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【製作年 : 2000年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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1.  真珠の耳飾りの少女 芸術家にとって実生活の鬱陶しさってのがあって、そういうのに関わらずに芸術世界に没入したいという夢を持つが、その芸術の対象に選んだのがまさに「実生活」の少女だった。調理をしたり洗濯したり、芸術家の家の裏で家を支える実生活の部分。苦悩する芸術家って、とかくつまらないのが多いんだけど、演劇的な誇張に見えてしまうからか。名画を実写で撮っていくっていうのには、独特の面白さがある。描きかけのところとか。色の原材料いろいろ。スカーレット・ヨハンソンってポカーンと口を開け気味にしてて、必ずしも色っぽさに収斂されきらない・まだ色っぽいという以前のあどけなさの魅力も合わせ持っている不思議な味わい(むかしのベルイマン映画の常連だったリヴ・ウルマンの唇とちょっと似ている厚ぼったさ。北欧ならではの質感なのか)。ラストで耳飾りを渡されたときの表情が、単純に一つの感情表現に収斂し切れないのと同じで、よい。時代色を楽しむ映画。[DVD(字幕)] 6点(2014-03-11 09:52:26)

2.  春夏秋冬そして春 西洋のイメージした東洋を見ている気がずっとした。老師の感じなんかスターウォーズみたいだし、池の中の浮き堂も美しいんだけど、西洋の視線を経由してるように感じちゃう。季節ごとに若者の設定が替わるの。罪を越えて次の世代の老師になる。それらを仏が高みから見てござる、って感じ。猫の尻尾で般若心経を書いたり、どうも禅的なハッタリにすべて感じられ、まあ禅と言うものが、大部分そういうハッタリの世界なのかもしれないが、他者の思惑を意識しすぎた精神性って、やでしょ。こちらが必要以上に拒否反応起こしてる気もするけど、せっかく画は美しいんだから、それを素直に愛で られるストーリーだったら良かったのに。むかし韓国で作られた『達磨はなぜ東へ行ったのか』なんてのは、素直だったよ。[DVD(字幕)] 6点(2014-02-22 09:48:46)

3.  シン・シティ 本作見てて木下恵介『笛吹川』でモノクロ画面の部分だけ色がつくのをちょっと思い出した。これでは血のみ赤だったり白だったり黄色だったりする。とても目覚ましいが、それだけで一本の映画の収穫とするのは、ちとつらい。映画は幻覚の一種なんだから、暴力衝動にゆだねきってもいいはずなのに、登場人物の幻覚という枠がないと、どうも気分が悪い、という発見も収穫であった。見た日の記録に「ほとんど彼と識別できなかったが、ミッキー・ロークは満足したであろうか」などと記していたが、こののち『レスラー』を見て、あんがい素顔がはっきり見受けられていたかも、と思い直した。[DVD(字幕)] 6点(2013-12-12 09:18:49)

4.  シリアナ おそらく映画より小説のほうが理解しやすそうな話だけど、とにかく2時間でおぼろながら伝達された。不正で維持されている米国の暮らし。完全に第三者の視点からのドキュメント的ドラマなのではなく、どこか自己批判的な視線を入れておくと企画が通りやすいのだろうか。こういう硬派の映画が製作されていく過程のほうに興味がいってしまった。自己批判を絶やさない国情は本当に立派だと思うけれど、なんかそれが一つの型になってはいないか、という気もちょっとした。米国企業の介入でクビになった若者が、自爆テロリストとしてリクルートされていく脇筋もある。これなんか実感あった。[DVD(字幕)] 6点(2013-10-29 09:11:50)(良:1票)

