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【製作年 : 2010年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
1. 人生はビギナーズ 《ネタバレ》 前作サムサッカーと非常によく似た映画。ユアンは、アイデンティティにずっと不安を感じていたが、それが表面化することはなかった。それは父親がゲイだというカミングアウトをしてからも同じである。しかしそれが表面化し、彼の深い悩み、悲しみに変わったのは、父親の死からである。元から不安を感じながらも父親の存在でかろうじてつなぎとめられてきた自らの存在がぷっつり切れたような感覚だったのだろう。父が死んでから、折に触れて彼は両親のことを思い出し、回想する。しかし「なぜ」彼がアイデンティティを確立できないのかは自覚できていない。これが自覚されるのはメラニーロラン演じるアナと出会ってからである。彼女は彼と似たもの同士で、つまり彼女もなぜ自分が自分であることに自信が持てないかを理解していなかったが、彼と会ってからそれが段々と分かるようになるのである。特に彼女は「空白」が象徴的で、それに段々と気付くのが重要なのである。彼もそんな彼女に触発され、どんどん両親と自分の思い出、父親と恋人の思い出を思い返すうちに、幼い頃に感じた様々な疑問、印象的な光景を思い出し、つなぎ合わせ、現在と照らし合わせるうちに、自らがどのような人間かを自覚するに至るのである(アメリカの歴史、両親の歴史、落書きの際の「歴史意識」なるものに彼がこだわっていたことを思い出す必要がある)。もちろんそれは簡単に言葉に表せるものではないが、しっかりと「思い出す」ことが重要なのだということを我々に知らせてくれる。それは恐らく抑圧してきた記憶なのだろう。あるいは彼自身がポジティブな意味で作り出したものなのかもしれない。[DVD(字幕)] 7点(2013-09-02 23:19:44) 2. SHAME -シェイム- 《ネタバレ》 ラストシーン、虚ろな目をしたファスベンダーの後ろにある「world trade center」のポスター。明らかに意図的だが何を意味するのか。[DVD(字幕)] 6点(2013-07-13 23:41:05) 3. ジャンゴ 繋がれざる者 《ネタバレ》 マカロニ・ウェスタン(英語ではスパゲッティ・ウェスタンらしいが)へのタランティーノの愛が爆発している映画。正直相当の映画ファンでないと細かいところまでオマージュを読み取れないんだろうけど、そのへんはこれまでのタランティーノ映画でも同じです(そこまでのレベルになりたいものです…)。ただいかにも70,80年代映画の撮り方(ズームアップや早撃ち!)は「おおぉー」と唸らされます。「荒野の用心棒」に典型的なように、寂れた町(そしてそこには保安官が)にストレンジャーがやってくる、という構図がそのままそっくり再現されています。そして黒人が馬に乗っている点がタランティーノのオリジナルです。町に入るシーンはイーストウッド「ペイルライダー」そっくりです。個人的にはビールを注ぐシーンが最高でした。そしてなんといってもフランコ・ネロ! 邦題は「続・荒野の用心棒」ですが、原題は「ジャンゴ」という映画でフランコ・ネロはジャンゴを演じていました。その彼が、ヴァルツたちがディカプリオと初めて出会う屋敷で、ディカプリオと奴隷を戦わせている白人を演じています。そしてJ・フォックスのジャンゴと共に酒を飲み、新ジャンゴが旧ジャンゴに「ジャンゴ。Dは発音しない」と言うシーンは痺れます。これこそ最大の西部劇への賛辞でしょう。他の点では、イングロリアスバスターズに見られた緊張感と殺戮というパターンが繰り返されていますが、どちらをとってもやや及ばないと自分は思っています。マカロニ・ウェスタンへの愛を感じる映画です。まだ本作を未見の方は是非「荒野の用心棒」「続・荒野の用心棒」を観てからごらんください。余裕があれば「マンディンゴ」も是非。[映画館(字幕)] 7点(2013-03-02 10:19:26)(良:1票) 4. 少年と自転車 いつも通り、洗練されたダルデンヌ兄弟の映画という感じ。確かによく言われるように優しい視線を常に感じるのであるが、一方で厳しさも容赦なく描かれる。