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プロフィール
コメント数 116
性別 男性
自己紹介  2014年12月に投稿を始めてから9年が過ぎました。

 「映画評論家になれるのでは?!」と思える素晴らしい言葉を綴られる先輩レビュアーさん達に憧れつつも、私には、あのような文章を書けそうもありません。私の場合、少年時代に気に入り、DVDなどで観直しても好きであり続けている映画を中心に、まだピュアだった(?)少年時代の気持ちや、当時の状況を思い出しながら書きたいと思います。大人になってから観た映画も少しずつ追加しています。

 レビューの文面は長くなりがちですが…最後まで私の拙文を読んで下さる皆様に感謝申し上げます。

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1.  ドクター・モローの島 《ネタバレ》  私にとって当作品と出会いは、公開前に夕刊に大きく掲載された広告です。正確な文面は忘れましたが【ラストが売り】と強調していました。怖い映画が苦手な少年だった私は、劇場に足を運ばず…その後、他のレビュアーさん達もおっしゃる通り、毎年のようにTV放映されたので、恐々とチャンネルを切替えながら、何回か、というより何年か(笑)に分けて鑑賞。ラストは、私が想像していた血みどろで暴力的な場面ではなく「なるほど…」と冷静に受けとめることが出来ましたが、その後、ジワ~と響いてきて…確かに強烈な場面として心に残りました。  それだけに、皆さんのレビューの拝読を機に、別途、調べてみて「ラストは、日本公開のバッドエンド版とアメリカ公開のハッピーエンド版の2種類あり、DVDにはアメリカ公開版しか収録されていない」と知り、衝撃を受けました。「あのラストあっての作品でしょうよ!ハッピーなんて全てをぶち壊す改悪であって、ある意味バッドエンドじゃないの?この目で確かめねば…」と勢いづき、レンタル店でDVDを取り寄せ、鑑賞した次第です。さて、結果は…  まず、全体の印象について。もともと少年時代に感じていて今回の再見であらためて思ったのは「異形のクリーチャーが登場するので、一応は“恐怖・ホラー映画”なのだろうけど…むしろ、当時のSF映画で主流だった“警告もの”に該当する作品では…」ということです。↓の【アンドレ・タカシさん】がおっしゃっている【警鐘を鳴らしている映画】とほぼ同じ意味合いかな…と思われます。  年配のレビュアーさん達ならご存知と思いますが、スターウォーズ(1977年)の公開以前の1960年代後半から70年代のSF映画は、猿の惑星(1968年)やウエストワールド(1973年)のように『科学の進歩は、一歩、間違えば、このような恐ろしい状況を招きかねない』といったメッセージ性のある“警告もの”が主流でした。当作品に随所に見られる【不安を醸し出す演出】は、それらの作品群に通ずるものであって【ドキッと悲鳴をあげそうになる恐怖・ホラー映画の演出】とは、質が異なる印象を受けたのです。  また、バート・ランカスターさん演じるモロ―博士も、怪奇じみた不気味な人物ではなく、知的で落着いた人物として登場します。研究の目的は「遺伝子を人間が操作する…その利点を考えたまえ。病から解放され…その可能性は無限だ」と、字面(字幕)だけを見ると、他の科学者の方々でも言いそうな内容です。それだけに、倫理を度外視して知的好奇心を最優先する展開の“普通でなさ”が際立ち、これは【SF的な怖さ】だと感じました。そして、博士が好奇心(実験)を優先するあまり、"彼ら"に課していた掟を自ら破ってしまい、自滅する結末には【一歩、間違えた科学が辿る末路】としての説得力を感じました。  今回の再見を機に調べてみると、1970年代は【生命倫理学】が提唱され話題になっていたと知りました。H.G.ウェルズが原作小説を発表した19世紀末とは違った意味で、当作品の製作はタイムリーだったのかもしれません。【真摯なメッセージ性のある作品】と判断したからこそ、バート・ランカスターさんも出演されたのでは…と思ったりもしました。  