みんなのシネマレビュー |
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1. 愛、アムール 《ネタバレ》 奥さんの昔の教え子のピアノコンサートへと出向くところから始まる。というわけで前半はとくにクラシック音楽がよく耳に飛び込んでくることとなる。しかし悲しいかな常に音楽は無残にも途中でぶつりと打ち消される。出来の悪い監督がしかねない編集だ。しかしどうもハネケはわざとしているようである。そのことを強調しているシーンが奥さんが教え子のCDをすぐにストップさせるシーンだ。なるほど、過酷な現実の前ではしょせん娯楽にすぎない音楽ないしは芸術というものは必要ないのだ。芸術の敗北を描くための過酷な現実のあれこれだったのか。映画監督が芸術の敗北描いてどーすんの。と思ったら老夫婦のある意味真っ当であるといえる衝撃の結末を見て、いやこれは芸術の敗北ではなく、芸術を愛せない、芸術を必要としない、芸術が理解できない、そうなったらもう生きる価値がない、生かす意味がない、そんな辛辣な思想をもって「人とは」「芸術とは」に迫っているのかなと思いなおした。ハネケらしい厳しい視点だと思ったが実際のところは知らん。エンディングロールに音楽は流れない。[映画館(字幕)] 7点(2013-03-14 15:54:03)(良:1票) 2. アウトロー(2012) トム・クルーズが主役ならばもうそれだけで映画なのだから見て損はないはず。実際見てみて満足したわけだが、どこか腑に落ちないというか手放しに絶賛できないモヤモヤ感が残ったのも事実。例えばカーアクションは楽しかったけど物語上ではいらんよなとか、女弁護士や老助っ人のささやかなユーモアはわりに気に入っているんだけど物語からは浮いてるよなとか、戦いの火蓋を切る合図の雨がベタすぎて笑っちゃったのだが、そのうえ最後は武器捨てて殴りあいとかお約束すぎて呆れたのだが、もちろん気に入っているんだけど、なんかやっぱり物語を被う雰囲気からするとちょっと違うよなとか。で、後になって気付いた。ハードボイルドと甘いマスクのトム・クルーズがそもそも合わないのだ。たぶん。合わせるために原作にはないカーアクションを入れたり女と助っ人がしっかりヒーローを際立たせる役を担ったりして、つまりトムに合わないだろうハードボイルドにヒーロー映画を加味することでトムが活きるようにしているのだ。たぶん。だからちょっと変なのだ。でもトムはしっかり活きている。そこが一番重要なのだ。[映画館(字幕)] 7点(2013-03-12 15:53:31)(良:2票) 3. 悪の教典 《ネタバレ》 これの文庫本のあとがきを三池監督が書いてるんだけど、そこでハスミンのさらなる活躍を見たいと続編を要望している。で、この映画の最後に「to be continued」って。これも貴志祐介へのメッセージなんだろうな。おもろいなあ。さて、映画。最初、ハスミンを伊藤英明ってどうよ、と思ってたんだけど納得。傍目には良い先生であることのエピソードをいちいち描かなくてもこれまで善良な役しか演ってないというこちらの固定概念も含めて「顔」ひとつで表現しちゃってる。エクセレント!原作から何人かの登場人物、いくつかのエピソードをバッサリ切り捨てているのも潔い。要は生徒を殺しまくるクライマックスさえ見せればよい、そこにいくまでの最低限の辻褄さえ合えばよい、そんな感じ。ニューヨーク時代を夢で回想するシーンが全く要らないのだけど、ここは既に売られている「悪の教典 序章」DVDへと誘うために必要なシーンなのでしょう。ある程度商売に徹した作品なのは三池のわりにはえぐくない殺しのシーンを見ても解かる。それでも残酷なシーンになればなるほど活き活きとしているのは三池ならでは。もう端折って端折って実に小気味良い。何故皆殺しなのか。原作では心の声が説明するのだが映画では生徒が尋ねても何も語らずただ淡々と殺しまくる。そしてそのときのハスミンはどこかセクシー。三池のハスミンへの偏愛を感じた。[映画館(邦画)] 6点(2012-11-12 14:28:14)(良:1票) 4. アウトレイジ(2010) 実は傑作だと思う反面物足りなさも感じていた。このたび続編を見てその足りないものの正体がわかった気がする。お話はほぼ喜劇といっていい。オープニングシーンのかっこよさとは裏腹に。自分より弱いやつにはとことん威勢がよく、強い者の前では小さくなる。