みんなのシネマレビュー |
|
1. 逃走中 THE MOVIE 《ネタバレ》 本音を言えば、作品の新規登録なんてしたくなかった。 誰かが身代わりになって酷評して欲しかった。 公開当時、あまりのクオリティの低さで、 映画系YouTuberから格好のおもちゃにされてお祭り状態。 興行成績も348スクリーンの大規模上映の割に初登場5位、次週圏外という悲惨さ。 邦画恒例の『○○・ザ・ムービー』という題名のTV番組の映画化と聞けば、 粗製乱造のネガティブなイメージしか湧かない。 そう、見る前から地雷原以外の何物でもなく、本作はその中でもそびえ立つク○の中のク○映画だ。 手抜き、子供騙しでもヒットするだろうという観客を馬鹿にした姿勢が透けて見える。 TV番組自体はよく知らないが、セミドキュメンタリー要素により、 結果がその後のストーリーを反映させているという(ある程度の台本はあるにせよ)。 ただ、この劇場版は100%台本ありきで動いているため、 要である「逃走中」要素に臨場感が全く伝わらない。 ゲスト登場のヒカキン、クロちゃん、ガチャピンをはじめとする着ぐるみキャラが 時折画面に挿入され、バラエティのノリをそのまま映画にした姿勢に安っぽさを禁じ得ない。 後半の異空間デスゲームでは前半のロケ撮影で製作費が尽きたのか、 クライマックスをひたすら引き延ばすグダグダが延々と続く。 主人公の青年たちが一人一人脱落するも即ではなく、 これでもかと青春のぶつけ合いみたいな陳腐なドラマを引き延ばす。 もはや「逃走中」ではなく「会話中」だ。 ワイルドハンターに捕食されるグロ描写など一切なく、 量子化されて吸収されるCG演出に、振り切って観客を楽しませる気などないらしい。 全体的に友情物語が薄っぺらすぎてバラバラになった絆が一つになっていく説得力も感じられない。 女子高生と口の利けない弟の存在は要らないし、番組を乗っ取った謎の組織の詳細も投げ出したまま。 ケバケバしい衣装やら、チープなセットやら、本作の評価を決定付けさせるマズい予感しかなかった。 アイドル映画として需要はなくはないが、誰もが魅力も演技力も感じられず、 一週間も経たずに忘れ去られるだろう。 無許可撮影で近隣住民とのトラブルが発生し、 クルーが「あなたたちとは違うんです」と開き直る始末。 過去の栄光と成功体験にしがみつき、その選民主義と言わんばかりの傍若無人さが、 まともで才能のあるスタッフを流出させ、下請けに任せてばかりで番組制作能力を失い、 やがて大御所タレントのスキャンダルから始まった局ぐるみの大問題に繋がったのは当然と言える。 総務省が庇ってでも、偏向報道、質の低い手抜き番組しか作れないフジテレビに存在価値が果たしてあるのか? 最悪、倒産によりサブスクで見れなくなる可能性があるが、駆け込み需要で見るほどの価値すらない。 かつて、ドリフのお笑いやごっつええ感じ、トリビアの泉で楽しませてもらったが、 東日本大震災直後の粗製乱造の手抜きとゴリ押しとフジテレビ抗議デモで見限ることになった。 それから10数年して落ちるだけ落ちたフジテレビには何の感慨もない。 本作はフジテレビ末期を象徴する世紀の大愚作と言えよう。 実写版『デビルマン』のように歴史に残さず、存在自体を抹消したい。[インターネット(邦画)] 0点(2025-01-24 23:53:22)(良:1票) 《改行有》 2. トランス・ワールド 《ネタバレ》 YouTubeで誤ってネタバレを見てしまったのが残念に思える。 しかし、それを差し引いても無駄が一切ない脚本で、 ほぼ小屋と周辺の森だけの展開なのにも関わらず一気に"魅せる"。 一つ一つの台詞が伏線になって、4世代にわたる壮大な家族の物語になっていく。 映画としての粗やツッコミどころはなくはないが、 運命を変えようと奔走する登場人物のドラマに見応えがあった。[インターネット(字幕)] 7点(2025-01-22 21:00:16)《改行有》 3. ドライブアウェイ・ドールズ コーエン兄弟でおなじみのイーサン・コーエン初の単独作品。 