次に、猛獣と“彼ら”とのアクションについて。他のレビュアーさん達もおっしゃる通り、素晴らしいですね。少年時代の感想は「皆、死んでしまった…掟を語っていたリーダーも…」という悲しみが主でしたが、今回の再見では「CGが無い中、ドン・テイラー監督を始めとする作り手の皆さんの、入念な打合せとチームワークがあればこそ成功したシーンでは!」と感じ入りました。  最後に、ラストについて。主人公・アンドリューは喜んでいるものの、ヒロイン・マリアの表情は明るくなかったので【ぶち壊し】というほどの印象は受けませんでした。  むしろ、マリアの目や口は腫れぼったいような異様な様相で…ひょっとすると 【アンドリューは元に戻ったが、実はマリアも“元”に戻り始めている暗示】と言えなくもありません。だとしたら「ハッピーエンド版も作れ」という上役の指示に対する、ドン・テイラー監督なりの『本当はバッドなんだ。誰か気づいてくれ』という抵抗だった…のかもしれません。  いずれにせよ、バッドエンド版の復刻を願ってやみません。  さて、採点ですが…現在では“彼ら”の特殊メイクが、ヴィジュアル的にネックになってしまうようですが、それさえ割りきれば【生命科学における倫理/苦痛や罰だけで押さえつける秩序の危うさ】という、いまだに今日的な問題を投げかける作品だと思います。バッドエンド版を念頭に、当サイトの採点基準である【見た後、率直に面白かったぁ…って言える作品】として8点を献上します。[DVD(字幕)] 8点(2021-06-12 17:27:19)《改行有》

2.  ドラゴンへの道/最後のブルース・リー 《ネタバレ》  志穂美悦子さん主演の【女必殺拳シリーズ】を観て、その製作のきっかけにもなったブルース・リーさん主演の映画を、これまで観てこなかったのは誠意がないと思い、BDをレンタル。【ドラゴン怒りの鉄拳:1972年】→【 燃えよドラゴン:1973年】に続けて鑑賞しました。  正直、レンタル前は全く期待していませんでした。今回、一連のBDをレンタルする際、当サイトのレビューを参考にしたのですが、当作品の最近のレビュー(2020年投稿のもの)を拝読した限りでは「つまんない/イマイチ」という言葉が並んでいたからです。  それでも観ようと思ったのは…【ドラゴン危機一発:1971年/死亡遊戯:1978年】は【リーさんのアクションスタイルが確立する前の作品/リーさんが途中で亡くなり、代役をたてて完成させた作品】という予備知識があって、劇映画としての完成度は期待できず、そのため「リーさん主演の映画を観るのは当作品を最後にしよう」という、半ば、義務感にすぎませんでした。  さて結果は…まず第一印象は「あのリーさんが笑っている!」ということ。それまで観たシリアスな2作品とは対照的な明るさが新鮮で「皆で笑いながら楽しくご覧下さい」というメッセージが込められているように感じました。そして、たまたまですが、BDの字幕での主人公名【トン・ロン】という響きに、私は“とろい”という言葉を連想したのですが、ヒロイン・チェンを演じるノラ・ミャオさんの表情も、当初はまさに『何よ、この“とろい田舎者”は…』という印象。その後、彼が【本領】を発揮するや、彼女の表情が一変して輝いたのは痛快でした。  また、悪役のうち、特に手下のリーダー格・ホーは、【怒りの鉄拳】で通訳のウー役だった俳優=ウェイ・ピンアオさんだとすぐわかり、しかも、身体をクネクネと楽しそうに演じていて、ウーよりも適役だと思いました。さらに、怪しい日本人空手家の「オマエハ、トンロンガ~」「ア~、イタ…ア~、イタ…」は、少なくとも日本では、爆笑を誘うある意味【迷セリフ】のような気がします。  なお、明るい雰囲気は、ジョセフ・クーさん作曲のBGMも貢献していたと思われます。  このように明るい作風に対し、シャープな【ブルース・リー・アクション】は画面を引き締め、一層、際立っていると感じました。リーさん自身が監督だけあって?何気に上半身の肉体美をアピールする場面が挿入されているのも粋な演出だと思います。  また、銃を封じる【投げ矢】も魅力的。