みんなのシネマレビュー |
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1. シャイニング(1980) 《ネタバレ》 冒頭の俯瞰のシーンで描いた外界との絶望的な隔たりが、逃れようの無い切迫感となって全てのシーンに恐怖の陰影を落としていて、そのうえ始めからどこと無く異様で心底頼れない親父が加速度的に狂気に染まってゆき、一緒にいるのがか弱き妻と少年だけとなれば、設備の整った豪華美麗な高原ホテルも完璧なホラーの舞台と化す。 頼るべき人が狂気に染まってゆく恐怖。 背筋も凍る「コワキレイ」な映像は言うまでも無く素晴らしかったです。 恐怖を演出する音楽が少し耳障りだったかも。[DVD(字幕)] 8点(2006-04-30 02:37:53) 2. シークレット ウインドウ 登場人物ほとんど全てを(郵便局の女の子も)容疑者としてリストアップしましたが、そう来るとは思わなかったです・・。 ブラピの映画もラッセル・クロウの映画も観てるのに、またもや監督の思惑にキレイにはまってしまいました。 これからは、「主人公以外の誰とも絡まない変な人」が出てきたら注意します。 ネタバレ寸前のところではぐらかす演出は上手かったと思います。 伏線が途中で途切れてたり、ラストが弱かったりで完成度としてはそれほど高いとは思わないけど、映像が綺麗だったからまあいいかなってところです。[DVD(字幕)] 6点(2005-08-06 22:11:03) 3. 深呼吸の必要 探せば何処かに在りそうな理想郷の話。 むやみにいがみ合ったり、傷をなめあったり、乳繰り合ったりでドラマをこねくり回して俗っぽくしなかったのがいいところだと思います。 おじいとおばあの醸し出す、ふところの深い存在感がこの作品の紛れもない原動力で、この人のためなら一肌脱いでやろうと思って、観ている側もキビ刈隊に入隊させられてしまいます。 黙々とキビを刈る行為は自分と向き合ういい機会、淡々と流れる時間は心を徐々に矯正し、おのずと湧き上がる思いやりが使命感を生み、やがて連帯感へと昇華するという理想的な流れ。 人数分のアイスを買って帰る喜び。 露にされた心の傷にさりげない花火の宴。 つかのまの理想郷だからこそ皆あんなに素直に、そして一生懸命になれたのかも知れません。 それぞれが現実の世界に戻って、重かったリュックにきっと小さな花を咲かすでしょう。 深呼吸の仕方を覚えたキビ刈隊の仲間は明日から、少しは楽に生きていけるんじゃないでしょうか。 心地よい余韻が南風のように暖かく胸に残りました。 言葉少なな余白の中に込められたメッセージがこの映画の魂。 製作者の志の高さを感じます。 忘れられない映画になりました。[DVD(字幕)] 9点(2005-07-09 01:53:01)(良:1票) 4. ショーン・オブ・ザ・デッド 英国人の妙にさめた笑いのセンスと、あきれる程ゆっくり歩くゾンビが良くあっていた。 オープニングの「英国人は皆、生ける屍」という自虐的な価値観の提示には、「すわ、傑作か。」と色めきたったが、そこまでシニカルでロジカルな奥行きは無かった。 おバカなコメディーホラーとしては、人物も立ってたし引き笑い系のシュールなネタが結構詰まっていたので充分楽しめた。 それにしてもこのところゾンビ映画が多くないか?ブームなのか。[DVD(字幕)] 6点(2005-06-11 21:48:43) 5. 仁義なき戦い 広島死闘篇 ホントに当時は活きの良い個性的な役者が揃ってましたね。そこを観てるだけでも唸れます。とくに成田三樹夫シブ過ぎます。あの前髪が似合う人はそうはいません。千葉真一のやぶれかぶれな狂犬ぶりも意外性があって良かった。ただ、役者の活きの良さを前面に押し出した作りなので全体的な大味感は否めませんが・・。「バキューン」という拳銃の音も時代を感じました。やはり「パンッ、パンッ」という乾いた音の方が怖さがありますね。脇に回った文太兄ィがラストで出てきて作品がキュッと締まりました、流石です。[DVD(字幕)] 6点(2005-05-31 14:35:26) 6. 下妻物語 とても面白かったです。 邦画久々の快作ではないでしょうか。 冒頭からの人を食った展開も嫌味にならず、ラストまで見事に見せきった監督の技量とセンスに脱帽です。 女優としての意外な一面を見せた土屋と深田の掛け合いも最高。 とくに土屋のリアクションには大笑いました。 脇の阿部サダヲと樹木希林には、出来上がりすぎの違和感を若干感じたものの、シンプルな物語を主演の二人がぐいぐい引っ張り、ストーリー上の仕掛けや映像的な遊び心もきちんと作品に帰着した、魅力的で清々しい作品になっていたと思います。 