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1. ネットワーク
《ネタバレ》 悲劇とも喜劇ともいえる作品。
本作のような社会派映画を独特かつパワフルな作品に仕上げたシドニー・ルメット監督はやはり素晴らしい監督だ。
視聴率に振り回されるテレビ関係者たち、テレビに振り回される視聴者たちを鋭く見事に描き出されている。
テレビによってムーブメントが形成されていく様は圧巻であり、ニュースも何もかもショー化していき、より過激になっていく様も恐ろしい。
いったん動き出した歯車は留まることを知らず、テレビという魔物が“怪物”を産み、“怪物”を産んだ当事者すらコントロールできなくなる。
そのような“怪物”を止める手段すらもメディアの道具にしてしまう辺りは“悪い冗談”としか思えないが、こういった一連の冗談は、もはや“現実”のものとなっているだろう。
カメラに映された悲劇的な事故や事件は、視聴者の注目を集め、繰り返しメディアで放送されたり、視聴率のために過激な“ヤラセ”や“煽り”が横行しているのも周知の事実である。
また、登場人物のほとんど全てが叫び、怒鳴りつけているのが印象的だ。
5人がアカデミー賞にノミネートされ、2人が受賞しているのは伊達ではない。
素晴らしい演技合戦が見物となっている。
個人的には、ピーター・フィンチが豹変して、完全にイってしまった演技が気に入った。
本作において、やや違和感があるのはホールデンとダナウェイの恋愛エピソードと思われるが、個人的にはこのエピソードは本作にとって必要不可欠なものであると思われる。
仕事に追われるあまり、恋愛を含めた“人間性”が欠如していることを端的に表しているエピソードだからである。
しかし、全体の流れから、やや浮いたような展開になってしまい、しっくりと来ないようにも感じられる。
この点に関しては、やや不満が残るところでもあり、上手くフィットするように調理ができていれば、より傑作として後世に語り継がれただろう。[DVD(字幕)] 8点(2009-11-21 22:08:51)《改行有》
2. NEXT-ネクスト-
《ネタバレ》 質などを総合的に判断すると点数は低いが、個人的にはそれほど嫌いな作品ではない。
その理由は、ニコラス・ケイジが出演しているからだ。
とはいっても、ニコラス・ケイジそのものが好きなわけではない。
彼の醸し出す胡散臭さが妙に本作の胡散臭さにマッチしているから、面白く感じられるのである。
もし、本作の主人公がマット・デイモンだったら、「ふざけんな」とブチ切れていただろう。
ニコラス・ケイジだから、「何でもあり」「破綻していようが何でも許せてしまう」という気持ちになれる。
しょぼい能力に見合うだけのチープなオーラを備えているので、彼はある意味でいい役者だ。
むしろ、彼を活かすために、もっとカッコ付けずに、なぜB級っぽく全体を演出出来ないものかと逆に怒ってしまうほどだ。
一般の観客には合わない作品だとは思うが、ニコラス・ケイジのB級テイストを感じ取れる人には向いている。
核兵器の爆発という大きなストーリーの割には、胡散臭い男を巡るFBIとテロリストの小さいストーリーに終わってしまう辺りが最高だ。
途中までは悪くなかったが、最後の銃撃戦が少々イマイチか。
肝心のクライマックスとしては、あまり納得はいかない。
さすがに分身するのはやりすぎだ。
冒頭の「カジノ脱出」を超えるような神業を披露して欲しかったところだ。
「こいつはスゲエ」「こいつは神だ」と思えるような動きを上手く演出できないものか。
その神業の行き着く先は、絶対に「分身」ではないだろう。
ニコラス・ケイジの余裕の動きと、それに必死に応えるFBI・SWATの連携を、微妙な違和感をもって上手く演出できれば、絶対に面白い作品に仕上がったはずだ。
議論が分かれそうな、オチや終わり方も個人的にはそれほど嫌いではない。
エンドクレジットが始まる前に、「この辺りで終わらした方がいいだろうな」と感じられたからだ。
あれ以上描けば、「蛇足」になってしまう。
このオチのために最後まで取っておいたのかもしれないが、途中でも「失敗する未来」をもっと多用しても面白かったかもしれない。
「死んだ」と思ったら、それは現実ではなかったという展開がもっとあってもいい。
「バンテージポイント」のように、要所要所で何度も何度も巻き戻されると、一風変わった映画に仕上がったのではないか。[映画館(字幕)] 5点(2008-05-05 14:54:44)《改行有》
3. ネバーセイ・ネバーアゲイン
《ネタバレ》 本作の公開時にはコネリーはすでに53歳。もう孫がいてもおかしくない歳ではないだろうか。あんな政治家風のおじさんが、女性にモテモテだったり、屈強の男性と激しいバトルを繰り広げるのをみると、ちょっと痛々しいというか、やはり無理を感じさせる。
医療施設で到底敵わないような男と戦わせたのは、歳を取っていても、昔と変わっていない、いや昔以上にパワーアップしているということを描きたかったかもしれないがやはり無理がありすぎた。
映画の質としては「サンダーボール作戦」よりは良かったと思う。「サンダーボール」のときには脚本に相当無理があると感じたが、比較的分かりやすくあまり無理がない仕上がりとなっている(ドミノに与えた宝石にアジトの地図が記してあったり、ラストにドミノがあんなところに居るわけないなどの無理は当然あるが、これくらいはギリギリ許容範囲だろう)。