もし私が小学生のときに観ていたら、鉛筆や割箸をナイフで削って「投げ矢だー!」と学校で投げ、先生に怒られていたことでしょう。  そして、最後のチャク・ノリスさん(失礼ながら、髭が無いお顔が可愛い!)との対決は、某漫画からのフレーズを借りると、まさに漢(おとこ)と漢(おとこ)の正々堂々とした一騎打ちであり、最後に道着をかける締め括りは、強敵(とも)への敬意の表れでしょう。そして「はい、カット!」と撮影が終わった後「お疲れさま、チャック。君が出演してくれたおかげで、素晴らしいクライマックスが撮れたよ」「こちらこそ、いい体験をさせてもらったよ、ブルース。この映画の成功を祈っているよ」と、称え合う二人の姿が目に浮かぶようでした。  ただ、個人的に唯一残念だったのは…明るい作風でずっと【死人ゼロ】で展開していたのに、終わり際で、一気に登場人物の数人が亡くなってしまったことです。作風が変わる引き金になった年配調理師・ウォンについて言えば、演じたウォン・チュンスンさんは【怒りの鉄拳】で“実は敵の回し者”という役だったので「ひょっとしてこの役も…」と予感はしていました。しかし“闘いに否定的なオジサン”のままでも、物語に支障はなかったと思います。  そして、いっそ、チャック・ノリスさんは、手足を痛めて動けなくなった時点で「機会があったら再戦しよう」と決着にし、ホーも、ボスと共に逮捕され…と【死人ゼロ】を貫いてほしかった…というのは、私が求め過ぎでしょうか…。  さて、採点ですが…特に前半のユルイ展開は好みが分かれそうですが、私は【個人的に残念だったこと】で1点のみ差引き、9点とさせていただきます。あらためて他の皆さんのレビューを遡って拝読すると、実は高評価が多いとわかり、当初の【半ば、義務感で】という鑑賞動機が、如何に無礼だったか、猛烈に反省しています。  最後に…墓参りを済ませてチェン達のもとを去り、上り坂の並木道を歩きながら遠く小さく消えていくラストシーンは、今となっては【天国へ旅立って行く姿】のようにも見えました。亡くなられて半世紀近く経っても、いまだに私達に感動を与え続けてくれるブルース・リーさんへの畏敬の念をもって、後姿を最後まで見送らせていただきました。[ブルーレイ(字幕)] 9点(2021-02-23 15:27:40)(良:1票) 《改行有》

3.  ドラゴン怒りの鉄拳 《ネタバレ》  志穂美悦子さん主演の【女必殺拳シリーズ】を観て、その製作のきっかけにもなったブルース・リーさん主演の映画を観ておかないのは誠意がないと思い、BDをレンタルして【ようやく】鑑賞。  【ようやく】というのは…実は私はこれまで、リーさん主演の映画を避けてきたからです。私が小学生のとき【燃えよドラゴン:1973年】が公開され流行っていた頃、クラスメートが次の話(注:レビュー用に表現はマイルドにしてあります)をしてくれました。「もう、ブルース・リーって、この世にいないんだって。ある映画のラストで、ピストルで撃たれる場面を撮ったとき、本当に撃たれたみたいに倒れ込んで…撮り終わって皆で『すごい演技力だ!』と絶賛して近寄ってみたら、本当に撃たれちゃってたんだってさ」。単純だった私はこの話をすっかり信じてしまい、街角で“ドラゴン”の映画のポスターが目に入るや、怖くて悲しくて目を背けるようになっていたのです。数年後、亡くなった理由は別だと知ったものの、刻み付けられた感情は残ったままでした。  今回、意を決して観ることにしたわけですが、当作品を最初に選んだ理由は、以下の二つです。①大人になってから【大魔神シリーズ:1966年】のスーツアクター・橋本力さんのインタビュー記事を読んで「悪役として出演した作品」という知識があり、もともと幾分か興味がありました。②当サイトのレビューを拝読し「最初に観るならこちらがオススメ!」という↓の【movie海馬さん】のコメントが決め手になりました。    さて、感想ですが…ブルース・リーさんのアクションって素晴らしいですね。月並みな言葉ですが、某漫画からのフレーズをかりると…技の切れ・流れ・速さ、どれをとっても非のうちどころがありません!。