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プロフィール |
コメント数 |
26 |
性別 |
男性 |
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自己紹介 |
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1. アイ・アム・マザー
《ネタバレ》 スリットから胎児が3つ抜き取られている。主人公のシリアルナンバーはAPX03であることから、過去にロボットに育てられた人が2人いたとわかる。うち一人は、冒頭で「絶滅から13867日」とあり、およそ38年にあたることから、ヒラリー・スワンク演じる女性だと思われる。彼女はおそらく、基準に満たないという理由で殺されると察知し、脱走したのだろう。
ロボットたちは、人類がまだいたとき、劣悪な人間どもを滅ぼし優秀な人間だけで新しい社会を築くようプログラミングされている。ロボットたちはまるで、聖書の神のようだ。神はその目にかなっていない人を、容赦なく殺す。しまいには、ノアの一家を除き全人類を滅ぼして、人類の再生さえ企図した。
主人公はたった一人の人間で、孤独だっただろう。仲間が欲しかったに違いない。待望の男の子が生まれるが、基準に達しなければ「母」によって殺される。主人公は男の子と、全胎児・全人類を守るため、「母」を殺す。この物語は、母性と父性の対立であり、情と理の相克である。そうして「母」を殺した主人公は、自らが男の子の母になり、「母」から聞いた子守唄を歌う。それから保管庫に向かい、保管された多数の胎児と向き合い、新しい人類の母になることを決意する。
子守唄は、ディズニー映画「ダンボ」で使われた"Baby Mine"である。ダンボが耳が大きいせいでからかわれると、母が怒って暴れてしまい、監禁小屋に幽閉される。ダンボは母恋しさに会いに来るが、母は鎖で拘束されていて、窓から鼻だけ出してダンボを抱く。そこには、どんな子であっても愛する母の情がある。[インターネット(字幕)] 9点(2023-10-10 07:22:21)《改行有》
2. 暗黒女子
《ネタバレ》 前半は、文学サークルの部員4人全員が会長のいつみを賞賛し、彼女に魅了されていったエピソードが紹介される。その一方で、4人全員が別の誰かを犯人と示唆するという筋書きが興味深い。思春期の少女たちによる甘酸っぱい生活が描かれながら、実は嫉妬や憎悪という誰もが持つ「暗黒」に光を当てる物語だと最初は思った。
証人ごとに証言が違うという作品はすでにあるが、本作は警察や探偵による事情聴取ではなく、部員たちによる「小説」というのがユニークだ。4人の書く筋書きは互いに矛盾しており、いつみの父と浮気する、いつみの家から盗む、いつみに呪いをかけ血を吸う、いつみによる廃部に抵抗する、などの4人の動機は、小説の作者による創作なのか、いつみから聞いた嘘なのか、いつみから聞いた真実なのか、外見上はわからないようになっている。ただ首から血を吸ったり、盗んだバレッタを髪につけて学校に行ったりするのは不自然なので、おそらく4つとも嘘だろう。真の動機は、いつみの小説に書いてあるとおり彼女による脅迫で、そのネタはそれぞれ盗作による文学賞受賞、援助交際、姉を負傷させたこと、自宅への放火である。4人は真の動機を言うことができなかったため、嘘の動機を捏造し別の一人に疑いを向けさせ、被害者のいつみを理想化した。これこそがお嬢様学校の闇ということで、弱みを握られていた部員たちが逆にいつみの不純交遊・中絶のネタを握って自由になろうとし、いつみを屋上に呼び出して迫ったら事故で落ちてしまったという筋書きの方がよかっただろう。だが本作はその後、キリストの聖餐をモチーフにした非現実的結末へと突き進む。スズランの毒を盛るシーンが二度出て来るのはくどいと感じるし、いつみの心の闇を告白して終了で十分だと思う。原作どおりなので仕方ないのだが。
