旧世界の「つながり」と、ネット上の新しい「つながり」が競うように危機に対処していたが、前者代表の曽祖母が電話で言っていたのが、要は“あきらめるな、元気を出せ”というだけなのは大変拍子抜けだった。本当の大事件なら関係機関では落胆する暇もなく対策に奔走している最中だろうから、この人は明らかに的外れなことを一生懸命言っている。福島第一原発の所長を電話口に呼び出すようなもので、相手先の組織的対応を邪魔しているようにしか思えない。これがリアルの「つながり」というならお粗末なことで、この映画自体が実社会と接触不良のように感じられた。 以上、前作に引き続き青少年向けの作りになっているが、対象範囲はさらに狭まった感じである。自分としては普通に面白い娯楽大作という以上の評価はできないが、映像面や人物描写ではいいところが多かった。消防3兄弟、自衛隊員と漁師のオヤジが格好いいが、ヒロインも可愛いと思う(実は予告編の「…1名なの!」という場面につられて映画を見た)。またラストの写真は素直にほめたい。[DVD(邦画)] 6点(2012-08-11 17:31:44)(良:2票) 《改行有》


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