大袈裟なまでに。ヤクザ社会を喜劇に仕立てエンターテイメントとして見せる。さらにバカヤローコノヤローと怒涛の突っ込み漫才。セリフが途切れない暴力的なまでの編集が素晴らしい。そして要所要所でかつての北野武の映画のような無常感が襲い掛かろうとする。が、そこですかす。続編はそこがもっと顕著なのでわかったんだけど、要するに、なーんか面白いのに熱くなれない的なモヤモヤの正体はこのスカシにあったのだ。そこはもしかしたら評価するべきところなのかもしれない。お話ではなく演出の妙を見よってことなのかもしれない。単に恥ずかしがってすかしてるだけかもしれないけどそれにしたってお話に従属しないってことは私が映画に求めていたことでもあるわけで。にもかかわらず物足りなさを感じてしまった身勝手な私をお許しください。[映画館(邦画)] 7点(2012-10-30 14:26:25) 5. 赤目四十八瀧心中未遂 見る前から綾を寺島しのぶが演じるってだけでそりゃないぜ!とも思ってたんだけど、映画は原作とはまた違ったオリジナル「赤目四十八瀧心中未遂」であった。堕ちてゆく男が行き着く先として兵庫県尼崎市出屋敷周辺のいかがわしい土地(映画ではそこまで明確じゃなかったかも)を選ぶ。阪神尼から出屋敷一帯のいかがわしさは今でもその名残を残してはいるものの原作の舞台となる時代とは雲泥の差。映画が時代を現代にしたのはロケーションの問題もあったのだと思うがそのせいで原作に漂う「堕ちるところまで堕ちた」感が数倍落ちている。先に原作とは違うオリジナルと書いたがストーリーはほぼ忠実になぞっている。でも作品の印象は全く別モン。描こうとしているものが違うのだろうと思う。原作はひたすら地獄を見せていた。最底辺で生きるという地獄を主人公の男に見せていた。綾はどんなに美しかろうがそこからは抜け出せない。その最底辺の人の一人でしかない。一方映画はこの世の地獄そのものではなくそこで強く生きる女を見せている。男は「闇」を覗いてしまうのではなく「生」を見るのだ。この場合の綾に寺島しのぶはあまりにもピッタリはまっていた。[DVD(邦画)] 6点(2011-11-25 16:01:10) 6. 愛の予感 《ネタバレ》 一人娘が殺されたらしい。その後、被害者の父親と加害者の母親が逃避先の北海道で出会いそこで何かが生まれる、といった内容。ただ生きているだけの規則的な日常を繰り返し見せ、その規則的なリズムが狂ってゆく様を見せてゆくことでその心情を露呈させる。セリフを排除し、ひたすら画面だけで語る手法が絶賛され見事ロカルノで金豹賞(グランプリ)を獲得。なのだが、たしかに画面だけで語っているのは認めるがそこに想像力を働かせる余地を残していない。画面があまりにもわかりやすく語りすぎているのだ。単調さと変化が大袈裟であざとくすら感じた。音を印象的に響かせているのは良かった。あと、終わり方だけは想像力を膨らませてくれるものであった。[映画館(邦画)] 5点(2011-10-17 13:11:09) 7. アイランド(2005) 《ネタバレ》 ジョージ・ルーカス『THX 1138』の世界観に後に映画化もされたカズオ・イシグロ「わたしを離さないで」の設定を加味した感じ。といってもマイケル・ベイですから設定は設定としてあってもその設定からそのアクションにはいかんだろうってところも無理矢理にアクションへと向かわせる。その荒っぽさがなんとももったいなくもあり、痛快でもある。スピード感溢れるカーアクションはもうこの人の十八番。あらゆる角度から堪能できます。残念なのがエロいボディラインを見せ付けるスカーレット・ ヨハンソンのそのエロさを活かせていないこと。せっかく意図的に押さえ込まれた性欲が芽生えようかという展開があるのだから(なかったっけ?)このエロい体を活かさない手はないのに。 [DVD(字幕)] 6点(2011-09-28 14:02:43)(良:1票) 《改行有》 8. 悪の華 《ネタバレ》 やはりこの作品もまた決定的な画を最初に見せて、そこに行き着くまでの経緯を本編とする。そしてその前もって知らされた決定的なシーンが最後にやってきたときはやっぱり驚かされるのだ。シャブロルの他の作品同様にその決定的なシーンとそれまでの物語は一見繋がらないように見えて実に巧妙に繋がってゆく。そして『沈黙の女 ロウフィールド館の惨劇』でも思ったがシャブロルはブルジョアの中に悪意の無い悪を描くのが実にうまい。