5.  親切なクムジャさん 個人による復讐劇は美しいのに、集団による復讐劇はなぜ気色悪いのか。なにやら儀式性が出てくるからか。なぜ儀式は気色悪いのか、ってな脇の問題に途中で頭が行ってしまった。仁侠映画の美しさはある程度儀式性から来てはいなかったか、とか、集団復讐劇の元締めである忠臣蔵の事件そのものはただただおぞましいと思うのに、そこから派生した芝居や映画はそうでもないのは何で? とさらに脇道にとめどなく進んでしまい、そのことを脳内にメモして気を取り直したが、気分は戻りきらなかったかもしれない。申し訳ない。この監督横移動で捉えるシーンが好きなよう。なにやら遠大な計画が進行している気配が漂っている前半がいい。ラストのほうはよく分からなかったけど、青年見ると死んだ犠牲者思い出してしまい恋になれないってことなのか? 音楽はバロック調。[DVD(字幕)] 6点(2013-09-25 10:11:21)

6.  シルビアのいる街で 《ネタバレ》 現在サイレント映画という手段に頼らなくても、サイレント映画の精神は生かせる、という見本。旅人にとって旅先の世界はほとんどサイレント映画だ。聞こえるものより、見えるものの情報のほうが俄然重要になっている。カフェの店先から女性たちの顔を眺め続けるシーンが楽しい。しだいに誰か特定の顔を求めていることが分かってくる。手前の人物に隠されていた顔がずれて見えてきたり、後ろ向いていた頭がゆっくり横顔を見せたり、やがて彼は席を移ったりし、誰か特定の人物を探していることがはっきりしてきたとこで、ガラス窓の反射の多くの顔が重複している中から、一つの顔が固定されていく。ここまででもけっこうサスペンスなのだが、このあと追跡のサスペンスが続く。腰ぐらいの高さのカメラ視線で、ストーカーのように追尾が始まる。すっくと立った男の高さよりは低く、身をかがめて密かにつけているような感じ(と思ったのはこちらの品性の問題か)。映画における「角を曲がる追跡」は、どうしてこうも興奮させるのだろう。そして路面電車での語りかけ。本作で数少ない字幕を読むシーンだが、ヒロインの肌を輝かせたり翳らせたりしている陽光のただ事でなさのほうにドキドキさせられた。人違いの別人になったり、嘘をついているシルビア本人になったりしているよう。ここまでが素晴らしいので、失意の彼の酒場シーンはちょっと物足りない。あるいはあの奇跡のような陽光がないと、世界は味気なくなってしまうという表現なのかな。この映画いったいどうやって終わらせるんだろう、とここらで心配になってきたら、なるほど、ガラスの反射の中から浮き上がってきた「シルビア」はまた、ガラスの反射の中に消えていくという趣向で来たか。最後まで映像に語らせた映画だ。[DVD(字幕)] 7点(2012-04-18 10:02:32)

7.  白いリボン 《ネタバレ》 たぶん、村を覆う不穏の気配を描いた映画なのだろう。それは圧倒的で、白黒の美しい田園風景が周りを囲んでいるだけ、さらに不穏である。誰が犯人か、というミステリーの興味にしちゃ余計なものが多すぎるし、厳格さは子どもをダメにする、というテーマにしちゃ集中感がない。子どもに収斂されていく不穏な気配(やがて世界大戦に移ろっていく)を味わう映画なんだ、と納得しようと思ったが、なんかそれにしても集中感に欠けるなあ。語り手のロマンスは村の厳格な風土との対比で入れてるのだろうか。そのほか意味ありげなエピソードがあったり中途半端なエピソードがあったり、すべて「気配」を醸成してはくれても「テーマ」に集中してはくれない。トーンとしてはベルイマン的で、だいたいあの厳格な牧師の顔がグンナール・ビョルンストランドを思い出させる。ドクターが助産婦に毒づくあたりの容赦のなさもベルイマンタッチ、でもあちらにはもっと集中感があった。2時間半も使って「気配」を描こうとはしなかった。キーになる子どもたちが、へんにニタニタ笑ったりしないのはいいんだけど。ここらへんの時代を描くとなるとパリやウィーン、ベルリンなど都会が多く、田舎の20世紀初頭ってのは珍しかった気がする。最初のうちは18世紀末かと思って観ていたら、シューベルトがどうのこうのと言うんで19世紀かと思い直したところ、セルビアで暗殺事件が起こったという報が入って驚いた。もっぱら都市で語られる世界史と地方史ではズレがあるんだな。あそこらへんのヨーロッパの北側、第一次大戦前後の田舎の風物としては、北隣デンマークの『奇跡』(30年ごろが背景)が思い出される。神の罰が重くのしかかっている風土ではある。「神さまに僕を殺す機会を与えたんだ」。[DVD(字幕)] 6点(2011-12-29 10:11:22)

