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1. 情婦
《ネタバレ》 久々に3度目の鑑賞。初見で味わった全身に鳥肌が立つような衝撃と興奮は3度目でも健在である。
富豪の未亡人を遺産目当てにたぶらかした挙句に殺害した容疑で起訴された男の裁判を物語の軸としたサスペンス映画の金字塔である。
とにかく被告人の「妻」とされる(←ここも重要なポイント)女が検察側の証人に立って繰り広げる前代未聞のパフ;オーマンスに判事、検事、弁護人、陪審員、そして傍聴人も度肝を抜かれ、藪の中へと引きずり込まれる過程がとてつもなくスリリングで面白い。そしてまさかまさかのラストに至るまで、すべてが彼女の掌の上で動かされていたという驚愕の真相。
ひとえにマレーネ・ディートリッヒという立役者がいなければ、この作品はここまで不朽の名作として世に名を轟かすことはなかっただろう。まさに千両役者、否、万両役者とは彼女のことだ。
老獪な弁護士役のチャールズ・ロートンも看護婦との掛け合いや法廷での狡猾なテクニックで魅せるが、彼の超肥満ぶりはユーモラスさなどを通り越して病的なそれで、観ながら心配になってしまったが、調べたら案の定、本作の6年後に他界していた。
多々批判の出ているこの邦題だが、法的に婚姻の手続きを経ていないカップルは「内縁」として蔑む傾向にある日本ならではのネーミングともいえるのでは。そう考えると、邦題にすでにひとつのネタバレが表れていることに苦笑してしまう。
その辺はさておくとして、観る者がどこまで騙されるかというのがサスペンスの醍醐味であるとすれば、こんなにも騙された感動を深々と楽しく嚙み締められる傑作はそうない。[DVD(字幕)] 10点(2025-03-15 02:09:50)《改行有》
2. 地獄の英雄(1951)
《ネタバレ》 新聞記者が主人公でこのタイトル、鑑賞前はどんな内容か想像もつかなかったが、マスメディアがいかに「英雄」を仕立て上げていくか、そしてメディアの情報操作によっていかに大衆は左右されるか、というところが物語の要である。裏取引やマッチポンプを駆使しまくり、一世一代の大スクープをものにしようとするゴロツキ記者の存在は、マスメディアという権力の欺瞞性と無責任性を象徴しているし、また彼の記事に踊らされる大衆の愚鈍さも強調され過ぎるほど強調されている。しかし、大挙訪れる野次馬相手に商売人が増えるのはわかるが、いくらなんでも一人の人間が生きるか死ぬかの瀬戸際にいるのを横目に遊園地まで建設して事故現場がレジャーランドと化していく展開は、あまりに非現実的ではないか?そこはアメリカらしいダイナミックなジョークとして割り切るべきなのか?
やはり腑に落ちないのは、他の方も書いているように、名誉欲の塊で人情や友情などクソくらえという人間だったはずの主人公が、終盤になって被害者を必死で救出しようとジタバタし、挙げ句の果てに肝心な締め括りの記事をすっぽかしてまで被害者を慰めに行くという豹変ぶりである。彼のスクープ計画は被害者が生還する前提だったからというのは理解できるが、死んだならまた計画変更してスクープを創作すればよく、彼はそういう転んでもタダでは起きない破廉恥人間として描き切った方がスッキリしたのではないか。
ラストは主人公の死を想像させるが、死ぬほどの深手を負ったようにはとても見えなかったので(刺されてから大勢の人と会っているのに指摘したのが一人だけ)、その後、病院のベッドで目を覚ましたのであろう。[DVD(字幕)] 5点(2021-01-11 17:09:50)《改行有》
3. 地獄に堕ちた勇者ども
《ネタバレ》 ナチズムと戦時体制における人間の狂気と退廃をさまざまなキャラクターを通して毒々しく描き出す。権謀術数の果てに繁栄を掴み取ったかに見えた「勇者」たちが、ふとした運命のいたずらであっけなく「地獄」に堕ちていく。そのひとつひとつの破滅の姿が美しく映えれば映えるほど、そこに人間の底なしの愚かさがさらけ出されるという、ヴィスコンティの美学が凝縮されている作品である。
事実上の主人公といってよい、ヘルムート・バーガー演じるマルチンの一貫した狂いっぷりが見事としかいいようがない。この、およそ天下国家などよりおのれの欲望にしか関心を向けない人間が権力を握ってしまうところにナチズムの恐怖と悲劇があったのではないか。[DVD(字幕)] 10点(2020-08-10 19:07:42)《改行有》
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