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1. ダーティハリー
《ネタバレ》 気の滅入るような陰惨な犯罪と、捜査のためなら手を汚すことも辞さない刑事の一騎打ち。人間の最も醜悪な部分に向き合わざるをえない刑事の悲哀が表れている。無駄を削ぎ落としたハードボイルドな作りで、かなりいい味出している。連続殺人犯スコーピオンを徹底的に卑小な男として描いたのは正解だろう。劇場型連続殺人犯としてはちょっと不自然なパーソナリティなのだが、時代を考えれば仕方がない。
事件は一応の解決を迎えるが、終始トーンは暗い。モデルになったゾディアック事件は映画以上の犠牲者を出し、迷宮入りした。当時のサンフランシスコを知っているわけではまったくないが、おそらくは陰鬱な時代の雰囲気を反映しているのだろうと思う。井戸から全裸死体を引き上げる描写など、生々し過ぎて驚くほどだ。
惜しかったのは最後にスクールバスの屋根に飛びついた場面。それまでストイックなアクションばかりだったのに、このジャッキー・チェンばりの行動で一挙にリアリティが薄まった。というか飛びついてどうする気だったんだろう?[DVD(字幕)] 6点(2009-09-05 23:45:01)《改行有》
2. タクシードライバー(1976)
女性心理を繊細に描く作品は多々あるけれど、これはプライドの生き物である男性の心理を丁寧に描いた作品。職場の先輩に「俺たちのような負け犬に何ができる」と諭される場面はなかなか痛い。社会的な敗者になることへの強い恐怖は多くの男性が理解できるだろうと思う。そしてそれに妥協して生きていくだけの強さ(?)を持ち合わせておらず、たまりにたまったフラストレーションを上手く発散させることができない場合は、危険ですらある。暴力という最悪の手段をもって自己実現を図ることがあるからだ。
美しいが、あくまで硬質で冷たいニューヨークの街並みは『グロリア』を思わせる。なんともいえない寂しい雰囲気とともに、鮮烈に脳裏に焼きついた。[DVD(字幕)] 7点(2006-04-12 08:56:15)《改行有》
3. タワーリング・インフェルノ
やや冗長ではあったが、クライマックスの救出シーンの迫力と容赦のない展開に縮み上がった。ぼろぼろぼろぼろ人が死ぬ。ほんとうにもう、ゴミのように死んでいく。善良で勇敢な人たちも残酷な死を遂げたのにはさすがに涙腺が緩んだ。それぞれに愛する人、それぞれの人生があることを示し、命の重さを伝えた上でそれらがいかにたやすく奪われていくかを見せる。ある意味ではこれこそが災害の怖いところであると思う。たとえばニュースで数十人、数百人が死んだと知らされてもすぐにはぴんと来ないけど、一人一人の顔を想像しようとすれば気が遠くなってくる。失われたものが大きすぎて、把握することすら不可能なのだ。まさにインフェルノ(地獄)の名を冠するにふさわしい、凄まじい作品。[DVD(字幕)] 7点(2006-01-31 05:11:37)(良:1票)
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