8.  シングルマン 60年代というマイノリティがまだ息を潜めて暮らさねばならなかった時代。その男の目に映るもう別れようとしている世界。他者たちは目や口元やに分解してしまっている。しかしその世界も「少数派への恐怖」が支配している。異端への恐怖と言ってもいい。共産主義からプレスリーの腰つき、おそらく同性愛者に至るまで。「マイノリティの恐怖」と「マイノリティへの恐怖」とが、見えない水面下でがっぷり組み合って停止していたような、当時のアメリカの息苦しさがカメラに乗りうつっている。隣人の笑顔さえ息苦しい。死を決意した男の一日の物語。ルイ・マルにも同種の作品があったが、あちらが旧友たちを訪れるのに対して、こちらはそれほどの交際範囲もなく生徒と(大学教授なの)昔の女ぐらい。死を決意しながら、それでもテニスをしている若者の肉体や町で出会うスペイン人の若者には目が惹かれていく。生徒だった若者に惹かれては、自分で「情けない」と呟く。もううじうじした陰気きわまりない映画で、ときに美少年の尻を見るのが好きな人用のフィルムかと思うときもあったが、あの息苦しさには、ゲイという特殊を越えた普遍性が感じられた。死んだ「連れ合い」が飼っていた犬と同種の犬を見かけると、飼い主に変に思われてもつい匂いを嗅いでしまう。息苦しさをしばし忘れさせてくれるのは、その犬の匂いだけ。[DVD(字幕)] 6点(2011-09-05 09:57:20)(良:1票)

9.  シャーロック・ホームズ(2009) 推理小説が映画に向かないのは、やはり根本の興味が理屈の面白さに由来しているからだろう。謎解き的部分は、検証的にサササッと退屈させないように見せてはいるが、でも根本が非映画的なものだから「方向違いなことやってる感」は残る。そこで活劇的な冒険を付け加えて映画本来の楽しみに戻そうとすると、なにもシャーロック・ホームズである必要がなくなってしまう。で映画は中途半端なものになってしまった。いっそ「ホームズ三世」とか適度に揺れを最初から仕込んどいたほうが、観る方は入りやすかったかも知れない。でもそうしたら時代が現代になってしまい、本作唯一の見どころ、テームズ川風景が無効になってしまうから、「ホームズの従兄弟」あたりがいいか。昼の眺望も、夜の航行から見える岸向こうのロンドンもよかった。あの手の技術で明治の隅田川も、日本映画で再現してほしいな。[DVD(字幕)] 5点(2011-08-22 09:37:09)

10.  シャネル&ストラヴィンスキー アール・デコって都会的なんだけど、ここでは田舎の中にデコの家がある。黒い縁が美しい部屋。外に広がる「田舎」に、近代女性であるシャネルが必死で抵抗しているような室内装飾だ。外の田舎は、イーゴルの妻の方がふさわしい。とんがっているシャネルと、病弱ながら周囲に広がって包み込んでいるような妻、との緊張。シャネルはイーゴルに刺激されて、洋服屋から香りの芸術家になろうと試みる。妻は夫の譜の清書を淡々とこなし、この生活から感じる腐敗の匂いに耐えていく。これ面白くなれそうなんだけど、どっかで見たような三角関係話どまりになってしまった。ピアノの響きによる嫉妬のうずき、クリムトの絵画のようなベッドシーン、などはちょっと面白い。でも一番思ったのは、ついにストラヴィンスキーも映画になったか、という感慨。楽聖映画ってジャンルがあり、シューベルトなどの名作がある(シューベルトは全裸にならなかった)。私の知ってる範囲では、ケン・ラッセルの『マーラー』が一番最近の作曲家だったが、とうとう第一次世界大戦を越えて、20年代のストラヴィンスキーが、シャネルとの二枚看板ながら映画の主役になった。これは当初最前衛だったストラヴィンスキーの音楽が、一般的なポピュラリティを獲得したって事なんだろう。次に映画化されるのは誰か。ウェーベルンなんて、ナチの支配に耐えながら米兵に誤射されて命を落とすドラマチックな生涯なんだけど、音楽の極北のようなデリケートな十二音の世界が、いつかシューベルト並みのポピュラリティを獲得する日が来るかどうか。「スターリン&ショスタコーヴィチ」なんて方がありそうだな。[DVD(字幕)] 6点(2010-12-22 10:09:35)(良:2票)