現在に至るまで、世代を越えて魅了されるファンが後を絶たないのも頷けます。  橋本力さん扮する道場主もキビキビとした剣技の末、悪役として見事な負けっぷりだったと思います。特に大きく眼を見開くたびに「おお!大魔神の眼だ!」と思っちゃいました。  一方、【劇映画】としては、上記の橋本力さんのインタビュー記事を読んでいたのが幸いし、【設定】自体は【高慢な支配勢力に虐げられ、屈辱を受ける人々を描いたもの=古今東西、普遍的なもの】として割りきって観れました。ただしストーリー展開は、警察や司法が殆ど関与できないまま、いわゆる【私刑の応酬】がエスカレートしていくというもので、観る人によって意見が分かれそうな印象を受けました。個人的には「仲間が言うように、事前に相談できなかったのか?『仲間を巻き込みたくない。俺一人でなんとかする』ということかもしれないけど、結局、巻き込んでしまっているし…こうするしか方法は無いのか…」と、観ている途中、やるせなさで一杯になりました。  勿論、当作品におけるリーさんの拳の迫力は、ストーリーに基づく【屈辱・怒り・悲しみの爆発】を、表情・声・全身で表現したものであるからこそ、と言えるかもしれませんが…。  なお、幼馴染であり婚約者のユアン(女優ノラ・ミャオさんがお美しい…)との【ホー師匠の墓前で語らう場面】は、激しいアクションとは対極にある【静かな悲しみをたたえた切ないラブシーン】になっていたと思います。  そして、オープニングの曲から、何となく悲劇的な最期の予感はしていたのですが…主人公・チャンが目に薄っすらと涙を浮かべながら叫んで飛び込んでいくラストには「クラスメートが言っていたラストシーンって、きっとこのことだったんだ」という【衝撃】が心に突き刺さり、観ていて溜まっていたやるせなさが一気に溢れ出て、年甲斐もなく涙が止まらなくなりました。  涙が尽きた後、冷静に振り返ってみると「公開当時、香港では、このチャンに感情移入しすぎて『ブルース・リーは、無念の最期を遂げた=本当に亡くなってしまった』と思い込んでしまった観客さんが少なからず存在したのではないだろうか…それが日本にも【噂】としてクラスメートの耳にも…」と連想したりもしました。  それにしても、意を決して観た最初の【ブルース・リー映画】が【40年近く前の記憶】とつながって、とめどない涙につながるとは…不思議なものを感じずにはいられません。涙と共に【リー作品を避けていた小学校時代の自分】に区切りがついたような気がします。  さて、採点ですが…ブルース・リーさんのアクションは勿論、個人的なインパクトにより10点を献上したいところですが…他のレビュアーさん達も言及している【エロ場面】は、私も不要だと思います。また、設定に対し【古今東西、普遍的なもの】とは、どうしても割りきれずニュートラルに観ることが出来ない方々もおられることでしょう。その点を差し引き、9点とさせていただきます。[ブルーレイ(字幕)] 9点(2021-01-17 12:41:45)《改行有》

4.  東京おにぎり娘 《ネタバレ》  私は今年の8月に【火垂るの墓:1988年】【クォ・ヴァディス:1955年】と、立て続けに【死】がつきまとう作品の投稿をして、ちょっと気持ちが滅入っていたとき、ちょうど、当作品のレビューを拝読しました。  私はこれまで、当作品の存在を全く知らず「なんだ??この“東京キッド”や“銀座カンカン娘”のような昭和の香りがプンプンする題名は…」という興味からレビュー欄を開くと…投稿数は僅か5つでしたが、全て肯定的な文面ばかり!。↓の【はあさん】も「凡作」と結論付けているわりには、その前段でとても懇切丁寧な解説をして下さっており「これは是非、観てみたい」と決心。なんとかDVDを取り寄せて鑑賞しました。  率直な感想は、観て良かったです!。  まず、他のレビュアーさん達もおっしゃる通り、作り物ではない、まさに当時の本物の昭和30年代の街並みが見られるだけでも、歴史的な資料としての価値があると思います。  