LGBTQへの理解がまだ発展途上中の1999年を舞台に、 レズビアンのカップルが車両配送で危険な物品の入った車を受け取ったことから始まる珍道中。 兄ジョエルが撮った重厚な『マクベス』とは対照的に、 超一流の監督と超一流の俳優で撮られた犯罪映画の中身がお下劣B級テイストという落差で、 物凄い無駄遣いしているというか、あれほどの実績を築いたからこそ肩の力を抜いた映画を作りたかったのかな? 徹底的に最後まで下らない内容でもコーエン兄弟らしい含蓄を挟み、 対照的なキャラクターである主演二人は魅力的で、ありきたりなストーリーを乗り切る。 また、一歩間違えば政治利用されやすい同性愛要素はギャグの応酬で深く考える暇すらなく、 85分でコンパクトにまとめたのは正解だった。 でも、自分には合いませんでした。 イーサンの力量なら下ネタ控えめでもう少しサスペンス寄りにできたはずで、ちょっと期待しすぎた。 次回作は兄弟合作に戻るのか、単独で続けていくのかそこが気になる。[インターネット(字幕)] 4点(2024-12-30 23:01:46)《改行有》 4. 友だちのうちはどこ? 《ネタバレ》 主人公の少年が間違って持ってきてしまった友人のノートを返しに行く。 たったそれだけだが、二度ノートを忘れた友人がスリーアウトで退学させられるのだから、 主人公は無事にノートを返せるのか終始不安な表情である。 隣の村に住んでいるのは分かっても電話すらないため詳細は一切分からず、 親族を含めて大人たちは彼の事情なんてお構いなしに自分の都合ばかり押し付けてくる。 祖父のエピソードが象徴するように、 言うことを聞かせるために理不尽な体罰を与える教育方針が当時のイランでは当たり前であり、 ただの労働力として個性を認めない抑圧的な空気が子供たちに影を落としている。 だが本作の製作当時は日本も昭和時代だったはずで昔は良かったと言えども、 体育会系の指導方法によって深刻な問題を引き起こした事案は珍しくなく、 世界中どこも変わらなかったのではないか。 少年は友人の家にとうとう辿り着くことができなかった。 明日の授業で友人の退学が迫る。 追い詰められた彼の最終手段と鮮やかな着地に程良い余韻が光る。 こうやって子供たちはしたたかになっていくのだろう。[インターネット(字幕)] 7点(2024-06-22 02:38:59)《改行有》 5. トラベラー 《ネタバレ》 題名からプロサッカーの国際試合を見に行きたい少年のロードムービーだと思っていたが、 そこまで尺を割いておらず、むしろあの手この手であくどい資金調達を行う悪童のバイタリティには驚かされる。 サッカー狂で後先や周囲のことなどお構いなし、それなのに如何にして一つ一つの問題をクリアしていくのか、 シンプルで淡々とした展開ながらサスペンス調の緊張感を持っていくキアロスタミの手腕の良さを感じられた。 テヘランに辿り着いたのは良いが、チケットは売り切れでダフ屋で資金使い果たすわ、 寝過ごして試合を見逃すわで踏んだり蹴ったり。 欲望のために家族にも仲間にも顔を見せられないレベルでやらかしたのだから、 帰れば体罰どころでは済まないが、そもそも有り金使い果たした彼は帰れるのか? 反面教師的なメッセージはあれど、瑞々しさと迸るエネルギーに説教臭くないバランス感覚があり、 律儀で大人しくなった現代日本から見るとその逞しさに羨ましさはある。[インターネット(字幕)] 6点(2024-06-10 22:42:08)《改行有》 6. ドリームプラン 《ネタバレ》 2年前に作品情報を新規登録しておきながら、ようやく重い腰を上げてレビューすることになった。 邦題を見れば白人のスポーツだったテニスの歴史に風穴を開け、 アメリカンドリームを掴んだウィリアムズ姉妹のドラマとして見ると淡々としすぎて物足りなさを感じる。 ただ、原題の"KING RICHARD"、つまり姉妹を育てた"暴君リチャード"の物語として 成功に至るまでのある種の歪みが本作の主題だろう。 姉妹が成功するのは既に分かっている。 それまでは彼の独り善がりで妄執に近い態度に誰もが関わりたくないと思ったはずだ。 