ブルジョア階級のあっけらかんとした愛のカタチを嫌味なくさらりと見せる。そこには大袈裟な退廃の美なんてない。しかし隠された過去が明かされれば自ずと現代と過去の近親相姦はブルジョアの退廃つながりという構図を露呈させる。またその過去シーンだが、音声のみのフラッシュバックによって実に想像力を刺激されると同時に大いにサスペンスに寄与している。[映画館(字幕)] 7点(2011-09-02 14:22:42) 9. 赤い文化住宅の初子 《ネタバレ》 主人公の生活状況は極めてきつい。だけど映画にはそのきつさがない。原作漫画を知らないのでなんとも言えないんだけど、このどこかのん気な空気がタナダワールドなのかなと。この状況で全く荒まない女の子が実に不自然で、ちょっぴり荒みぎみの兄に対してかわいらしい声で「おにいちゃん」と呼ぶたびに非現実感が増してゆく。そのわりにロケーションを多く取り入れ屋内の光もけっこうリアル。さらに方言がいい感じにリアル感を出している。かと思ったらやっぱり漫画みたいな学校の先生とか「優しい人は危ない人」というこれまた漫画的な登場人物が出てきてどこまでも嘘っぽい。このギャップをうまくうめているのが初子のキャラ。どこかのん気なタナダワールドを作っているキャラ。最後の父親再会のドラマの抑揚とかが邪魔かな。あとボーイフレンドの純朴さがやりすぎのような気がしなくもない。作風に合ってるから全否定はしないけど。[DVD(邦画)] 6点(2011-07-29 17:57:38)(良:1票) 10. ああ爆弾 奇抜である前に面白い。というか奇抜さがこの映画の中で全く破綻することなく溶け込んでいるので奇抜とも言い難い。洗練されている。勢いがある。これぞ娯楽映画。ミュージカルってリズムと役者の動きとカット割りが合ってないといけないんだけど、そんな繊細な仕事を感じさせないバカバカしさもいい。怒涛の展開はそこに音楽がなくともこの映画自体が音楽のよう。つまり時代に関係なくいつまでも楽しめる映画。これぞ娯楽映画。[DVD(邦画)] 7点(2011-06-24 16:36:32) 11. ある日どこかで 《ネタバレ》 面倒くさくない映画。写真の女に恋をした。だから過去に行く。極めてシンプル。そこに現実的な葛藤はない。どうやって行くのか。こうやって行くのだ。それでいいのか。それでいいのだ。細かいことは放って突き進むそのいい加減さが気持ちよい。だってこれは現実じゃなくって映画なんだから。かと思えば時間をかけて見せる出会いのシーン。初対面の男に有名女優がどんどん惹かれてゆく理由はとくには描かれなく、それでも納得させてしまうのはこの出会いのシーンの美しさに尽きる。唐突に現在に戻された主人公が悲観にくれる。もしや今まで見ていたものは彼の妄想だったのかとも思った。どちらにしろ「妄想」も「過去」もその現実の世界ではない世界に違いない。そしてやっぱり「映画」もまたその世界ではない世界なのだ。そう考えると実に映画向きの物語だなあと思った。[DVD(字幕)] 7点(2011-06-14 15:55:56)(良:1票) 12. 愛がこわれるとき 遠い昔に愛がこわれてしまったあの娘と見に行ったのがもう20年前(しんみり)。筋は「ありがち」且つ「いかにも」なんだけどちょっとホラー風というのもあって見ている時はそれなりにドキドキハラハラしてたような気がするんだけど、作品全体としては地味な印象。地味だといいながら20年前に見たきりなのに缶詰のラベルがキレイにこちらを向いた棚とか海辺の豪邸とか堅苦しくて息も出来ないような結婚生活の雰囲気とかといった断片ははっきり覚えているので、それなりのインパクトを残しているというだけでも評価されてしかるべしと。後半の展開がまた輪をかけて「ありがち」且つ「いかにも」なのはしょうがないにしても「大味」な演出までもが「ありがち」且つ「いかにも」なのがどうにもこうにも。あと、同じ新妻でもこれより後の『ペリカン文書』のほうがずっとかわいいのは何故。[映画館(字幕)] 5点(2011-05-18 16:55:59) 13. アンチクライスト 最後に「タルコフスキーに捧ぐ」とあった。森が歪む映像なんかはソクーロフ(タルコフスキーが擁護した)を想起したんだけど、動物の使い方やオカルトチックな流れや何よりも森そのものから生まれるサスペンスなんていうのは確かにタルコフスキーの映画だ。