そして、こうした街並みを背景に【商売も気概も衰えて気弱になり始めた頑固親父さん】と【生きるエネルギーに満ち溢れたしっかり者の娘さん】を軸に繰り広げられる人間模様の数々…けっして、劇的にどうこうというわけではありませんが、登場人物が多いわりに展開がとてもわかりやすく、きちんとまとまっていく人情ドラマに感心、というより安心しました。  一つ一つの役者さん達の演技にも感じ入りました。  カメラを固定した中で紡ぎ出される会話の妙…脚本を活かす役者さんの達の演技があってこその味わい深さでしょう。映像表現やカメラワークで魅せるタイプの作品とは対極にある印象を受けました。  若尾文子さんは、私が物心ついた頃、すでに【落着いた物腰のご婦人】という印象が強かったので「こんな元気な娘さんを演じていたこともあったんだな~」と新鮮。でも、たとえ酔っぱらった演技をしても、品の良さを失わないのは、さすが名女優さん!といったところ。  また、何よりも鶴吉さんを演じた中村鴈治郎さんが素晴らしい。特に【まり子/みどり】という、娘ふたりへのそれぞれの愛おしさがにじみ出る演技に対し、私も“人の親”となり歳を重ねたせいか、妙に共感してしましました。  余談ですが、昭和31年当時は、私の両親も青春真っ盛り(若尾さん達より少し年下かな…)。まり子さんら若い登場人物達には「親父もお袋も、東京でなく地方育ちだったけど、こういう時代を歩んできたんだな…」、一方、鶴吉さんら年配の登場人物達には「お爺ちゃんやお婆ちゃん達も、お袋を嫁に出す・出さないでは、ご近所さん達が見合い話を次々に持ってきて、随分、葛藤したらしいしよな…」といった個人的な思いも重ね合わせたぶん、味わい深さが倍増しました。  それにしても、若尾文子さんら役者さん達は勿論、田中監督を始めとする作り手の皆さん達も、現在、まさか、このようなレトロ感覚の眼差しで鑑賞されるとは考えもしなかったでしょう。でも、根底に流れる【親子の情愛】【昔は良かったと振り返る世代/新しく時代を謳歌する世代】【人と人とのつながり】といったテーマは普遍だと思います。なお、テレビドラマの世界だって、例えば、TBSの【日曜劇場】も、現在のような【劇的な展開を売りにした連続ドラマ系】になる以前(平成5(1993)年3月まで)は、こういった【一話完結のほのぼのとした人情ドラマ】を、ときどき放送していたように思います。【作品の多様性】という意味で、再び、こうした人情ドラマが復活しないものだろうか…といったことも思ったりしました。  いずれにせよ、当サイトが無ければ、私は永遠にこの作品に出合うことは無かったでしょう。ありがとうシネマレビュー!  さて、採点ですが…私も、いわゆる【不朽の名作】というよりは【佳作】という位置づけの作品だと思います。でも今回の鑑賞で、ささやかながら、生きる力が湧いてきました。私はかつて、同時期の作品である【日活版の青い山脈:1963年】に8点を献上したことがあります。同じように、大甘とは思いますが8点を献上させていただきます。[DVD(邦画)] 8点(2020-10-03 17:36:54)(良:1票) 《改行有》

5.  時をかける少女(1983) 《ネタバレ》  当作品の公開時、私は高校生でした。原田知世さんの大ファンだったクラスメートが観に行き「大半の観客は、同時上映の【探偵物語:薬師丸ひろ子さん主演】が目当てで、当作品の上映中は苦笑・失笑ばかりだったけど、俺は応援するような気持ちで観たぞ。内容や雰囲気など作品自体も良かったぞ」と熱く語っていたのを覚えています。  しばらくしてTV放映されたので観たのですが、私も好感を持ちました。全編にわたるノスタルジックな雰囲気をはじめ、それまでの大林監督作品の【ハウス:1977年】や【ねらわれた学園:1981年】などに典型的なギャグ要素(そのセンスに私はついていけなくて…)が皆無の作風に安心しました。若手俳優さん達の演技は、確かにお世辞にも上手いとは言えませんでした。しかし既にそれまでの評判でわかっていましたし、特に【実写映画版・火の鳥:1978年】から知っていた尾美としのりさんの喋り方からは「主演に合わせたのか、それとも作風に合わせたのか、演出で意図的に棒読み調に統一したのかな…」という印象を受けたので、私は気にしませんでした。