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【製作年 : 1990年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
1. 海の上のピアニスト この、「産まれてから一度も船を降りたことのない天才ピアニスト」をめぐる、美しくも儚い作品のイタリア語原題が『NOVECENTO』であると知った時、ああ、やっぱり…という感慨にとらわれたものだった。それは、ベルナルド・ベルトルッチの『1900年』の原題と同じだであるからだ。 たぶん、それは決して単なる“偶然”ではないだろう… あのベルトルッチの大作は、イタリアの大地で繰り広げられた20世紀初頭から第2次世界大戦後までの激動の歴史を、壮大な《叙事詩》として謳いあげる。一方、トルナトーレによる本作は、同じく1900年から第2次世界大戦直後の‘46年までを背景としながら、世界恐慌とも、戦争とも(直接的には)まったく無縁の寓話を《叙情詩》として歌うのだ。 そこに、醜い地上の「歴史(ヒストリー)」を拒否し、あくまで美しい「物語(ストーリー)」を対置させようとするトルナトーレの作家的姿勢をぼくは見たいと思う。彼の『ニュー・シネマ・パラダイス』がそうだったように、彼は、常に“夢見る者”を肯定し、けれどその“夢”が結局は“現実”に押しつぶされるしかない儚(はかな)さを、深い哀悼とともに見送り続けるのだ。 本作における、あの、あくまで地上(=現実)を拒否して船もろとも消えていった主人公がまさにそうだったように… そんなトルナトーレの映画は、確かに甘く、美しく、“敗北”すらも甘美な「蜜の味」に変えてしまう。ただ、そういった現実逃避を、それ以上に現実を「拒否」するトルナトーレよりも、あくまで聖も俗も美も醜もいっしょくたになったこの現実こそを直視し、まるごと「肯定」するベルトルッチにこそぼくは組みしたい。 何故なら、ぼくらは「物語」ではなく「歴史」を生きざるを得ないのだから。ぼくらの生は、夢じゃなく現実の側にあるのだから。 そのことだけは、片時も忘れたくはないと思うのだ。6点(2004-07-26 16:30:27)(良:1票) 《改行有》 2. ウォーターワールド う~ん、何なんだこの評判の悪さ…。別にアメリカでも大コケしたワケじゃなく、ちゃんと1億ドル以上の興行収益をあげてるんですけど。ただ、製作費が膨大だったんで、ちっとも儲けにならなかったということらしいんスけどね。…って、やっぱりアカンか。ただ、陸地が海に沈んだ未来世界を、セットや小道具に至まで、ここまで説得力豊かに描き出したディテールへのこだわりは十分”センス・オブ・ワンダー”たり得ている。それに、デニス・ホッパー演じる水上バイクの悪党集団”スモーカー”ときたら、1960年代にホッパー自身が出演していた暴走族映画(『続・地獄の天使』とかね)のセルフパロディになっている…といった、「遊び」の要素もふんだん。どうも、ケヴィン・コスナー主演作ゆえに叩かれている本作ですが、意外なほどアクションをうまくこなす彼を含め、決してバカにしたもんじゃない快作だとぼくは思っています。8点(2003-11-14 12:34:45)(良:1票) 3. ウワサの真相/ワグ・ザ・ドッグ 意外にも(と思っているのは小生だけ?)点数があまりにも低いんで、あえて10点献上! これをマジで作らず、かといってシリアスなブラックコメディにもしない、実に微妙なスタンスで映画にしたバリー・レビンソン監督って、昨今のアメリカ映画界にあって貴重な”大人”だと思う。だって、イマドキの映画人てば頭ン中お子チャマばかりじゃんすか。国家に絶望はしていても、しかしオレはこの国で生きてんだし…という自嘲が、ひょうひょうとしたエスプリを産んだって言いましょうか。このチカラの抜けたペシミストぶりこそを、こんな生きにくい世の中だからなおさら評価したいです。10点(2003-05-20 16:07:57) 4. 美しき獲物 ストーリーはチェスを謎解きの伏線に使うなど、本格ミステリしていて面白いんだけど…。何か悪い意味でうらぶれたB級っぽさが、画面を貧相にして気を滅入らせます。でも、ダイアン・レインって、”さげチン(失礼!)”のランバートと別れて、本当に良かったね。