内容ジャンルは違うけど「ギャラクシー・クエスト」を観終わった後の手応えに近いものがありました。 役者のポテンシャルを如何なく発揮させる監督の出現に、次回作を期待します。[DVD(字幕)] 9点(2005-05-24 12:47:59) 7. 仁義なき戦い 役者の存在感凄し、セリフが腹に響く。この際もはや細かいことを言うのは野暮だろう。画面から噴き出してくる煮えたぎるような役者達のエネルギーを身体いっぱいに浴びて、観終わった後に肩いからして菅原文太になればいいんじゃ。 ラストショット最高、シビレタ。7点(2004-03-20 01:57:35) 8. シベリア超特急3 パート1は身をよじりながらも寛大な気持ちで見られたが、もうムリ。人間そんなに暇じゃない。下手を面白がるにも限度がある。いい加減誰かこの暴走特急を止めてあげた方がいいと思う。このままだとパート10までいって「銀河鉄道舞台にする」とか言い出すぞ。あの勢いで松本零士口説いたりして、宇宙船艦ヤマトまで引っ張り出してきて「戦争はいけない」とか言いながら破動砲ぶっ放して・・・アレ?結構面白いじゃん。やっぱどんどん暴走しちゃっていいや。ハハハ・・ と、いうのが観る前の勝手な想像。 しかし実際観てみて愕然、良くなってる、一作目より、はるかに。 戦争に対する水野氏の思いがしっかりとドラマの中に編みこまれていて、なおかつサスペンスも微妙に上質、日本映画でここまで引き込まれたのは久しぶりでした。 図らずもラストの告白では胸が熱くなってしまいました。 若手の新人さんも荒削りではあるものの、しっかりと感情が画面に乗っているいい芝居をしていたし、ボンちゃんも良かった。 ツッコミ所はまだまだあるが、このまま行ったらマジで「水野晴郎で笑おう」と言う人が居なくなるかも。 ドラマで引っ張る力が付いたら監督としては強いと思う。 この作品はとてもいい教訓になりました。「いやー映画ってホントあなどれませんね。」 失礼しました。[映画館(字幕)] 5点(2004-02-11 17:52:42)(笑:1票) (良:2票) 9. シベリア超特急 遅れ馳せながら『シベ超』初体験です。 正直ちまたで語り尽くされた噂のダメ映画とあって、いったいどうなんでしょーと恐る恐る伝説の地に足を踏み入れたが、そこはありとあらゆる笑レビューネタの源泉で、驚くべきことに今もなおノーガードのつっこみネタがこんこんと湧き出していた。 そして、そのお湯は水野氏の予想とは違う方向にどんどんと流れ、「落ちたら終り」の崖っぷちのくぼみに危なっかしく溜まっていき、そこに集まってきた物好きな温泉客を指差し「まるでコンサート会場のようだ」と大喜びで、「こうなると思っていた」とまで言う始末。 あげくの果てにそのコンセプトで4つも温泉を作ってしまうなんて、相当ミラクルな人だ。 さらに次の温泉も新規工事中だとか。 感動なんて言葉は使いたくないが、腹がよじれる気分だ。 ネタ的にも、窓から落ちそうな女性を助けるシーンの完璧に意外なタイミング、動いただけで笑いを誘うコメディーセンス、唐突で難解な伏線の描写、意味不明なアングル、など全く気が抜けない。 「口外無用のどんでん返し」と本人が言っている部分では、もはや変な快感すら感じてしまった。 こんな映画を見事に撮り切ってしまった水野晴郎氏の、どんな罵声にも流されない、限りなく危うい映画制作の姿勢とバイタリティーに敬意を示し、それを蚊帳の外から自由に「レビュー」出来る幸せをも噛みしめたい。 私事ながらうちには2歳になったばかりの一人息子がいるのだが、明日起きたら見せずに返して来よう。 この珍味を味わうには、まだ30年早い。[DVD(字幕)] 1点(2004-02-10 03:11:30)(笑:1票) (良:1票) 10. 小説家を見つけたら 《ネタバレ》 ガス・ヴァン・サント監督、こういう作品を再び撮るってことは前作でよっぽどやり残したことがあってのことと思うけど、それでトーンダウンしちゃってどーするの。 『グッド・ウィル・ハンティング』のほうがよほど心に沁みたぞ。 ショーン・コネリーの演説も『セント・オブ・ウーマン』と全く同じじゃないか。 敢えて同じにするって事は比べてくれって事でしょ。 なのに一番大事な文章端折って見せ場で逃げてどーするの。 アル・パチーノが苦笑いしてるぞ、きっと。 バスケのライバルも彼女も、地元の仲間もほったらかし。 いったい何がやりたかったのかさっぱり分からない。 映像は綺麗で、いい雰囲気が出てたのに内容がちょっと浅かったな。〈追記〉ストーリー上で素晴らしいとされている文章をセリフに載せて現すと言うのは、受け取る側の問題もあるのでかなりリスキーなことで、聞く側のリアクションでそれを表現したのは、良く考えれば賢明な事なのかなと思い直しました。