みんなのシネマレビュー |
|
【製作年 : 1950年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
1. こころ(1955) 原作に関して同性愛小説ととらえる向きが(とくに海外で)あるらしいのですが、私自身が読んだかぎりでは全く感ずるところはなかったのですが映像にしてみるとなるほど、たしかにそんな解釈もありだなと思った。主人公と先生の出会いのシーンが最も顕著で、半裸の男が映し出されるというだけでなんとなくそんな空気を感じてしまった。しかしどうもたんに映像の力だけではなく、この映画自体がそっちの思考で作られているっぽいような気もする。先生の回想シーンでも先生と友人の関係は同性愛的描写はなくとも男同士の友情とは一線を画した何かを感じずにはおれない。作品に漂う鬱屈した空気はまるで本人が自分の中に目覚めた気持ちに気付いていないゆえの息苦しさのようだ。最初、原作にはないラストシーンは蛇足にしか思えなかったのだが、同性愛的なものが心の奥底にあったのなら何にも置いて一人蚊帳の外であった妻を最後に登場させたこのラストシーンはなかなかキョーレツな味わいを持っているではないか。ううむ、新藤兼人版も見てみたい。[DVD(邦画)] 6点(2009-07-21 17:09:40) 2. ゴジラ(1954) その後人気者になるとは到底考えられないほどゴジラは「怪獣」であり、核の化身であった。この映画は原爆を唯一落とされた国の悲痛なまでの叫びそのものだ。人が死に、街が破壊される描写をもって「反戦映画」とするなんて子供っぽい発想で終わらない。この映画は原爆を作った科学者たちをも許さぬと言っている。特撮もゴジラの造形もゴジラの鳴き声も、そしてゴジラのテーマもとんでもなく素晴らしいから「ゴジラ」がその後一人歩きしてゆくのだが、この第一作は作り手のメッセージというにはあまりに痛切な想いが詰まっていて、たぶんその強烈な思念が画面に漂っていて作品に風格をもたらしている。この異質ともいえる風格は、今後どんなに素晴らしいゴジラ映画が生まれてもけして真似のできない代物である。[DVD(邦画)] 7点(2008-04-28 19:08:01)(良:1票) 3. 孤独な場所で これも『暗黒への転落』に続きボガートのプロダクションが製作していますが、なんでもボガートの意向で元々のサイコスリラーにロマンス色をより濃く反映させたのだそうですが、それゆえに異色な作品となっている。ハリウッドで映画を作るということは、ハリウッドでの映画製作に付きもののあらゆる方面からの意向を無視できないということが前提となる。むやみに受け入れれば監督の持ち味は喪失してしまう。しかしニコラス・レイという人はそんなあらゆる意向を進んで取り入れながらも本筋では自分を貫いているという稀な監督だと思う。だからこの人の作品は言葉は悪いがどこか中途半端なところがあってその中途半端な部分がなぜか魅力的という独特の雰囲気を持っている。これ、ボガートの提案が無ければとんでもなく怖い映画になってたかもしれなく、それはそれで観てみたいが、ロマンス色があるおかげで万人受け映画を最低限クリアしていると思う。[CS・衛星(字幕)] 7点(2006-05-23 10:39:18)(良:1票) 4. 恋人たち(1958) 《ネタバレ》 「恋は盲目」現象を見事に映像化した作品と言ってしまおう。裕福でも田舎暮らしには不満を持つブルジョワジー。週末にはパリで遊び、愛人まで作るがそれでも満たされない。そんな様子をジャンヌ・モローのわかりやすい表情が語る。そこに登場するブルジョワ嫌いの男。いきなり恋が芽生えるなんてことはない。しかし月の明りが美しく風が心地よい深夜にそれは突然やってくる。グラスとグラスがぶつかる音、ブラームスの音楽、水の流れる音、そして甘く囁かれるフランス語が静寂の中に溶け込む。アンリ・ドカエの撮った月夜の映像とのコラボレーションが美しい。そして恋する女はもはやブルジョワでも主婦でも母でもなくなる。[CS・衛星(字幕)] 7点(2006-02-20 16:22:02)(良:1票)
|
Copyright(C) 1997-2024 JTNEWS