特に、ドミノを寝返らせるためのタンゴはひとつの見所になっており、このシーンのおかげで(時代の影響もあったのか)くだらないゲームにもやや意味を生じている。しかし、いい歳をしてあの二人のおっさんはいったい何をしてるのかね。
配役も「サンダーボール」よりも魅力的だ。ファティマ(フィオナ)は、蛇を用いたりと妖しい殺人鬼として描かれており強い存在感を感じる。サンダーボールのルチアナパルッツィも同様に大量殺人鬼であるが、存在感をあまり感じなかった。バイクでのカーチェイスは評価できるし、ボンドとファティマの直接対決も見所十分となっている。
ラルゴも、表向きは慈善事業家という雰囲気は出ているし、嫉妬心が強い内面も十分感じられる演技をしている。オリジナルのラルゴよりも全然よい。
舞台としても、海底(沈没船とサメ)、城跡や遺跡といった面白い工夫もされており、万年筆爆弾や時計のレーザーなどの特殊兵器に関しても、控えめかつ効果的に用いられているのも好印象だ。
以上のように、製作陣のなかなか熱心な姿勢が窺われ、それなりに楽しめる作品にはなっていると思う。
ラストのコネリーの捨て台詞の「ネバーアゲイン」にも歴史的な重みが感じられて良い締め括りとなっている。[DVD(字幕)] 6点(2006-11-20 00:34:06)《改行有》
4. ネバーランド
《ネタバレ》 この映画を観た人は皆ネバーランドに連れていってもらったんじゃないかな。
そう思えるほど素晴らしくかつ観終わった後充実した気分にさせてくれる映画を見させてもらった。
「想像力」と「信じる力」があれば誰でもネバーランドに行ける。
人生を楽しむことの素晴らしさや自分が失いかけていた純粋さのようなものを取り戻せたような気もした。
しかし単純にそれだけを描いたわけではない。
信じる力だけでは越えられない現実もちゃんと描かれていた。
どんなに祈っても病気という現実は変えられないし、どんなに願っても妻とのどんどん離れていく距離は縮まることはなかった。
結婚した当初は、お互い二人で夢見た世界は同じだったはずなのに、すれ違いによって一緒の世界が見れなくなっていく二人の関係は切なくて悲しい。
また、なんといってもデップの演技は光っていた。
子ども達との現実世界でのやり取りや、子ども達と遊ぶイマジネーションの中での世界は微笑ましい。
特にピーターを見つめる眼が優しかった。
ピーターと自分を同一視しているのだろうか、ピーター脚本による演劇の舞台をピーターが一人でボロボロにする姿をじっと椅子に座り見つめる姿にはバリがあの時何を思っていたのだろうかと色々と考えざるを得なかった。
そして、父の死で心を閉ざし、再び母の死で完全に心を閉ざしかねなかったピーターの「母さんが見えるよ…」と発したラストのセリフを導き出した彼の演技もまた素晴らしかった。
この映画に文句をつけるのなら、まずはダスティンホフマンの存在。
チョイ役に出演するなとは言わないが、ある程度重要なキャラクターなのではと思っていたのに
全く出番がない。今回彼が出演する意味はなかったのではないか。
少なくともバリに何らかの影響(子ども達を招待するという着想は与えていたが)を与えるキャラクターであって欲しかった。
そして中盤の多少の弛みは感じられた。
バリと妻、シルヴィアとその母、バリとシルヴィアの母、バリと子ども達、シルヴィアと子ども達といくらでも盛り上げることが出来る関係があるにもかかわらず、中盤は少し脚本や演出が押さえすぎられている気が感じられた。8点(2005-01-23 20:58:49)《改行有》
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1 | 4 | 0.49% |
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2 | 12 | 1.46% |
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3 | 39 | 4.74% |
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4 | 78 | 9.48% |
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5 | 91 | 11.06% |
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6 | 156 | 18.96% |
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7 | 195 | 23.69% |
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8 | 163 | 19.81% |
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9 | 60 | 7.29% |
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10 | 22 | 2.67% |
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