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1. タンゴ(1993)
《ネタバレ》 爽やかな映像に『紅の豚』でも始まったかと思いきや、その後のブラック過ぎる展開に口があんぐり。それ以降は笑いっぱなしだった。ただし、途中までは文句なく面白かったのが、最後で少々拍子抜けする。終盤は気の利いたギャグがなく、ついつい悪乗りを期待していた自分には物足りなかった。ブラックコメディとして中途半端な終わり方なので、殺人犯と殺人未遂犯たちが仲良くハッピーエンドという流れには抵抗を覚えた。よくできた脚本だが、個人的には最後までテンションを下げない方が好きかもしれない。
ところで、ルコント監督作品では他に『仕立て屋の恋』を観たが、やっぱりこの人の恋愛ものって変態なんだなと思う。女性に対する憧れと崇敬と恐怖の念が強くて、同じ人間というよりは一種の女神様みたいに見做している。偏執的な愛は、一歩間違えばストーカーを扱ったサイコホラーになりかねない。しかしホラーというのはさらに一歩間違えばコメディになるわけで、本作はその絶妙な路線を狙って成功している。
ルコントの精神の中核に偏執的なものがあるのは間違いないが、こうしてコメディにまで活かせるところを見ると、恐ろしいほど客観性の強い人なんだろう。変態には違いないが、変態である自分をはっきりと自覚しているのでまともな人間でいられる。本当に危険な人間は自分を冗談にして笑い飛ばしたりできない。『仕立て屋の恋』が嫌悪感ではなく憐れみと共感を持って迎えられたのは、この優れた現実感覚のおかげなのだろう。[ビデオ(字幕)] 6点(2006-02-24 14:52:52)《改行有》
2. ターミネーター2
《ネタバレ》 その昔、何度も観たのにテレビで放送されるたびについつい観てしまったこの映画。先がわかっていながら楽しめるというのは、娯楽作としての骨格がよほど安定していることの証拠。
とくに功を奏しているのがターミネーターの絶妙な設定だ。
シュワルツネッガー演じるT-800の、サイボーグという設定を逆手に取ったキャラクターがすごい。本当なら人間味の無い恐ろしい存在になるはずが、頼りがいがあるのはもちろん、無骨で純粋な愛すべきキャラクターとなっている。
第一、けっして人を殺さない。この決まりごとは少年マンガではよくあるけれど、ハリウッドのアクション映画ではまずありえない、あっては物語が成立しないものだった。それが嫌味なく、偽善臭漂わせることなく実現されている。
しかも戦闘マシンとしては優秀なのに、ある意味ではすごく無知で純粋ですらある。だから庇護する対象であるジョンを子供扱いすることなく、あくまでも対等に接する。これが普通の大人の男であれば、ジョンとの間にあそこまでフェアで隔ての無い信頼関係を築くことはできなかったはず。あれだけ強いのに、怖いどころかとても親しみやすいヒーローだ。
そして敵役のT-1000は逆の意味で設定を上手く生かしているだけでなく、液体金属という素晴らしいアイディアのおかげで、単なるサイボーグを超えたとんでもない怪物と化している。冷酷かつ邪悪、無敵の殺人機械。シュワルツネッガー演じるT-800のキャラクターと見事にコントラストを為しているので、銃で撃たれようが何をされようが後味の悪さはゼロ。
メリハリをつけながらもラストに向けてだんだんテンションを上げていく脚本も素晴らしい。ハッピーエンドに切なさをトッピングするというのは、観客の心を動かす最高のテクニックなのかもしれない。CGを使いながらもB級映画的な創意工夫を凝らした特殊効果もまた作品に魂がこもった理由の一つだろうと思う。最初から最後まで独創的なアイディアがこれでもかと盛り込まれている。
文句のつけようがない、傑作中の傑作だと思う。娯楽作品としては、ひとつの頂点ではないでしょうか。[地上波(吹替)] 10点(2006-02-09 05:33:02)(良:5票) 《改行有》
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