|
1. 風立ちぬ(2013)
《ネタバレ》 映画自体は主人公の半生を描いたNHKの朝ドラ的な作り。
各所にジブリ的雰囲気の良さはあるものの、病弱な女性と結婚し、彼女がいずれ死ぬであろうこと以外に盛り上がる要素もない。
主人公の飛行機づくりに対する情熱も自分にはもうひとつ伝わらなかった。
その最大の要因になっているのは起用した声優陣。
庵野秀明氏を起用しなければならなかった理由はどこにもない。
他にも俳優を多く起用しているが、これもほぼマイナスに作用している(唯一、ヒロインの瀧本だけは合格点)。
スポンサーからのお金集めなど大人の事情があり、日本のアニメ映画は話題となる俳優の起用が当たり前になっている。
宮崎監督自身もととろの糸井重里で味をしめ、ハウルでキムタクを起用して以降、率先しているように思える。
声優が存在せず俳優が声をあてるのがあたりまえの海外と日本は違う。
声優という職業は日本が誇る独特の文化であり、当然のことながらその実力はほとんどの場合で俳優を上回る。
また、あまりに外見を見すぎたため「キムタクはどう聞いてもキムタクにしか聞こえない」というビジュアル的弊害も声優の場合は少ない。
声優は見る人に安心感を与え作品に没入でき、実際裏切られる可能性も低いのだ。
日本のアニメの巨匠がそれをわからなくてどうする!?と思う。
他の監督が俳優を起用しても、宮崎氏だけには声優を使ってほしい。花形である大作アニメに「声優」を使ってほしい。
そのほうが作品がしまる可能性ははるかに高く、それが後世評価として引き継がれていく。
全部が全部とは言わないが、公開時の一時的な話題作りのために、時の人気俳優や奇をてらった起用をすることがどれだけ作品に悪影響を及ぼしているか……。
この映画の庵野秀明氏が脇役であればこういうレビューは書かなかったが、あれが主人公というのはあまりにひどいと感じたのであえて書きたくない苦言を書きました。[DVD(邦画)] 3点(2018-01-15 07:59:00)(良:2票) 《改行有》
2. 鑑定士と顔のない依頼人
《ネタバレ》 いや~、面白かった……、と言っていいのかどうか……。とりあえず、鑑賞後、一緒に観た人と2時間くらい、ああだこうだと話せる映画です。個人的に、これだけ話し込んだのは「マルホランド・ドライブ」以来かな。
各所に伏線となるシーンがあり、全編に何か不穏で、不自然な臭いが漂っています。
これはどういうタイプの映画なのか、どう落とす映画なのか、観る側はずっと考えながら観ることになりますが、監督がトルナトーレであること、ドナルド・サザーランドがただの相棒役で出るわけがないという先入観も周波数合わせの邪魔をしてきます。
二次元の女性しか愛せなかったひねた老人がやっと生身の女性と結ばれる異色のラブ・ストーリー?と思いつつ観ていても、なんだかおかしい。終始モヤモヤしますが、映像はきれいだし、撮り方もいいので観ていてストレスがたまるほどではない。
終盤、絵が全部なくなっているのを目の当たりにしたときのジェフリー・ラッシュの一瞬の演技は秀逸。
現実を受け止められずプラハまで行ってしまう姿は、もう、かわいそうの一言。
そりゃ、60過ぎて初めて知った女性が娘ほど若い女で、それを一瞬で失った上、自分を騙した詐欺集団の一人ともなればおかしくもなりますね。詐欺集団の首謀者ドナルド・サザーランドは、自分を認めなかった恨みが根深かったのでしょうね。控えめな演技に最初は「こんなどうでもいい役をやるようになったか」と、まんまと騙されました(笑)。喫茶店で座っている小さい女性もいい味出してました。ラストシーンの喫茶店「ナイト&デイ」、海外旅行をしない私ですが、行ってみたくなりました。[CS・衛星(字幕)] 8点(2015-03-31 17:48:02)《改行有》
|