しかし「神」が「悪魔」にとって変わっただけでタルコフスキー的なるものがトリアー的なるものへと変貌する。列車と催眠術は初期トリアーの定番アイテムだし、セラピーというアメリカ映画の定番を皮肉った展開にもトリアーの影を感じなくもない。ましてやアメリカ人俳優ウィレム・デフォーの災難ときたら・・。でもトリアーの映画の面白さは映画の可能性を提示しているところにあるのだと思っている私にとっては今回のはいまひとつな作品。今まで映画ではあまり見た記憶がない1シークェンス全てスーパースローモーションとか列車のシーンに見せたサブリミナルぎりぎりの映像とかも奇抜なれど新しくも面白くもない。それでも私にとっての十分な合格点に行き着いたのはラストシーンの壮大な画につきます。あれは凄い。[映画館(字幕)] 6点(2011-04-18 15:55:26)(良:1票) 14. アマルフィ 女神の報酬 なにやらワケありな緊迫感を持った男と女が突然映される。すでに物語は動いている。言葉を排しているがゆえに緊張は増してゆく。言葉を排しているがゆえに映される全てのものに目が行く。言葉を排しているがゆえに画面の外からの音が強調される。概要が掴めたところで唐突にタイトルロールと波の音。この映画、ただものではない。と思ったのだが、はたしてこれは私の感想なのか。通常、未見の映画について書かれているものは読まないようにしているのだが、この作品を見るよりもずっと前にこのサイトの卒業生でもある映画研究塾さんの絶賛評をすでに読んでしまっていたのだった。織田裕二をどんどん受け付けなくなってきていて、ゆえにこの作品は一生見ないであろうと思っていたからなのだが。よって私の好評は映画研究塾さんの影響下にある可能性を否定できないのだ。それほどにインパクトのある素晴らしい批評なのでぜひ皆様もご拝読くださいませ。はてさて織田裕二だが、いつもの過剰な表情と台詞まわしを排するだけで全然受け入れられた。単にそういうキャラクターである、ということ以上に演出の成果であることを確信した。サラ・ブライトマンを引っ張り出してきたりとずいぶんと無駄な部分もあるし、ユーモアの少なさも不満ではるけれど、目を見張るシーンも豊富にあるので概ねでは満足感が勝った。[DVD(字幕)] 6点(2011-04-05 13:44:02) 15. アイデン&ティティ この時代を共有する者にとってはそれなりの郷愁もあるかもしれんが生憎この時代を知らん。いや、その時代に生きていたが「イカ天」ならびにそこから生まれたものを知らん。こちら関西ではやってなかったのだから。テレビに煽られてロックを消費する輩と時代から取り残されながらそれはロックじゃないなどと叫ぶ輩。どちらもいけすかない。居酒屋でロックとはかく在りなんといったえらそうな戯言を述べるシーンがあるが、このイタイイタイところをもっと見せてくれれば面白くなったかもしれない。最近だと『SR サイタマノラッパー』みたいなの。でもこれは「かっこわるい」けど真っ直ぐってことを描いてるわけだけども「かっこわるい」ぐらいでしかなく、「イタイ」ところまでいってない。原作者本人がイタイとは思ってなかったらこれは当然なわけだから、居酒屋のイタイ戯言はクドカンのオリジナルかなとも思うんだけど、イタイのはここだけ。妙にまじめぶった展開の中に挟まれるコミカルパートも台詞にしかその役割は無くつまらない。現実離れしたキャラクターだけが作品を支えている。[DVD(字幕)] 3点(2011-04-01 14:26:43) 16. あしたのジョー(2010) リアルタイムでコミックを買い続け全巻揃えたド真ん中世代ですが、アレはアレ、コレはコレ、当時の思い入れを持ち込むつもりはさらさらありません。『ピンポン』『ICHI』でCGを巧みに操りキャラクターの顔が活きるマンガチックなアクションを見せきった曽利監督がどんなボクシングシーンを見せてくれるのか、そこだけを楽しみに見ました。そのポップで綺麗なボクシングシーンは確かに新鮮ではあった。しかし超スローで歪んだ顔を映し出すことになんの意味があるのか。笑うところかと思ったぞ。全体を見てもカメラ揺れ揺れアクションなんかに比べりゃはるかに良心的なんだけど、キレイすぎてボクシング本来の泥臭さみたいなのが消されてしまってイマイチ盛り上がらない。あと、基本アイドル映画なんだろうね、これ。ボクサーではないただの喧嘩屋のころから山Pかっこよすぎ。