常に綱渡りで彼のようなプランを作っても99%は成功しないだろう。 ただ、娘たちが貧困とドラッグに墜ちていく負の連鎖を断ち切るためであり、 日本以上に格差も差別も大きいアメリカの病みがある。 格差是正を訴えるより、自己責任で力づくで這い上がるしかなかった時代。 オファーを持ちかけられても安易に契約しない、性悪説で誰も信用できないのは弱肉強食のアメリカならでは。 時代を、人生を変えるには常に"正しい狂気"が必要だった。 その"正しい狂気"と言っても、最後は謙虚さが、聞く力が必要だ。 「試合に出たい」と練習し続けていたビーナスの声をついにリチャードは受け入れ、 どんな結末だろうとビーナスは試合に負けても勝負に勝った。 目論見通りなら、今までゲットーに生きていた黒人たちに光を与えたという意味で大きな一歩とも言える。 家父長制等、今でなら問題だらけの価値観に文句はあるかもしれないが、結果的に歴史を変えたのは事実だ。 ウィル・スミスはアカデミー賞授賞式でのひと悶着はあれど彼以外に考えられなかった。 ただ、彼のキャリアでのベストではなく、将来、より相応しい映画、役柄はあったと思う。[インターネット(字幕)] 6点(2024-05-31 23:59:52)《改行有》 7. トップガン マーヴェリック 前作については思い入れはなく、期待もしていなかった。 確かに本作の完成度は高く、本物志向のアクションとスケールの大きさで、 往年のハリウッド映画の王道がコロナ禍の映画館に観客を呼び戻した意味で貢献度は大きい。 最高の続編を作ろうとしたトム・クルーズをはじめとする制作チームの執念と情熱を感じた。 でも、"足りない"。 映画館の大画面や大音響で体験しなければ本作の真価が発揮されないのは分かっている。 それよりも見せ方や物語が枠に嵌りすぎて息苦しさも感じてしまうのだ。 もう少し意表を突いた演出や展開があっても良かったのではないか。 その年の最高の映画として、アカデミー作品賞に推す人が大勢いるのは分かるし、 取れなかったことに対して不満が少なくないのも分かる。 いつの時代もたとえ新鮮味がないものであっても、 誰にも分かりやすく安心して楽しめる映画を求めている観客が圧倒的に多いのだから。 私はその観客の一人にはなれなかった。[インターネット(字幕)] 5点(2023-03-24 23:37:19)(良:2票) 《改行有》 8. トップガン 《ネタバレ》 30数年ぶりの続編で注目を浴びた本作に関して、ほとんど語り尽くされているので言うことはなし。 '80年代のおおらかな空気感と、破天荒な青年が親友の事故死を乗り越えて、 立派なパイロットに成長する王道青春ストーリーはMTVさながらの軽薄さだとしても見れないレベルではないし、 ドッグファイトのクオリティが水準以上なので気楽に見られる。 そう考えれば良くも悪くもこれくらいの点数。[地上波(字幕)] 5点(2023-02-11 00:52:42)《改行有》 9. ドリーム アメリカの宇宙開発を影で支えた"Hidden Figures"(隠された数字/知られざる人たち)の物語。 「黒人だから」「女性だから」の二重苦に立ち向かい奮闘する様は、未知の領域に挑むNASAが目指す"夢"と重なるものがある。 差別も少なくないが、それでも社会を良くしようと変革をもたらしたアメリカの強さ。 計算士のキャサリンを他所に、同僚のドロシーとメアリーのドラマは薄く、もう少し踏み込んで欲しい。 下手したら3人より目立つケビン・コスナーは美味しい立ち位置で期待裏切らぬ好演だった。[地上波(字幕)] 7点(2022-03-20 11:42:52)《改行有》 10. 時をかける少女(1983) アニメ版と比べるとゆったりとした流れで、時代が時代なだけに古臭さを感じてしまうものの、それを許容してしまう雰囲気とチープさが逆に作品のノスタルジーを引き立てた稀有な事例。ロケーションとキャスティングの勝利。[DVD(邦画)] 5点(2022-03-17 21:04:56) 11. ドライブ・マイ・カー 《ネタバレ》 3時間深淵を見つめる旅。 