11.  沈まぬ太陽 《ネタバレ》 ずいぶん久しぶりに邦画で労働組合を目にした。かつての社会派映画では、よく赤旗がひるがえっていたものだ。もっともこれでは第一組合と第二組合の話になっていって、分解に至る。ほぼ半世紀前の映画、勅使河原宏の『おとし穴』(脚本安部公房)も、炭鉱の第一第二組合の抗争がテーマだった。けっこうもっと中心に持ってこられるモチーフだが、でも現在は「派遣労働者」という使い捨てできる魔法のカードを企業は手にし、もう組合を気にせずに運営できて、そもそも組合の組織率も下がっているのだろう。そのせいかここで回顧的に描かれる労働運動も、どこか「作られた切迫」に見え、たとえば現在の「派遣」の苛酷な状況につながっていくものは感じ取れなかった。それと相変わらずのアフリカの描かれ方、まず日本から見た「僻地」として登場し、最後は「癒し」の大自然となる。最初に飛ばされたのはパキスタンで、これまた往年の邦画『乱れ雲』で飛ばされた地が、まだ「僻地」として登場する。過去を舞台にした作品だから仕方ないのかも知れないが、現在作られた映画なのだから、そこに潜む地域感覚への批評的な態度がちょっと欲しい。つまり、「過去」という題材に閉じ籠もりすぎているのではないか。善と悪がきれいに分かれた世界・人物造形の単純さ、は山崎小説のポイントで、その単純な人たちによって複雑な社会の動きをはっきりさせているところに面白さがあり、一概に否定すべきものではない。ただやはり同時代性を感じさせる視点が欲しい。これだと同時代性は「今もあるあの会社はひどいな」という感想レベルにとどまってしまう。山崎豊子は大企業や政権党をしばしば槍玉に挙げるが、彼女が好んで描くのはそういう閉じた人間関係の世界の時代を越えたグロテスクさなのであって、「仮装集団」という長編では共産党を斬っている。左翼右翼で割り切れる作家ではない。山崎長編の楽しみの一つは後半の粘り気で、この映画でも遺族会の名簿を入手しようと画策するあたりから、ちょっとそれらしくなった。ただあまり粘り切らない。それと忘れたころに登場人物が再登場するとこ。香川照之がよかった。やたら過剰に気合いの入った人たちの中で、そのウツロさが光る。[DVD(邦画)] 6点(2010-09-16 09:58:21)

12.  人生に乾杯! 《ネタバレ》 無人の銀行に押し入るあたりのユーモアは楽しいし、説明的な部分を省略したテンポも快感。老人版『ボニーとクライド』として楽しい映画だとは思うが、こうやって彼らを笑いながら見てていいのかな、という疑問も付きまとう。「しょせん年寄り」と弱者として見てるから、そこに笑いが生まれるのであって、彼らとしては本気でビビッてほしかろう、とも思う。一応年金の額という政治レベルの動機は用意されているが、それ以上に年寄りの疎外感みたいなものが根にあるのではないか。ドライブスルーのシステムなど、年寄りを戸惑わせる社会そのものに対する反乱を見たほうが話が広がる。勝手に疎外し勝手に英雄視していく世間への不満の爆発。それと、旧体制下で当局の側にいた主人公はホサれた人生を送ってきた、という履歴があるのだろうか。ここらへんハンガリー現代史を知らないので曖昧だが、壁を築いているキューバ(かつての友好国)人との場など、そういった苦みのようなものが感じられた。ハンガリー動乱時に生まれたカップルと、同僚がスキャンダルを仕掛けてくるようなノンキな時代のカップルとの対比といった理屈はあろうが、若い警察カップルはあんまりいらなかったと思う。『バニシング・ポイント』もちょっと思い出させ、この監督、アメリカン・ニューシネマに思い入れありと見た。[DVD(字幕)] 6点(2010-09-13 09:57:56)