ストーリーも駆け足なので説得力に欠ける。[映画館(字幕)] 4点(2011-02-28 18:27:07)(良:1票) 17. 赫い髪の女 トンネルを歩いて抜ける一人の女、ダンプが横を通り過ぎる、女の髪が舞う、タイトルがデーン!むちゃくちゃかっこいいぞ、このオープニング。映画の大半はセックス。一日中部屋にこもってセックスって、性欲満点の若造でもあるまいし・・。しかし若かりし頃のセックス三昧にみられる陽気はここにはない。相手を思いやるようなセックスというよりも何か、不安とか寂しさとか、そういった負の何かを紛らわすとか忘れるとかあるいは何かから逃げるためのセックス。やるせなさ満開のセックス。エロさよりも痛々しさが勝ってる。どしゃぶりの雨が途方もなく似合う。夜な夜な響くシャブ中女のおぞましい声は自分もそうなり得るのだという不安を煽ってる。これは原作にもあるのだろうか。あるならば車谷長吉は「赤目四十八瀧心中未遂」で中上健次と同じ方法で地獄の存在を見せようとしたのかもしれない、などと映画とは関係のない思索にふけってみる。[映画館(邦画)] 7点(2011-02-16 14:58:47) 18. 青いドレスの女 《ネタバレ》 現時点で平均点4.08点(私の投稿前)。うーん、そんなにひどかったっけか。見てる間じゅうポランスキー『チャイナタウン』がちらちらしたのを覚えている。今改めてさらに思う。どちらもハードボイルド。時代は少し違うけどどちらも昔の設定。場所はロス。謎の女は被害者の顔を持つ。政治がからむ。社会問題もからむ。・・・。『チャイナタウン』を絶対意識してると思う。原作通りなのだとしたら原作が『チャイナタウン』の影響下にあるのだろう。とまあそんなわけで『チャイナタウン』が大好きな者としては、同じ匂いを持つこの作品もその雰囲気だけでけっこう酔えちゃったりするのかもしれない。その雰囲気に似合わないドン・チードルのぶっ飛んだキャラも悪くない。「からくり」を見せることに寄り過ぎの面があるし、その「からくり」自体が若干幼稚な面も、またその顚末もまた幼稚(政敵の弱みのなんたるばかばかしさ)ではあるが、私の中ではじゅうぶんに及第点。[DVD(字幕)] 6点(2011-02-09 16:17:01) 19. アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン 《ネタバレ》 十字架は美しい。なぜなら十字架は「痛み」を通過しているから。本物の「美」とは「痛み」を通過したもの。らしい。芸術家は猟奇殺人犯となり作品に「痛み」を与え「美」を完成させる。その男に同化したジョシュ・ハートネットの役どころは「美」を知る者といったところか。地獄を見てきた末にマフィアのボスとなったイ・ビョンホンは癒しようのない「痛み」を抱えて生きている。木村拓哉は全ての「痛み」を受け入れる現代のキリスト。つまり「痛み」を抱え続ける者と「痛み」を受け入れる者の拮抗を、そこに「美」を見出す者というSM的な感受性を持った男が見て興奮する物語、なわけないが遠からずではないか。にしても十字架にはりつけはともかく、「ファザー!」とか「許す」とか“僕キリストです”てのが露骨すぎ。「美」といえばトラン・アン・ユン監督の十八番。監督が自らの武器であるところの映像の美しさについて、上っ面の「美」じゃないよと宣言しているかのよう。[DVD(字幕)] 5点(2011-01-25 14:27:07) 20. 赤い影 《ネタバレ》 実際にベニスに行ったことないんだけども、これ見る限りじゃとんでもなく死臭のする街だ。『世界中がアイ・ラヴ・ユー』のベニスと同じ場所とは思えない。死体が水から引き上げられるシーンがあることで水の都は瞬時に死の都と化す。ねずみがちょろちょろしてるところなんかは『ベニスに死す』へのオマージュか。幻想を幻想として映さないことでミステリアスな展開を主人公と共有させている。冒頭の悲しいシーン(わが子の死を一瞬先に感じてしまった特殊な能力)が自らの運命を見てしまっていたというオチに対する伏線としてあるというのはシナリオのうまさが光ってる。いちいち大袈裟だなと感じるカットは時代性か。あと、怪しい姉妹が怪しすぎるのが難点。[DVD(字幕)] 6点(2010-12-20 14:47:22)
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