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1.  華氏911 米国の大学のラウンジで、当時つきあっていた彼女が「ちょっと実験をしてみよう」と言って、近くにいた学生の1人に声をかけました。「何の用?」と尋ねられると、「ちょっと待ってて」と引き止め、次の学生に声をかけました。数十人が立ち止まると、それを見たほかの学生たちが続々と集まり、「なにかここではじまるらしい」と声が聞こえてきます。30分程度で、そのラウンジには、2000人以上が集まりました。それを見届けたところで、私と彼女はこっそりとラウンジから出ました。米国人は、「ストリームの気配を感じるとそれにとりあえず飛びつく」国民性があります。そして、アカデミー、カンヌをモノにしてしまったムーアには、人を呼び止め、席につかせる力があります。ムーアの手法は、暴力的で、狡猾。論理的に欠点が多いのですが、勢いがそれを補っています。私は、たまたまラウンジに入ってしまった米国人が、自分で考えることを放棄し、本作に拍手を送っているのではないかと不安を覚えました。イラク問題の是非は、話し合う、またそれぞれが持論を主張する価値があります。ムーアの主張は、個人的には賛同しています。しかし、ときとして「メディアの暴力」とも思えるそのやり方は、「私の好みではありません」。また、今後、ムーアの粗悪コピーが出てくることも、(その可能性は低いとは思いますが)懸念しています。5点(2004-06-30 02:42:42)(良:2票)

2.  風の谷のナウシカ フランク・ハーバートの長編SF小説「砂の惑星」を、東映動画のテイストでアニメ化。本作の絵コンテのようなコミックは、アニメ専門誌(アニメージュ)に掲載され、本作公開後何年も連載の続いた(休載が長かったせいもありますが)大長編となりました。構成能力のたいへん高い'60~'70年代の東映動画で仕事をしてきた宮崎だけあって、とりとめのない断片的なエピソードを1本の映画にうまくまとめてあります。また、メーヴェという小道具を出したことで、当時の宮崎の持ち味であるスピード感を、たっぷりと見せてくれています。脚本は、「砂の惑星」をベースにした壮大な設定からはみ出して見える思慮不足が、残念。主人公のナウシカは、同胞やオームには深い情けを見せるのですが、同胞でない人間の命はかなり軽んじています。人から嫌われるオームになぜ執着するのか、書き込みが足りなかったように思います。たとえば、ゴキブリと心を通わせる少女がいたら、それはかなりマズい。「かわいそうに」と言って、ほほすりよせるのは、さらにマズい。それを正当化するには、よほど強い説得力が必要なはずです。本作は、1984年、アニメブームに便乗して製作されました。当時のマニアを狙ったのですが、精密な世界観よりもむしろ、宮崎の固執する美少女キャラクターが大きく注目される作品となりました。 原画には、アマチュアの庵野秀明が参加しています(20数名のうちの1人)。4点(2004-06-25 06:40:55)(良:1票)

3.  カッコーの巣の上で 《ネタバレ》 本作は、障害者やネイティブアメリカンといった「差別される人々」を、ジャック・ニコルソン扮するマクマーフィの暖かい視点で描いています。本作の主人公マクマーフィは、虐げられた人々を自分と対等に扱います。障害は、その人の人権を奪ってよいという理由にはなりません。仲間(ビリー)を殺されたマクマーフィの怒り、マクマーフィを殺さなければならなかったチーフは悲しみが、人間の尊厳とは何か、切実に私たちに問い掛けてきます。 前部前頭葉切截術は、日本でも「本人の了解なしに医師の判断で」行われていました。結果、1979年にはロボトミー殺人事件という悲劇が起きています(日本精神神経学会は「精神外科を否定する決議」を1975年に可決)。ネイティブアメリカンの人口は、合衆国設立からわずか2世紀で数パーセント(10分の1以下)にまで減少しました。8点(2004-06-24 08:06:58)

4.  蒲田行進曲 風間杜夫、原田大二郎が華のある役者ではないため、物語に入り込みにづらかった(2人は映画2大スターの役)。風間は仕方ないとして、橘役は別の役者をキャストするべきだったように思います。つかこうへいの脚本にしてはテンポがよくなく、深作欣二との相性に問題があったのではないかとさへ考えました。後半の話は「階段落ち」が中心となるのですが、この階段の撮られ方が恐怖に欠いていて、説得力を失っています。脚本の中にある「人情」も、うまく表現できていませんでした。本作の価値は、つかこうへいの名を一気に世に知らしめたということに尽きると思います。6点(2004-06-21 07:19:07)(良:1票)

5.  ガタカ 《ネタバレ》 ハンディキャップへの差別から逃れようとする主人公の姿には、賛否両論があると思います。彼は決して、差別と真正面から戦おうとしているわけではありません。むしろ、障害者となってしまった元宇宙飛行士が、過酷な運命と闘い続けていました。主人公の願いは、ただ、宇宙に出たいーーーSFでありながら、話をやたら広げなかったのが、よかった。傑作です。8点(2004-06-12 03:36:44)

6.  影武者 戦国武将たちを、それなりにヒューマンに描いたのは、おもしろいと思いました。 脚本、演出など、舞台をひじょうに意識した作りです。 美術は見事なほどお金がかかっていますが、ところどころリアリティに欠けるのは、残念です。反面、妙なところにリアリティを追求しているようでーー夜の場面は暗すぎるため、たいへん鑑賞しづらいです。音楽は、それまでの黒澤映画からすると、かなり質が低下しています。 型にはまった芝居や、意外性のないストーリー、尺の長さで、「退屈」と捉えられる危険をはらんだ映画です。4点(2004-06-04 00:53:09)《改行有》

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