みんなのシネマレビュー |
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1. 地球は女で回ってる 濃厚なアレン節。[映画館(字幕)] 8点(2012-07-16 14:45:32) 2. チェイサー (2008) 《ネタバレ》 昨年の韓国映画では「母なる証明」かこれかと言われるほどの作品だっただけに期待しながら観たが、そこまでの作品ではなかった。 「オールド・ボーイ」以降の近年の韓国映画は、異様なエネルギーに溢れ、凄まじい暴力描写を伴うのが特徴だが、この映画も基本的にその線を踏襲している。追う者と追われる者が出会いと別れを繰り返す構成も面白い。サイコキラー役の俳優も桑田佳祐似の主人公も演技は良かった。 ただし、残念ながら、物語のバックボーンとなるメッセージ性にイマイチ欠ける気がした。例えば、映画と小説でジャンルは違うが、宮部みゆきの「火車」は「人を追う」というその一点のテーマを突き詰めた作品で、それがラストの静かな感動につながる。それに対して、この作品は途中で犯人が警察に捕まってしまうので、人をchaseするという面白さがあまり伝わらない。彼が釈放された後に、主人公は再び鬼のような追撃を始め、その部分は面白いのだが、中盤が若干だれる。確かに犯人に対する精神分析のシーンはゾクゾクするほど愉しいのだが、必ずしも必要なシーンではなく、周りから浮いてしまっている。 また、ラストの展開は、確かにミジンが助けられるよりも死ぬほうがドラマ性は増すのだが、あんまり酷くて可哀想でちょっといただけない。理不尽さや犯人の残虐性を強調したいのは分かるが、そっちにばかり焦点が行ってしまっている気がして嫌な気分だった。 原題はあくまでも「チェイサー」なんだから、もっと追う者追われる者のドラマを見せてほしかった。撮り方とかは好みなので、監督の次の作品に期待したい。[DVD(字幕)] 6点(2010-02-16 22:47:10)(良:1票) 《改行有》 3. チェンジリング(2008) 《ネタバレ》 2時間以上に渡る大作だが、この映画が言いたい事は「母の愛は絶対」。これだけだ。殺人犯がどうなろうが、警察の腐敗がどこまで進行していようが、アンジェリーナ・ジョリー演じるクリスティンには興味が無い。彼女の眼中には我が子しかない。"I want my son back!"。何度も繰り返されるこの台詞がこれほど強烈に胸に響くとは思わなかった。彼女は我が子を見つける助けになる者には協力し、それを妨げる者とは激しく争う。我が子のためなら、母親は鬼神にもなると言うが、それをリアルに演じきったアンジェリーナ・ジョリーの演技は見事だ。僅かな望みを追いかけ、只管に目的へと邁進する彼女の姿を「女」と警部は嗤うが、愛に生きる者とはそうあって当然ではないのか?最近観た「ナイロビの蜂」は恋愛の極致を描いているが、この映画には「母の愛」の真髄を見せられた。 映画のつくりだが、視点が定まっている映画だけに、安定感があり、まさに良い映画のお手本のような仕上がりとなっている。ある意味で、面白みに欠けるという評があるのは納得だが、映画館に観に行くコストを考えるとこの安定感は有り難いのも事実だ。もう少し、愛の利己性とそれが周囲に与える影響みたいな部分に焦点を当てても面白かったかもしれないが、監督がこの映画で伝えたいのはそこではないのだろうから仕方が無い。 ラストで「希望」と答えて笑うクリスティンの表情にはやられた。決して諦めない。何と尊いことか。[映画館(字幕)] 8点(2009-03-02 00:00:50)《改行有》 4. 近松物語 《ネタバレ》 いわゆる王道の悲恋モノなのだが、全く泣けなかった。泣くとかいう次元ではなくて、完全に圧倒されてしまった。特に構図が美しすぎて、もう何とも言えない。以春の二階、船で漕ぎ出すシーン、おさんが山中で茂兵衛を追いかけるシーン等々、まさに一幅の絵のようで、言葉を失う。日本の映画ってこんなに凄い(凄かった?)んだと改めて感じた。 キャストの演技力にもしびれる。特に船中のシーンでの香川京子の演技は鬼気迫るエロティシズムを感じて、ぞくぞくした。「死にとうない!生きていたい!」