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プロフィール
コメント数 14
性別 男性
自己紹介 新作やトレンドはどこ吹く風。
思いついたときに今どき見る人もいないような映画について、レビューという名の雑文を書き散らしています。
鑑賞のご参考にはなりそうもありませんが、どこかに共感するところを見つけて面白がっていただけると喜ばしく思います。

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1.  十二人の怒れる男(1957) この「十二人の怒れる男」を高校時代、有志のメンバーで文化祭の出し物として演じました。 教室を一つ借り切って半分を舞台、半分を客席に設えた即席のミニシアターでの公演です。 場面が部屋1か所だけで、劇中の時間経過が現実とぴったり一致している点が幕なしの舞台で演じるのにうってつけ。また登場人物がすべて男というのも男子校の生徒として都合が良かったんです(泣)。 テレビ放送をテープレコーダー録音してメンバーが耳コピ縦起こししたものが台本です。今では考えられませんがテレビの音だけテープに録音するのって当時けっこうやっていたものです。 サブスクのストリーミングなどない当時気に入った映画を好きな時に見るわけにはいかないですから、せめて音声だけでも再生して楽しんでいたのです。 とは言えこの映画、よほど視聴率が取れたようでしょっちゅう放送してはいました。 手元にあるのは音声の情報だけ。画面は思い出しながら、また想像で補って演技を付けたわけです。 これをいま映像を見直してみるといろいろと気づくことがあります。これは違っていたとか意外と合っていたなとか。 じつは僕はこの映画のテーマについて勘違いしてきたのだと映像を見なおして気づかされました。この映画の存在意義の根本について僕は思い違いをしていたんです。 僕は当時この映画を、冤罪により裁かれようとする少年を一人の男の努力で守り死刑を回避するヒューマンドラマといったように考えていました。 ところがそうではない。この映画が僕らに求めているのは、「被告は刑が確定されるまでは無罪と推定される」とする法律の在り方に対しての議論なのです。 この少年が実際に殺人を犯しているかどうかは問題ではない。むしろこの脚本家の設定の中では少年は実際に殺人を犯しているのでしょう。 ぼくがそう考えたのは、画面に現れる三人の人物の表情のためです。 1人目は冒頭だけ登場する裁判長。 毎日同じような事件を担当しているのかウンザリしたような表情を露骨に見せています。 「この裁判の結果も話し合うまでもなく有罪となるだろう、決まりきっている」という表情です。 2人目はその後にちらっと映る被告人の少年。 彼はこの後自分の運命を他人に決められる状況だというのに、顔になんの表情も浮かべていません。 彼も自分のしたことの結果が決まりきったものになることを承知しているので、期待も希望も焦りも猜疑もその表情に現れないのです。 この後、陪審員たちの間で事件に関して「根拠のある疑問」が次々と浮かび上がり、評決は劇的などんでん返しを見せるのですが。 3人目。これがかなり重要です。 映画の終盤で陪審員たちがそれぞれの帰途へ向かう中でただひとり、主人公男性に話しかける老人の表情です。 この老人は無罪を主張した主人公に最初に同調する人物です。 主人公にしても無罪を言い出したのは、「すぐに死刑を決めてしまうのはかわいそうだから」という動機にすぎませんでした。そしてこの老人も、「主人公がひとりで頑張っているのを見て気の毒なので」同調したに過ぎないのです。 そんなところから全員の評決が変わっていくストーリーが実にミラクルなのですが。 この映画にはミラクルがもう一つ。陪審員たちはみな名前で呼ばれず番号で呼ばれます。話し合いが進んでいくにつれてそれぞれのキャラクターの生い立ちも現在置かれている状況もものの考え方もすべてが露わになってくるのですが、名前だけがわからない。そして映画の最後に主人公とこの老人だけが名前を名のりあう。 僕たちはこの2人以外のキャラクターについては名前以外のことは何でも知っている。ところが名前を知っているこの2人についてはどういった人物なのか今一つ詳しいことはわからない。どうですミラクルでしょう。 そしてこの老人が主人公との別れ際、ふと奇妙な表情を見せるのです。 まるで「本当にこれで良かったのかな?」といったような表情です。 映画の最後にこんな表情は見せないものですが、これは観客にこの映画の内容を遡って考えてほしいという演出でしょう。 深い。 それに比べて僕たちが演じた舞台では、実はこの老人役は僕が演じたのですが、「やりましたね」みたいなさわやかな表情で主人公と握手をかわしちゃいました。 今考えるとちょっと寒いです。 アメリカで今でもよく知られるサッコ・ヴァンゼッティ事件やジョー・アレディ事件といった不幸な冤罪事件が起きてからそれほど離れていない時代です。 また、映画の中のようにさまざまな理由で偏見を持つようになった人間が被告を有罪と決めてかかるようなことの多い社会だったでしょう。 この映画がもつ意味はとても深いです。 ぜひ映像と一緒に見ましょう(当たり前)。[地上波(吹替)] 10点(2024-10-07 23:46:40)《改行有》