また、数々の台詞についても【1970年代の青春ドラマ・スポ根ものの台詞や演出を“くさい”とお笑いのネタにする】という当時のTVバラエティーの風潮に懐疑的だった私は、逆に真っすぐな気持ちで受けとめました。  その後も、深夜放送等でたびたび観ていたのですが、今回、某ローカルTV局でノーカット放送していたので録画し、20数年ぶりに再見しました。さて結果は…。  まず、障子に映るシルエットで表現されたオープニングタイトルからして「単なる学園SFものではない」とあらためて思いました。この場面に限らず、光と影を基調とした映像の数々には【当作品公開の数年後、ホームビデオカメラに押され生産中止の危機にあった8ミリフィルムについて、映像表現の媒体としての価値を力説していた大林監督の姿】を思い起こしました。タイムリープの場面には【実写のコマ撮り】や【スチール写真の切り抜き風に演出した人物のアニメーション】を複合させた、言わば【8ミリフィルムカメラの限定的な機能でも可能だった映像表現の再現】のような一面を感じました。そして、主人公をはじめとする若者像や風景描写は、リアルな学生や現実の街並みというより、大人が懐かしさをもって思い出すプライベートなイメージのように思いました。これらのことから【商業(アイドル)映画という体裁で製作した個人映画・自主映画】という印象も受け、大林監督のキャリアがあればこそ実現した贅沢な作品とも言えるかな…と思いました。  なお、ストーリーについては、現在、子供を持つ親となった私には、切なさを通り越してつらいものを感じました。主人公は「普通の女の子に戻りたい」と言っていたのに、未来人との出会いで本来の【幼なじみと結婚し、母となり…】という【普通の営み・人生の喜び・命のつながり】が断ち切られたように思います。このことと、交通事故で息子夫婦や孫の命を奪われた隣の老夫婦の姿とが重なったのです。そして「ひとが、現実よりも、理想の愛を知ったとき、それは、ひとにとって、幸福なのだろうか?不幸なのだろうか?」というオープニングの字幕が、重苦しくのしかかってきました。それだけにエンディングは「これは、フィクションですよ。気楽な気分で現実に戻って下さいね」と感じられ、救われた気持ちになりました。【それまでの雰囲気のぶち壊し】が、私にはプラスになったわけです。  さて、採点ですが…個人的には10点にしたいところですが、当作品を好意的に観られるかどうかは「演技や台詞をとりあえずスルーできるか」「ストーリーを追うよりも雰囲気を味わえるか」「ゆったりした展開を、詩的なものとして受け入れられるか」「タイムリープの場面を、アマチュア的な手作り映像へのオマージュとして好意的に捉えられるか」「エンディングで気持ち良く気分転換できるか」にかかっているかな…と思います。このように、万人受けする作品ではない点を差し引きつつ、それでも大林監督が生んだ名作として9点を献上いたします。[地上波(邦画)] 9点(2017-03-12 14:18:36)(良:3票) 《改行有》

6.  ドラゴンハート 《ネタバレ》  家族向けファンタジー映画の佳作…これが一般的な評価だと思います。しかし私にとっては、人生を変えてくれた映画です。  出会いは偶然でした。たまたま買物帰りに、某映画館の入口にあったテレビで予告編が流れていました。手強いドラゴンに対し、主人公は「倒せるのはあなたしかいない」とヒロインから励まされ、戦いを挑む…という構成になっていました。暇つぶしに…と軽い気持ちで単身、映画館に入ったのです。上映が始まってすぐ、予告編は【編集によるマジック】であり、全く違う内容だと気づきました。しかし逆に感動しました。何故なら【理想を打ち砕かれ、自暴自棄になってニヤけたり、吐き捨てるような言動に走る主人公の姿】と【仕事の理想を見失ってひねくれていた自分】、そして【ドレイコとの出会いにより、再起する主人公の姿】と【理解ある上司との出会いにより、立ち直った自分】とが、重なって見えたからです。コミカルな演出でつなぎながら、締める場面はしっかり締める構成にも好感が持てました。