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1. コクーン
《ネタバレ》 若い時に封切りで観ましたが、『頑固爺さん孫7人』のブリムリーのカーネルおじさん的な柔らかい雰囲気が好きでした。孫と釣りをしながら、遠くに旅立ち会えなくなることを告げるシーンの映像が記憶にこびりついてます。
これは物語をそのままなぞると「不老不死」の物語ですが、ディテールを一切無視すれば「2度と会えない遠い場所へ旅立つ人々との別れ」の物語であり、それは即ち「死別」の物語です。ラストの葬式の場面で少年が空の彼方を見上げるシメが好きです。好きな人との死別は悲しいものですが、空を見上げる少年は微笑んでいます。好きな人と、もう2度と会えないっていうところは同じなのに、「彼らは死んでしまった」という解釈をする大人と、「おじいちゃん達は何の心配もいらない新しい場所で永遠に生き続ける」と解釈する少年とでは、気持ちのあり方が随分違ってきます。これは天国とか極楽浄土とか、そういう世界をSFテイストで表現して、人との死別を悲しみ過ぎないように救ってくれる一面があると思いました。
ブレイクダンスをするアメチーは替え玉バレバレなんですが、それでもあのシーンは好きですし、あんな元気なおじいちゃんになりたいなーと、自分の歳の取り方に一つの理想を提示してくれました。「もう歳だから」「年甲斐もない」など、自分で自分を抑え込んでしまわずに、好きなことややってみたいことは、いつからでも、生きているうちにどんどん楽しまなきゃ…ということも思わせてくれました。
与えられた寿命を留まって全うすると決めたお爺ちゃんも考えさせられるキャラですが、正直言えば、自分はああいうおじいちゃんにはなりたくないタイプです。他のおじいちゃん達は宇宙人に迷惑かけたり不倫したり褒められないことも一杯なんだけど、それも含めて人生を精一杯エネルギッシュに生きて(ちゃんと反省もして)きた感じで、だからこそ『天国(極楽浄土)へ成仏できた』という解釈の仕方もあるかなー、なんて思ったりもしました。だってさー、あの真面目じいちゃん、奥さんを生きている間にどれだけ楽しませた? 健気におとなしく寄り添うおばぁちゃんだったけど、彼女のことは不憫でした。本当はダンスしたいのに我慢してた彼女の姿がとても辛かったし、本当なら助けられたのに死なせちゃったのも、なんだかなー。同時進行的に不倫爺ちゃんのエピソードもあるけど、一番我が儘でかつ一緒にいてつまらない爺ちゃんは地球に残った爺ちゃんじゃないのかなぁ? 彼とそのお婆ちゃんは、地球でもう一度生まれ変わってやり直すのかも。
てことで、自分的には「生きているうちにしっかり楽しめ」というメッセージをもらったような映画でした。[映画館(字幕)] 7点(2016-01-04 01:45:25)《改行有》
2. 殺しのドレス
《ネタバレ》 デパルマ作品で最も好きな映画です。ストーリーや性描写には閉口してしまいますが、美術館のシーン、エレベーターのシーン、ラストのシャーワーシーンの3つが観たくて、たまにライブラリから引っぱり出します。この3シーンについて、フィルムがどのように編集されていったのか、音楽はどの時点で制作されたのかなど、非常に興味があります。セリフなしBGMのみの映像に釘付けにされ、映像が持つ力に感嘆した最初の作品です。蛇足ですが、この映画を見ると毎度「地下鉄であんな無茶な言いがかりをつけて追い回す不良は本当にいるのだろうか?」と思い、夢オチ直前のカフェの会話中、隣のテーブルのおばさんのリアクションに釘付けにされます。 【2011-06-05追記】自分も3度くらい観ないと気づかなかったんですが、女装した犯人は美術館のシーンで既に姿を現しています。主婦が男を誘惑しそびれて美術館の外に出たら、彼女はタクシーに乗って待っている男性を目撃しますが、彼女からタクシーへパンしていくカメラの前にサングラスとコートのあいつが横切ります。タクシーのもとへ歩み寄り挨拶する遠景を撮る地べたからのカメラは、手前で映っている捨てられた手袋があいつの手でざざっと拾い上げられるのを捉えています。誘惑されてからずっと彼女を尾行してたことの説明になってるけど、分かりづらいねー。[レーザーディスク(字幕)] 8点(2008-12-12 06:37:51)(良:1票)
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