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【製作年 : 1990年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
1. ジュリアン(1999) 《ネタバレ》 ビデオ・カメラで撮影した映像をなにやら複雑な方法でフィルムに落としたというこのざらついた映像、けっこう好き。見難いいっちゃ見難いんだけど、とくに主人公の姉が枯れ野原を賛美歌を歌いながら歩いている場面なんかは美しかった。中盤の台詞なしで雰囲気だけで引っ張ろうとする場面が退屈で、これさえなければ高得点をつけていたかもしれない。ジュリアンが死んだ赤ん坊を抱えて毛布に包まるラストシーンは痛ましく、それまでちょっとだれていたのを忘れて見入ってしまった。なんというか、画面の中に入ってジュリアンの肩を叩いてあげたかった。優しかった母親は死に、異常な父親に苦痛を与えられながら生きているジュリアン。精神を病み、子供にもクソを食らえとバカにされるジュリアン。その唯一の心のよりどころであった姉の子供の死。……かける言葉もみつからない。ホワイト・トラッシュの救いのない現実を救いのないままに描き、忘れ難い味わいを残す。[ビデオ(字幕)] 6点(2006-01-28 01:07:17) 2. シンドラーのリスト 前編と後編、二日に分けて鑑賞したのだが、間に挟んだ夜はなんだか神経がざわざわして、夜中に何度か目が覚めてしまった。 もちろんホロコーストのことはいろいろな書物や映像である程度の知識を持っていたが、この作品を観ると改めて衝撃を受ける。映像の残酷さでいえば現実の映像には敵わないだろうが、たとえばシャワー室に入ったユダヤ人女性たちが次第にパニックを起こしていく場面に見られるような、ユダヤ人たちの心情に沿った表現はまた違った意味で衝撃的だ。選別、ゲットー解体、収容所の建設など、猥雑で殺伐とした雰囲気、埃っぽい空気の臭いまで伝わってくるようだ。 これほど画面を前に体を強張らせた作品はなかった。彼らの恐怖を(ほんのひとかけらにせよ)体感できる。これは資料映像ではない、映画だからこそできたこと、映画がやらなければならなかったことだと思う。[ビデオ(字幕)] 9点(2006-01-25 17:52:06)《改行有》 3. 白い花びら あまり、好きになれないかも……。第一あのヒロイン、あまりにもアホ過ぎて同情する気になれない。しかも、あまり可愛くない。ユハがどうしてあんなに彼女を愛していたのかが分からない。ユハもお人好しで怪力である以外のキャラクターがよくつかめないし。『浮き雲』では小さなエピソードを積み重ねることで観客を自然と物語内に導いていたと思うのだが、本作は短いためかその点不十分だった(感受性が鈍いといわれればそれまでですが)。主人公二人に感情移入できないままに悲劇を描かれても感動できない。ラストシーンは某有名作品のパクリ(オマージュ?)であることがわかり、さらに冷静になってしまった。可憐な白い花が踏みにじられるように、夫婦のささやかな幸せもいとも簡単に壊れてしまう――あらすじだけなぞると好きなタイプの作品に思えたのだが、上記の理由で面白く感じられなかった。ただサイレントである分、音楽が雄弁すぎるくらい雄弁なのが印象的だった。おかげでかえってカウリスマキ作品の割には派手な演出に感じた。[ビデオ(字幕)] 6点(2006-01-15 10:04:48) 4. シビル・アクション 《ネタバレ》 かなり硬派で、渋いストーリー。つまりは地味なのだが、退屈はしなかったし、個人的にはスリリングだとすら感じた。財政的に追い詰められ、仲間の信頼も失い、老獪な弁護士(この一癖も二癖もあるキャラクターが素晴らしい!)にこてんぱんにやっつけられる主人公。しかし多くの苦難の果てに、巨大な火柱がまるで罪を告発するかのように燃え上がる。公害という立証も難しい隠れた罪の大きさを、目に見えるように効果的に表現したあの場面は、終始鬱屈していたこの映画の空気を吹き飛ばすハイライトである。正義を達成した結果として残ったのは、たった14ドルとラジオのみ。それなのに満足げな笑みを見せるあのラストシーンは、いい。地味だけど、かっこ良すぎる。弁護士を頼むなら彼のような人に頼みたいと思う。一緒に働くのはごめんだが。[CS・衛星(字幕)] 8点(2005-11-26 00:12:29) 5. 12人の優しい日本人 根本的なところに疑問がわいてくる。陪審員が推理して有罪だ無罪だと騒いでいるが、状況証拠しか存在しない以上、最初から推定無罪であることはわかりきっている。有罪を主張する陪審員の推理は、すべて偶然で片付けることもできるようないい加減なもので、あれで人の有罪無罪を決められたらたまったもんじゃない。