5点(2003-05-20 15:51:51) 5. ウェドロック SFアクションという体裁でありながら、作り手たちがひそかにめざしたのが、往年の『或る夜の出来事』に代表されるスクリューボール・コメディ! このあたりのセンスの良さが、実に気分の良い拾い物です(いや、ほんとですってば!)。いつ爆発するかわからない特殊爆弾を首につけられたまま刑務所を逃亡する、ルトガー・“レプリカント”・ハウアーとミミ・“元トム・クルーズ夫人”・ロジャースは、結構緊迫した状況なのに気のおけないケンカ友だちのよう(当然ながら、やがてお互い好きになっていくのもお約束)。そのウイットに富んだセリフと展開は、例えばジェリー・ブラッカイマーあたりが製作している大作イモ映画に爪のアカでも煎じて飲ませたいや。監督のルイス・ティーグは、『アリゲーター』もなかなかの快作でしたよ。 《追記》映画館で見て以来、残念ながら再見かなわず。ですが、やっぱりコレ絶対に面白かった! ということを「声を大」にして言いたかったのでコメント追加(笑)。実は「シリアス」な状況やら物語を、あえてコミカルに描いてみせる。これって相当センスがないとできない芸当なんだと思います。そしてルイス・ティーグって、そんな才能に恵まれた監督のひとりだったことをまさに証明してみせた1作。ジョアン・チェン(は、あの知る人ぞ知る大傑作『サルート・オブ・ザ・ジャガー』でもハウアーと共演してたっけ)の“イカれ悪女”ぶりも好ましく、お近くのレンタル店にソフトが置いてあったなら、そのオフビートでサブミッションな味わいをご賞味ください。映画好きのアナタなら、きっとニヤリとできる作品(じゃなかったら、ゴメンナサイだけど)だと信じておりますので・・・。[映画館(字幕)] 8点(2003-05-20 15:21:03) 6. ウインズ 誰が何と言おうと、キャロル・バラード監督は、アメリカ映画最大の映像詩人であると信じる者にとって、この映画の評価の低さには怒りを禁じ得ません(ぷんぷん)。ストーリーうんぬんより、ワンシーンごとの、いやワンカットごとに映像から吹き抜ける風の爽やかな官能性に陶然とならないで、何のために今まで映画を見てきたのですか、皆さんっ!(…失礼、言葉が過ぎました)。とにかく、ヨットレースのシーン以上に、砂漠でのシークエンスにこそバラードの天才的な映像感覚がいかんなく発揮されています。そして、あの信じ難いほど美しく幸福なラストシーン…。物語の妙味や興奮を味わいたいなら、本でもゲームでも何だって代わりはある。けれど、そういった次元を超えた「貴きものの顕現(エピファニー)」とすら言いたいほどの瞬間に出会える体験を、この『ウインズ』はもたらしてくれる。星の数ほどもある映画だけど、そういった超越的な体験を与えてくれる映画なんて、一体どれだけあるでしょう? 《追記》帆に風を受け、波を蹴立てて海上を疾走するヨットのダイナミズム。音もなく空中を滑空するグライダーの、ゆるやかな浮遊感。砂漠の乾いた大地を、カタカタと駆けるオンボロトラック・・・。「海」「空」「陸」それぞれの“表面”を滑るように移動する、その〈運動感覚〉にこの映画は満たされている。その感覚にぼくたちの眼差しが一体化する時、ぼくたちは映画を「見る」というよりひとつの“体験”として「生きる」ことになる。この、映画との感覚の共有化というか「一体化」は、実にエロチックで官能的だ。しかしそのエロチシズムの、なんという爽やかさだろう! そしてラスト、光の粒子のひと粒ひと粒までもが見える(!)一連のモンタージュは、そんな〈運動感覚〉がもたらす官能的な体験の後の、けだるくも心地よい“余韻”そのものと言っていい。そう、「最高のセックス」を知りたければ、この映画の前に自身の感覚をさらけ出す、それだけで十分だ。もっとも、視線をあくまで「物語られていること」の読解(リーディング)やら解釈にのみ従属させる向きには、不幸というか“不毛=不能”というか、そういうインポテンツな出会いしかもたらさないかもしれないけれど・・・。 少なくともぼくにとって、これは、そういう「最高」で「おそろしい」映画なのです。 《追記の追記》・・・もうおれも若くないんだ、日本盤DVD、いやBlu-rayを早いとこ出しやがれこのヤロー!!(魂の叫び)[映画館(字幕)] 10点(2003-05-20 14:49:13)《改行有》
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