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【製作年 : 1970年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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1.  JAWS/ジョーズ 水面上でのはしゃいだ世界と水面下の低音弦がうごめく世界、この対比って以後の監督の作品でもしばしば見られ(恐竜ランドの柵のあっちとこっち)、遊園地のはしゃぎが恐怖に転換するのが好きで、またそれがうまいんだ。そもそもが最初の犠牲者が海面ではしゃいでいるとツーッと横に動くのが、なにか新式の遊具のような不思議さがある。遊ばせていた犬が戻ってこない、捕まえようとしつらえた罠のエサが桟橋ごと持っていかれる、どれもレジャー気分が恐怖に転換する。その裏返しのようにふざけた子どもの偽鮫が銃で囲まれたりもする。海開きのはしゃいだ気分が(はしゃがねばいけないような気分が)恐怖の背景として最適。後半は舞台が海に移って社会が恐怖に対面する装置はなくなってしまうが、ドレイファスとショウの「男の張り合いもの」で楽しめる。これもアメリカ映画の好んだ設定だ(あるいは『黄金』など、男三人ものか)。ショウが空缶を片手で潰すと、ドレイファスも紙コップを潰す。船のなかでの傷自慢も楽しい。冒頭の若者たちの描写に、70年代の映画だったな、と思った。[CS・衛星(字幕)] 8点(2013-11-11 09:43:39)(良:1票)

2.  詩人の生涯 人形ではなく切り絵アニメ。沈んだタッチが美しい。その分ラストの赤いジャケツが鮮やかになる。母の血の色。唐突に巻き込まれていく母。脇で疲れ果てて眠っている若者。「その糸は持っていかれては困るような気がするんだけどな」。そして凍りついていく描写の数々が素晴らしい。赤いジャケツが若者の背に負ぶさっていくところ。老婆や糸買いの女の顔がいい。何度もチェコのアニメに賛辞を寄せるなどアニメーション好きだった安部公房は、自作の映画化のなかでも本作を気に入っていたらしい(やがて川本がチェコでアニメを撮ることになるのだが)。労働者が液体人間になっていく「洪水」などと同じく、プロレタリアSFとでも呼べる初期の傑作短編が原作で、独特の終末が進行していくイマジネーションの奔放さが圧倒的。[映画館(邦画)] 8点(2013-05-13 12:38:15)

3.  忍ぶ川 とりわけ前半がいい。州崎パラダイスのあたりの美術(木村威夫)なんか丁寧で。木場での兄さん(井川比佐志)の最後の表情とか。奥のほうにピントが合ったまま、主人公がこっちに来るってのもあったね、浅草のシーンだったか。カモメを見る少年のシーンとか。メロドラマってのは、こうそれにふさわしい情景の中に、美男美女のアップがポンポンと入らないといけないんだ。リアリティを追及した演技じゃなくていいんです。美男美女であることを自覚している立ち居振る舞いが求められている。栗原小巻って、ちょっと下あごを突き出すと、ちあきなおみなのね。ときどきひどくドンくさく見えるカットがあるんだけど、男(加藤剛)はこういうところがいとおしいんだろうなあ、と思わされちゃうのがメロドラマの魔力。[映画館(邦画)] 7点(2011-01-14 10:29:21)

4.  十九歳の地図 ただの鬱屈だったものが、電話という匿名の装置を発見して、凶暴な不機嫌に育っていく、その公衆電話を発見するシーン。サッカーのボール(おーい新聞屋)を公園のほうに蹴っ飛ばしたのがスローモーションになって、その方向に公衆電話が現われてくる。ゾクゾクさせる場面。雨の日に、みんなが雨雨降れ降れの合唱になるとこ、連帯っぽいものが描かれたのはあそこだけで、あとは弱者同士が殴りあい落としあう世界。カサブタのマリアに対して「そういうふうに蛆虫みたいに生きんのを売り物にして」ってところは凄かった。弱者は弱者づらする弱者を最も憎む。そして地図を作っていくシーンの緊迫、あんな地味な作業でも、映画の興奮は生まれるってこと。なんでも派手にすればいいと思ってる昨今の監督に見せたい。ちょっときっかけさえあれば、右翼の組織の中に安住してしまいそうなところに立っている19歳。手応えの固い確かさという点では、これがこの人の一番じゃないか。[映画館(邦画)] 8点(2010-04-18 11:55:58)(良:1票)

5.  新仁義なき戦い(1974) 正編に比べてラストへ向けての集中感にやや弱みがあった。若山に盃を返すところで互いにビビッてしまうあたりのユーモア、あるいは田中邦衛のフトンや手旗信号のあたりなんかはいいんだけれども、たぶん一本気の若者がいないのが寂しかったんだと思う。このシリーズでは、菅原文太とは別に、死んでいく副主人公格の若者がいて、その一本気ゆえの悲痛さが、成田三樹夫や金子信雄と対比され、映画の核になっていた。その悲痛さを立派であると賞揚するのでもなく、馬鹿だねと嘲笑するのでもなく、決して一本気ではないボス連中と互いに照射しあっているところに面白味があった。それがこれではなく、そこんとこ薄味。それと少しカメラを振り回しすぎたか。[映画館(邦画)] 6点(2010-01-15 11:56:44)

6.  新・仁義なき戦い 組長の首 シリーズは退化していく。菅原文太がかっこよくなってしまった。みっともないしぶとさが魅力だったのに、どんどん作っていくとみっともなさがスタイルになってある種のかっこよさになってしまい、それだけでなく、この作品など昔風のニヒルなかっこよさにまで退歩していると感じられる部分もあった。ケライに殴り込ませて死なせておいて、ただ眉しかめてるだけなんて、昔の文太はやらなかった。本作の新機軸としては、跡目を狙って次々と男を渡り歩くひし美ゆり子(アンヌ隊員)がユニークなところだけど、決してこれはしたたかさとして感服するようなことではなく悲惨な状況であろう。しかしどうも作者は、ここに女の強さみたいなものを表現したつもりでいるみたいだったのに違和感。このシリーズにカーチェイスは似合わず、成田三樹夫もあんまり良くなく、梶芽衣子も中途半端。でもそれなりに楽しんでしまうのは監督の力量か。[映画館(邦画)] 6点(2009-10-11 12:01:19)

7.  真剣勝負 《ネタバレ》 内田吐夢の遺作、主演中村錦之助の宮本武蔵、しかし間違ってはいけない、これは東宝映画なのだ。東映時代劇の時代が終わったその燃え残りを見つめているような作品。低予算だったのだろう、安っぽさをあえてあげつらう気にはなれない、その中での工夫を味わいたいと言いたいところだけど、それにしても実にチープに武蔵の戦歴が冒頭で描かれ、そこから西部劇的な野中の一軒家にたどり着く。セット費用も安上がり。一幕ものである。見どころは敵が忍び寄ってくるとこで、虫の声がふと途絶え、柱に刺した風車が回り出す(そっと戸が開いたのだ)、そういった緊張感。で、まあ、三国連太郎が鬼となって野火をつけてまわり、ケモノ用の罠がパンパンと弾け、何か武蔵は悟ったらしく「活人剣は殺人剣」とか「剣はひっきょう暴力」とか、赤い活字が立ち上がってくるの。低予算で頑張っている、って褒めたいが、偉大な監督にこういうチープな遺作を撮らせてしまう日本映画界への不満の方が大きいわな。[映画館(邦画)] 5点(2008-12-31 12:14:01)

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