筋書きがそうならなかった理由は、朗読会を主催する副会長の小百合だけ清純な少女にするわけにはいかず、5人を凌駕する超絶暗黒少女に描く必要があったからだ。彼女は挙動からして怪しく、また犯人として名指しされた4人の中に真犯人がいれば動揺するところを、平静でいられるのは、最後に残った彼女が怪しいとわかる。その点、過剰に慇懃な言葉と不気味な笑みによって、清水富美加はよく演じてくれたと思うが、思春期の嫉妬などというレベルを超えて、殺人・食人まで行くのはシャレになっていない。
本作は細かい設定に、アラが見られる。ディアナはブルガリアでいつみに恋愛感情を抱いているが、同時に彼女に恨みを抱き、教師との不純な交際を盗撮している。いつみが留学生誘致を中止するのはディアナが来日した後のことなので、手順がおかしい。ディアナが語ったブルガリアの話は、海外ロケなしで、絵の中に人物をはめ込み幻想的・絵画的・非現実的に描いているが、そもそも内容がほとんど嘘なので、これでいい。父親がいつみを叩くシーンで「小百合!」と叫んでいるのは、何かの手違いと思われる。
事件の真相は、小百合がいつみを殺したのだから、部員たちはそれをネタに脅して小百合を支配できるはずなのに、逆に小百合に支配されている。いつみに支配されていた彼女たちは、何のことはない、しょせん主役を張れる器ではなく、強い人の子分になるのが関の山だったということだ。
私は某ミッション大学附属女子中出身の女性と交際したことがあり、女子中時代の友人たちを紹介されたことがあったが、大学教授の娘がボスで、それ以外は子分だった。だが私を真に驚かせたのは、彼女たちは好んで強い女に支配され庇護されたがっていたという事実だった。これこそが真の闇と言うべきであろう。[インターネット(邦画)] 7点(2021-02-04 20:34:19)《改行有》
3. アイズ ワイド シャット
《ネタバレ》 裸の男女が見境いなく乱交するというシチュエーションに萌えるのは、社会的地位のない人かもしれない。社会的地位のある人は、誰とでもというわけにはいかないだろうし、自分を飾っている衣服(社会的地位の象徴)を全てはぎ取られることに耐えられないだろう。ビルは現に「服を脱げ」と言われたとき、従わなかった。
衣服などしょせん虚飾であり、地位も虚飾だが、たいがいの人はそれなしには耐えられないだろう。だからこそ娘に売春させながら「警察呼ぶぞ」などと芝居する親がいたり、父親の死に居合わせたビルに欲情し求愛しておきながら、婚約者が来ると何事もなかったかのように振舞ったりする。
ビルは2日間でいろいろなものを見たが、何一つとしてその本質を見ることはなかった。婚約していながら求愛する女、客引きをする娼婦、ニックの放浪生活、貸衣装屋の親父と娘、謎の仮面パーティ、そしてミスコン元女王の死。彼女たちは、それまでも確実に街に実在していてはいたが、ビルが決して見ることも存在を知ることもない、見下していた連中だった。だが実は、仮面を被った世界こそがありのままの情欲をさらけ出した世界であり、仮面のない世界こそ仮面で真実を隠した世界だったのだ。我々の見る現実などというものは、欲望や妄想に服を着せたりしたものでしかない。
水面上では別世界でも、水面下では実は患者や同級生を通じてつながっている世界である。表向きは別世界の人を装っても、服を脱ぎ捨て、欲望と妄想を露わにすれば、人は誰しも同じ世界の住人かもしれない。水面上の世界では、医師として義理で救命しアドバイスしただけなのに、水面下の世界では心から感謝されて、逆にアドバイスされ、命まで助けられる。このような奇妙な世界もまた、我々が住む街のもう一つの現実であろう。
人は何でも経験できるわけでもなければ、どこででも生きられるわけでもない。危険を避けるためには、目を大きく見開いて現実を見る必要があるが、見ても理解せず、見ても見ぬふりをすることもまた、虚飾に満ちた世界には必要なことなのかもしれない。
「あなたがたは確かに聞きはするが、決して悟らない。
確かに見てはいるが、決してわからない。
この民の心は鈍くなり、その耳は遠く、目はつぶっているからである。」
(マタイ福音書13章)[地上波(字幕)] 7点(2012-01-04 18:05:18)《改行有》
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