5点(2004-02-08 01:40:56) 11. 12人の優しい日本人 被告の姿を描写しないことによって、被告への感情移入をしにくくし、荒唐無稽意味深長な話し合いの「コメディー性」を際立たせて「本家」との差別化を図ったのは見事だが、いかんせん役者達の無計画なオーバーアクトは「笑いのツボ」であるはずの陪審員達の「シュールなリアリティー」を駆逐し、その芝居の甘さを「アクの強さ」だけで押されても、正直どこで笑っていいのか分からなかった。 リアリティーを失ってしまった陪審員達の話し合いは、「劇団員の楽屋のリハーサル」程度にしか見えず、評決の行方などもドタバタの中で、もうどうでも良くなった。 「本家」が偉大なる傑作なだけに、パロディーにもそれなりの完成度が求められる。 そしてその間には、まだ太平洋ほどの溝があいていたように思う。 随所に「本家」をリスペクトしたシーンも含まれてはいるが、焼け石に水だ。 日本人の滑稽さをペーソスのある笑いで描こうとしたのは分かるが、かなり消化不良。 今さら言っても遅いが、このテーマならむしろ伊丹十三監督あたりの得意分野だったのではないか。 もっと頑張れよ日本映画。 キビシ過ぎるか。[DVD(邦画)] 4点(2003-12-27 17:27:56)(良:2票) 12. 十二人の怒れる男(1957) 《ネタバレ》 この中でヘンリー・フォンダは陪審員として当たり前のことを当たり前のようにやっただけだろう。 人ひとりの生死のかかった評決で「野球があるから早く済ましちまいましょう。」は無いと思う。 その点では、ルメットがあらかじめ深く掘っておいた穴をヘンリーがせっせとうめて元に戻すという、計算高くも簡潔なプロットになっている。 しかし内容は濃く、密室という限られた空間で使えるものは全て使って繰り広げられる熱き人間ドラマには相当見応えがあった。 観終わって12人全ての登場人物の顔と性格が思いうかぶ作品はそう無いだろう。それぞれのリアルな人生を背負った男たちを役者が見事に演じ、作品の質をさらに上げている。 最後の大木のひとつが音を立てて崩れ去ったとき、大きな達成感とともに、冒頭に一度だけ映った被告の少年の顔がよぎり、万感の思いがこみ上げて来た。 緊張と弛緩のリズムも心地よく、細部まで実に良く作り込まれた「究極、至極」の一品だと、深く唸らざるを得ない。 誰も居なくなった陪審員室の散らかったテーブルが余韻を残し、雨上がりの道をさらりと去っていく男たちの姿が清々しく見えた。 たまにこういった「名作」「傑作」に出会えるのが、映画ファンとしての醍醐味を味わえる瞬間でもある。[DVD(字幕)] 10点(2003-12-20 16:03:26)(良:2票) 13. JFK オリバー・ストーンの忌わしき60年代に憑り付かれたような演出は今回も冴えわたっている。 まるで機関銃のようなセリフによる情報の洪水と、時折挿入される、見てきたような現場のカットバックにさらされるうち、ストーンの構築した疑惑の銃弾をめぐるジグソーパズルを思わず並べさせられてしまう。 フィクションとドキュメントのせめぎ合いによって抽出された粘度の高い糊がピースの間を埋める。 3時間以上かけて「霧の向こうに浮かび上がる藪の絵」が完成した。 ストーンの気迫と執念がこの作品に異様な輝きを与えている。 この「藪」の向こうにはトラが居るのかウサギが居るのか、何やらブーフーとケモノの息づかいが聞こえてくる。 映画の枠を超えた、言いようの無い余韻がいつまでもビリビリと残る。9点(2003-12-14 12:42:45) 14. ショーシャンクの空に 《ネタバレ》 そこが刑務所の中とは忘れさせるような、清々しく振る舞うアンディの姿と壁に貼られた一枚のポスター。 その裏側で、ただひたすら静かに穴を掘り続けていたアンディの「覚悟」と「決意」の底知れぬ深さ。 やがて実を結んだ「覚悟」と「決意」は、ポスターが破られたその刹那、一人の人間の「魂の叫び」となって穴から噴き出し、暖かな、またあるものには痛烈な奇跡の光の中に、物語の「すべて」があざやかに融けてゆく・・・。 そして、いつまでも見ていたいまばゆい海岸のシーン。 まぎれもない傑作。10点(2003-11-23 16:07:48) 15. ジュマンジ 少年の成長もののファンタジーとして見事な出来栄えだと思う。 バックトゥザフューチャーほどの大風呂敷ではないが、適当なスケール感もいい。 脚本もよくできていて、ラストの着地のさせ方もドキドキする。 何度観ても楽しめる秀作。8点(2003-11-10 19:14:12)
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