13.  四川のうた スクリーンで観たら、きっと陰影がすごくきれいなんだろうなあ、という屋内場面が多々あり。とりわけ廃工場のあれこれ、窓ガラスが落ちたりするあたり。ラストの若き女性バイヤーインタビューのかげりゆく屋外、もしかするとカメラのほうで操作してるのかも知れないけど。インタビュー形式で俳優に再現させる、という試みが、こちらは字幕を目で読むせいか、あまり意図が伝わらなかったが、無視して本人と思って読み続けた。皆けっこうドラマチックなストーリーを語っている。でもそれを映像で再現したら、押しつけがましくなったのだろう。語りに徹することで、それが濾過され、過去であることが強まった(小川紳介の『古屋敷村』も、語りに耳を傾ける映画だった)。そこで大きな「右肩下がり」の世界が見えてくる。いま中国はやたら右肩上がりという印象だが、その上昇の下には圧迫され廃墟化していく人々の暮らしもあるわけだ。日本でも60年代にドキュメンタリー映画の隆盛期が訪れるが、上昇部分とそれに踏みつけられる部分がクッキリしてくる時代、今の中国がちょうどそれなのか。時代の歌が随所にはいる。山口百恵のドラマ主題歌も革命歌も、懐メロとして同列に扱われる。[DVD(字幕)] 6点(2010-08-16 09:53:42)

14.  しんぼる 《ネタバレ》 たぶん、これはどういう意味があるんだろう、と考えること自体無意味な映画なんだろうが、観ているあいだ何も考えないことも難しいので、まあいろいろ考えてしまう。この白い部屋とメキシコとどう絡んでくるんだろう、というのが一番の興味になるわけ。この監禁は天使のいたずらなのか、あちらにはカトリックで、ここらへんでつながるのか、とか。あの覆面をとると何かなんだ、とか。白い部屋は日本の象徴か、とか。ある種の閉塞感。自分が望んだものでなければモノは手に入る。醤油なしでなら寿司も食える。出口の暗い部屋に閉じ込められたとき、パジャマ男は白い部屋で監禁されたままの暮らしでも良かったんだ、という夢を見た。あそこらへん、今の日本の精神状況と言えなくもない。脱出への試行錯誤では、番地表示板で押さえてガムテープで止めて伸ばしていくと、ツーッと剥がれていくとこが好き。で、メキシコとの切り返しで切迫を高めていって、その頂点でああなる。このハジけた感じは、私はけっこう嬉しかった。そして無意味な奇跡が続く。パジャマ男は閉じた部屋から闇を抜けて世界に作用を及ぼせるようになったわけだが、その作用の無価値さ。なんかこの馬鹿馬鹿しさは、宗教的なるものへの批評として、いいとこをついているような気もした。この先を「教祖の妄想」と大笑いしていいものなんだか、へんにマジメぶっているので、真意はつかめません。[DVD(邦画)] 6点(2010-06-11 12:24:18)