被告や被害者がいちいち合理的に行動したとは限らないし、物理的な証拠はゼロにひとしい状況ならなんとでも「推理」できる。ピザの大きさで殺意の有無を測れると? 陪審制度の危うさに警鐘を鳴らす意図があるとしたら、大成功を収めているといえるだろう。ハッピーエンドを迎えてしまう本家よりもずっと。 パロディをやる以上、ある意味では本家を超えるネタがないと単なる退屈な二番煎じになってしまう。どんでん返しの数で本家を上回り、テーマ自体も対照的なところにあるこの作品はパロディとしては最も秀逸な部類に入るのではないか。 ただし、時代もあってか、別に笑えない。ところどころ面白い場面もあったが、とてもコメディとして優れているとは言えないのが難点だ。[CS・衛星(字幕)] 7点(2005-11-01 09:01:41) 6. THE END OF EVANGELION 新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に 《ネタバレ》 謎解きうんぬんで論じられることが多いみたいですが、別にそこにこだわらなくても人間ドラマとして充分観ごたえがある作品だと思います。補完計画の目的(すべての人間の心の統合)さえわかれば大体話の流れはつかめます。もちろんそういう楽しみ方もありでしょうが、ミステリーではないのだから、説明されない謎は物語に奥行きを与える装飾だと割り切ってもいいんじゃないでしょうか。むしろこの作品の見所は執拗なまでに細かく、真に迫った心理描写でしょう。 まともに親の愛情を得られないまま育った主人公たちは心に支えを持たず、常に不安定です。しかも救いの手が差し伸べられるどころか、次々と希望を失っていきます。少しでも共感できる人ならかなり苦しいはず。そしてクライマックス、主人公は辛い現実世界から逃げ出すチャンスを与えられ、最終的には現実を選ぶわけですが、結末がまたひどい。せっかく主人公が勇気を出したんだから希望的なラストかと思いきや、「気持ち悪い」ってヒロインに拒否されておしまいなんですから。でもこの残酷な結末だからこそよかったと思います。傷ついている人間に安易な希望、逃げ場を提示することがやさしさではないからです。 よく独り善がりと言われる作品ですが、単純に観客受けを狙わず、本当の意味で心の糧になるものを伝えようとした結果なんだと思います。 軽い気持ちで楽しめるような娯楽作ではありません。もちろん娯楽として優れた部分もありますが、生きていくことの苦しさ、人間の弱さに正面から向き合った作品です。良かれ悪しかれ、観る者に強い印象を与えずにはいられないでしょう。[ビデオ(字幕)] 8点(2005-05-02 23:27:57) 7. シュウシュウの季節 《ネタバレ》 眩暈を覚えるような怒りと、不快感。とくに病院でのシーンでは吐き気すら感じました。前半のシュウシュウが可愛らしいだけに、映画が終わったあとしばし呆然としてしまいました。 ただし、あまりにも悲劇を演出しすぎている点が鼻に付くのも確かです。あからさまなセックスシーンなど、「ほうら、こんなに可哀そうでしょ」という製作者の声が聞こえるようで…。『ほたるの墓』を思い出します。当時の政策を批判するために、とにかく悲惨な話にしようとしたのかな、と。 いや、丁寧な作りだし、なんだかんだいって泣けたし、こういう映画があってもいいと思うんですが、政治的な意図が見えるようで個人的には引きました。 悲惨すぎて、思考停止してしまうんですよね…7点(2005-03-02 21:27:36) 8. 少年、機関車に乗る ちょっと、退屈かも。モノクロというか、セピア色で映し出される見たこともないタジキスタンの風景が印象的でした。あと、音楽が現代風のような民族風のような……たぶん楽器がなじみのないものなんでしょう。ストーリーよりも味のある映像と音楽でひっぱっていく映画でした。そしてむちむちに太った弟がブサイク可愛い。彼の土を食べる奇癖はあんまり生かされてなかったと思いますが。4点(2005-02-17 21:58:07) 9. 新・死霊のえじき あれ?この映画けっこう面白いのに誰も見てないの? 知能のあるゾンビが怖くて好きなんだけど……タックルして人間押し倒して噛みつくんですよ? ゾンビっつうかピラニアみたいな襲いかかり方がショッキング。あと、いい加減ホラー映画だからってこんな題名をつけるのはやめてほしい。渋い原題をなんでこんなに安っぽくするんだ? これでレンタル増えるわけ?7点(2004-03-03 05:39:49)
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