ハッピーエンドかバッドエンドか分からないラストもいつも通り。[映画館(字幕)] 7点(2012-09-24 23:50:36) 5. 灼熱の魂 ストーリーはやや技巧的。だが上手くできている。でもちょっと作りすぎ、みたいな微妙なバランスになっていて、あまりすっきりとはしない。ただ過去と現在を交互に描き、自分の過去を探しに行く構成は非常にスリリングで、魅せられる映画だった。[DVD(字幕)] 7点(2012-07-19 23:07:36) 6. 死刑弁護人 《ネタバレ》 安田好弘という弁護士の信念を見せつけられるドキュメンタリー。なぜ彼が死刑を求刑されるような被告人の弁護人を多くつとめるのか、それがこの映画のテーマだろう。和歌山カレー事件においては無罪の心証、新宿西口バス放火事件においては弱者への眼差し、名古屋女子大生誘拐事件においては被告人との接見、など個別の事件におけるエピソードが語られるが、この根底にあるものは安田の「更生できない人間なんて存在しない。それはヒトラーであってもそうだろう」とまで語る信念である。しかしこれは単なるオプティミズムではない。そう呼ぶことを許さないほどの実績と資料の山、被告人との交流が安田の深い覚悟を端的に示している。そして緻密な事実の検証は安田が単なるアジテーターではなくプロの弁護士であることの証である。「自分の家族が殺されても死刑回避を主張する。そこはブレないだろう」とまで断言するほどの信念を、大きな説得力を持って聞くことのできるドキュメンタリー映画を私はほかに知らない。[映画館(邦画)] 8点(2012-07-10 22:22:09) 7. シャーロック・ホームズ/シャドウ ゲーム なるほど。ホームズじゃなくてもいいけど、知名度としてはホームズの名前を使いたいという映画。だからホームズにこだわる人は観ない方がいいだろうけど、ロバートダウニージュニアの、ジョニーデップ演じるジャックスパロウとジャッキーチェンの中間あたりのキャラクター、アクションが面白い。この具合をちょうどいいと感じるか、中途半端だと感じるかは相当大きいと思う。くすりと笑えるところもあり、アクションもそれなりに面白く、エンターテイメントとしてけっこういい出来だとは思うのだが、やはりあと一歩驚きがほしい。香港アクションらへんの影響があるように思うが、それに留まらない何かを。[映画館(字幕)] 6点(2012-04-01 21:29:55) 8. J・エドガー とってつけたような特殊メイクは残念。当時のアメリカの状況を知らないとあまり楽しめないかもしれない。「市民ケーン」へのオマージュが所々に感じられたが、一人の一生を時間軸をずらしながら追いかけていくという手法は、考えてみると市民ケーンそのものだ。しかしフーバーの描き方は誰がどう見ても表面的なものに写る。イーストウッドが描きたかったものはフーバーというよりも、当時のアメリカなのではないか?リバタリアンのイーストウッドらしく、フーバーの強烈な自由主義(とそれに伴う弾圧)とそれが修正を迫られていく過程はアメリカの盛衰を思わせるものがある。しかしそれにしても見所が少ない。時間軸操作も、あれほど複雑なものはイーストウッドは不得手なのではないか?[映画館(字幕)] 6点(2012-02-03 10:46:52) 9. シャッター アイランド 《ネタバレ》 精神病院モノというジャンルがあるのかどうかはさておき、こういった題材は大好きなので期待して観ました。多少映画やミステリ小説を読む人なら(あるいは疑り深い人)オチは気付かない人の方が少ないだろうし、自分は「前に来たことがある」みたいな最初の台詞でもう勘づいてしまった。だからそこは主眼ではないのだろう。やはりラスト‥‥なんだけど、言いたいことは何となく分かるんだけど、すごくいいアイディアなんだけど、あの一言にそれほどの重みが感じられないのが致命的でした。あの一言は、物語の筋的に逆転した結末がもう一度逆転する(あるいはする可能性がある)ほどの破壊力があるはずなんだけど、それが足りなかったです。[DVD(字幕)] 5点(2010-10-23 12:07:38)
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