15.  重力ピエロ 《ネタバレ》 地図に何かを発見し印をつけたり、落書きに暗号を読み取ったりするっての、それだけ取り出せばワクワクするんだけど、これを物語の中で納得させるだけの動機が弱いので、趣向のための趣向になってしまっている。「兄弟愛」にストレートにつながって感じられない。放火された各地点、同じレイプ被害者家族に火つけられ「浄化してるんです」って言われても、「はあ?」だろ、普通。そもそもマスコミが被害者宅を特定しかねない地図情報を印刷したら、そうとう問題になったはずだ。こういうところがミステリーものの難しいところで、趣向と物語と割り切って楽しんでもいいんだけど、でもやっぱそこをいかに融合させるかってのが、この手の映画の腕の見せどころだろう。それと悪役の心情と行動が理解できづらかった。モンスターに造形すれば観るほうの処罰感情は心地よくくすぐられるが、それでいいのだろうか、という疑問符も付いてしまう。抽象的な存在になってしまい、かえって「この世界にはこんな奴もいる」って現実感が薄れた。それよりも世間の視線の残酷さのほうに怖さがあったが、絵画発表会の場のように、いささか描き方が大振り。この作家は「いい人たち」を描くときに細やかさが生きるようで、このひっそり暮らす家族のシーンはどれも感じいい。親父の「二人で遊んできたのか」のセリフは、きれいに決まった。もっともこの内輪の「いい人」ぶりは、世間に対する壁の反映でもある閉じたものなので、晴れ晴れとはいかない。ゲバラの写真もあったな。[DVD(邦画)] 6点(2010-03-28 12:04:42)

16.  新宿インシデント 《ネタバレ》 終始憂い顔のジャッキー・チェン。コミックアクションスターからの転身をはかっていて、ここは今までの作品歴をすっかり忘れ、知らない俳優として見てやるのが礼儀だろう。日本でも喜劇役者がある時期から地味な辛抱役に変わることは多く、ましてアクションは加齢にくる。チェンジが必要だったのだな。それにしても回想の初恋シーンをそのままで演じられるのだからすごい(55歳。ブルース・ウィリスより年上!)。映画としては、最初のほうの不法入国者の目から見た東京が、けっこう新鮮だった。街は宝の山に見え、かえって平凡な住宅地の風景が刺々しく見えてくる。ゴミにたかる烏さえ不法入国者の目を通すと、「虚飾の繁栄」とでもいったタイトルが付いて見えてくる。ただ後半、やくざ組織の話になると、そういう面白さはおおむね消えてしまった。気の小さい仲間、阿傑の甘栗屋からの展開が、脇筋として支えている。90年代アタマの新宿が舞台ってことなら、ちょうど大沢在昌の小説「新宿鮫 毒猿」と重なるころ。あの夜の新宿御苑の争闘を香港映画で観てみたいと思うが、ケツの穴の小さい当局は撮影を許可しないかも知れない。大久保駅(それもセット?)が限度か。[DVD(字幕)] 6点(2010-03-11 11:59:40)(良:1票)

17.  シリアの花嫁 《ネタバレ》 遠く極東に暮らすものにとっては、イスラエル占領地域からは出てシリアには入っていけない花嫁の歩むラストを、寓意ととっていいのかリアリズムととっていいのか、そこらへんからして曖昧で、ただ、占領地の住人は「無国籍」ってことになるのか、ってことは分かった。ニュースではパレスチナとの摩擦はよく出るが、北でもこすれてるんだよな、この国は。映画そのものより、この作品がどういう環境で製作されたのか、イスラエル内でどういう反応を得たのか、ってほうに興味がいった。なんか最近この国の映画はちょっと元気がいいようなのだ。軍のガザ侵攻に90%の国民が賛同している、なんてニュースを聞くと溜め息が出ていたものだが、一方でこういう映画も作られている。「我々」を歌うのではなく、「我々」によって疎外されているものに目を向け出している。かつてラビン首相を暗殺したような極右によって、「売国映画」と騒がれたりスクリーンを切られたりはしなかったのか。こういうフィルムが存在していること自体が、希望である。あの「修正液」に、まず正すべきはイスラエルの占領政策だ、とまで読み込んでいいのか。あちらの花婿をコメディアンに設定したのは、テレビでしか会えないということ以上の意味はあるのか。といろいろ湧き起こる疑問に遠い地の観客は戸惑いっぱなしだが、そういう疑点を得たことが私にとっては収穫である。[DVD(字幕)] 6点(2010-01-30 11:56:51)