上映後、近くの席にいた若者達も「怪獣への興味で見に来たが“映画”としてよく出来ていた」と言っていました。感じ入ったものは違っていたでしょうが、感動を分かち合えたように思いました。  それから1年後…たまたまレンタルビデオで見ていると、実家から電話がかかってきました。お見合いを受けるか否かを確認する電話でした。電話の途中でちょうど【アーサー王の姿が浮かび上がった柱の前で、主人公が騎士の掟を誓い直す場面】に差しかかりました。私は「会うだけあってみよう。それが人としての誠意ではないか」と思い、主人公が誓うのと同時に、見合いを受けると伝えたのです。すると、柱の向こうから『よく言ったな!』と祝福するように、ドレイコが私をも見つめるように現れたように感じました。  さて、見合いの結果ですが、これも運命の出会いと言いましょうか、話がとんとん拍子に進み、結婚し、現在があります。あれから20年近くが経ちました。最近、春休み用にTV放映されたので録画して観ました。我が子には「この映画が無ければ、お前は生まれていなかったんだよ」と伝えました…と、まあ、嘘のような本当のお話です。  さて、採点ですが、一般的には良くて6~7点といったところでしょう。しかし当時の感動や不思議な巡り合わせの感覚をそのままに「鑑賞環境」は「映画館」とし10点を献上します。[映画館(字幕)] 10点(2015-04-12 21:40:42)(良:1票) 《改行有》

7.  ドラゴンスレイヤー 《ネタバレ》 この作品は、ウォルト・ディズニー亡き後、どん底にあった当時のディズニープロダクションが、新機軸を見出そうと試行錯誤していた実験作の一つと言えるかもしれません。そうした映画の一つ・ブラックホール(1979年)が「大人向けの科学映画という体裁で宣伝しながら、実は子供向けのアドベンチャーもの」だったのに対し、当作品は「題材は家族向けのファンタジーでありながら、大人向けを志向した作品」と言えるかと思います。  「大人向け」としての脚本上の工夫は「定石(お約束)破り」だったようです。ザッと挙げると「定石では救われるはずのお姫様は、無残な死を遂げる」「定石ではドラゴンを倒すはずの特製の槍は、あえなく折れてしまう」「定石では英雄になるはずの少年は、ドラゴンを倒さない」「我が身を犠牲にしてドラゴンを倒した魔法使いは、定石では人々から感謝されるはずなのに、主人公とヒロイン以外からは誰からも存在を認められない」…とこんな感じです。  おそらく知的な面白さを好む人達からは評価されたでしょうが、少数派だったようです。同じ年に公開された、まさに定石通りに展開する「タイタンの戦い」に対して興行的に惨敗を喫し、結局、日本では未公開になりました。 ご存知の方もおいででしょうが、TVシリーズの水戸黄門は、かつて石坂浩二さんを主役にしたとき、定石の打破を試みました。一部の視聴者からは歓迎されたものの、結局は大半の声に応えて本来のお約束番組に戻りました。「展開や結末は薄々わかっているのに、否、わかっているからこそ安心して感情移入し、めでたし、めでたし…と精神の安定を得る」という面が人間にはあると思います。現在のディズニー映画の隆盛は、まさにこのツボを心得ているからこそだと思われます。 ドラゴン自体は、当時、ハリーハウゼンのストップ・モーションでは難しかった素早い動きを実現し、一見の価値があると思います。その技術は「ゴー・モーションシステム」と呼称されました。そしてアカデミー視覚効果賞にノミネートされ(受賞したのは、レイダース・失われたアーク)、ジュラシックパーク(1993年)のCGの恐竜が登場するまで使われました。 以上、娯楽映画の在り方を考える上での意義と、ゴー・モーションによるドラゴンの技術的な意義を鑑み、5点を献上します。音楽評価は、ベテランの作曲者アレックス・ノースに敬意を表し10点を献上します。[地上波(字幕)] 5点(2015-02-07 21:49:15)《改行有》

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