と叫ぶ彼女の顔には、妖艶を通り越して一種の恐怖すら覚える。あと、個人的には、茂兵衛役の長谷川一夫は顔が甘すぎて、ちょっといただけないと感じた。 鑑賞後、何点にしようか迷ったが、率直につけると7点止まりになってしまう。凄いものを観たというのは分かるのだが、なぜか彼らに感情移入できなかった。映画として、あまりにも完璧である故なのかもしれない。気持ちの面で、消化不良のまま、置いていかれた感じがする。認めたくは無いが、洋画に毒されているのかもしれない。たまには日本のものを観かえして、感受性を養っておこうと思った。[DVD(邦画)] 7点(2009-02-01 18:36:06)《改行有》 5. チェ 28歳の革命 《ネタバレ》 。「カストロとゲバラがキューバ革命を起こし、バティスタ政権を打倒した」とか、ピッグス湾事件の顛末程度は知っている状態で鑑賞。 伝記映画というのはこうなってしまうものなのかもしれないが、ドラマ性、エンターテイメント性を全く無視した作りなのには若干閉口した。ゲバラがアルゼンチン人だったとは知らず、少し驚いたが、彼がなぜ共産主義に傾倒したのか等については一切語られないため、もどかしい感じもする。全体的に、(恐らくあえて)ストーリーの焦点を散漫にし、ゲバラの人生全体を捉えようとしているため、基礎知識が十分でない人にとっては、更に苦痛な2時間となるだろう。 ただし、ドキュメンタリータッチの撮り方はなかなかイカしてるし、デル・トロの演技力には改めて惚れ直したので、通常ならば4点のところを5点としておく。次回作も劇場で観ようという動機付けにはなった。恐らく次回作の方が面白いはずだし、そうしてもらわないと困る。[映画館(字幕)] 5点(2009-01-12 00:54:19)《改行有》 6. 父の祈りを 《ネタバレ》 非常にまっとうな映画。キャストは一級ぞろいで映像も重厚、抑え気味の演出、脚本も良くできている。デイ・ルイスとポスルスウェイトの父子のやり取りは、並みの俳優じゃ真似できないリアリティだ。迫真の演技とはまさにこのこと。また、エマ・トンプソンは大好きな俳優だが、更に好きになった。法廷での弁護の場面は、見せ場を攫っていく鮮やかな演技だった。良くも悪くも「癖がない」映画であると言えよう。 だが、映画に求める娯楽性、心を強く揺さぶられる「ケレン味」が全く感じられないのは少し物足りない。同種のIRA関連映画「ブラディ・サンデー」のもつ緊張感、爆発的なエネルギーは感じられなかった。いわゆる「実話に基づく」映画はこのバランスが難しい。真実に対する真摯な姿勢と派手な脚色に対する誘惑。両者の鬩ぎ合いが卓越した映画を生むと僕は信じているが、この映画からは、あまり後者が感じられない。それはそれで素晴らしいことなのかもしれないが、それなら徹底的なドキュメンタリーでも良かったのでは?と考えてしまう。ジェリーのテープや監獄内での微妙な人間関係など、映画を「面白くする」素材はいっぱい転がっているのに、あえてそれを行わない。男らしいが、少し無骨で地味な印象を受ける。8点に限りなく近い7点。 追記:詭弁かもしれないが、こういう話を観ていていつも思うのは、真実に対する畏敬ということ。確かに、監獄で命を落としたジュゼッペや貴重な青春時代を失った「ギルフォード・フォー」は本当に気の毒だ。本当にひどい話である。だが、私はあの証拠が15年後まで残っていて、それが弁護士という司法側からすれば一番の敵に易々と渡されるような場所で管理されていたという事実に深い感銘を覚えずにいられない。検察ぐるみだったのなら、あんな証拠、いつでも破棄できていたはずだ。それをしなかったということ。単なるミスだとは私は思わない。司法の人々の心の中に「そこまでやるか?」という意識があったから、あるいは、イギリスが「法治国家」として成立しているから、あの証拠はひっそりと残されていたのだろう。過去の新聞写真から人が消えたりする国家ではないということだ。逆説的に法で管理される国家の素晴らしさを教えられた作品だった。[DVD(字幕)] 7点(2008-02-07 00:16:57)(良:1票) 《改行有》
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