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1. 素晴らしき哉、人生!(1946)
《ネタバレ》 これ、スモールタウンでくすぶっている若者の鬱屈が底に流れている。世界に出たいけど、この町にとどまっていて、弟は軍で栄光を浴びている。そこらへんの隠し味の苦みが、終盤で金を紛失したおじさんを口汚くののしる緊迫の場の下地になっているんだろう。そういう薬味が理想主義の甘味を締めている。自分がいなかった世界の夢が映画の眼目で、映画ならではの楽しみに満ち、面白くはあるんだけど、でもちょっと…とのめり切れない。鬱病の人だったら、自分がいなかった世界がパラダイスになっている夢を見て、やっぱり僕なんかいないほうが…とさらに鬱をこじらせるだろう。そう嫌味に見てはいけない映画で、あくまでファンタジーとして評価すべきだろうが、戦前の『スミス都へ行く』では、大衆からの電報の束という薬味がゾクッとするほど効いていたのに、こっちでは大衆がニコニコと寄付金を募らせてきて、いささか甘味料過剰に思える。大恐慌の記憶がまだ生々しかった戦前と、戦勝直後の気分の違いが出たのか。悪の駆動がバリモア一人に集中してしまっているのも弱い。…などとブツブツ言いながらも終盤で号泣している自分が許し難いのだが。[CS・衛星(字幕)] 8点(2013-12-28 10:04:09)
2. 素浪人罷通る
刀を振り回すことを禁じられていた敗戦直後期の時代劇。天一坊のもとに、ひとつ当ててやろうという有象無象が集まってくるところなんか、このころの世相を映していたのではないか。阪妻の豪放な大芝居が楽しい。大岡越前との翳りゆく部屋での談判。暗くなると障子の向こうの廊下を手燭の灯が入ってくるあたりの味わい。天一坊の出立の声を耳にしつつ寺子屋の教授をしている場のリズム感も、大ぶりで良い。全体が大ぶりで骨太の味わいなの。ラストの瓦屋根の大きな構図に青空、御用提灯の場でも爽快である。時代劇の灯を絶やさせまいという決意、というほど大袈裟なものではないかもしれないが、とにかく時代劇のおおらかな気分が溢れていて、立ち回りができないという禁止がかえって作品を練り上げた。封建制を批判してるんだよ、という文章が頭と終わりに付くのは、進駐軍への確認のアピールか。[映画館(邦画)] 7点(2009-02-01 12:14:55)
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