まるで"見る小説"の如く、虚飾の皮を剥くように二元論では決めつけられない人間の正体に向き合っていく。 妻の主人公に対する愛情は本物か"スタイル"だけなのか、女性ドライバーの母親に対する愛憎も同様だろう。 内心分かっていながらもどこかで"表面だけだとしても繋ぎ止めたい"と"本心に向き合いたい"のせめぎ合い。 劇中劇の『ワーニャ叔父さん』で絶望した男がもがきながらも生を選ぶさまは、主人公の現状と大きく重なり、 複数の言語で紡がれることもあってかディスコミュニケーションによる困難をより際立たせる。 過ぎ去ってしまった機会は二度と来ない。 その後悔は死ぬまで続くかもしれない。 辛い人生がこれからも繰り返される。 それでも新たな一歩を踏み出した主人公は、亡くなった娘と重ねるように女性ドライバーに思い出の車を託す。 彼女は新天地で車を走らせる。 抑制された演出と演技によるフランス映画みたいな作品で、 現時点の評価が平均6~7点で留まるあたり、エンタメとは対極の作家性の強さを象徴している。[インターネット(字幕)] 7点(2022-02-19 00:29:22)(良:1票) 《改行有》 12. ドント・ルック・アップ 《ネタバレ》 トランプ大統領誕生から露わになった分断と、扇動するメディアを総括した2020年代の『アルマゲドン』。 彗星衝突という非現実な事態なんて周囲は信じずエンタメとして消費し、 ディカプリオを始めとする超豪華スター大集合で大真面目にバカ騒ぎを広げていく。 巨大企業との癒着を優先するという初手さえ間違えなければこのようなラストを迎えなかったものの、 自らに事態の深刻さが及ばない限り、誰もが真実を受け入れないものである。 難を上げるなら、2時間半に及ぶ内容をもっと短くできた気がする。 制約がないが故に却って引き締まらない印象を受けた。[インターネット(字幕)] 6点(2022-01-01 15:34:54)《改行有》 13. トゥモロー・ワールド 《ネタバレ》 邦題は『人類の子供たち』で良かったのではないか。ただのSF映画ではないのは事実で、キュアロンの作家性が遺憾なく発揮されている。複数のカットをワンカットの長回しに見せた当時の最新技術で、臨場感を生み出すことに成功している名シーンの数々。ただ、ストーリーと登場人物の掘り下げが浅く、細かい部分はあまり覚えていない。あれでは赤ん坊が世界の希望になるとも限らないディストピアな設定が上手く活かされないと思った。唐突でどうでも良くなっている感。後の作品群に大きく活かされたという意味では、監督のターニングポイント的作品。[DVD(字幕)] 4点(2021-09-30 23:08:26) 14. 冬冬(トントン)の夏休み 少年と妹のひと夏の思い出。日本にも似た台湾の田園風景が懐かしさを呼び覚ます。ところどころに緊張感の走るシーンが挿入され、誇張なく淡々と描かれている分、人々の見えない変化を印象付ける。祖父の厳格さと叔父の甲斐性のなさに揉まれながらも、少年は少しずつ大人になっていく。可もなく不可もないが、過去に台湾に行った時の懐かしい空気が堪らない。[インターネット(字幕)] 5点(2021-04-16 22:13:03) 15. 東京流れ者 初めての鈴木清順。ありきたりの任侠映画に、ポップな色彩感覚とチープでコミカルでアンバランスな造りが却って独特の雰囲気を醸している。良くも悪くも前衛的で、その嗜好に合致するかと言えば否。スタイル優先で話は二の次なのは分かっていたが、睡魔を催すくらい魅力を感じられない。それだけ彼に影響を受けたクリエイターが増え、物足りなくなった証か。出直してきます。[インターネット(邦画)] 4点(2021-02-01 23:19:00) 16. となりのトトロ メッセージ性はなく、大した事件が起きるわけでもない。懐かしの原風景と巨大生物との交流だけで、30年経っても色褪せない世界を創造したことに宮崎駿の凄さを再確認できる逸品。おとぎ話に振りすぎず、あるがままの自然を受け入れるようなバランス感覚が絶妙。