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1. 市民ケーン
超久しぶりに再見。しかし内容はすっかり忘れていました。さすが、凝ったシナリオに凝った映像。今から見るといささか地味で退屈ではありますが、「バラのつぼみ」の一言で最後まで引っ張るあたりがすばらしい。経営する新聞社のイエロージャーナリズムな感じも、なかなか今日的で見応えがありました。
で、「バラのつぼみ」ですが、私はラスト直前に記者が言った「人生は一言では語れない」とか「無数のピースのうちの1つに過ぎない」あたりがオチでも十分かなと思いました。その後に本当のオチが待っているわけですが、そこに一発でカタルシスを感じた観客はどれだけいたでしょうか。
恥ずかしながら私はすっかり「?」で、最初からざっと見直してそういうことかとようやく納得しました。録画だからできた芸当です。あるいは2度、3度と見直すことで、また新たな発見があるかもしれません。
しかし映画とは本来映画館で見るもので、基本的に一期一会のはず。2度、3度と見直す時間的・金銭的余裕のある人は、そう多くないでしょう。まして80年前であれば、なおさらです。そういう観客にどこまで配慮して作ったのかなと。別に批判ではないですが、ちょっと疑問に思ったので。
言い換えるなら、昨今では映画の見方も多様化しているわけで、一期一会の人もいれば何度でも見返す人もいる。映画製作者はどちらに焦点を当てて作ればいいのか、あるいはそろそろ「映画」のカテゴリーをいくつかに分けたほうがいいのか。けっこう悩ましい問題なんじゃないかなと思います。私は傍観者として楽しませてもらうだけですが。[CS・衛星(字幕)] 9点(2021-07-16 02:43:01)(良:1票) 《改行有》
2. 深夜の告白(1944)
重要なシーンで登場する列車のスピードのように、物語のテンポとしてはものすごくスローリー。しかも最初から犯人が犯行を「告白」するという、謎解きの醍醐味を否定するスタイル。しかし、最後まで飽きません。ハラハラドキドキのツボを再三に渡って刺激される上、女性の怖さにゾッとします。このあたりは人類にとって普遍的な感情のようで。
しかし日本が戦意高揚の国策映画作りに邁進しているころ、かの国ではこんなクオリティの高いエンタテイメント映画を作っていたわけで、今さらながらその国力の差に愕然とします。[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-07-05 02:25:03)《改行有》
3. 白い恐怖(1945)
ミルクとか、ピストルとか、いきなりダリな世界観とか、別の意味でスキーのシーンとか、いろいろ楽しませてもらいましたが、秀逸は後半のヒロインと師匠とのやりとりかなと。感情か理性か、愛か科学かという二律背反は、今日でもさまざま場面で問題になります。本来なら理性と科学が勝利すべきところですが、感情と愛にゴリ押しされるのが世のならい。たいていはそれで墓穴を掘って理性と科学に立ち戻るのですが、この作品ではゴリ押しが正解だったようです。まあイングリッド・バーグマンにあれほど間近で迫られたら、拒否できる男はまずいないでしょう。「女は愛を知ると能力が落ちる」なんていう、今日なら一発でクビが飛ぶような発言もありましたが、そこはご愛嬌ということで。
ただし前半、テーブルクロスにフォークで線を描く場面は、グレゴリー・ペックならずとも「えっ?」となるはず。お前の衛生観念はどうなっているんだと。当時はコロナがなくてよかったね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2021-04-15 03:55:20)《改行有》
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