18.  女工哀歌(エレジー) 《ネタバレ》 駅の場面なんか、日本の集団就職列車(「ああ上野駅」)を思い出させ、いま中国はあの昭和のころにあたるのか、と思っていると、さらに苛酷な徹夜続きの睡魔との戦いがあって、こうなると大正時代の「女工哀史」だなあ、となり、つまり急速に近代化が進むってことは、こう現代も昭和も大正も一緒くたにドッと来ちゃってるってことなんだなあ。たしかにひどい。劣悪。労働者の中国共産党が勝利した国で行なわれている搾取。この映画がその告発をしているのは確かだが、でもけっこう映画見終わった印象としては、彼女たちの明るさが残る。女子校の寮のような賑わい。寝る前のひととき、ダンスありファッションショーごっこあり。その対比が映画の面白さになっていて、彼女たちのしぶとさを応援したくなる(14歳の女の子が、これ以上給料遅配だとストすると主張するんだ)。だからこの邦題は鑑賞の方向を決めすぎてしまっていて良くない。もちろん問題なのは中国の企業だけではなく、さらにその周りで買いたたいている我々を含む国々があるわけで、異様に安すぎるセールス品を見たときは、彼女たちのことを思い出さなければならないだろう。主人公ジャスミンが出荷前のジーンズに買い手へのメッセージを忍び込ませようとしたときに思ったんだけど、あの冷凍ギョウザ事件って、劣悪な環境で働かされている工場の労働者が、さらに過激な方法で買い手に送ったメッセージだった、とも思えるんじゃないか。[DVD(字幕)] 6点(2009-09-13 12:01:40)(良:1票)

19.  ジャーマン+雨 《ネタバレ》 考えてみれば、これ、かなり暗い話なんだ。変に過去の重圧を背負い込んでしまった女の子が押し潰されていく、って。もちろんいま“家系の存続”なんて自然主義文学のテーマみたいなものがマジで出てくるわけもなく、映画はユーモア系で押していくが、でもそれがパロディってのでもないようで、つまり作中のよっちゃんが人のトラウマを歌にしていったように、なにか「自然主義文学になってしまいかねない剣呑なもの」を「歌のようなもの」に変換していった映画なのだろう。違うかな。ドキュメントタッチのところが、ドッジボールの場など良く、そしておそらく本作最良の場、笛教室の子どもたちが勝手に遊んでいるシーンが素晴らしい。羽仁進の『教室の子供たち』のようなカメラを意識しない自由さで、マンガ本に色塗りをしている子、壁の落書き、風船遊び、国語の教科書を淡々と読み上げていく声、などが交響し盛り上げていく。ドキュメント調でありながら、未来の復興し得た林家の幻想のようでもあり、そしてこのシーンは白い光で閉じられる(この映画のほかのシーンは黒みで終わって次に続くようになっている)。田舎の風景の適度な広さが味わいで、家の玄関前とつながる隣りの畑の見通しの良さが心地よい。滋賀県だそうだ。ならラストで走ってたのは琵琶湖の岸か。[DVD(邦画)] 6点(2009-08-24 12:02:59)(良:1票)

20.  ジェリーフィッシュ(2007) 《ネタバレ》 漂う者たちの物語。それを象徴するのが浮き輪の少女で、両生類のような水圧に強そうな目をしている。ヒロイン1は職を失い漂いだす。ヒロイン2は結婚式のトイレで挫いて文字通り「地に脚がつかない」状態、新婚の亭主も上の階の女性に漂いかけている。ヒロイン3は遠くフィリピンから漂い流れてきた、船のおもちゃを子どもに買って帰るために。この三者が交錯するという展開は最近では珍しくなく、なあにラストはチャリティの場か何かで皆が一堂に揃うんだろう、と思ってたら、なんか話が深刻になってしまった。漂わないビンの中の船の模型が不吉だなあとは思ってたんだ。ドラマ作りの作法としては最後に三者が揃って締めるほうが正しいだろうが、きれいに終わらせるよりドラマを開いて終わらせるほうを作者は選び、若い監督ならこっちを選んだことを褒めたい。うまく語るより、まず語りたいことを語ることだ。[DVD(字幕)] 6点(2009-06-17 11:59:16)

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