[地上波(邦画)] 8点(2020-08-14 21:55:10) 17. トレイン・ミッション 期待しなければそれなりの暇潰しにはなるだろう。ただ、ほぼ電車で展開される、その縛りに拘りたいのであれば、揉み消し側の穴だらけのプランや無茶苦茶なアクションはどうにかして欲しかった。それだとかなり地味になるし、派手な見せ場がないと集客できないのは分かるが、描きたいことを詰め込みすぎて、アイデア一本勝負が薄れてしまっては勿体ない。[地上波(字幕)] 4点(2020-04-16 23:30:23) 18. 翔んで埼玉 原作漫画未読。ローカルネタ満載のギャグ作品なのは分かってはいたけど、本当に見るに堪えない。如何にもテレビ局が作ったような下品さに満ち溢れていて、突き抜けて敬意を感じるかと言えば否。テレビ特番で十分すぎる。フィクションが現実とどうリンクするかなんて大したことなく、バラエティの内輪話を延々と聞かされているようで早く終わってほしいと何度も思った。本当に優れた娯楽映画ならローカルネタばかりにゴリ押しせず、興味のない人でも楽しめるように実力で勝負するはず。黒澤明から真似事と評された日本アカデミー賞で最多候補、他方、本家では韓国映画が主要部門を席巻。本当にこれで良いのか? どうしても絶賛しなければいけない空気に疑問を抱かざるを得ない。[地上波(邦画)] 2点(2020-02-17 23:50:18) 19. トイ・ストーリー4 《ネタバレ》 まさかの4製作に不安しかなかった。完璧な3を見て、もう描き切った感があったからだ。しかし敢えて描く。3には登場しなかったボー・ピープとの別れと9年ぶりの再会、ゴミから命を与えられた自己卑下するフォーキ―の自我の目覚め、そしておもちゃたちはどう生きるのかを。1・2に回帰した構成だが、アンディのお気に入りだったウッディは、ボニ―からは相手にされず、リーダーとしての立ち位置を失い、仲間を助けることしか居場所がない。そうやって言い聞かせてきた彼の最後の選択は至極当然の流れだったかと。キャラクターが多くなった分、レギュラー陣の活躍が物足りなく、意外性も舌を巻くような活劇も4にはなかった。とは言え、主人の元に戻ることが全てではなく、それぞれの"物語"を紡いでいくおもちゃたちが感慨深い。バズたちと別れたウッディは西部劇の保安官でもなく、アンディのお気に入りでもなく、レアフィギュアでもなく、ウッディ個人として未知の世界に飛び込んでいく。それこそ『トイ・ストーリー』に相応しい所以ではないか。[映画館(吹替)] 7点(2019-07-16 20:14:54) 20. 時計じかけのオレンジ 《ネタバレ》 半世紀近く前にも関わらず、今もなお衝撃と鮮烈さを失わず、五感を絶えず刺激させる。 あまりに背徳的で倫理性を無視した、サイコパスの不良少年アレックスの悪行が強烈であるほど、 共犯者になったような恍惚と快感を観客に見せつけ、投獄そして釈放後のアレックスの地獄巡りを追体験する。 荒療治によって変わっても、彼は被害者のように振る舞い、何故因果応報を受けたのかという反省も心からの謝罪もない。 性と暴力を封印されただけで根っこから救いようがないからである。 では、アレックスだけが酷いかと言えばそうでもない。 実は社会も我々もアレックスのような本能が眠っているのではないか。 タイトルは機械化された人間を意味するらしいが、理性を持って生きている我々も息苦しい現代社会に嵌め込まれている。 むしろ機械化された人間にならない支配者側こそ本能的に我々を上手く利用してコントロールしている。 自分の生きたいように生きられる言動は、世渡りの上手さと狡賢さから成り立つという残酷な現実を突き付けているのだ。 キューブリックの先見性は、彼の想像を遥かに超えて、現実の"未来"は映画以上にさらに酷いものになっている。 "アレックス"と"時計じかけのオレンジ"の狭間で、観客はラストの観衆と重ね合わせ、 「ハラショー!」と喝采する未来しかないのかね…[DVD(字幕)] 10点(2018-06-01 19:54:05)(良:1票) 《改行有》
|
Copyright(C) 1997-2025 JTNEWS