みんなのシネマレビュー |
|
【製作年 : 2000年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
1. 千年女優 《ネタバレ》 リアルな画風だが、これが実写映像だったらかなり違和感があるだろう。何しろ虚実入り混じった回想をその場の数人で共有するという、冷静に考えたら相当に破天荒な視点だ。なまじ写実的な絵なだけに、アニメーションが通常とは異なるリアリティの分法を持っているということがよくわかる。 実は構成が『PERFECT BLUE』に引き続き、ミステリとなっている。映像と音楽で多少は誤魔かせているが、致命的に人間を描けていない。心理描写がプロモーションビデオ並みに浅く、87分の尺も長く感じられるほどだ。最後の台詞が必要なのはミステリの文法で脚本を書いているからで、ドラマ部分がちゃんとしていればあそこまで明示する必要はなかったし、仮にそのまま書いたとしても重みが全然違っただろう。 この内容ならいっそのこと一時間以内の短篇に凝縮してくれた方が、端正な秀作に仕上がったんじゃないだろうか。[DVD(邦画)] 6点(2009-06-15 23:58:35)(良:2票) 《改行有》 2. ゼア・ウィル・ビー・ブラッド 《ネタバレ》 結局、なにが言いたいのか。血縁、石油、キリストの血といったさまざまな意味合いを含ませた〝blood〟。家族愛、宗教、経済的発展といったいかにもアメリカ的な価値を追及した果てにすべてを失う男の姿に、米国の現状を重ね合わせてみたんだろうか。題名は聖書の神罰を表す一節の引用だそうで、いかにも暗示を散りばめてみましたといった感じ。終始意味ありげな深刻ぶった雰囲気が流れているが、実は案外浅いんじゃないかと思う。 ダニエル・デイ=ルイスが無理やり懺悔させられる際の葛藤は名演技中の名演技だし、ボーリング場の下りも素晴らしかったとは思う。しかしそれはデイ=ルイスの役に対する解釈の深さに多くを負うもので、全編を通してみれば非常にありきたりで捻りのない脚本だ。一流の役者、洗練された映像と音楽を揃えて、肝心の芯がやせ細っている。キューブリックはある映画監督を指して「スタイルは百点で内容は零点」と評したそうだが、その尺度でいえばこの作品は「スタイル九十点、内容六十点」といったところじゃないだろうか。 もっとも、そう思うのは筆者の観方が悪いのかもしれない、とも思った。主軸が判然としない一方で多面的な観方ができるのも確かで、考えようによってはそれがこの映画の強みなのかもしれない。少なくともルイスを観るだけの価値はあるし、ポール・ダノも結構良い(見えない悪魔をぶん投げるとことか)。 最後の台詞、「終わった(I'm finished)」は狙い過ぎとも感じたけれど、ちょっぴり切なかった。「金持ちになったら誰にも会わずにひっそり暮らす」のが夢だった男の、待ち望んだ心の平安は刑務所の独房でようやく訪れるのだろう。 それにきっと、あの息子もいずれは面会に来てくれるはず。というか、そう願いたい。血は繋がっていないとしても、親子は親子。きっと孫だって生まれる。〝There will be blood〟という題名にはそうしたいくばくかの希望を暗示する意味もあるのだと、(かなり強引に)解釈しておきたい。そう考えなければ救いがなさ過ぎるので。[DVD(字幕)] 7点(2009-05-07 11:42:24)《改行有》 3. 世界最速のインディアン とても真っ直ぐなお話ですね。序盤、あまりにも真っ直ぐ過ぎて一歩引いてしまったんだけども、バートの人柄の良さに引き込まれ、最後には心のなかで(いけ! がんばれ!)と応援していた。名優アンソニー・ホプキンスの演技は文句のつけようがなく、憎めない、というか好きにならずにいるのは難しいおじいちゃんを完璧に演じていた。周囲の人々の優しさと応援があって夢を叶えるに至るプロセスもいい。善人ばかりでリアリティがない、という声もありますけど、そうかな? 案外世の中捨てたもんじゃないし、ときにはこういう素敵な展開もあっておかしくないと思います。善意にあふれた人物には、周囲も鏡のように善意を返すものです(? たぶん)。そういう意味で、ホプキンスの愛すべき変人じじいっぷりは、この映画に説得力を与えています。[DVD(字幕)] 6点(2007-08-03 00:45:02)(良:1票) 4. セルラー 人物設定が絶妙。敵役はロス市警のブルース・ウィルスっぽい強そうな刑事で、味方は軽い感じのお兄ちゃんと、W・メイシー演ずる勤続26年間人を撃ったことのないムーニー巡査(しかもスパへの転職を考えている)。このムーニーさん、わざわざ倒れた金魚鉢の中の魚を助けるんですよ。こんな可愛い警官初めて見た(笑)。味方が一見頼りないので、最後までずうっとハラハラしてた。 全体的に小味だけど、それが地味じゃなくて切れ味の良さにつながっている。90分足らずにまとめたのが高感度高し。舞台の明るさも手伝ってか、カラッとしてて後味もすごくいい。良質の娯楽作です。[DVD(字幕)] 7点(2006-01-02 07:10:18)(良:1票) 5. 千と千尋の神隠し 《ネタバレ》 酷評が多いですけど、普通に面白かったです。みなさんジブリには期待してるんでしょうね。私は何の期待もせずに観たので。 確かにストーリーには「?」も多く、もう少しなんとかなったんじゃないかなとは思います。でも映像や世界観はとても楽しい。人外の連中がキモかわいくて、観てるだけで満足。 落下しながら泣いて、上に涙の粒が飛んでいくシーンもよかった。そこまでのめりこんでいたつもりはないけど、あれには少々胸を動かされました。自分のためじゃなく人のために、それも悲しみからじゃなく嬉しさから流れる涙って、見てて気持ちいい。前半の涙とは真逆です(方向が逆なのは偶然でしょうが)。助けられる側から助ける側に、自分のためじゃなく他人のために泣ける人に。あの場面でちひろの成長ぶりがわかった気がしました。[DVD(字幕)] 7点(2005-10-06 19:57:35) 6. セックス調査団 何この邦題。配給会社が見せかけようとしたほどふざけた映画でもない。性について真面目に考察しようとするが、結局は本能が理性を凌駕していき、あくまでも理性的であろうとする主人公(?)は混迷の中に沈み込んでいく、という内容。考察よりも実践あるのみだと言いたい。 途中で飽きてしまったけれど、ラストの演出は出色のできだと思う。「出口なし」って感じがしてよかった。 しかし、この映画を借りるのは恥ずかしかった。そしてここのレビューに一番乗りなのがさらに恥ずかしかった。セックス調査団の栄えある団員一号が自分。(今現在)唯一の団員が自分。ある意味名誉だよな、と自分を慰めてみる(つまり普通に考えて不名誉)。 早く他の人にもレビュー(入団)してほしい……[映画館(字幕)] 5点(2004-12-18 07:43:10)(笑:4票) 7. 戦場のピアニスト 財産も家族も、誇りをも奪われ、(こういう言い方はすごく失礼だけど)ほとんどいやしいまでに生に執着する人間が奏でる音楽が、あんなにも澄んだ音で響く。ドイツ人将校の前で弾いたあの曲を聴いたときの気持ちは、とても言葉にはできないです。9点(2004-05-02 12:50:33)
|
Copyright(C) 1997-2024 JTNEWS