2.  シックス・センス 《ネタバレ》 昔、大道に客を集めて踊る紙人形を売る香具師がいた。江戸川乱歩の時代の話みたい。でも実はいまも見かけます。 客に自分の周りを円形に囲むよう呼び掛けた男が、人の輪のまん中に人形を置く。ピエロの絵が印刷された紙の胴体に紙テープの足がついただけのお粗末な代物です。男が呪文をとなえると、人形がピョコンと起き上がりひょこひょこ踊るような動作を見せます。たしかに奇妙な光景ですが、人の輪の外から見ている者には仕掛けは一目瞭然。踊る人形を感心して見ている人々の中に一人、ポケットに手を半分突っ込んで何やら指を動かしている人物が。 集まった客の中にサクラが仕込まれているんです。 じつは人の輪を見えない糸が横切っていて、一端を立木や手すりに結び、反対側をサクラが手に持っている。 糸の真ん中の位置に人形があるというわけ。 ほかの客と一緒に踊る人形を面白がって見ているサクラが実はその人形を操作している。 テレビで演じられるマジックでも、マジシャンの手際にびっくりしている客がじつはタネの大部分を操作してるなんてのがあります。 メディアリテラシーとか、いろいろに啓発的です。 僕の知り合いにもこれ買っちゃったやつがいるくらいなので結構騙される人もいるのでしょう。 人の輪があってサクラがいる状況でしか再現できないおもちゃなんて持っていても何の意味もない。買って帰って仕組みが分かった瞬間にゴミになってしまう。 騙して売れてしまえばそれでオーケーという商品です。 「シックスセンス」ってそんな映画です。 観客を騙すこと一点に全振りした映画ですね。 騙されたことに爽快感を感じるような映画、たとえば「スティング」などはありますが、「シックスセンス」はそれとは違う。 この映画の登場人物には、映画のシーンに現れる以外の生活時間は存在しない。あるとすればこのお話は完全に破綻してしまうのです。 主人公の小児精神科医は、自らの患者に腹を撃たれます。その後看ることになった少年は幽霊が見えるという症状を持っています。少年は語ります。「幽霊は自分が死んだことに気づいていないんだよ」と。 ほら、公明正大だろと制作陣は言うでしょう。 しかし映画に映っていない時、彼はなにをしているのでしょう? 寝たり風呂に入ったりしないの? 少年を看ることになった経過は?依頼人とは会ったの? 少年の家でその母親と一緒に腰掛けて少年を見守っているシーン。 この状況ってまったく会話せずにいられるもの? 会話のない妻には無視されていると感じるのに少年の母親にはそれを感じないの? むちゃくちゃ好意的に考えれば成立しないわけでもないのかもしれません。 物に触れることはできないが、念動力を使うことができる。 それを自分では手でドアを開けたり機械を操作したりしていると思い込んでいるとか。 他人とのコミュニケーションも取れていると思い込める。でも妻との間でだけはなぜかそれが成立しないとか。 幽霊ってどんな設定でもできるから便利ですね。 移動ができない地縛霊と移動できる浮遊霊がいるのを筆頭として。 目に見えないが写真や鏡には写る。逆に目には見えるが写真や鏡に映らない。 物に触れることができない。逆に人に触れて驚かすことができる。 自分が死んだことに気がつかない。逆に死んだことを覚えていて人に恨みをぶつける。 ものを考えることができる幽霊とできない幽霊はこの映画にも登場します。 幽霊から幽霊が見えるのか見えないのかもご都合次第。 幽霊からは人間が見えないなんて設定の映画もありました。 いったい幽霊ってなんなんだ?人間の想像力って大したものですよね。 ところで、「シックスセンス」の冒頭にはブルース・ウィリスからのお願いと称して「この映画にはある秘密があります。まだ映画を見ていない人には、決して話さないで下さい」というメッセージが表示されます。 これは全く余計なお世話というか、必然性が理解できません。 観客はこのメッセージを見たことで、どんな秘密があるのか推理を始めてしまいます。 その結果だいたいこの秘密に思い当たってしまう。ぼくもそうでした。 騙される快感を自ら奪ってしまっています。 といったことを僕は2002年頃に自身の雑文サイトに掲載しました。 ところが数年前に書店で松本人志さんの著書を立ち読みしていたところ、これと全く同じ内容のことが書いてあるのを見つけてしまいました。 原稿の雑誌掲載も僕の雑文と同じ時期。 このシンクロニシティにはびっくりしました。というのも大げさで、結局は誰もが思っていたことなんでしょうね。 本当にこんな余計なことをしてなにをしたかったんですかねえ。[DVD(字幕)] 6点(2024-07-31 01:27:56)《改行有》

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